配偶者特別控除とは?配偶者控除との違いと適用条件などを解説
監修者:税理士法人 MIRAI合同会計事務所
2023/12/27更新
配偶者がいる人が受けられる所得控除として、よく知られているのが「配偶者控除」です。また、配偶者の所得が多くて配偶者控除の適用外になった場合でも受けられる可能性があるのが、「配偶者特別控除」という所得控除です。
配偶者特別控除は、配偶者控除に比べて適用要件や控除額が細かく設定されているため、「どうすれば配偶者特別控除が受けられるの?」「配偶者控除との違いがわからない」と疑問を持つ方もいるかもしれません。
ここでは、配偶者特別控除の概要や適用要件、配偶者控除との違いについて説明すると同時に、税金や社会保険料にかかわる「年収の壁」についても解説します。
配偶者特別控除は所得控除の1つ
配偶者特別控除は、納税者本人や配偶者が条件を満たしている場合に、所定の金額を所得から差し引くことができる所得控除の1つです。
なお、所得とは、給与収入のみの人なら年収から給与所得控除を引いた額、個人事業主なら収入から必要経費を引いた額です。
納税者は、配偶者の所得が年間48万円以下(2019年分以前は38万円以下)の場合は配偶者控除が受けられますが、配偶者の所得が48万円を1円でも超えると配偶者控除の適用外になってしまいます。
このような場合でも段階的に控除を可能にするのが配偶者特別控除です。配偶者特別控除を適用すれば、配偶者の所得が48万円を超えたとしても、一定額の控除を受けられる可能性があります。
配偶者特別控除や配偶者控除は、年末調整か所得税の確定申告で申告手続きを行うことができます。
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配偶者特別控除を受けるための要件
配偶者特別控除を受けるには、次の5つの要件を満たす必要があります。配偶者特別控除を受けるための要件についてご説明します。
控除を受ける納税者本人の所得合計額が1,000万円以下であること
納税者の所得合計額が1,000万円を超えている場合は、配偶者特別控除や配偶者控除を受けることができません。
配偶者が一定の要件に当てはまること
配偶者特別控除を受けるには、「配偶者」が一定の要件に当てはまることが必須です。下記すべての要件に当てはまらなければ、配偶者特別控除を受けることができません。
- 民法上の配偶者である
- 民法上の配偶者とは、婚姻届を提出して法律婚をしている相手を指します。内縁関係や同性婚の人は対象外です。
- 控除を受ける人と生計を一にしている
- 生計を一にする配偶者であれば、単身赴任などで別居していても問題ありません。
- 青色申告または白色申告の事業専従者ではない
- 青色申告の専従者給与や白色申告の専従者控除の特例を受けている場合は、配偶者特別控除は適用されません。
- 年間の合計所得金額が48万円超133万円以下であること
- もし配偶者の所得金額が48万円以下の場合は、配偶者特別控除ではなく配偶者控除が適用されます。
配偶者が配偶者特別控除を適用していないこと
配偶者特別控除を受けることができるのは、どちらか片方のみです。夫婦がお互いに配偶者特別控除を受けることはできません。
配偶者が別の親族の扶養家族として控除の対象になっていないこと
「配偶者が給与所得者の扶養控除等申告書または従たる給与についての扶養控除等申告書」に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として源泉徴収されていると、配偶者特別控除は適用できません。例えば、夫婦と両親が生計を一にしており、配偶者が親の扶養家族として控除を受けていた場合などが、これにあてはまります。
配偶者が公的年金等の受給者の扶養親族として控除の対象になっていないこと
「配偶者が公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていた場合、配偶者特別控除は適用できません。例えば、公的年金を受け取っている親などの扶養親族として申告されている場合などが挙げられます。
配偶者特別控除と配偶者控除の違い
配偶者特別控除と配偶者控除の大きな違いは、対象となる配偶者の所得金額です。配偶者特別控除は、配偶者の年間の合計所得金額が48万円超133万円以下の場合に適用されます。一方、配偶者控除が適用されるのは、配偶者の所得が48万円以下の場合です。
ただし、配偶者特別控除と配偶者控除には共通した要件もあります。前述の配偶者特別控除の要件のうち、「控除を受ける納税者本人の所得合計額が1,000万円以下」「民法上の配偶者」「配偶者が納税者と生計を一にしている」「青色申告または白色申告の事業専従者ではない」といった内容は配偶者特別控除も配偶者控除も同様です。
配偶者特別控除と配偶者控除は、控除額も異なります。それぞれの控除額は下記の表のとおりです。
配偶者の合計所得金額 | 控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | |||
---|---|---|---|---|
900万円以下 | 900万円超950万円以下 | 950万円超1,000万円以下 | ||
配偶者特別控除 | 48万円超95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 | |
配偶者控除 | 48万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
配偶者特別控除の申告方法
配偶者特別控除を受ける際には、年末調整か確定申告で申告します。それぞれの申告方法について説明します。
年末調整の場合
会社員などの給与所得者の場合は、年末調整で配偶者特別控除を申告します。年末調整にあたり勤務先に提出する「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の「給与所得者の配偶者控除等申告書」の欄に、配偶者の氏名やマイナンバー、生年月日、合計所得金額の見積額、配偶者特別控除の額などを記載しましょう。
確定申告の場合
年末調整を行わない個人事業主などの場合は、確定申告で配偶者特別控除の申告を行います。また、年末調整で配偶者特別控除の申告をしなかった給与所得者も、確定申告での申請が可能です。
確定申告書の次の箇所に、必要項目を記載しましょう。
- ※国税庁「所得税の確定申告 」
第一表「所得から差し引かれる金額」欄の「配偶者(特別)控除(21)~(22)」
「区分」の□に「1」と記入し、控除額を記入します。
第一表「その他」欄の「配偶者の合計所得金額(56)」
配偶者の合計所得金額を記入します。
- ※国税庁「所得税の確定申告 」
第二表「配偶者や親族に関する事項(20)~(23)」
一番上の行に、配偶者の氏名、マイナンバー、生年月日を記入します。
配偶者の所得と所得税および社会保険料の関係
配偶者の所得を考えるとき、知っておきたいのが「年収の壁」です。年収の壁とは、一般的に、配偶者が所得税や社会保険料を支払うことになる年収を指し、「103万円の壁」「130万円の壁」などと呼ばれます。配偶者が年収の壁を超えると、配偶者特別控除が受けられなくなったり、控除額が減ったりすることもあります。
なお、ここでの「年収」とは、パートやアルバイトなど、給与を受け取ることによる収入(年収)を指します。給与所得者の場合は、「収入」から給与所得控除を差し引いた金額が「所得」となり、この所得から、配偶者特別控除をはじめとする各種所得控除を差し引いた金額が課税所得です。この課税所得の金額に所得税がかかります。収入と所得の違いをしっかり把握しておきましょう。
配偶者の収入と、配偶者特別控除や配偶者控除の関連について、金額別にご説明します。
103万円の壁
配偶者の給与収入(年収)が103万円を超えると所得税が発生し、納税者は配偶者控除を受けられなくなります。
年収103万の場合の給与所得控除は55万円なので、所得は48万円です。配偶者控除の対象になるのは年間の合計所得金額が48万円以下の場合なので、年収103万円を超えると配偶者控除は適用されません。
また、所得税を算出するときには、48万円の基礎控除が適用できます。そのため、年収103万円以下なら「103万円-給与所得控除55万円-基礎控除48万円」で課税所得額が0円になり、所得税はかかりません。
106万円の壁
年収が106万円を超えると、配偶者自身が勤務先の社会保険に加入しなければならなくなる可能性があります。これが、一般的に「106万円の壁」と言われる理由です。
次の要件をすべて満たす場合は、勤務先の社会保険への加入義務が発生します。
106万円の壁の要件
- 週に20時間以上働いている
- 2か月以上継続して勤務する予定である
- 1か月の収入が8万8,000円(年収約106万円)以上である
- 学生ではない
- 従業員数が101人以上の企業、または従業員数が100人以下だが保険加入について労使の合意がある企業に勤務している。
130万円の壁
年収130万円を超えると、社会保険の扶養から外れ、国民健康保険や国民年金、または勤務先の社会保険(労働時間・日数が正社員の4分の3以上に該当する場合)に加入する必要があります。配偶者自身が保険料の支払いを行わなければならないため、手取り額が減少する可能性が高いでしょう。
150万円の壁
配偶者の年収が150万円を超えると、配偶者特別控除の額が徐々に低くなっていきます。
年収150万円の場合の給与所得控除は55万円なので、所得は95万円です。配偶者の所得が48万円を超えて配偶者控除の適用外になっても、所得が95万円以下なら、配偶者特別控除が満額の38万円を適用できます。前述の表のとおり、それを超えると、段階的に配偶者特別控除額が減少していきます。
201万円の壁
配偶者特別控除は、配偶者の所得が95万円を超えると段階的に減少していき、133万円を超えるとゼロになります。
年収201万円の場合の給与所得控除は68万3,000円なので、所得は132万7,000円です。つまり、年収201万円は、配偶者特別控除が受けられるギリギリのラインだといえます。
配偶者特別控除を受ける際の注意点
配偶者特別控除を受ける際には、知っておきたいいくつかの注意点があります。配偶者特別控除を申告する前に、以下の点を確認しておきましょう。
配偶者に税金が課せられる場合がある
配偶者特別控除は、配偶者の所得が48万円を超えても95万円までは、配偶者控除と変わらない満額の38万円が控除されます。しかし、それは納税者本人の税金が増えないということであって、配偶者は所得が増えればその分課税対象になる部分が出てきます。
所得金額が48万円を超えると、配偶者自身に所得税の納税義務が発生するため注意しましょう。
配偶者が事業専従者となっている場合、配偶者特別控除は受けられない
配偶者が白色申告や青色申告の専従者になっていた場合は、配偶者特別控除の対象外となります。親や祖父母など、他の親族の事業専従者になっていても、配偶者特別控除は受けられません。配偶者控除についても同様です。
配偶者が産休もしくは育休中でも申告できる
配偶者特別控除は配偶者や納税者の所得をもとに適用の可否が決まるので、産休中や育休中であることは問題にはなりません。
「産休中や育休中に受け取る給付金は所得に含まれるのだろうか」と気になる方もいるかもしれませんが、出産育児一時金や育児休業基本給付金は非課税なので、所得には含まれないのです。配偶者の所得額が減る分、産休・育休前よりも納税者の控除額が増える可能性があります。
配偶者特別控除を申告しなかった場合
年末調整や確定申告で配偶者特別控除の申告をしなかったり忘れていたりしたときは、後からでも申告することが可能です。配偶者特別控除を後日申告する場合は、2月16日から3月15日までの確定申告の期限内かそうではないかで対応方法が変わります。
確定申告の期限内の場合
確定申告は、期限内であれば申告のやり直しができます。配偶者特別控除の申告をしていないことに気づいたのが確定申告の期限内なら、正しい内容の確定申告書を作成して再度の提出が可能です。再提出すると、日付の新しい確定申告が有効となります。
年末調整で配偶者特別控除の記載が漏れていた場合も、期限内に確定申告をすれば配偶者特別控除を受けることができます。
確定申告の期限後の場合
確定申告の期限を過ぎてしまった場合は、「更生の請求」を行うことで税金の還付申告が可能です。更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。更生の請求書を作成し、所轄の税務署に提出しましょう。
配偶者控除の利点を見極めて申告しよう
配偶者の所得が48万円を超えて配偶者控除の適用外になると、「もう控除は受けられない」と思ってしまいがちですが、配偶者特別控除を利用すれば、所得金額に応じて段階的に控除が受けられます。配偶者控除と配偶者特別控除のどちらに該当するかを見極めて、しっかり節税につなげましょう。
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この記事の監修者税理士法人 MIRAI合同会計事務所
四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
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