国民年金は確定申告すれば控除の対象になる?必要な書類などを解説
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国民年金は20歳以上60歳未満のすべての人が加入する年金です。個人事業主やフリーランスの場合、確定申告をすることで、所得から1年間の社会保険料を差し引く社会保険料控除が受けられますが、国民年金の保険料は対象になるのでしょうか。
本記事では、国民年金の保険料の控除を受けるために必要な書類や、確定申告書の書き方、控除を受ける際のポイントなどについて解説します。
国民年金の保険料は全額が控除される
国民年金の保険料は、全額が社会保険料控除の対象です。社会保険料控除は1月1日から12月31日までの1年間に支払った社会保険料の全額を所得から差し引く制度で、確定申告で控除されます。社会保険料控除を受ければ、納付した国民年金保険料の分だけ課税所得が少なくなるため、所得税が住民税の納税額が少なくなります。
社会保険料控除の対象になるのは、国民年金保険料や厚生年金保険料、国民年金基金の掛金、健康保険料、国民健康保険料、介護保険料、雇用保険料などの社会保険料です。このうち、個人事業主やフリーランスの社会保険料控除では、主に国民年金保険料や国民年金基金の掛金、国民健康保険料、介護保険料などが関係します。
なお、国民年金は日本に住む人のうち、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する年金です。ただし、国民年金保険料として、自分で保険料を納付するのは、基本的に個人事業主やフリーランス、学生などの第1号被保険者のみとなります。会社員などの給与所得者は第2号被保険者に該当し、給与から天引きされる厚生年金保険料に国民年金保険料が含まれています。
国民年金保険料の控除を受けるために必要な書類
国民年金保険料の控除を受けるためには「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」が必要です。確定申告をする際、確定申告書に「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」を添付して提出します。e-Taxで確定申告をする場合、自宅での5年間の保管が必要ですが、添付する必要はありません。
「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」は、例年10月から11月ごろまでに、日本年金機構から郵送で届きます。確定申告期間は翌年の2月16日から3月15日(土日祝日に重なった場合は翌平日)なので、確定申告が終わるまで「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」を保管しておきましょう。
子や配偶者などの国民年金保険料も納付している場合は、家族の分の国民年金保険料も社会保険料控除の対象となります。そのため、家族の「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」も保管が必要です。
「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」

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※日本年金機構「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書
」
また、社会保険料控除の対象になるのは、原則として「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」に「令和◯年中の納付済保険料額」と記載されている、その年に納付した金額のみです。もし、前年分の国民年金保険料の社会保険料控除を受けていない場合は、税金の額を訂正するための「更生の請求」をしましょう。税務署に認められれば、払い過ぎた税金が還付されます。
なお、国民年金保険料以外の社会保険料のうち、国民健康保険料と介護保険料は証明書などの書類の添付は必要ありません。実際に納付した金額を確認したうえで、正確に確定申告書に記載します。一方、国民年金基金の掛金については、社会保険料控除証明書の提出が必要です。
控除を受けるための確定申告書の書き方
確定申告で国民年金保険料の控除を受ける際は、確定申告書の第一表と第二表のそれぞれに必要事項を記入します。確定申告書を手書きで作成する場合は、最寄りの税務署窓口や確定申告会場、e-Taxで提出する場合は、国税庁の確定申告書等作成コーナーなどで入手可能です。
ここでは、確定申告書の第一表と第二表の書き方について解説します。
確定申告書 第一表
国民年金保険料を含む社会保険料控除は、確定申告書 第一表の左側下部「所得から差し引かれる金額」の「(13)社会保険料控除」欄に記入します。
確定申告書 第一表

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※国税庁「所得税の確定申告
」
この欄に、1月1日から12月31日までに支払った社会保険料控除の合計額を記載してください。国民年金保険料については、「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」に記載された金額と申告額が同額となっていなければなりません。
確定申告書 第二表
確定申告書 第二表では、右側上部「(13)社会保険料控除(14)小規模企業共済等掛金控除」欄に、社会保険料控除の内訳を記入しましょう。
確定申告書 第二表

-
※国税庁「所得税の確定申告
」
「保険料等の種類」には「国民年金保険料」、「支払保険料等の計」には控除対象になる国民年金保険料の額を記入します。「うち年末調整等以外」は、「給与所得の源泉徴収票」に記載されていない社会保険料控除がある場合に、その額を記入します。個人事業主やフリーランスの場合は、「支払保険料等の計」と同じ金額を記入してください。
確定申告書の書き方については、以下の記事で詳しく解説しています。
社会保険料控除での控除額計算のポイント
確定申告で国民年金保険料の控除を受ける際には、いくつかのポイントがあります。ここでは、3つのポイントについて解説します。
2年前納制度を利用して控除額を調整できる
確定申告で国民年金の保険料の控除を受ける際には、2年前納制度を利用して控除額を調整することができます。2年前納制度とは、国民年金保険料を2年分まとめて納付できる制度です。
2年前納した場合、2年分の「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」がまとめて郵送され、納付した年に2年分まとめて控除を受けるか、それぞれの年に控除を受けるかを選択できます。そのため、所得の多い年に2年分まとめて控除を受けるといった、控除額の調整によって所得税の納税額の調整が可能です。
また、まとめて控除を受けるか、それぞれの年に控除を受けるかは、確定申告のときに選択でき、事前の届出などは必要ありません。なお、国民年金保険料は前納する月数が多くなるほど、1か月あたりの保険料が割り引かれます。納付方法ごとの1か月あたりの保険料は以下のとおりです。
納付方法 | 1か月あたりの保険料 |
---|---|
毎月納付(翌月末振替) | 1万6,520円 |
当月末振替 | 1万6,470円 |
6か月前納 | 1万6,332円 |
1年前納 | 1万6,174円 |
2年前納 | 1万6,079円 |
-
※日本年金機構「国民年金保険料の前納
」を基に作成
家族の国民年金保険料も控除の対象になる
家族の国民年金保険料も控除の対象となる点も、確定申告で国民年金の保険料の控除を受ける際の控除額計算のポイントといえるでしょう。
生計を一にする配偶者や子供などの分の国民年金保険料を納付している人は、家族分の国民年金保険料についても控除を受けることができます。家族の中で誰が納付して、確定申告すると、効果的に節税できるか計算して選ぶとよいでしょう。
一般的には、家族の中で最も課税所得額の大きい人が納付し、控除を受けると節税効果も高まります。
未納分の国民年金保険料を納付したら控除の対象になる
未納分の国民年金保険料を納付した場合、納付した年に社会保険料控除の対象となります。国民年金保険料は、納付期限から2年以内であれば未納分を納付できますが、2年を超えると納付できなくなってしまうので、未納分がある場合は忘れずに納付してください。
また、未納分を納付するタイミングによっては「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」に記載された金額と、実際に納付した金額が合わない可能性もあります。控除証明書の金額を超える金額の国民年金保険料を支払った場合は、保険料の領収書など支払いの根拠になる書類を添付して確定申告してください。
確定申告をして国民年金保険料の控除を受けよう
国民年金保険料は、全額が社会保険料控除の対象です。個人事業主やフリーランスの場合、社会保険料控除を受けるためには、正しく確定申告をすることが重要です。
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
