合同会社の資本金(出資金)はいくらがよい?設立時に決める際のポイントも解説
監修者: 森 健太郎(税理士)
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合同会社を設立する際は、資本金の金額を決める必要があります。合同会社は資本金1円から設立できるものの、あまりにも資本金が少ないと、事業開始後すぐに資金不足に陥ってしまうことになりかねません。
とはいうものの、会社設立時に、多額の資本金を用意するのが難しいケースも多いものです。
会社設立時の適正な資本金の設定は、資金がショートするリスクや、変更手続きの手間を避けることにもつながります。
本記事では、合同会社の資本金の金額の目安や資本金を決める際に押さえておきたいポイント、資本金となる出資金の支払方法についても解説します。
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合同会社の資本金とは社員が出資した資金のこと
合同会社の資本金とは、出資者である社員が出資する資金のことです。
なお、合同会社の社員とは出資者のことで、従業員という意味ではありません。合同会社は所有と経営が一致しているのが特徴で、原則として、社員(出資者)が会社の経営を行います。合同会社は、株式会社のように、株式を発行して第三者から出資を受けることはできません。
合同会社を設立する際には、法務局へ登記申請をする前に、資本金の払込みを行います。一般的には、経営者の自己資金を資本金に充てるケースが多いと言えます。
合同会社の資本金の金額に、法律上の定めはありません。そのため、資本金1円でも合同会社の設立は可能です。
ただし、資本金は、会社が事業を行うための元手資金となるだけでなく、会社の体力や信用度を表す目安にもなります。極端に資本金が少ないと、事業運営や会社の信用に影響を及ぼすおそれもあるため、慎重に金額を検討するようにしましょう。
合同会社設立時の資本金は「100万円未満」が半数程度
総務省「登記の種類別・資本金階級別 会社の資本金の額の変動の件数及び金額」(2025年)によると、設立時に設定する資本金の金額は「100万円未満」という合同会社が半数程度です。資本金の金額は、自社の事業内容や規模に応じて金額を設定されるもので、会社の体力を表すとされています。
以下の表で、一般的な目安を参考として確認しておきましょう。
2025年5月時点での資本金階級別の合同会社設立件数
| 100万円未満 | 100万円以上 | 300万円以上 | 500万円以上 | 1,000万円以上 | 2,000万円以上 | 5,000万円以上 | 1億円以上 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 設立件数 | 1,963件 | 1,188件 | 291件 | 526件 | 22件 | 5件 | 3件 | 0件 |
-
※総務省「登記の種類別・資本金階級別 会社の資本金の額の変動の件数及び金額
」(2025年)
- ※設立合計:3,998社、総金額:61億7,963万円
「会社を設立する際は、数百万円の資本金を用意しなければならない」と考える方もいるかもしれません。しかし、合同会社における設立時の資本金の金額を見てみると、100万円未満の企業が半数程度を占めていることがわかります。また、資本金を300万円未満まで含めると、該当する合同会社の数は全体の約8割にのぼります。
合同会社は資本金が1円あれば設立できる
前述したように、資本金の金額に法律上の定めはないため、合同会社は資本金が1円以上あれば設立可能です。
しかし、資本金が低すぎると、店舗やオフィスを借りる際の契約料や、備品の購入費用などが不足するリスクもあります。さらに、資本金の額は定款や登記事項証明書に記載されて誰でも見られるため、会社の信用にも関わります。
また資本金が極端に低すぎると、取引先や金融機関から、会社の体力がないと判断されてしまうかもしれません。場合によっては、金融機関から希望する額の融資を受けられなかったり、融資そのものを断られたりする可能性もあります。
このようなリスクを踏まえ、会社設立時には、事業運営や資金調達に支障をきたさないような金額の資本金を設定することが大切です。法律上可能だからとはいえ、資本金1円で合同会社を設立するのは、あまり現実的でないと言えるでしょう。
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合同会社における資本金の金額を決める方法
資本金は事業の元手となるほか、許認可の取得や融資の審査、税金の額などにも影響します。合同会社の資本金を決める際には、以下のようなポイントを考慮しましょう。
合同会社の資本金の金額を決める方法
- 初期費用+運転資金6か月分を目安に資本金の金額を設定する
- 許認可や融資の要件に資本金の金額が含まれていないかをチェックする
- 課税額を考慮して資本金の金額を決める
初期費用+運転資金6か月分を目安に資本金の金額を設定する
資本金を決める際に基準となるのが、初期費用と運転資金です。一般的には、初期費用と運転資金6か月分を合計した金額が、資本金の目安とされています。
初期費用とは、事業を始めるために必要になる費用のことです。具体的には、登録免許税をはじめとする設立費用や、店舗・事務所の敷金・礼金のほか、デスク、パソコン、専用ソフトなど事業に必要な機器といった設備費、Webページやチラシといった広告宣伝費などが、初期費用に該当します。
また、運転資金とは、事業を運営していくうえで継続的にかかる費用のことで、仕入代や、店舗・事務所の家賃、人件費、通信費、水道光熱費、消耗品代などがあげられます。会社を設立した直後は、売上が思うように安定しないことも多く、最初の半年間ほどは赤字が続く場合もあるかもしれません。
売上が安定していない間も経費は発生するため、資本金が少なすぎると、すぐに資金がショートしてしまいます。そのような事態を避けるためには、初期費用に6か月分の運転資金を足した金額を、資本金として用意するとよいでしょう。
なお、必要な初期費用や運転資金は、業種、事業規模、従業員の有無、事業の見通しなどによって変わります。
例えば、事業が軌道に乗るまでに時間がかかると考えられる場合には、6か月分とは言わず、1年分くらいの運転資金を資本金として用意する方がいいかもしれません。自社の事業の初期費用と運転資金を確認してから、必要な金額を計算してください。
資本金の平均額については以下の記事を併せてご覧ください。
なお、合同会社を設立する際の資本金はいくらがよいのかについては、こちらの動画でも解説しているため、合同会社の設立を検討している方は参考にしてみてください。
許認可や融資の要件に資本金の金額が含まれていないかをチェックする
業種によっては、事業を始めるにあたって、行政機関への許認可申請が必要になります。この際、許認可を受けるための要件に資本金の金額が含まれることもあるため、注意が必要です。
許認可の取得要件に最低資本金が定められている場合には、必ずその金額以上の資本金を設定しましょう。資本金の金額が要件に含まれる許認可には、主に次のようなものがあります。
業種別許認可で決められている資本金の最低金額例
| 業種 | 資本金の最低金額 |
|---|---|
| 一般建設業 | 500万円 |
| 貨物利用運送業 | 300万円 |
| 第一種旅行業 | 3,000万円 |
| 第二種旅行業 | 700万円 |
| 第三種旅行業 | 300万円 |
| 有料職業紹介業 | 500万円×事業所数の金額 |
| 一般労働者派遣事業 | 2,000万円×事業所数の金額 |
また、資本金の金額は、金融機関の融資要件に含まれていることもあります。
たとえ要件に含まれていない融資制度でも、資本金が少ないと「会社の体力に不安がある」と見なされ、希望どおりの融資が受けられないかもしれません。一般的に、創業時に許認可を受けられる融資額の目安は、自己資金の3倍から、多くとも4倍程度とされています。
許認可については以下の記事を併せてご覧ください。
課税額を考慮して資本金の金額を決める
資本金の金額は、登録免許税や消費税、法人住民税、法人税、法人事業税といった、税金の額にも影響します。資本金が影響する税金の種類と主な内容について、以下の表にまとめました。
合同会社の資本金の金額が影響する税金
| 税金の種類 | 資本金の金額 | 影響 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | およそ857万円以下 | 登録免許税は、「資本金額×0.7%」か「6万円」のどちらか高い金額になるため、資本金がおよそ857万円以下なら一律6万円となる。 |
| 消費税 | 1,000万円未満 | 資本金を1,000万円未満で会社を設立すると、原則として設立1期目と2期目の消費税が免除される。ただし、2期目に関しては、1期目の前半6か月の課税売上高または人件費(役員報酬含む)が1,000万円を超えると消費税の納付義務が生じる。 なお、2023年10月から開始された適格請求書等保存形式(インボイス制度)に伴い、会社設立と同時に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合は課税事業者となるため、免除されない。 |
| 法人住民税 | 1,000万円以下 | 赤字でも納める義務のある、法人住民税の均等割は、資本金の金額によって課税額が変わる。 自治体によっても金額は異なるが、東京都23区で従業員50人以下の会社の場合、資本金1,000万円以下なら均等割の年額は7万円、資本金1,000万円超なら均等割の年額は18万円となる。 |
| 法人税 | 1億円以下 | 資本金1億円以下の会社で、所得が800万円を超える場合、所得800万円超の部分の税率は23.2%、800万円以下の部分は税率15%。 資本金1億円を超えると、所得金額にかかわらず、法人税の税率は一律23.2%となる。 |
| 法人事業税 | 1億円以下 | 資本金1億円以下なら法人事業税の外形標準課税が免除される。資本金1億円を超えると、赤字でも外形標準課税は課税される。 |
- ※2025年8月時点
一般的には、資本金の金額が高くなると、納める税金も高くなります。会社設立後の税負担をできるだけ抑えるためには、初期費用と運転資金を算出したうえで、課税額をシミュレーションしてみるとよいでしょう。
合同会社の資本金が税金に与える影響について詳しく知りたい場合には、税理士に相談するのも1つの方法です。税理士に相談すると、資本金のほか、役員報酬の設定や資金繰りなどについてもアドバイスがもらえます。
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合同会社の資本金となる出資金を支払う方法
合同会社の資本金となる出資金を支払うには、「現金出資」と「現物出資」という2種類の方法があります。現金出資と現物出資は併用も可能です。その場合は、両方を合計した金額が、資本金の額ということになります。
では、それぞれどのような方法なのか、詳しく見ていきましょう。
現金出資:代表者の口座に出資金を振り込む方法
現金出資とは、金銭で出資をする方法のことです。一般的には、合同会社の出資金は現金出資であることが多いと言えます。
現金出資の場合は、資本金として決めた金額を、代表者の口座に払込みます。資本金を払込むタイミングは、法務局へ法人設立登記の申請をする前です。この時点では、まだ会社の登記が完了しておらず、会社名義の口座は作れないため、振込先は代表者の個人口座になります。
1人で合同会社を設立する場合も、自分の口座への払込みが必要です。代表者の口座に資本金と同額以上の残高があるだけでは、資本金の払込みとは認められないため注意しましょう。登記申請にあたっては、資本金を払込んだ通帳のコピーを払込証明書に添付して提出してください。
なお、合同会社の場合は株式会社と異なり、出資者から現金で資本金を受領することも認められています。その場合は、通帳のコピーの代わりに、代表者が作成した領収書が払込みの証明となります。
資本金の払込証明書については以下の記事を併せてご覧ください。
現物出資:資産の評価額を定めることで出資金の金額を決める方法
現物出資とは、金銭以外の財産を出資する方法のことです。出資する財産の評価額を定め、その額を出資金額とします。
合同会社の資本金は現金出資で用意されることが一般的ですが、少ない資金で会社を設立する場合や、許認可や融資の要件を満たすために資本金を増やしたい場合などに、現物出資が利用されることがあります。
現物出資として認められるのは、譲渡が可能で、貸借対照表に資産として計上できる財産です。具体的には、自動車、不動産、機械設備、パソコンなどが該当します。
現物出資する財産の評価方法は、登記上の規定はありませんが、不動産については鑑定評価額を下回ることはできません。また、現物出資された資産の価額が合計500万円を超える場合は、検査役と呼ばれる専門家の調査が必要になります。
なお、資本金を現物出資で支払う場合には、登記申請の際、払込証明書に加えて、出資された財産の評価額や所有権移転を証明する書類も提出が必要です。
現物出資については以下の記事を併せてご覧ください。
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合同会社の設立手続きを手軽に行う方法
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合同会社の資本金は決めるためのポイントを考慮して設定しよう
資本金は、事業の元手であると同時に、会社の体力や信用を測る指標にもなります。合同会社の資本金を決める際は、以下のようなポイントを考慮して決めることをおすすめします。
例えば、合同会社は資本金1円から設立できますが、あまりにも資本金が少なすぎると、事業運営に支障をきたしたり、希望どおりの融資が受けられなかったりするかもしれません。思うように売上が上がらなかった際のことも考えて、会社設立時には、初期費用と運転資金の6か月分を目安に資本金を準備してください。
また、資本金は、許認可の要件や税金などとも密接な関わりがあります。自社の状況に合わせて、適切な金額の資本金を設定してください。自己資金が足りない場合は、現金出資だけでなく現物出資を検討するのも1つの方法です。
合同会社の設立にあたっては、資本金の設定の他にも、定款の作成や法人設立登記申請など、さまざまな手続きが必要になります。スムーズに設立手続きを進めるには、「弥生のかんたん会社設立」の活用がおすすめです。便利なクラウドサービスを利用して設立手続きの手間を省けば、事業の準備にも集中しやすくなるでしょう。
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よくあるご質問
合同会社の資本金の平均金額はいくら?
総務省「登記の種類別・資本金階級別 会社の資本金の額の変動の件数及び金額」(2025年5月)によると、2025年5月の合同会社の設立件数は3,998社、資本金の総金額は61億7,963万円です。ここから資本金の平均金額を求めると、約155万円になります。
また、新たに設立された合同会社のうち、資本金が100万円未満の会社は半数程度です。資本金300万円未満の会社まで含めると、全体の約8割に及びます。
合同会社の資本金については、詳しくはこちらをご確認ください。
合同会社の資本金を決める方法は?
合同会社の資本金を決める際には、初期費用と運転資金6か月分を目安に金額を設定するといいでしょう。
許認可が必要な事業や融資の申請を希望する場合には、それぞれの要件に資本金の金額が含まれていないかをチェックすることも大切です。
さらに、資本金の金額は、登録免許税や消費税、法人住民税、法人税、法人事業税といった税金の額に影響します。会社設立後の税負担をできるだけ抑えるためには、資本金と税金の関わりを確認し、課税額をシミュレーションするのがポイントです。
合同会社における資本金の金額を決める方法については、詳しくはこちらをご確認ください。
合同会社の資本金の支払方法は?
合同会社の資本金を払込む方法には、金銭で出資をする「現金出資」と、金銭以外の財産を出資する「現物出資」の2種類があります。
現金出資の場合は、一般的に、代表者の口座に現金を払込みます。
また、現物出資の場合は、出資する財産の評価額を定め、その額を出資金額とします。現物出資として認められる財産は、自動車や不動産、機械設備など、譲渡が可能で、貸借対照表に資産として計上できるものです。
合同会社の資本金となる出資金を支払う方法については、詳しくはこちらをご確認ください。
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この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネルを運営。