保育園を開業するには?認可外保育施設の届出や個人事業主での開業を解説
監修者: 高崎 文秀(税理士)
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保育園には、認可を受けた「認可保育所」と、認可を受けていない「認可外保育施設」の2種類があり、運営主体に求められる要件が異なります。認可外保育施設は個人事業主でも開業できますが、開業後の届出が義務付けられています。本記事では、開業要件や手続きの流れ、指導監督基準、法人化のメリット、費用を解説します。
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保育園には「認可保育所」と「認可外保育施設」の2種類がある
保育園を開業する際は、国や自治体の認可を受けているかどうかで、運営主体に求められる要件が大きく異なります。ここでは、届出だけで開業できる認可外保育施設と、原則として法人でなければ運営できない認可保育所という2つの区分について、それぞれの特徴を解説します。
認可外保育施設は開業後1ヶ月以内に届出義務がある
保育ルームやベビーシッター、企業主導型保育など、認可を受けていない形態の保育施設は「認可外保育施設」と呼ばれ、個人事業主でも開業することができます。ただし、児童福祉法第59条の2に基づき、事業を開始した日から1ヶ月以内に、施設の所在地を管轄する都道府県知事等へ届出を行う義務があります。
届出を怠った場合は、過料の対象となる可能性があるため注意が必要です。開業してから慌てて手続きをするのではなく、事業を始める前の段階で、届出に必要な書類や提出先を確認しておくとよいでしょう。
児童福祉法第59条の2第1項に基づく届出に関する通知・事務連絡がまとめられており、認可外保育施設の設置者に事業開始後の届出義務が定められていることが示されています。
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※参照:こども家庭庁「認可外保育施設に関する通知・事務連絡等
」
認可保育所は原則法人でなければ運営できない
一方、認可保育所は、児童福祉法に基づいて都道府県知事等の認可を受けた施設であり、運営主体は社会福祉法人や株式会社、学校法人など、法人であることが原則となっています。認可を受ける際は、施設の設備基準や職員配置基準を満たしたうえで、都道府県知事等による審査を経る必要があり、個人が単独で申請するしくみは想定されていません。
認可保育所の運営主体のうち社会福祉法人が86.9%を占めていることが示されており、個人が認可保育所を運営するケースは想定されていません。
そのため、個人事業主のまま保育園の開業を目指す場合は、まず認可外保育施設として開業し、事業の拡大や実績づくりに併せて法人化を検討するという流れが現実的といえるでしょう。将来的に認可保育所への移行を視野に入れているのであれば、早い段階から法人化のタイミングを意識しておくことをおすすめします。
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※参照:厚生労働省「経営主体等に関する社会福祉法と主な社会福祉関係各法の規定
」
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個人事業主として認可外保育施設を開業する場合の要件
認可外保育施設として保育園を開業する場合、個人事業主でも始められますが、いくつか押さえておきたい要件があります。ここでは、保育士資格の要否と、開業届の提出という2つのポイントについて解説します。
保育士資格は必須ではないが従事者の3分の1以上は有資格者が必要
保育ルームやベビーシッター業を営む場合、保育士資格は法律上必須の要件ではなく、資格を持たない個人事業主でも開業することが可能です。「保育の仕事に携わりたいが保育士資格を持っていない」という方でも、認可外保育施設という形であれば開業を目指せます。
ただし、認可外保育施設指導監督基準では、1日に保育する乳幼児の数が6人以上等の施設について、保育に従事する者のおおむね3分の1以上が保育士や看護師などの資格保有者であることが求められています。開業にあたっては、自身が保育士資格を持っているかどうかにかかわらず、有資格者をどのように配置するかをあらかじめ検討しておく必要があります。採用計画を立てる段階から、有資格者の人数比率を意識しておくとよいでしょう。
開業届の提出と職業欄・事業概要欄の書き方
保育園を個人事業主として開業する場合は、税務署への開業届の提出に加えて、都道府県等への「認可外保育施設設置届出書」の提出も必要になります。開業届と認可外保育施設設置届出書は提出先が異なるため、どちらか一方で済ませないよう注意しましょう。
開業届の事業の概要欄には、「認可外保育施設の運営」など、第三者が読んでも事業内容がわかるように具体的に記載することが望ましいとされています。職業欄についても、「保育業」「保育サービス業」など、事業の実態に即した記載を心がけましょう。記載内容があいまいだと、金融機関への口座開設や融資の相談などの際に、事業内容が伝わりにくくなることもあるため注意が必要です。
以下の記事でも詳しく解説しています。
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認可外保育施設の開業手続きの流れ
認可外保育施設として保育園を開業するまでの流れを、STEP1からSTEP3の3段階に分けて解説します。施設・設備の準備から、開業後の巡回指導への対応まで、開業前後に必要な対応を押さえておきましょう。
STEP1|施設・設備を準備し指導監督基準を確認する
保育園の開業準備では、まず施設や設備を整えながら、認可外保育施設指導監督基準を満たしているかどうかを確認します。準備しておきたい主な事項は、以下のとおりです。
- 保育室の面積基準を満たしていること
- 転落防止柵の設置など、乳幼児の安全に配慮した対策を行っていること
- 保育に従事する者のうち、有資格者を必要な人数配置していること
- 保護者に向けた重要事項説明書を作成していること
これらの指導監督基準を満たしていない状態で開業してしまうと、開業後に自治体から行われる巡回指導の際に、是正指導を受ける可能性があります。開業前の内装工事や人員体制を検討する段階から、基準を意識して準備を進めることが大切です。物件を契約する前に、管轄の自治体へ基準の詳細を確認しておくと、工事のやり直しなどの手戻りを防ぎやすくなります。
STEP2|開業届と認可外保育施設設置届出書を提出する
施設・設備の準備が整ったら、税務署への開業届と、都道府県等への認可外保育施設設置届出書をそれぞれ提出します。前述のとおり、この2つの届出は提出先も提出書類も異なるため、それぞれ独立した手続きとして進める必要があります。
認可外保育施設設置届出書の提出時には、保育に従事する者の資格を証明する書類の写しなど、複数の添付書類が必要になります。事前に管轄の自治体へ、必要書類の内容や部数を確認しておくと、手続きをスムーズに進めることができるでしょう。提出後は、届出内容に変更が生じた場合の変更届についても、併せて確認しておくと安心です。
STEP3|巡回指導への対応
保育園の開業後は、自治体による巡回指導(立入調査)が定期的に行われます。巡回指導では、届出時に確認された設備基準や職員配置などが、実際の運営でも維持されているかどうかがチェックされます。
開業してからあわてて対応するのではなく、日ごろから帳簿の整備状況や設備基準の維持を意識しておくことが大切です。指導監督基準を満たした状態を継続できるよう、開業後も定期的に自主点検を行う体制を整えておきましょう。巡回指導で指摘を受けた場合は、指示された期限までに是正し、改善状況を報告する必要があります。
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認可外保育施設指導監督基準を満たす
認可外保育施設として運営を続けるためには、設備基準と運営基準という2つの側面から、指導監督基準を満たしておく必要があります。それぞれの基準について詳しく見ていきましょう。
設備基準(転落防止柵等の安全対策)
認可外保育施設の設備基準では、保育室の面積基準を満たすことに加えて、転落防止柵の設置や避難経路の確保など、乳幼児の安全を守るための対策が求められます。特に階段や窓、ベランダなど、転落のリスクがある箇所については、柵や安全ガードの設置が欠かせません。
こうした設備基準は、開業してから対応しようとすると、内装の変更や工事のやり直しが必要になる場合があります。物件選びや内装工事の段階から、安全対策を織り込んだ設計を意識しておくことが大切です。賃貸物件を利用する場合は、契約前にオーナーへ工事の可否を確認しておくとよいでしょう。
運営基準(帳簿整備・重要事項説明等)
運営基準としては、保育の内容や職員の配置状況などを記録した帳簿の整備、保護者に対する重要事項説明などが定められています。帳簿には、日々の保育内容や児童の出欠状況、職員の勤務状況などを継続的に記録しておく必要があります。
これらの基準を満たしていない状態が続くと、自治体による指導の対象になる可能性があります。日々の記録や説明対応を後回しにせず、開業当初から運営のしくみとして定着させておくことが、安定した施設運営につながります。重要事項説明書は、料金や保育方針などを保護者が事前に理解できるよう、分かりやすい内容にまとめておきましょう。
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法人化するメリット
個人事業主として認可外保育施設を開業した後、事業の拡大に併せて法人化を検討するケースもあります。ここでは、認可保育所や企業主導型保育を目指す場合の法人格の必要性と、助成金申請における有利さについて解説します。
認可保育所を目指すなら法人格が必須
認可保育所を目指す場合には、法人格を持っていることが必須の条件となります。個人事業主のままでは、認可保育所を運営することはできません。
また、利用定員6名以上等の企業主導型保育事業を目指す場合も、社会保険の適用事業所であることが助成要件となるため、個人事業主のままよりも法人化しておいた方が手続きや信用面で有利になります。
そのため、まずは個人事業主として小規模な認可外保育施設からスタートし、事業が軌道に乗って規模を拡大するタイミングで法人化を検討するという進め方も選択肢の1つです。将来的な事業展開の方向性に応じて、法人化のタイミングを見極めましょう。開業当初から認可保育所を目指すのか、認可外保育施設として運営を続けるのかによって、必要な準備も変わってきます。
助成金申請での有利さ
企業主導型保育事業には、整備費や運営費に対する助成金制度が設けられています。こうした助成金の申請にあたっては、個人事業主よりも法人の方が、申請や信用面で有利とされる傾向があります。金融機関からの資金調達や、取引先との契約においても、法人の方が信用を得やすい場面は少なくありません。
助成金をうまく活用できれば、開業時にかかる初期費用の負担を軽減できる可能性があります。法人化を検討する際は、助成金の活用可能性も併せて確認しておくとよいでしょう。制度の詳細や申請要件は変更される場合があるため、申請前には最新の情報を確認することをおすすめします。
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保育園開業にかかる費用
個人事業の開業届そのものの提出にかかる費用については、既存の記事で詳しく解説しているため、ここでは保育園の開業に特有の費用要素について取り上げます。
内装安全対策費・人件費が主なコストになる
保育園を開業する際にかかる費用のうち、特に大きな割合を占めるのが、内装の安全対策費と人件費です。物件取得費や備品費と併せて、開業前の段階でどの程度の費用が必要になるかを見積もっておくことが欠かせません。主な費用の内訳は、以下のとおりです。
- 転落防止柵の設置など、安全対策を含む内装費用
- 保育士等の人件費(有資格者を3分の1以上配置する要件に伴うコスト)
- 認可外保育施設の届出手続きに伴う書類整備費
これらの費用に加えて、企業主導型保育事業を目指す場合は、整備費・運営費の助成金を活用することで、初期費用の負担を抑えられる可能性があります。ただし、助成を受けるにあたっては「保育従事者の半数以上が保育士資格を有していること」が要件となるため、一般的な認可外保育施設(有資格者3分の1以上)よりも保育士の確保・人件費コストが高くなる点に注意が必要です。
開業前の資金計画を立てる際は、こうした保育施設特有の要件や費用項目を織り込んでおくことが重要です。
なお、開業届自体の提出には費用がかからない一方で、郵送で提出する場合の郵送費や、税理士に依頼する場合の費用など、手続きに付随して発生する費用もあります。開業届の費用について詳しく知りたい方は、以下も併せてご確認ください。
以下の記事でも詳しく解説しています。
会社設立の手続きをスムーズに進める
事業の拡大に併せて法人化を検討する場合、定款の作成や登記申請など、手続きが煩雑になりがちです。特に、認可保育所や企業主導型保育への移行を見据えて法人化する場合は、通常の会社設立に加えて保育事業特有の準備も並行して進める必要があり、負担が大きくなりやすい点にも注意が必要です。専門のサービスを活用することで、こうした手続きの負担を軽減することができます。
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認可外保育施設の届出を確実に行って保育園の開業を進めよう
保育園には、原則として法人でなければ運営できない認可保育所と、個人事業主でも開業できる認可外保育施設があります。認可外保育施設として保育ルームやベビーシッター業を始める場合は、事業を開始した日から1ヶ月以内に、都道府県等への届出を行う義務がある点を忘れないようにしましょう。
事業の拡大に併せて法人化を検討する際は、専門のサービスを活用することで、手続きの負担を軽減できます。
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よくあるご質問
認可外保育施設の届出はいつまでに必要ですか?
認可外保育施設は、児童福祉法第59条の2に基づき、事業を開始した日から1ヶ月以内に、施設の所在地を管轄する都道府県知事等へ届出を行う義務があります。届出を怠った場合は、過料の対象となる可能性があるため注意が必要です。詳しくはこども家庭庁「認可外保育施設に関する通知・事務連絡等」をご確認ください。
保育士資格がなくても開業できますか?
保育ルームやベビーシッター業を営む場合、保育士資格は法律上必須の要件ではなく、資格を持たない個人事業主でも開業することが可能です。ただし、認可外保育施設指導監督基準では、1日に保育する乳幼児の数が6人以上等の施設について、保育に従事する者のおおむね3分の1以上が保育士や看護師などの資格保有者であることが求められています。詳しくはこちらをご確認ください。
保育園開業にはどのような費用がかかりますか?
保育園を開業する際にかかる費用のうち、特に大きな割合を占めるのが、内装の安全対策費と人件費です。転落防止柵の設置など安全対策を含む内装費用、保育士等の人件費、認可外保育施設の届出手続きに伴う書類整備費が主な内訳になります。詳しくは「【起業したい】個人事業の開業届の費用はいくら?支払いが発生するケースも解説」をご確認ください。
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この記事の監修者高崎 文秀(税理士)
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役。早稲田大学理工学部応用化学科卒。
都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業。現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行う。