開業届の事業の概要の書き方は?職業欄の具体例や注意点も解説
監修者: 森 健太郎(税理士)
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個人事業主として開業する際は、税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書(以降、開業届)」を提出します。このとき迷いやすいのが、開業届の職業欄と事業の概要欄の書き方です。
項目の違いや具体的な書き方がわからず、戸惑ってしまう方も多いかもしれません。また、開業届に記載した職業は、個人事業税の税率や課税の有無ともかかわりがあるため、注意が必要です。
本記事では、開業届の職業・事業の概要欄に記載する内容を、書き方の具体例や注意点と共に、個人事業税との関係についても解説します。
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開業届の職業・事業の概要欄とは、開業する職業・事業を記載する欄
開業届の職業欄や事業の概要欄とは、「個人事業主としてどのような職業・事業を開始するか」を記載する欄のことです。
職業欄には開業後の具体的な職業名を書き、事業の概要欄では職業欄に書いた職業をより詳しく説明します。同じ職業に関することであっても、記載すべき内容に違いがあるため注意しましょう。
職業欄や事業の概要欄の書き方には、明確なルールはありません。ただし、これらの欄に記入した内容は個人事業税にもかかわるため、客観的に見てわかりやすいように書くことが大切です。
開業届の職業欄・事業の概要欄
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※出典:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続
」
職業欄には開業後に行う職業(業種)を書く
職業欄には、開業後に従事する職業(業種)を記載します。
「飲食業」「小売業」「コンサルティング業」「美容業」など、シンプルな記載内容で問題ありません。また、「Webデザイナー」「システムエンジニア」「ライター」などと、より具体的な職種を記載してもよいでしょう。
もし書き方に迷った場合は、総務省の「日本標準産業分類」を参考にするのも1つの方法です。「日本標準産業分類」では、主に次のような業種があげられています。
日本標準産業分類(大分類)
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A
農業、林業
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B
漁業
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C
鉱業、採石業、砂利採取業
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D
建設業
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E
製造業
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F
電気・ガス・熱供給・水道業
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G
情報通信業
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H
運輸業、郵便業
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I
卸売業、小売業
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J
金融業、保険業
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K
不動産業、物品賃貸業
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L
学術研究、専門・技術サービス業
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M
宿泊業、飲食サービス業
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N
生活関連サービス業、娯楽業
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O
教育、学習支援業
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P
医療、福祉
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Q
複合サービス事業
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R
サービス業(他に分類されないもの)
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S
公務(他に分類されるものを除く)
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T
分類不能の産業
なお、開業届の職業欄に記載する内容は、個人事業税とかかわりがあります。個人事業税については、後ほど詳しく解説します。
事業の概要欄では職業欄に書いた内容をより具体的に説明する
事業の概要欄には、職業欄に書いた内容をより詳しく記載します。
例えば、職業欄が飲食業なら「居酒屋の経営」、Webデザイナーなら「Webページのデザイン制作、Web広告の作成」、システムエンジニアなら「システムの設計、プログラミング、保守対応」というように、事業の内容をできるだけ具体的に記入しましょう。
開業届の書き方についてはこちらの記事も併せてご覧ください。
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開業届の職業欄は個人事業税に影響がある
開業届の職業欄の内容は、個人事業税の有無や税率に影響します。
個人事業税とは、個人が営む事業のうち、法律で定められた業種(法定業種)にかかる地方税です。個人事業税の課税対象になるかどうかは、「職業(業種)」の内容によって変わります。
個人事業税の税率は職業(業種)によって変わる
個人事業税の対象になる業種は70種類です。以下のように、税率は事業の種類によって異なります。
個人事業税が課税される業種
| 区分 | 業種 | 税率 |
|---|---|---|
| 第1種事業 | 物品販売業、保険業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、電気供給業、土石採取業、電気通信事業、運送業、運送取扱業、船舶定係場業、倉庫業、駐車場業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理店業、飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、両替業、公衆浴場業(むし風呂等)、演劇興行業、遊技場業、遊覧所業、商品取引業、不動産売買業、広告業、興信所業、案内業、冠婚葬祭業 | 5% |
| 第2種事業 | 畜産業、水産業、薪炭製造業 | 4% |
| 第3種事業 | 医業、歯科医業、薬剤師業、獣医業、弁護士業、司法書士業、行政書士業、公証人業、弁理士業、税理士業、公認会計士業、計理士業、社会保険労務士業、コンサルタント業、設計監督者業、不動産鑑定業、デザイン業、諸芸師匠業、理容業、美容業、クリーニング業、公衆浴場業(銭湯)、歯科衛生士業、歯科技工士業、測量士業、土地家屋調査士業、海事代理士業、印刷製版業 | 5% |
| あんま・マッサージまたは指圧・はり・きゅう・柔道整復・その他の医業に類する事業、装蹄師業 | 3% |
-
※出典:都庁総合ホームページ「個人事業税
」
なお、個人事業税には、290万円の事業主控除があります。そのため、上記の業種に該当する事業であっても、売上から経費などを引いた所得金額が290万円以下であれば、個人事業税はかかりません。
個人事業税がかからない職業(業種)もある
上記の法定業種に該当しない場合、個人事業税は課税されません。個人事業税の課税対象とならないのは、以下のような業種があります。
個人事業税の課税対象とならない業種
- プログラマー
- 作曲家
- ライター
- 通訳 など
なお、個人事業税がかかるかどうかは、最終的には確定申告書の職業欄を基に判断されます。そのため、開業届の提出後に職業(業種)が変更になっても、確定申告書に正しい職業を記載すれば問題ありません。
個人事業税のかかる業種の取り扱いは住所地のある自治体によって変わるため、気になる方は自治体のホームページで確認してください。
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事業の概要欄は事業内容がわかるように書く
開業届の職業欄と事業の概要欄は、以下の記入例のように、事業内容がわかるように記載しましょう。個人事業主によく見られる業種を中心に、職業・事業の概要欄について、いくつか具体的な記入例をあげます。
職業・事業の概要欄の記入例
| 職業 | 事業の概要 |
|---|---|
| 飲食業 |
|
| 小売業 |
|
| Webデザイン業 |
|
| コンサルタント業 |
|
| 学習支援業 |
|
| システムエンジニア |
|
| 文筆業 |
|
なお、上の表の例にある職業のうち、個人事業税の課税対象になるのは、飲食業、小売業、Webデザイン業、コンサルタント業、学習支援業です。学習塾や各種教室は、法定業種のうち「諸芸師匠業」に該当します。
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事業の概要欄を書く際の注意点
事業の概要欄には、職業欄に記載した業種をより具体的に書く必要があります。あまり難しく考えなくても問題ありませんが、以下のような場合は、事業の概要欄の記載内容に注意しましょう。
事業の概要欄記載時の注意点
- 事業の概要で書いた内容に変更があった場合
- 複数の事業で収入があった場合
事業の概要で書いた内容に変更があった場合
開業届の提出後、職業や事業の概要に変更があった場合でも、修正手続きや再提出は不要です。
この場合は、確定申告の際に、確定申告書の「職業」欄へ変更後の内容を記載しましょう。税務署は確定申告書で職業(事業)を判断できるため、正しく課税できます。
複数の事業で収入があった場合
複数の事業で収入がある場合は、事業の概要欄にはすべての事業について記載します。なお、職業欄には、メインとなる事業を1つ記載するだけで問題ありません。
例えば、「経営コンサルタントの収入がメインだが、その知識を活かしてWebページの記事執筆も行っている」という場合には、開業届の職業欄は「コンサルティング業」と記載し、事業の概要欄には「中小企業を対象とした経営コンサルティング、Webページの記事執筆」などと併記してください。
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開業届の作成などの開業手続きを手軽にする方法
開業届は、職業欄や事業の概要欄など、それぞれ項目を考慮しながら記載しなければなりません。また、開業時には、開業届の作成以外にも行うべき作業が多くあります。そのような開業手続きを手軽に行いたい場合には、「弥生のかんたん開業届」がおすすめです。
「弥生のかんたん開業届」は、画面の案内に沿って必要事項を入力するだけで、個人事業主の開業時に必要な書類を自動生成できる無料のクラウドサービスです。パソコンでもスマホでも利用でき、ステップごとに入力情報が保存されるため、隙間時間にデバイスを切り替えながら使用できます。
さらに、開業届だけでなく、青色申告承認申請書や給与支払事務所等の開設届出書など、その他の開業時に提出する書類の作成時にも利用できます。忙しい創業時期にまとまった時間を割けない方でも、「弥生のかんたん開業届」を利用すれば、必要書類をスムーズに作成できるため安心です。
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開業届の職業・事業の概要欄は、適切にわかりやすく書こう
開業届の職業欄は、開業後にどのような事業を行うかを記載する欄です。また、事業の概要欄には、職業欄に書いた内容をより具体的に記載します。職業欄の内容は個人事業税にも影響するため、適切にわかりやすく書くことが大切です。
また、開業届には、職業欄や事業の概要欄の他にも、多くの記入項目があります。スムーズに事業を開始するためにも、「弥生のかんたん開業届」を活用して、開業手続きの手間を軽減しましょう。
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よくあるご質問
開業届の事業の概要欄には何を書けばよい?
開業届の事業の概要欄には、職業欄で書いた内容をより具体的に記載します。
例えば、職業欄が飲食業なら「居酒屋の経営」、Webデザイナーなら「Webページのデザイン制作、Web広告の作成」、システムエンジニアなら「システムの設計、プログラミング、保守対応」というように、事業の内容をできるだけ具体的に記入するとよいでしょう。
職業欄に書く内容ついては、詳しくはこちらをご確認ください。
事業の概要欄の書き方の例は?
例えば、職業欄が飲食業の場合、事業の概要欄には「カフェの経営」「ラーメン店の経営」「持ち帰り用の弁当・総菜の店舗販売」などと書きます。また、小売業の場合は、事業の概要欄に「食品・食材の店舗販売」「子供服の店舗販売」などと書くとよいでしょう。
いずれの場合も、第三者が見てもわかりやすいように、客観的かつ具体的に書くことが大切です。
事業の概要欄に書く内容については、詳しくはこちらをご確認ください。
職業が複数ある場合の事業の概要欄の書き方は?
複数の事業で収入を得ている場合は、事業の概要欄にはすべての事業について記載します。なお、職業欄は、収入が最も多いメインとなる事業を1つ書けば問題ありません。例えば、「経営コンサルタントの収入がメインだが、その知識を活かしてWebサイトの記事執筆も行っている」という場合は、職業欄に「コンサルティング業」、事業の概要欄に「中小企業を対象とした経営コンサルティング、Webサイトの記事執筆」などと書きます。
事業の概要欄を書く際の注意点については、詳しくはこちらをご確認ください。
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この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネルを運営。