賃金とは?労働基準法の定義や給料との違い、原則違反時の罰則を解説

2024/03/01更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

賃金は、企業などが労働の対償として従業員に支払うものです。労働基準法では、賃金に関するさまざまなルールが定められています。そのため、賃金にかかわるルールを守らないと労働基準法違反となり、罰則の対象になることもあります。従業員を雇用する以上は、賃金の定義や支払い方法などを正しく理解しておかなければなりません。

ここでは、労働基準法における賃金の定義や、雇用主が知っておくべき賃金のルール、支払い方法の他、賃金の原則に違反した場合の罰則について解説します。

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賃金とは労働の対償として支払うすべてのもの

賃金とは、労働の対償として企業などが従業員に支払うすべてのものを指します。労働基準法第11条では、「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定義しています。基本給や時間外手当の他、住宅手当や家族手当といった該当する従業員にのみ支払われる手当も、労働協約、就業規則、賃金規程、労働契約などによって支給条件が定められていれば、すべて賃金に該当します。

労働契約を結ぶ際には、企業は労働者に対して、賃金の額や支払い方法について書面(労働条件通知書)で明示しなければなりません。

また、就業規則にも、賃金の決め方や計算方法、支払い方法などについて記載する必要があります。特に、常時10人以上の従業員を雇用する場合は、就業規則を作成して労働基準監督署へ届け出ることが義務付けられています。なお、賃金については詳細な取り決めが必要になるため、就業規則とは別に賃金規程(給与規程)を作成することも可能です。

労働条件通知書についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

法律の違いによる賃金の定義

同じ賃金でも、労働基準法と所得税法では、やや取り扱いが異なります。これは、労働基準法が労働者の保護を目的としているのに対して、所得税法は個人の所得に対する公平な課税を目的としているからです。

所得税法第28条では、「給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう」と定めています。例えば、役員報酬は労働基準法上の賃金には該当しませんが、所得税法では給与所得として扱われます。

また、賃金に該当する各種手当は、基本的に給与所得にも該当しますが、一定額以下の通勤手当や宿直手当などは所得税が非課税となります。

通勤手当についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

賃金と給料、額面、手取りの違い

賃金についてよく聞かれる疑問が、給料や額面、手取りとの違いです。それぞれ意味が異なるため、きちんと理解せずあいまいなまま使用していると、思わぬトラブルを招くことにもなりかねません。ここでは、それぞれの違いについて解説します。

給料
給料とは、一定期間働くことで、毎月決まった金額が支給されるものです。
額面
額面とは、一般的に基本給に時間外手当や通勤手当などの各種手当を含めた、賃金の総額のこと。給与明細では、一般的に「総支給金額」として記載されます。
手取り
手取りとは、額面から社会保険料や源泉所得税、住民税などを差し引いた金額を指します。給与明細には「差引支給額」として記載されることが多く、この手取りが実際に従業員の受け取る金額になります。

社会保険料、源泉所得税についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

通貨以外の賃金として現物給与がある

労働基準法第24条では、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定めています。そのため、原則として、賃金は金銭で支給しなければなりません。

ただし、労使間の協定や就業規則などによる定めがあれば、現物支給が認められる場合があります。

賃金に含まれないもの

従業員が労働を通して得た金銭であっても、労働基準法上の賃金には含まれないものがあります。

前述したように、賃金とは「労働の対償として使用者が労働者に支払うもの」です。

また、役員は会社に使用される労働者ではないため、役員報酬も賃金には該当しません。

その他、賃金に該当しないものとして一般的には、下記のように「実費弁償的なもの」と「恩恵的なもの」に大きく分けられます。

実費弁償的なもの

  • 出張旅費、宿泊費・移転料、寝具手当、工具手当
  • 制服、作業服費
  • 車両手当、通信手当(従業員の車や携帯電話を業務に使用した場合に支給するもの) など

恩恵的なもの

  • 災害見舞金
  • 結婚祝金
  • 死亡弔慰金・離職後に決定した給与や賞与・会社が一部補助する生命保険の掛金 など

賃金額には原則が定められている

賃金の額は、使用者である企業が好き勝手に決めてよいわけではありません。賃金額については、下記のような原則が定められています。

男女同一賃金の原則

労働基準法第4条では、「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない」という男女同一賃金の原則が定められています。従業員を男女別に採用して異なる賃金体系を適用したり、性別を理由とした賃金格差のある賃金制度を設けたりすると、労働基準法違反となります。

同一労働同一賃金

同一労働同一賃金とは、「同一の労働に対しては同一水準の賃金が支払われるべき」という考え方です。正規雇用者と非正規雇用者との不合理な待遇差を解消するために、パートタイム・有期雇用労働法によって規定されました。

正社員や契約社員、パート、アルバイトといった雇用形態にかかわらず、同じ仕事をする従業員に対しては同じ水準の賃金を支払わなければなりません。そのベースとなる考え方が、均等・均衡待遇です。均等待遇は、職務内容が同じであれば、同じ賃金を支払うというもの。一方、均衡待遇は、職務の内容に合理的な差があれば、違いに応じた賃金を支払うというもの。雇用形態の違いを理由に、待遇に差を設けてはならないという考え方です。

最低賃金制度

最低賃金とは、最低賃金法にもとづき国が定めた賃金の最低限度額のことです。企業は従業員に対して、必ず最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。

最低賃金には、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業を対象にした「特定(産業別)最低賃金」があり、該当する場合は高い方の金額が適用されます。

賃金支払の五原則

労働基準法第24条は、賃金の支払い方法に関して「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。」と規定しています。「賃金支払の五原則」ともいわれる、それぞれの内容について解説しましょう。

通貨払の原則

賃金は、原則として通貨、つまり現金で支払わなければなりません。賃金を商品券や金券で支払うことは違反となります。

なお、法令や労働協約で定められている場合を除き、賃金の現物支給は認められません。

直接払の原則

賃金は、従業員本人に直接支払う必要があります。たとえ従業員の家族や親戚であっても、本人以外の人に賃金を支払うことは違反となります。従業員の同意があれば、指定された口座への振り込みも可能です。

ただし、本人が病気や入院中などの場合に、使者(本人が依頼した第三者)が賃金を受け取ることは認められます。

全額払の原則

賃金は、その全額を労働者に支払わなければなりません。例えば、銀行振込で賃金を支払う際に振込手数料を差し引くことは、全額払いの原則に反するため違反となります。また、会社が労働者に金銭を貸し付けていたとしても、その債権と賃金を相殺することはできません。

ただし、法令で控除が認められている社会保険料や税金、労使協定であらかじめ取り決めのある社内預金や積立金、社宅賃料などは、賃金から差し引くことが可能です。

毎月払の原則

賃金は、毎月1回以上支払わなければならないという原則があります。たとえ年俸制であっても、一括払いではなく、毎月1回以上支払う必要があります。また、月の途中で入社した場合も、翌月にまとめて2か月分の賃金を支払うことは認められません。

なお、賞与や退職金、算定期間が1か月を超える手当などは、この原則から外れても問題ありません。

一定期日払の原則

賞与のように臨時で支払われるものを除き、賃金は「毎月◯◯日」のように支払日を特定する必要があります。例えば、月給制で「毎月第4金曜日」としたり「売上ノルマを達成次第」など条件によって支払日が決まったりするような方法は、労働基準法違反です。

非常時には支払い期日前でも支払い義務がある

労働基準法第25条では、「使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない」と定めています。

非常の場合とは、労働者本人または労働者の収入によって生計を維持する人の、出産や疾病、災害、結婚、死亡、やむを得ない事情による1週間以上の帰郷を指します。このような非常時に際して労働者から請求があった場合は、支払い期日前であっても、会社はすでに行われた労働に対する賃金を支払う義務があります。

賃金の原則に違反した場合の罰則

前述した賃金支払の五原則に反すると、労働基準法第24条違反となり、30万円以下の罰金が科されます。さらに、時間外労働や休日労働、深夜労働に伴う割増賃金が未払いだった場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。

最低賃金以上の賃金を支払わなかった場合も、最低賃金法や労働基準法に罰則が規定されています。賃金額が地域別最低賃金額を下回った場合は50万円以下の罰金、特定(産業別)最低賃金額を下回った場合は30万円以下の罰金となります。

賃金請求権の時効が5年に延長

賃金が正しく支払われなかった場合、労働者は会社などの使用者に対して未払い賃金を請求できます。例えば「給与計算にミスがあった」「割増賃金が適切に支払われていない」などで未払い賃金があった場合、過去にさかのぼって多額の請求が行われる可能性があるため、会社側は注意が必要です。

なお、未払い賃金の請求権には時効がありますが、2020年4月1日施行の改正労働基準法によって、賃金請求権の消滅時効期間が従来の2年から5年に延長されました。ただし、経過措置として当分の間は消滅時効期間が3年となります(2023年9月現在)。

正しい賃金管理には給与計算ソフトの導入がおすすめ

賃金については、法律でさまざまなルールが定められています。たとえ計算ミスによる未払いであっても、法律に違反すれば罰則の対象になってしまいかねません。従業員に対して賃金を正しく支払うには、賃金に含まれるもの、含まれないものを適切に判断したうえで、ミスや漏れのない賃金計算を行う必要があります。

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