出勤簿とは労働基準法の法定三帳簿|記載必要事項や保存期間を解説

2024/03/01更新

出勤簿とは、労働者の労働日数や労働時間を正しく把握するための帳簿のことです。給与計算をするうえでも欠かせない重要な帳簿であり、従業員を雇用した場合は、必ず出勤簿を作成して一定期間保存しておかなければなりません。では、出勤簿には、どのような事項を記録しなければならないのでしょうか。

ここでは、出勤簿の役割や記載すべき内容、保存期間などについて解説します。

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出勤簿とは労働基準法の法定三帳簿の1つ

出勤簿とは、労働基準法で定められた法定三帳簿の1つであり、労働者の労働日数や出退勤時間が記録された書類です。出勤簿については、厚生労働省のガイドラインで次のように明確にされています。

使用者は、労働者名簿、賃金台帳のみならず、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第 109 条に基づき、3年間保存しなければならないこと。

なお、保存期間は2020年4月の労働基準法改正により、3年から5年に延長されました。労働基準法109条では、次のとおり定められています。

使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。

このように出勤簿は法律で定められた重要な書類であり、企業は出勤簿を作成し保存しておかなければいけません。

出勤簿の保存期間

出勤簿は、法律によって一定期間の保存が義務付けられています。従来は3年間の保存が必要でしたが、2020年4月から施行された改正労働基準法によって、保存期間が5年間に延長されました。

保存期間の起算日は、その従業員が最後に出勤した日となります。例えば、2020年11月末日まで従業員が出勤していた場合、その出勤簿は原則2025年11月末日まで(現在は、経過措置として2023年11月末日まで)保存しなければなりません。ただし、最後に記載された出勤日より賃金支払期日が遅い場合、賃金支払期日が起算日となります。

なお、税務上、賃金台帳が源泉徴収簿を兼ねている場合は、7年間保管しなければなりません。もし出勤簿の保管を怠った場合、労働基準法違反となり30万円以下の罰金の対象となります。たとえ故意ではなくても、破棄や紛失してしまうようなことのないようにしっかり管理を行いましょう。

出勤簿の必要事項と書き方

出勤簿には、労働者の氏名以外に、下記の項目を記載する必要があります。ここからは、出勤簿に記載しなければいけない項目とその内容について詳しく解説していきます。

出勤日および労働日数、日別の労働時間数と始業・終業時刻、休憩時間

従業員の出勤日および労働日数を記載します。また、従業員ごとに日別の労働時間数や始業・終業時刻、休憩時間を記載します。これらは、従業員の労働時間を正確に把握するために必要な項目です。賃金を正しく算定するため、始業時刻や終業時刻については、1分単位で管理します。

時間外労働を行った日付・時刻・時間数

時間外労働を行った日付や時刻、時間数を記載します。時間外労働には、企業が定めた所定労働時間を超過して働いた時間や、労働基準法で定められた法定労働時間を超過して働いた時間が含まれます。

労働基準法では、労働時間の上限を「1日8時間・週40時間」と定めています。原則として、企業はこの上限を超えて従業員を働かせることはできません。法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合には、36協定の締結・届出が必要です。この労使による36協定を締結し届け出ることで、協定の定める時間まで規制が解除され時間外労働も可能となります。これを「免罰的効果」といいます。

ただし、法定労働時間を超えての労働については、割増賃金を支払わなければなりません。時間外労働と割増賃金についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

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休日労働(休日出勤)を行った日付・時刻・時間数

休日労働(休日出勤)を行った日付や時刻、時間数を記載します。休日には、労働基準法によって「週に1回または4週間で4回」と規定されている「法定休日」と、法定休日の他に会社が任意で定める「所定休日」の2種類があります。休日労働に関しては、法定休日、所定休日それぞれについて記載しなければいけません。

休日労働と割増賃金についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

残業時間の上限はどのくらい?残業手当の計算方法の具体例も解説

深夜労働を行った日付・時刻・時間数

深夜労働を行った日付や時刻、時間数を記載します。深夜労働とは、労働基準法において例外の場合を除き、午後10時から午前5時までの労働を指します。従業員が深夜労働を行った場合、割増賃金を支払わなくてはなりません。深夜労働と割増賃金についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

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出勤簿の記載対象者

出勤簿の対象になるのは、基本的にはすべての従業員です。正社員、パートタイム、アルバイトなどの雇用形態にかかわらず、従業員全員の勤務状況を記録する必要があります。

なお、労働基準法の「管理監督者」に該当する管理職に関しても、2019年4月に改正労働基準法や労働安全衛生法が施行され、管理監督者の労働時間の把握が義務化されました。そのため、管理監督者についても安全衛生管理等の面から出勤簿に記載し、労働時間管理を行わなければいけません。

管理監督者とは、労働条件の決定などにおいて、経営者と一体的な地位や権限を付与されている人のことを指します。管理監督者に該当するかどうかは、役職名ではなく、職務内容や権限、賃金などから総合的に判断されます。管理職だから管理監督者であるとは限らないため注意が必要です。管理監督者についての詳細は、厚生労働省の「管理監督者の範囲の適正化新規タブで開く 」から確認できます。

出勤簿を手書きで書くと違法の可能性も

手書きの出勤簿は、厚生労働省の定める客観的な記録に該当しません。そのため、手書きでの出勤簿は違法になるケースがあります。しかし厚生労働省のガイドラインには次のとおり、手書きの自己申告制出勤簿でもよいケースを定めています。

(2) やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合
① 自己申告を行う労働者や、労働時間を管理する者に対しても自己申告制の適正な運用等ガイドラインに基づく措置等について、十分な説明を行うこと
② 自己申告により把握した労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること
③ 使用者は労働者が自己申告できる時間数の上限を設ける等適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならないこと。さらに36協定の延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、労働者等において慣習的に行われていないか確認すること

ただし、手書きで出勤簿をつけるのは違法であると指摘を受ける可能性もあるため、デジタル打刻など個人で改ざんできないシステムを導入すべきでしょう。ICカードやパソコン・タブレットなどによる打刻をすれば、客観的な記録として残ります。

ハンコを押すだけの出勤簿は認められない

ハンコを押すだけの出勤簿は認められていません。出勤簿には記載しなければいけない事項が決められており、始業や終業、休憩時間などを明記しなければいけません。2019年4月の労働基準法改正により残業時間の上限が定められ、適用を猶予されていた中小企業にも、2020年4月から適用となっているため出退勤時間を明確にする必要性が高まっています。

勤怠管理システムの導入がおすすめ

従業員の労働時間を客観的かつ正確に把握するためには、ICカードやパソコン、スマートフォンなどで、出退勤の時間管理を行う勤怠管理システムの導入がおすすめです。また、勤怠管理システムは、リモートワークなどの多様な働き方や労務管理の業務シーンにおいて、下記のようにさまざまなメリットが期待できます。

さまざまなシーンでの勤怠管理に対応可能

勤怠管理システムは、さまざまなシーンでの勤怠管理に適しています。例えば、事業所が複数ある場合でも事業者ごとにタイムカードを導入したり、勤務時間を管理したりといった面倒な作業がなく一元で管理ができます。

また、最近ではリモートワークや在宅勤務など働き方が多様化し、必ずしも出勤するとは限りません。そのような場合でも、勤怠管理システムなら、パソコンやスマートフォンで会社以外の場所でも勤務時間等の入力ができるので、わざわざ勤怠管理作業のために出社する必要がありません。

ミスを減らし、業務効率化にも期待できる

勤怠管理システムは、記録された実労働時間や残業時間といった勤怠情報が自動で集計されるため、人の手を介した入力作業が不要になり、人的なミスを減らせます。また、給与計算ソフトと連携できるものを利用すれば、勤怠記録を基に自動で給与計算も可能です。

保管スペースが不要になる

前述のとおり、出勤簿は原則として、最後に記録した日から原則5年間保存しなければなりません。紙で出勤簿を保存する場合、破損や紛失のリスクがあるうえ、社員数が増えた場合、保管するためのスペースが足りなくなってしまうことも。勤怠管理システムならデータとして保管できるため、物理的な保管スペースは必要ありません。

出勤簿に関するよくある質問

出勤簿を作成する必要性はある?

出勤簿は必ず作成し、備え付けしなければいけません。出勤簿は労働者名簿や賃金台帳とあわせて法定三帳簿といわれる書類であり、非常に大切な書類です。保管期間も長く、退職した労働者の最終出勤日から5年間保存しなければいけません。出勤簿には労働日数や出退勤時間などを記載しなければならず、もし保存しなければ30万円以下の罰金を科されるケースもあります。非常に大切な書類であるため、必ず出勤簿を作成し保存しておきましょう。

出勤簿を紙に書くことは違法?

出勤簿を紙に書くこと自体は違法ではありません。しかし、紙での出勤簿では内容の改ざんが簡単にできてしまうため、保存方法として推奨されていません。例外的に紙へ手書きすることも許されていますが、基本的にはデジタル打刻を利用した勤怠管理を行う必要があります。また、紙の出勤簿に印鑑だけを押すことも認められていません。出勤簿に記載しなければいけない事項をすべて記入し、デジタル打刻で管理するよう心がけましょう。

タイムカードは出勤簿の代わりになる?

タイムカードだけでは出勤簿の代わりになりません。タイムカードを打刻した時間は実際の業務開始や、終業の時間と必ずしも一致するわけではありません。残業申請などと付け合わせることで正確な業務時間を記録します。

出勤簿を正しく記録して適正な労務管理を行おう

出勤簿は、労働者名簿や賃金台帳と並ぶ「法定三帳簿」の1つです。労働者を雇用する企業は必ず事業場ごとに出勤簿を備え、5年間保存しなければなりません。出勤簿の記載漏れがあったり保存していなかったりすると法令違反となるおそれがあります。

しかし、出勤簿は記載しなければいけない項目が多く内容も細かいため、紙で管理するのは非常に手間がかかります。また、従業員の自己申告によって勤怠管理をしようとすると、不正やミスなどが起こる可能性もあります。そのため、勤怠管理システムを導入しデジタル打刻で出勤簿をつけるのがよいでしょう。

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