注文書(発注書)とは?発行タイミングや書き方、送付方法を解説【無料テンプレートあり】
監修者: 高崎文秀(税理士)
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注文書(発注書)とは、商品や資材を発注するときや業務を外注するときなどに作成・発行する書類です。建設業や製造業、商社などの企業だけでなく、小売業や卸売業、サービス業、フリーランスなどの個人事業主も含め、幅広い業界で頻繁に用いられています。しかし、発行した経験がない場合、「どのようなケースで必要なのか」「記載内容はどうすればいいのか」と悩むこともあります。
注文書には税法により決められた保存期間があります。電子的にやり取りをしたり電子保存する場合は、電子帳簿保存法に則った保存が必要です。
注文書の記載項目に関しては、取適法(現:下請法)やフリーランス保護法に該当しない発注先の場合、特に定められていませんが、取引条件を明確に記載して証拠性を確保することが重要です。本記事では、注文書の概要や注文請書との違い、発行のタイミング、記載内容、作成方法についてわかりやすく解説します。
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注文書(発注書)とは、商品やサービスの注文時に発行する書類のこと
注文書または発注書(※以下、注文書で統一)とは、商品やサービスなどを注文する際に、買手側(発注者)が売手側(受注者)に発行する書類です。一般的に、品名・数量・単価・金額・納期など、取引に必要な情報を記載し、相手先に送付します。
注文書は、すべての取引で必ず発行しなければならないものではありません。ただし、「取適法」(現:下請法)やフリーランス保護法(正式名称「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)の対象となる取引では、注文書の発行義務があります。
なお、下請法とは下請取引の公正化や下請事業者の利益保護を目的とした法律です。これまでの正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」でしたが、2026年(令和8年)1月1日からは「取適法」や「中小受託取引適正化法」と称される正式名称「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変更されます。
注文書の役割
注文書は、発注側と受注側の双方で認識を確認し合い、公正な取引を実現するという重要な役割を果たす書類です。書面で注文内容を確認できるため、認識のすれ違いや発注ミスなどのトラブル防止につながります。注文書を作成・発行せずに口頭だけで済ませてしまうと、発注側と受注側で「言った、言わない」の行き違いが生じかねません。さらに、場合によっては立場が弱い受注側が不当な扱いを受けたり、不利益を被ったりする可能性もあります。
また、注文書は、取引を円滑に進めるためにも重要です。特に、複数の発注を行う企業や個人事業主では、注文書があることで納期などを確認できるため、業務の効率化に役立ちます。
注文書と発注書の違い
法的には、注文書と発注書に明確な違いはありません。ビジネスの現場では、ほぼ同じ意味で使われています。ただし、業界によっては実務上で使い分けられていることもあるようです。例えば、注文書は既製品や規格品などの売買契約、発注書はサービスや開発といった請負契約に使われるといったケースです。注文書や発注書は、取引内容を確定させるための重要な書類です。
なお、企業・団体によってはどちらを使用するのかが決まっていたり、取引内容に応じて使い分けていたりするケースもあります。取引先や企業・自事業のルールを確認したうえで、適切な書類名を使用しましょう。
注文書と注文請書の違い
注文書と注文請書の違いは、作成者と目的にあります。注文書は、発注者が発注内容を記載して相手に送る書類です。一方で注文請書は、受注者が「注文書の内容で受注します(請け負います)」という意思を示す書類です。発行の流れとしては、まず発注者が注文書(または発注書)を発行し、受注者が内容を確認して問題がなければ注文請書を発行します。
注文書と契約書の違い
注文書は、発注者が受注者に「商品やサービスを注文する」という意思を示す文書です。実際の契約は、受注者側の合意を得ないと成立しません。
一方で契約書は、発注者が「注文する」、受注者が「注文を受ける」という意思をお互いに明確に示し、合意のもとで作成される文書です。当事者間の権利や義務を取り決める「法律的な合意文書」であり、取引条件や責任範囲を明確にしつつ、トラブル発生時には強い法的効力を持つ点が特徴です。契約書には、契約の目的や業務範囲、契約期間、報酬、解除条件、裁判管轄などが盛り込まれます。代表的な契約書の例は以下のとおりです。
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- 商品や不動産を売買する際の「売買契約書」
- 外部に業務を依頼する際の「業務委託契約書」
- 会社と従業員の関係を定める「雇用契約書」
- 情報漏えいを防ぐための「秘密保持契約(NDA)」
事業者間における継続的な取引では、最初に交わした契約書や取引基本契約書に基づいて注文書が発行されることが多く、注文書と契約書は関係性が深い文書といえます。
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注文書を発行するタイミング
注文書は、まず受注者が発行した見積書を発注者が確認し、注文をする意向が固まった時点で、発注者が作成・発行します。その後、注文書を受け取った受注者が注文請書を発行します。簡単にまとめると、見積書(受注者)、注文書(発注者)、注文請書(受注者)という流れです。
ただし、発注内容やケースによっては、見積書を発行しない場合もあります。例えば、既に定価が決まっている場合や継続的に発注している場合、取引金額が少額である場合などです。
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注文書の記載項目と書き方
下請法やフリーランス保護法の対象となる取引では、親事業者(発注者)が下請事業者(受注者)に注文書を発行する際に、記載が義務付けられている項目があります。ただし、それ以外の形式やフォーマットについては法的な決まりごとはありません。ここでは、注文書への記載が必要な項目について解説します。
なお、注文書の書き方については、以下の記事でも詳しく解説していますので参考にしてください。
①発注年月日
注文書には発注年月日を記載します。一般的には、注文書の発行日で差し支えありません。取引を行ううえでは、後日になっていつ発注したのかを確認しなければいけないこともあるため、正確な日付を記載しましょう。
年の表記は西暦でも和暦でも構いませんが、業務効率を考慮し、他の書類と統一することをおすすめします。事前に表記ルールを決めておくとよいでしょう。
②注文書番号
注文書番号は必須事項ではないものの、記載しておくことで管理がしやすくなります。特に、同じ案件の見積書や請求書と紐付けた番号にしておくと、照合や整理をする際に便利です。番号の付け方は自由ですが、連番や年月日を組み合わせるなど、管理しやすさを考慮したうえで工夫しましょう。
③受注者の名称または氏名
受注者(取引先)の名称または氏名を記載します。企業名や担当者名は省略せず、正式名称を用いたうえで、企業名には「御中」、個人名には「様」を付けましょう。誤字や脱字があると相手に失礼な印象を与えるため、注意が必要です。
④発注者の名称または氏名
発注者(自社・自事業)の企業名および担当者名、住所、電話番号、メールアドレスなどを記載します。また、押印は必須ではないものの、取引先によっては習慣として求められる場合があります。
⑤発注内容
発注する商品やサービスの名称、数量、単価などを記載します。商品の名称や品番などは、具体的に記載してください。サービスを発注する場合は、具体的な内容や業務範囲を記載します。
⑥発注金額
発注金額は税抜きで記載し、消費税がかかる旨を別途明記する方法が一般的です。小計金額・消費税額・合計金額を分けて記載します。取引先から見積書を受け取っている場合は、その金額と一致しているか確認してください。
⑦備考
備考欄には納期や納品場所、支払期日、支払方法など、取引先と認識をすりあわせておきたい事項を必要に応じて記載します。
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注文書の作成方法
注文書の具体的な作成方法を、手書きする場合やソフトウェアを使う場合などのケースごとに解説します。また、正確かつ本格的な注文書を手軽に作りたいときに使える便利なテンプレートも紹介します。
手書き
注文書は手書きしても構いませんが、手間がかかるうえ、記入ミスや文字の読み違いなどが誤発注につながるリスクもあるため、あまりおすすめしません。ただし、長年の取引で慣例的に手書きが用いられている場合や、コンピューターの操作が苦手な場合、または注文書の作成頻度が少ない場合には、手書きでも対応可能です。
手書きで作成する際は、市販の複写式注文書を利用すると、提出用と保管用を同時に作成できるため便利です。複写式でない場合は、作成後にコピーを取って保管しておくようにします。
エクセルやワード
さまざまな業界で広く用いられているのが、エクセルやワードといったソフトウェアを使って注文書を作成する方法です。エクセルやワードの扱いに慣れている人であれば、自社・自事業でオリジナルの仕様を作成し、共有することもできます。特にエクセルであれば、関数を使って合計金額などを自動的に計算することができ、手間が省けるうえ計算ミスも防げます。また、インターネット上には無料で利用できるテンプレートが数多く公開されているため、自社・自事業に合うようカスタマイズして活用すると便利です。
注文書の無料エクセルテンプレート
インターネット上からダウンロードできる発注書の無料テンプレートを利用すれば、一からフォーマットを作成する必要がなく、効率的に注文書を作成できます。必要項目があらかじめ記載されているため内容を入力するだけでよく、記入ミスや記入漏れも防げます。デザインもさまざまで、使いやすいタイプを選ぶことが可能です。
さらに多くのエクセルテンプレートは、合計額が自動計算されるようになっています。もちろんPDF化も可能で、メールに添付して取引先(受注側)に送る際にも便利です。
弥生では、無料の注文書・発注書のエクセルテンプレートをさまざまな種類で用意し、用途に応じて選べます。無料でお使いいただけるため、ぜひご活用ください。
専用の作成ソフト
帳票作成に特化したソフトウェアを利用して作成する方法もあります。中でもクラウド型のツールは、インターネット環境さえあればどこにいても注文書を作成・共有できる点がメリットです。オフィス外でも作業ができるため、リモートワークの推進にもつながります。また、クラウド型ツールはセキュリティが強固なものが多く、改ざんや流出などのリスクも避けられることもあり、最もおすすめの方法です。
例えば、弥生が提供するクラウド請求書作成ソフト「Misoca」には、見積書や納品書、請求書とあわせて注文書を発行できる機能があります。画面上で所定の項目に入力するだけでさまざまな書類を簡単に作成でき、取引先へのメール送信もワンクリックで完了するなど、事務作業の手間を減らすことが可能です。
ただし、注文書についてはあくまでも「見積書に対する注文書」を作成するしくみであり、注文書上の注文主は「取引先」として設定されます。Misocaの利用者自身が注文主となる注文書の作成機能はありません。利用する際は、その点に注意してください。
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注文書の送付方法
注文書を発行したら、受注側である取引先に送らなければなりません。取引先の求めに従い、適切な方法で送付しましょう。
メール
メールで送付する場合は一般的に、メールのタイトルや本文に注文書を送付する旨を記載し、PDF化した注文書を添付します。メールはリアルタイムで届くため、誤って別の取引先に送ってしまわないよう、送信先を確認してから送付しましょう。もしも宛先を間違うと、信頼を損ないかねません。また、メールは便利な手段ですが、先方が見落としたり、迷惑メールフォルダーに紛れ込んだりすることもあります。メールを送ったにもかかわらず返信がないなど、受領が確認できない場合は、電話などで連絡をして見落としや行き違いを防ぎましょう。
FAX
取引先に急ぎで確認してもらいたい場合はFAXを使うという方法もあります。FAXで送付する場合は送付状を添え、1枚目に送付状、2枚目に注文書がくるよう送るのがマナーです。送付状には、FAXを受け取る相手の部署と名前、そして自社名/屋号、名前、連絡先を明記し、本文にはあいさつと共に「何を送ったか」について記載しましょう。そうすることで、誰に宛てたFAXであるかが伝わります。送信した後は電話で連絡するとさらに安心です。
郵送
紙に印刷して郵送する方法もあります。送付する際は、注文書に送付状を添えて同封したうえで、封筒の宛名面に手書きまたはスタンプで「注文書在中」と記載し、中身がすぐにわかるようにしましょう。
ただし、先方に届くまでに時間がかかるため、急ぎの場合には不向きです。万一記載ミスがあった場合は、再度印刷して発送しなければならず、リードタイムが長くなる点に注意が必要です。なお、注文書は「信書」に当たるため、原則として宅配便では送付できません。基本的に郵便を利用しましょう。
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注文書の保存期間と保存方法
発行・受領した注文書の保存期間は、法人の場合、原則として7年です。欠損金が発生した場合は10年となります。なお、白色申告の個人事業主や副業の場合は原則5年です(法定帳簿は7年)。判断がつかないときは、7年保存しておけば間違いがありません。
保存は紙もしくはデータで行います。ただし、電子取引でやり取りした注文書は、電子帳簿保存法に基づいて電子データのままで保存しなければなりません。電子データでの保存は物理的なスペースが必要なく、検索もしやすいため、後から見返す際にも便利です。
電子帳簿保存法については、以下の記事で詳しく解説しています。
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注文書は、取引先に注文・発注する際に発行する書類です。下請法やフリーランス保護法の対象となる取引を行う場合は、発行が義務付けられています。また、注文書があることで、受注者と発注者の認識の相違を防ぐことにもつながります。
注文書は手書きでも作成できますが、電子データ化した方が作業効率がよく、ミスの防止にも効果的です。「Misoca」は、見積書から注文書を作成する機能を備えたクラウド請求書作成ソフトです。書類作成の効率化のために、ぜひご検討ください。
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この記事の監修者高崎文秀(税理士)
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役
早稲田大学理工学部応用化学科卒
都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業し、現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また通常の税理士業務の他、一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行っている。

