請求書や分割払い請求書が複数にわたる際の書き方やポイントを解説
監修者:小林祐士(税理士法人フォース)
2024/08/13更新
商品・サービスの代金の支払いを求める請求書は、必要に応じて分割を行うことがあります。
請求書の分割を行うケースは、主に「分割払い」への対応と、複数の宛先への「分割発行」の2つです。これらはメリット・デメリットに共通点がある一方、請求書を書く際のポイントが異なるため、それぞれ適切に対応する必要があります。
ここでは、分割払いへの対応と請求書の分割発行について、メリット・デメリット、適格請求書等保存方式(インボイス制度)に適切に対応するための適格請求書(インボイス)の記載項目や書き方などを解説します。日々の請求業務にお役立てください。
請求書の分割とは?
請求書の分割は、商品・サービスの分割払いに対応するケースと、複数の宛先へ分割して発行するケースの2パターンがあります。それぞれどのようなものか、詳しく解説します。
分割払い:代金を2回以上に分けて支払うこと
分割払いとは、商品やサービスの代金を2回以上に分けて支払うことです。「割賦払い」とも呼ばれます。
分割払いはクレジットカードの利用額の支払いでよく行われている他、高額な商品やサービスを購入した際に月々の支払額を抑えるためにも用いられる支払方法です。
支払いが分割払いで行われる場合は、請求書を複数回に分けて作成・発行する必要があります。
分割発行:請求書を複数の宛先に分けて発行すること
分割発行とは、商品・サービスの買手側の複数の部門・拠点・担当ごとなどに宛てて、請求書をそれぞれに分けて発行することです。
請求書の分割発行は、買手側の合意があれば問題なく行えます。企業間取引では、買手側の各部署と取引を行っても請求書は経理部宛に1つにまとめて送ることもあれば、反対に請求書を部署ごとに分けてほしいと依頼される場合もあります。これらを確認しないまま請求書を分割発行すると買手側の混乱やトラブルを招く可能性があるため、事前に分割発行について確認し、合意を得ておくことが必要です。
また、分割した請求書の合計金額が、本来請求するべき金額と合致しているかどうかも、必ず確認するようにしましょう。
請求書の分割を行うメリット
請求書の分割を行うことは、以上のとおり2つのパターンがあり、両方に共通したメリットがあります。主なメリットは以下のとおりです。
買手側の利便性を高められる
分割払いへの対応や請求書の分割発行を行うと、買手側の利便性を高められます。
分割払いに対応すると、買手側は支払いのタイミングを分散できます。これにより、買手側は多額の資金が1度に必要になることを平準化でき、資金繰りが行いやすくなるでしょう。
また、宛先を分けて発行すると、買手側は請求書処理の作業負担の分散や、部門ごとの経費管理などが可能です。
売上アップにつながりやすい
請求書の分割には、売上アップにつながりやすいメリットもあります。
分割払いに対応すると、買手側が高額な商品・サービスを購入しやすくなるからです。売手側が分割払いに対応できないと、買手側は商品・サービスが高額になるほど購入しにくくなってしまいます。支払方法に柔軟性を持たせることで、売上アップや顧客獲得の可能性も高まります。
請求書の分割を行うデメリット
分割払いに対応したり、請求書の分割発行をしたりすることには、デメリットもあります。主なデメリットは以下のとおりです。
全体の請求額が把握しにくい
請求書の分割を行うと、全体の請求額が把握しにくくなります。
分割払いに対応すると、代金が支払われるタイミングが分散され、一括払いに比べ全体の請求額がわかりにくくなります。
宛先を分けて発行する方法も、請求先が分散されることとなり、同じ販売先の合計取引金額がわかりにくくなることもあります。1つの宛先に送付する方法であれば、こうしたデメリットはありません。
そのため、分割払いや請求書の分割発行に対応する場合は、請求金額の合計に間違いがないか十分注意して、請求書を作成・発行する必要があります。
入金・支払いを1回ずつ確認する必要がある
分割払いでは支払いが複数回に分かれるため、買手側は支払いを1回ずつ確認しなくてはなりません。確認する回数が多くなればなるほど、未払いがあっても見落としてしまう危険性が高まるため注意が必要です。未払いを防ぐには、全体の請求額に対してどれくらいの請求が終わっており、どれくらいの入金が行われたかといった履歴の管理が大切です。
宛先を分けて発行する方法では、買手側からの入金が合算されている場合、突き合わせに手間がかかるなどのデメリットがあります。未払いが起きるのを防ぐには、こまめなチェックが必要となるでしょう。
分割払い請求書を作成する際のポイント
分割払いに対応した請求書を作成する際は、押さえておきたいポイントが複数あります。主なポイントは以下の3つです。
合計金額を確認する
分割払いに対応する際は、各回の請求金額が本来請求するべき合計金額と一致しているかを確認することが大切です。
すべての請求書の合計金額が本来の請求金額と一致していないと、商品・サービスの代金をきちんと回収できなくなってしまいます。分割払いの回数が確定した時点で各回の正確な請求額を確認し、間違いなく記載してください。
分割払いであることを記載する
分割払いであることを請求書に記載することも、分割払い請求書を作成する際のポイントです。
ただし、分割払いであることの記載方法に、特に決まりはありません。分割払いであることが買手側にもきちんと伝わるよう、わかりやすい位置に記載するなどの工夫が大切です。
また、請求書に記載するだけでなく、契約書を交わす段階で分割払いに対応する旨を記載しておくこともおすすめです。
分割払いの条件を記載する
分割払いの請求書を発行する際は、以下のような分割払いの条件を事前に取り決めて、請求書にも明記しておくことをおすすめします。
請求書に記載するべき分割払いの主な条件
- 分割回数と今回が何回目であるか
- 合計請求金額と今回の請求金額
- 各請求書の支払期日
- 担当者の連絡先
請求書に以上のような条件を明記しておくと、請求書を受領する買手側との認識の食い違いを防ぐことができます。
なお、支払期日は「請求書発行後◯日以内」というように、明確な期限も設定して記載するのがおすすめです。
分割払い請求書の記載例
請求書を分割発行する際のポイント
請求書を複数の拠点・部門など宛先別に分割発行する際も、押さえておきたいポイントがいくつかあります。主なポイントは以下の3つです。
合計金額を確認する
請求書を分割発行する際は、分割払い請求書の場合と同じく合計金額を確認してください。例えば、同じ取引の請求書を買手側の東京支店と大阪支店に宛てて分割発行する場合、2枚の請求書の請求金額の合計が全体の請求金額と一致していなくてはなりません。
分割払いの請求書と同様、分割した請求書の請求金額が本来の請求金額と一致していないと、代金をきちんと回収できなくなります。宛先が確定したら請求書1枚ずつの請求金額を確認し、正確に記載するようにしましょう。
請求内容・金額を明記する
分割した請求書ごとに「商品名」「数量」「単価」「取引金額」などを正確に記載することも、請求書を分割発行する際に大切なポイントです。
請求内容を詳細に記入することで、どの商品・サービスに関する請求書なのかが明確になります。買手側と売手側の双方が確認しやすくなるよう、正確に記載してください。
発行日・支払期限を明記する
分割発行した請求書は、発行日と支払期限をそれぞれ明記することが大切です。発行日や支払期限が明記されていないと、拠点・部門によって支払いのタイミングに差が出てしまったり、支払漏れが発生したりする可能性があるためです。
請求書を分割すればこれらを記載する回数も増えますが、スムースな入金や未払い防止のためにも、きちんと記載しておくことをおすすめします。
請求書の基本的な記載項目
分割払い請求書を作成する場合や請求書を分割発行する場合でも、請求書の基本的な項目は忘れず記載しておく必要があります。請求書の記載項目は以下のとおりです。適格請求書の作成を前提として記載項目を紹介します。
適格請求書の記載項目
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1.発行事業者の氏名または名称および登録番号
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2.取引年月日
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3.取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
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4.税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)および適用税率
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5.税率ごとに区分した消費税額等
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6.書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
請求書と適格請求書の記載項目についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
請求書作成システムで請求業務を効率化
請求書の発行や管理には一定の時間と手間がかかります。しかし、請求書の発行・管理を自動で行えるシステムを導入すれば、請求業務の効率化が可能です。分割払いへの対応や請求書の分割発行を行う際も、システムを利用すれば効率化が期待できるでしょう。
請求書システムを選ぶ際のポイントは、システムが対応できる範囲や権限設定の可否、サポート体制、システム連携の可否、セキュリティの高さなどです。これらを比較検討し、自社に合ったシステムを選んでください。
弥生の請求書作成サービス「Misoca」は、簡単な操作で請求書をスピーディーに作成・送付・管理できます。作成画面には入力必須項目、消費税(内税・外税)、源泉税などの計算式があらかじめ設定されているため、入力漏れや計算ミスを防げます。ロゴや社印も任意の登録したものを自動出力するため、分割を行う際もスピーディーかつ正確に対応可能です。ぜひ導入をご検討ください。
請求書の分割を正しく行い、ビジネスを前進させよう
請求書の分割は、分割払いや複数の宛先への請求に対応するために行います。請求書の分割を行うことによって、買手側は商品・サービスを購入しやすくなり、売手側は売上アップを見込めます。
ただし、請求書を分割する際のポイントを正しく理解していないと、適切な対応ができず買手側との認識の齟齬や未払いといった事態が発生する可能性があるため、注意が必要です。そうした事態を避けるためには、請求書作成を正確かつ正確に行えるシステムの導入がおすすめです。
請求書の分割は、正しく行えばビジネスの成長を支える力になります。分割を行うメリットとデメリット、分割を行う際のポイントを正しく理解し、企業の前進につなげてください。
この記事の監修者小林祐士(税理士法人フォース)
東京都町田市にある東京税理士会法人登録NO.1
税理士法人フォース 代表社員
お客様にとって必要な税理士とはどのようなものか。私たちは、事業者様のちょっとした疑問点や困りごと、相談事などに真剣に耳を傾け、AIなどの機械化では生み出せない安心感と信頼感を生み出し、関与させていただく事業者様の事業発展の「ちから=フォース」になる。これが私たちの法人が追い求める姿です。