請求書を破棄してもいい?捨て方や保存期間、電子データで保存するメリット
監修者: 中川 美佐子(税理士)
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不要な請求書をいつまでも保管しておくと、かさばって保管場所に困ったり、管理する手間や費用がかかりします。最近ではPDFといった電子形式で発行される請求書が増え、電子帳簿保存法やインボイス制度によって請求書の保存方法も変化しています。
請求書は定められた保存期間は保管しておく必要がありますが、要件を満たせば破棄できるケースもあります。中小企業の経理担当者や請求関連担当者、あるいは個人事業主の方に向けて、請求書を破棄してもよいケース、請求書の捨て方、請求書を電子データ化するメリットについて解説します。
請求書は破棄しても問題ない?
請求書は、取引を証明するための重要な証票であるため、基本的に破棄することはできません。請求業務が終了してからも、正しい方法かつ期間に則って保管するよう義務付けられています。ただし、定められた保存期間を終了した場合や再発行が必要になった場合など、要件を満たすことで原本を破棄できるケースもあります。
請求書を破棄できる3つのケース
原則として請求書は破棄できませんが、以下の3つのケースにおいては破棄しても問題ありません。
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1.請求書の保存期間が終了している
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2.請求書の再発行が必要になっている
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3.電子帳簿保存法に則って請求書のデータ化が完了している
1.請求書の保存期間が終了している
定められた保存期間を超過している場合は、任意で破棄が可能です。請求書の保存期間は法人の場合、会社の規模に関係なく「7年間」と定められています。また、個人事業主の場合は青色申告・白色申告を問わず「5年間」と決められています。起算日は、請求書が作成された日からではなく、法人の場合は事業年度の確定申告書の提出期限日翌日から、個人事業主の場合は確定申告期限日の翌日からです。
これらの期間を超過した請求書は、紙・電子データに関わらず破棄して問題ありません。ただし、法人の場合、2018年4月1日以後から欠損金が生じた事業年度の請求書は10年間の保存が義務付けられたため、注意が必要です。
2.請求書の再発行が必要になっている
請求書の再発行が必要になった場合、元の請求書は破棄できます。再発行が必要になるケースは2パターンあり、ひとつ目は請求書の内容に不備があった場合です。請求書は請求内容を証明し、法的な効力を持つ書類であるため、口頭やメールによる訂正は認められません。内容を訂正する場合は元の請求書を破棄し、新しい請求書に差し替える必要があります。
2つ目は、請求書を紛失した場合です。請求書には一定期間保存する義務があるため、定められた保存期間内に紛失した場合も再発行しなければなりません。後日紛失した請求書が見つかった場合、二重支払いのリスクを避けるため、元の請求書は破棄します。
3.電子帳簿保存法に則って請求書のデータ化が完了している
電子帳簿保存法に基づき請求書の電子データ化が完了していれば、紙の請求書を保存しておく必要はありません。この場合、請求書を電子データで受領した場合と紙で受領した場合とで対応は異なります。
電子データの請求書を受領した場合
請求書をPDFといった電子データで受領した場合は、そのまま保存するよう義務付けられています。電子データで受領した請求書を印刷して紙媒体で保存しても国税関係書類として認められないため、電子データで保存しなければなりません。
電子データの請求書を保存する際には、電子帳簿保存法で定められたいくつかの要件を満たす必要があります。システムの概要が記載された関連書類やディスプレイ・プリンターなどの見読可能装置の備え付け、取引年月日・取引金額・取引先などの検索機能の確保という要件を満たすのは必須です。要件を満たせない場合、仕入税額控除の適用外になってしまうため注意しましょう。
紙の請求書を受領した場合
請求書を紙で受領した場合、スキャナで読み込んで電子データ化できます。電子帳簿保存法では主なスキャナ保存要件として、請求書の受領日から2か月以内にスキャナで読み取りを行うこと、タイムスタンプ機能付きのシステムで保存することが定められています。紙原本をスキャナで読み込むかスマートフォンで撮影し、データをシステム上にアップロードした後、2か月以内にタイムスタンプを付与しましょう。
タイムスタンプは請求書の改ざんや不正を防ぐために必要ですが、タイムスタンプ機能付きのシステムであれば自動で付与されます。また、訂正削除の記録が残るシステムであれば付与は不要です。
こちらの記事でも解説していますので、参考にしてください。
請求書や領収書などの破棄の仕方
請求書や領収書は、燃えるゴミや資源ゴミに出しても違法ではありませんが、情報漏えいのリスクを考えると不適切です。そのままゴミ箱に捨てることは避け、第三者が内容を確認できるような状態で処分しないよう注意しましょう。破棄する枚数が少ない場合はシュレッダーにかけてから破棄するのがおすすめです。
大量の書類を破棄する必要がある場合は、信頼できる業者に溶解処理を依頼する方法もあります。溶解処理であれば、書類にホチキスの針が付いている場合でも外す必要がなく、作業を省けます。時間や労力を考慮し、適切な破棄方法を決めましょう。
請求書を電子データ化して保存するメリット
請求書を電子データ化すると、受領する側と請求する側の双方にメリットがあります。
【受領する側のメリット】
- 発行日当日に受け取れる
- 再確認や情報共有しやすい
- コスト削減やスペースの有効活用につながる
【請求する側のメリット】
- 発送の手間やコストを削減できる
- 再発行や修正依頼に対応しやすい
- 未達や遅延などのトラブルを回避できる
受領する側のメリット
受領する側のメリットは、請求書を発行日当日に受け取れることです。紙の請求書は、手渡しや納品物に同梱のケースもありますが、郵送であれば受領する側が即日受け取ることは難しいです。一方、電子データ化するとメールで送付できるため即日受け取れるようになります。
また、過去のデータの確認が必要となった場合にも容易に検索できるため確認しやすくなり、社内で情報共有がしやすくなるというメリットもあります。さらに、電子データであれば印刷して保管する必要がないため、紙の使用量を削減できるのもメリットです。コストを削減しながら環境に優しい取り組みへつなげられます。保管するスペースも不要になるため、空いたスペースを有効活用できます。
請求する側のメリット
請求する側のメリットは、請求書を発送するまでの一連の業務を省略できることです。紙の請求書の場合、請求書の作成、確認、印刷、封入、投函など多くの事務作業が発生しますが、電子データ化すればこれらの作業を行う必要はありません。事務作業にかかる人件費を削減できるだけでなく、紙代、インク代、郵送費など諸経費の削減にもつながります。
また、電子データ化することによって発行済みの請求書の検索がしやすくなるため、再発行や修正依頼にすぐに対応できるのもメリットです。メールの送受信履歴を確認すれば、未達や遅延などのトラブルも防げます。
請求書を電子データ化すれば紙の請求書を破棄できる
請求書は、定められた保存期間を終了した場合、再発行が必要になった場合、電子データ化が完了している場合の3つのケースにおいては破棄しても問題ありません。破棄する際は、情報漏えいのリスクを考慮し、シュレッダーにかけるか業者に頼んで溶解処理してもらうのがおすすめです。
請求書を電子データ化すれば、紙の請求書を破棄できる以外に、請求書を発行日当日に受領できる、過去の請求書を確認しやすいなどのメリットが得られます。請求書の作成や管理には、弥生の請求書サービス「Misoca」をぜひ活用してください。
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この記事の監修者中川 美佐子(税理士)
税務署の法人税の税務調査・申告内容の監査に29年勤務後、令和3年「
たまらん坂税理士法人」の社員税理士(役員)に就任。法人の暗号資産取引を含め、法人業務を総括している。