請求書の保管期間とは?保存年数やおすすめの保管方法を徹底解説

2023/03/10更新

この記事の監修辻・本郷 税理士法人/辻・本郷ITコンサルティング

商取引を行ううえでは、請求書のやりとりが頻繁に発生します。受け取った請求書は、支払いが終わった後も一定期間保管しなければいけません。フリーランスなどの個人事業主と法人、それぞれの請求書の保管に関するルールや保管期間、保管方法について知っておきましょう。

2022年1月に施行された電子帳簿保存法改正に対応するための注意点についても、併せて解説します。

請求書とは取引上で発生した料金の支払いを求める書類

請求書とは、取引によって発生した料金の支払いを求めるために発行する書類のことをいいます。そもそも、商取引は契約にもとづいて行われるもので、注文する側とされた側の双方が取引内容に合意すると、契約は成立します。

「商品1個と引き換えに100円を支払う」という取引を例に見てみましょう。双方がこのやりとりに合意した場合、契約書などを締結していなくても売買契約は成立したとみなせます。このとき、注文を受けた側が商品1個を納品すると、注文した側には「100円を支払う」という義務が発生します。

請求書は、このような義務の存在を相手に知らせるとともに、支払い期日や支払い先などを伝えて入金を促すために発行する書類です。注文を行った側は、自社の注文内容と請求書を照らし合わせ、間違いがないことを確認して支払いを行います。

また、請求書は代金の支払い期日が近いことを知らせたい場合にも役立ちます。日々の取引量が多いと、支払いが抜けてしまうことがあるかもしれません。請求書を送ることで、取引先(買手側)に取引の履歴を改めて意識してもらえるようになります。

請求書は取引履歴の証明にもなる

請求書は、証憑(しょうひょう)書類に該当します。証憑書類とは、取引の内容や条件について定めた書類のことです。事業を営むうえで、金銭が動いた理由の証明をする役割を果たすため、重要な書類だといえるでしょう。

例えば、通帳に「株式会社A 1,000,000円」と記載されているだけでは、どのような理由で100万円が入金されたのかがわかりません。売掛金かもしれませんし、借入金かもしれません。あるいは、以前支払った事務所の敷金が返金された可能性もあります。見積書の控えや注文書、請求書の控えなどを保管しておくことで、初めて「商品の対価として受け取った金額である」ということを証明できるのです。

このような証明を行うためには、証憑書類を発行したり受け取ったりするだけでなく、必要に応じて提示できるように保管しておく必要があります。そのため、証憑書類は法人税法や所得税法などで、一定期間の保管が義務付けられています。

受領した請求書は原則的に原本を保存する

受領した請求書は、コピーや写しではなく、原則として原本を保存します。コピーの請求書を認めてしまうと、請求番号の一部のみを改ざんして1枚の請求書を2枚に見せかけるなど、不正が横行するリスクがあるためです。こうなると、請求書の持つ「取引の証明」という効力が弱まってしまうため、不正会計を防ぎ、請求書の信頼性を保つために原本の保存が求められます。

なお、保存しなければいけないのは、受け取った請求書のみです。自身が発行した請求書の控えを作成しなければならないといった決まりは、現在はありません。ただし、2023年10月1日のインボイス制度開始後は、発行したインボイスの控えを作成・保管することが適格請求書発行事業者の義務となります。

なお、現在も請求書の控えを作成した場合は、取引に関して作成した証憑書類としてきちんと保管する義務があります。

請求書は、先方(買手側)に支払いを要求するために発行する重要度の高い書類です。どんな請求書をいつ提出したのか、わかるように記録を残しておくべきでしょう。一切の控えがないとなると、「請求したはずなのに入金されない」といった事態が起こったとしても、本当に請求しているのかといった履歴をたどることができません。確認を行うためにも請求書控えを作成することをおすすめします。

その他の証憑書類も保管が必要

請求書以外にも、領収書や納品書など、取引を行う中で多数の証憑書類が発行されます。このような書類を受け取ったときや控えを作成したときも、請求書と同様に保管が必要です。ただし、保管期間は書類の種類や事業主の状況によって異なります。

なお、2022年1月から電子帳簿保存法が改正されましたが、改正内容は保存方法に関する事項です。保管期間については、従来と変わりません。

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さまざまなケースにおける請求書の保管期間

証憑書類である請求書は、法律によって一定期間保管しなければならないと定められています。個人事業主、法人、副業をしているなどの理由で雑所得がある方、適格請求書発行事業者の方、それぞれについて、ケース別で請求書の保管期間を解説します。

なお、前述のとおり、自分が発行した請求書については、現在は控えを作成する義務がありません。保管していなかったとしても、そもそも控えがないのであれば通常問題ありません。しかし、控えを作成した場合は、請求書を受け取った場合と同様の期間保存する必要があります。

個人事業主の請求書の保管期間は5年間

個人事業主が受け取った請求書は、原則として所得税の確定申告期限の翌日から5年間保存する必要があります。これは、所得税法によって定められていることです。なお、個人事業主は青色申告事業者と白色申告事業者に分けることができますが、どちらの場合でも保管期間は変わりません。

例:
2021年1月から12月の間に受け取った請求書をつづったファイルの保管期間

2021年分の所得税の確定申告期限は、2022年3月15日でした。よって、上記のファイルは、2022年3月16日から2027年3月15日まで保管する必要があります。

ただし、個人事業主であっても、消費税課税事業者は請求書等の書類保管期間が7年です。消費税課税事業者とは、売上に対して受け取った消費税を国に納めている事業者のことです。

個人事業主は、前々年の課税売上高が1,000万円を超えると消費税課税事業者となります。課税売上高とは、消費税が課税される取引によって得られた売上のことです。土地や有価証券の売買のような非課税取引を除く、一般的な商品やサービスの売買はすべて課税取引に該当します。

例:
課税売上高が1,000万円を超えた年度もある個人事業主の場合

2019年の課税売上高 1,200万円
2020年の課税売上高 800万円
2021年の課税売上高 1,300万円
2022年の課税売上高 1,000万円

上記の事業主は、2021年が課税事業者(2019年の課税売上高が1,000万円を超える)、2022年が非課税事業者(2020年の課税売上高が1,000万円以下)、2023年と2024年は課税事業者です。

なお、青色申告の個人事業主は、現金預金取引等関係書類について、7年間の保存が義務付けられています(前々年の所得が300万円以下であれば5年)。これには、領収書や預金通帳などが該当します。また、決算関係書類や帳簿も、7年間保存しなければいけません。

請求書の保管期間は5年ですが、念のため、上記の帳簿や書類と併せて7年保存しておくと間違いが起こりにくいでしょう。誤って必要な書類や帳簿を早期に破棄してしまい、提出を求められた際に提示できないと、青色申告承認が取り消される可能性もありますので、慎重な管理を心掛けてください。

法人の請求書の保管期間は7年間が基本

法人は、受け取ったり、発行したりした証憑書類を、7年間保存しなければならないと定められています。請求書の保管期間も7年で、これは法人税法による規定です。

なお、7年というのは発行から数えて7年ではなく、該当の事業年度の確定申告提出期限(事業年度終了の翌日から原則2か月)の翌日から7年間です。法人の場合、個人事業主とは異なり、自由に事業年度を定めることができます。確定申告の時期もそれぞれの企業によって異なるため、いつが期限なのかを把握して管理してください。

例:
4月1日から3月31日を事業年度に定めている企業の、2021年分の請求書の保管期限

この企業は、2022年3月31日に事業年度が終了し、確定申告期限が2022年5月31日です。よって、請求書は2029年5月31日まで保存しなければいけません。

ただし、繰越金の欠損控除を利用する場合は、保管期間が延長されます。2008年4月1日以降に終了した事業年度においては、繰越期間が9年であることから、請求書も9年保存する必要があります。また、2018年4月1日以降に開始した事業年度については、繰越期間が10年に延長されたため、請求書の保管期間も10年です。

なお、請求書の保存期間がまちまちだと管理に支障が出る可能があるので、法人の場合、保管期間は10年に統一することをおすすめします。保管期間が経過する前に請求書を廃棄することはできませんが、保管期間よりも長く保管する分には、特に問題ありません。

雑所得を得ている方の請求書の保管期間は5年間

副業をしている方など、雑所得を得ている方のうち、前々年の該当の業務による収入が300万円を超える方は、請求書をはじめとする取引書類を5年間保存する必要があります。

雑所得に該当する収入には、事業所得に該当しないフードデリバリーやアフィリエイト、せどり、ハンドメイド作品販売などが挙げられます。一方、副業であっても休日にアルバイトをしているなど、給与をもらって働いている場合は、雑所得ではなく給与所得が該当します。

なお、上記の300万円という金額は、経費を引いた金額(所得)ではなく売上金額で判定します。所得ではないため、注意してください。

適格請求書は個人・法人問わず7年間保管する

適格請求書とは、2023年10月からスタートするインボイス制度に対応した請求書のことです。適格請求書を受け取った課税事業者が仕入税額控除を受ける場合には原則、個人か法人かにかかわらず、該当の請求書を7年間保存しなければいけません。

また、従来の請求書は控えの発行が義務ではありませんでしたが、適格請求書は控えを作成する必要があります。そのうえで、適格請求書の発行側は、控えについても7年間保存します。2023年以降は、個人事業主であっても請求書を7年間保存すれば、間違いが起こりにくいでしょう。

適格請求書には適格請求書発行事業者の登録番号を明記しなければいけません。適格請求書の発行を希望する方は、事前に適格請求書発行事業者の登録申請を行いましょう。2023年10月から適用を受けるためには、2023年3月31日までに申請をする必要があります。

令和5年度税制改正大綱において、インボイス制度について、いくつかの見直しが示されております。それにより、2023年3月31日の期限を過ぎても、2023年4月1日から2023年9月30日までの登録申請は、特に追記なしでインボイス制度開始の2023年10月1日を登録開始日として登録されます。

しかし、インボイス制度への対応には申請者の各種準備が必要となるほか、登録通知が届くまで一定の期間を要することに変わりはありません。そのため、インボイス制度への対応で登録判断をされた事業者の方は、お早めの申請をおすすめします。

なお、これらの見直し点は、税制改正大綱をもとに作成された税制改正法案の国会での可決・成立後に公布・施行となります。決定事項ではありませんので、ご注意ください。

消費税非課税事業者が適格請求書発行事業者となる場合、自動的に課税事業者になってしまう点には注意が必要です。制度を理解したうえで検討してください。

請求書を保管する際の注意点

請求書を保管するにあたって、気をつけなければならないのが2022年1月の電子帳簿保存法改正です。

この電子帳簿保存法の改正によって、2022年1月1日以降、電子データとして受け取った請求書は、原則として紙に印刷して保存することができなくなりました。ただし、2年間の猶予(正確には宥恕)があるため、完全に電子的な保存が義務付けられるのは2024年1月1日からです。猶予期間に、電子的に受け取った請求書の管理方法について検討してください。

なお、電子データとして受け取った請求書とは、下記が該当します。

主な電子データの請求書

  • メールに添付されたPDFの請求書
  • 請求システムなどを使って電子的に発行された請求書
  • ファイル転送サービスを利用してダウンロードした請求書

さらに、自分が電子的に発行した請求書の控えについても、電子データとして保管しなければいけません。メール添付で請求書を送ったり、請求システムを利用して請求書を発行したりする行為は、個人事業主、法人問わず広く行われていることです。多くの方が該当するので、運用ルールの検討をおすすめします。

請求書をはじめとした書類の電子的なやりとりは、電子帳簿保存法上の「電子取引」に該当します。電子取引による書類は、下記の要件を満たす形で保存しなければいけません。

電子帳簿保存法による電子取引の要件
すべて満たす必要のあるもの
  • システムの概要を記載した書類などの関連書類の備え付け
  • ディスプレイおよびプリンターなどの読み取り可能装置の備え付け
  • 取引年月日およびその他の日付をはじめ、取引金額、取引先といった検索機能の確保
いずれかを満たす必要があるもの
  • 取引先のタイムスタンプがつけられた請求書および領収書の受領
  • 受領後遅れることなくタイムスタンプをつけること
  • 電子データの訂正および削除を行った場合、記録が残るシステムあるいは訂正および削除が不可能なシステムを採用
  • 訂正および削除の防止に関する事務処理規程を整備

タイムスタンプの付与や、記録が残るシステムの導入などについて、個人事業主や企業が独自に対応するのは難しい場合が多いでしょう。要件を満たせるシステムを利用するか、訂正および削除の防止に関する事務処理規程を整備する形で対応することになります。

5~10年の長期保存をスムースに行うシステムを検討しよう

請求書は、5~10年という長期間にわたって保管しなければならない書類です。さらに、個人事業主や法人が保管しなければならない書類は、請求書以外にも多数あります。これらを保管するスペースを確保し、日々漏れなくファイリングを行い、期間の経過したものを適切に処分するというのは、かんたんなことではありません。書類の電子保存も視野に入れて、適切な管理方法を検討してください。

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この記事の監修辻・本郷税理士法人

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この記事の監修辻・本郷ITコンサルティング

国内最大級の税理士法人である辻・本郷 税理士法人のグループ会社として2014年に創業。実践した数多くのDX化ノウハウをグループ内外に展開。バックオフィスに課題を抱える組織のコンサルティングから導入までをワンストップで行う。電子帳簿保存法やインボイス制度対応等、最新のコンサルティング事例にも精通。「無数の選択肢から、より良い決断に導く」をミッションとし、情報が多すぎる現代において、お客様にとっての「より良い」を見つけるパートナーを目指す。

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