領収書に貼る収入印紙に割り印を押す場所は?税制上のルールを解説
監修者: 高崎文秀(税理士)
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収入印紙に割り印を押す作業を面倒だと感じたり、きれいに押せずにイライラしたりした経験のある方がいるかもしれません。しかし、割り印を押すことには明確な理由があり、割り印を適切に押さなかった場合はペナルティを受ける可能性があります。本記事では、割り印が必要な理由や、押す位置などを解説します。
収入印紙の割り印(消印)とは?必要な理由
収入印紙の「割り印」とは、収入印紙が貼られている台紙と印紙の絵柄の部分をまたいだ状態で押された印影のことです。印紙税法に基づく正式名称は「消印」ですが、台紙と印紙を割るかたちで押印することから割り印とも呼ばれます。
割り印という言葉は、契約書を2部作成して双方が所持しておく場合に用いられるケースが多いかもしれません。この場合、2部の書類の関連性を示すために、それらをまたいだ状態で押印します。
その一方で、消印は郵便物と切手をまたいで押されるハンコとしてなじみがあるかもしれません。「何月何日消印有効」というときの「消印」です。郵便物の消印と収入印紙の消印も、「使用済み」であることを示す点で役割は同じです。
収入印紙に割り印を押すのは手間がかかるため、「省略できないか?」と考える人もいるかもしれません。しかし、割り印には収入印紙の再利用を防ぐ役割があるため、後述するように正しく押さなければペナルティの対象となります。
収入印紙を貼る位置や場所に決まりはない
収入印紙を貼る位置は、具体的に決まっているわけではありません。ただし、市販の領収書のなかには、貼り付け欄が設定されているデザインのものもあります。その場合は、設定されている場所に貼り付けます。貼り付け欄がなければ、はみ出さないように注意して空いているスペースに貼り付けます。
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収入印紙を複数貼る場合は重ねない
収入印紙を複数貼る場合は、すべての収入印紙がしっかり見えるように貼る必要があります。収入印紙どうしが重ならないように注意しましょう。横並びもしくは縦並びにそろえて貼るのが一般的です。
収入印紙に割り印を押すときのポイント
ここでは、使用できるハンコの種類や、押印前に確認しておくべきことなど、収入印紙に割り印を押す際のポイントをまとめました。
割り印は鮮明に押すこと
国税庁による解説では、割り印は「その文書と印紙の彩紋とにかけて判明に印紙を消さなければならない」と述べられています。つまり、割り印は収入印紙が貼られている台紙と印紙の絵柄部分にまたがって押されている必要があり、だれの印なのか読み取れる程度でなければなりません。インクの付けすぎでにじんだり、反対にインクがかすれて読み取れなくなったりしないよう注意しましょう。
出典:国税庁「印紙の消印の方法」
印鑑を使わず署名でも問題ない
割り印は必ずハンコを押さなければならないと考えている人もいるかもしれません。しかし、印紙税法上は署名でも問題ありません。署名する場合は、押印する場合と同様に、台紙と収入印紙にまたがるように記入する必要があります。署名は氏名でも法人名でもどちらでも構いませんが、単に斜線や二重線を引いただけでは署名には当たらず、割り印したことにはなりません。
署名する際に気を付けたいのは、消せないインクが使われている筆記具を用いることです。前述のとおり、収入印紙に割り印をする目的は再利用を防ぐことにあります。そのため、消せるインクを使用したボールペンや鉛筆で書いたものは認められません。
社印でも個人印でも問題ない
割り印を押印する場合、会社の印鑑ではなく個人の印鑑を使用しても税制上は問題ありません。代表者自身が押印する代わりに、代理人や従業員が手書きで署名してもよいとされています。また、朱肉を用いる印鑑ではなく、シヤチハタやゴム印でも認められます。代表印ではなく、企業の認印の感覚で使われている社印でも問題ありません。
このように法制上では広範囲の割り印が認められています。なお、契約書への割り印では契約を締結する本人の印鑑を押すことが一般的ですが、領収書の割り印は会計担当者など適切な権限を持っている人であれば必ずしも責任者の印鑑でなくても問題ありません。
収入印紙に欠損がないか押印前に確認する
欠けた部分がある収入印紙は、偽造の可能性があるため割り印をしても収入印紙としては認められません。一度押印してしまった収入印紙は使用済みとみなされ、後から欠損に気づいたとしても郵便局で交換してもらうことができなくなります。そのため、押印前に収入印紙に欠損がないか確認しておくようにしてください。何らかの理由で破れたり欠けたりした場合は、押印前に交換してもらいましょう。
購入した収入印紙が交換の対象となるか否かは、国税庁のサイトで確認できます。
出典:国税庁「収入印紙の交換制度」
割り印に失敗したときの対処法
うまく押印できずに印影が欠けたり、不鮮明になったり、収入印紙に割り印が重ならなかったりすることもあるでしょう。このような割り印は効力が認められません。失敗した割り印の上から押し直すとますます不鮮明になるため、重ならないよう注意して別の位置に押し直してください。
押印するときは、紙の下に印鑑マットを敷き、印鑑の真上から力を込めることが成功のコツです。
収入印紙と割り印に不備があったらどうなる?
収入印紙と割り印に不備があると、印紙税法でペナルティの対象となる場合があります。
収入印紙の貼付を忘れた場合のペナルティ
収入印紙を貼り忘れてしまった場合、過怠税が課せられることが印紙税法で規定されています。本来貼るべき収入印紙の金額と、その2倍に相当する金額を過怠税として納めなければならないため、合計では印紙税額の3倍を徴収されることになります。ただし、貼り忘れに気づいて税務署に申し出た場合、過怠税はもともと貼るべきだった収入印紙の金額とその1割に相当する金額の合計となり、印紙税額の1.1倍の額で済みます。
出典:国税庁「印紙を貼り付けなかった場合の過怠税」
このペナルティは文書を発行した側に課されるものです。収入印紙が貼られていなくても領収書自体は有効なので、受け取る側としては特に影響を受けることはありません。ただし、取引先が収入印紙を貼り忘れていることに気が付いた場合は、指摘する方が親切です。
割り印を忘れた場合のペナルティ
収入印紙に割り印を忘れた場合についても、印紙税法でペナルティが規定されています。割り印を忘れてしまった場合には、その収入印紙に相当する金額の過怠税が徴収されます。
出典:国税庁「No.7131 印紙税を納めなかったとき」
収入印紙も割り印も不要なのは電子契約
ここまで述べてきたように、収入印紙と割り印には印紙税法で定められた厳格なルールがあり、適切に対応する必要があります。ただし、条件によっては領収書に収入印紙の貼り付けが不要なケースもあります。例えば、購入額が5万円未満の領収書や、電子データとして発行したPDF形式の領収書には収入印紙も割り印も不要です。
そのため、印紙税を節約したい場合や、収入印紙の貼り付けや割り印をする手間を省きたい場合は、電子契約にすることをおすすめします。
電子契約サービスを利用するメリット
収入印紙の額は領収書に記載の受取金額に応じて増えていきます。例えば受取金額が5万円であれば収入印紙代は200円ですが、受取金額が大きく、契約数が多くなればなるほど、印紙代の負担が増えます。そのため、収入印紙のいらない電子契約に切り替えることは、経費の削減につながります。
また、郵送する場合、収入印紙を貼って割り印を押す、封筒を用意して宛名を書く、ポストに投函する、郵便局に持参するといった担当者の負担をなくすことにもなります。印鑑がなくてもいつでも書面を作成し、メールなどで送付できるため、リモートワーク下での契約が可能になるうえ、印刷代や郵送代といったコストもカットできます。このように、電子契約サービスは業務の効率化に寄与します。
電子契約であれば収入印紙の貼付と割り印が不要!
受取金額が5万円以上の領収書を発行する際には、収入印紙を貼って割り印を押すことが印紙税法で定められています。印紙の絵柄と台紙をまたいで押印するか、もしくは自筆で署名するのが決まりです。収入印紙の貼り付けや割り印を忘れると、過怠税が徴収される場合もあるので注意が必要です。ただし、電子契約にすれば収入印紙の貼付と割り印が不要になります。
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この記事の監修者高崎文秀(税理士)
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役
早稲田大学理工学部応用化学科卒
都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業し、現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また通常の税理士業務の他、一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行っている。
