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注文書に収入印紙は基本必要ない|収入印紙が必要になる5つのケース

監修者:小林祐士(税理士法人フォース)

2024/06/01更新

「注文書に収入印紙が必要になるのは、いくらからなんだろう?」
「注文書に収入印紙を貼るのはどうして?」

と、悩んでいませんか?

結論から言うと、本来、注文書に収入印紙を貼る必要はありません。

ただ印紙税法に定められた課税文書に当てはまる場合は収入印紙が必要となります。
具体的には、注文書が契約書の代わりになっている場合などのいくつかのケースです。

もし「〇円以上だから収入印紙が必要」という間違った知識で覚えていると、必要な書類に収入印紙を貼り忘れたり、貼らなくてよい注文書に余計に収入印紙を貼ってしまう、というミスをしてしまうかもしれません。

そこでこの記事では、注文書に収入印紙が必要になる理由を分かりやすく解説するとともに、注文書に収入印紙を貼る場合の具体例や、貼るべき収入印紙の金額、収入印紙の正しい貼り方など、解説します。

基本的に注文書に収入印紙は不要

冒頭で説明した通り基本的に注文書に収入印紙は不要です。

しかし例外として、注文書に収入印紙が必要となるケースがあります。

まずは、それぞれの理由を順に説明します。

  • 注文書に収入印紙が不要な理由
  • 注文書に収入印紙が必要になる理由

注文書に収入印紙が不要な理由

注文書は「印紙税法」に定められた「課税文書」ではないので、収入印紙は不要です。
収入印紙は本来、契約書や領収書などの課税文書に貼るものです。

そもそも収入印紙とは、「印紙税法」で定められた証票で、「課税文書」に貼るとされています。
注文書は課税文書ではないので、収入印紙がいりません。

印紙税法で定められた課税文書には、以下のようなものがあります。

課税文書の例

  • 企業間契約書
  • 不動産売買契約書
  • 土地賃貸借契約書
  • 約束手形、為替手形
  • 株券
  • 金銭消費貸借契約書
  • 預貯金証書
  • 保険証券
  • 工事請負契約書 など

印紙税法では、全部で20種類の課税文書が定められており、それぞれ「第1号文書」「第2号文書」…のように呼びます。

これら課税文書は、いずれも契約書もしくは領収書としての意味合いがあり、経済行動や金銭のやり取りが発生する書類です。
また、双方向の同意が示されている、という特長があります。

これに対して注文書は、注文する側が発行する書類で、相手側の意志が示されません。
商品やサービスの数量や金額を記載しても、相手側がそれに了承していないため、注文書を発行しただけでは金銭のやり取りが発生していないことになります。

そのため注文書は課税文書とはみなされず、収入印紙が不要となるのです。

課税文書と注文書の違い
課税文書 注文書
  • 印紙税法で定められた20種類の文書
  • 金銭のやり取りが発生している
  • 互いの同意が示されている
  • 印紙税法の課税文書に当てはまらない
  • 一方的に申込するための書類
  • 片方だけの意志が示されている

注文書に収入印紙が必要になる理由

注文書が課税文書とみなされるケースでは、収入印紙が必要になります。
注文書が契約書や領収書としての意味・役割を持つケースでは、注文書であっても契約書や領収書そのものとみなされるからです。

たとえば「注文書」と記載していても、注文された側の署名や捺印があると、それは「双方の合意が示された契約書」とみなされます。
そのため注文書であっても課税文書になり、収入印紙が必要です。

本来、注文書は片側通行の書類であり、注文する側が一方的に取引の内容をまとめたものです。
そのため基本的には収入印紙は不要です。

しかし注文された側(注文を受ける側)の意志表示も注文書内に認められる場合、それは注文書ではなく契約書とみなされます。
注文された側の署名や捺印があれば契約書、つまり課税文書になるので、収入印紙が必要です。

同様に、注文書と同時に代金が支払われたときは、「注文書」と記載されていても「領収書」とみなされることがあります。
この場合も、注文された側の署名や捺印が記載されるでしょう。

このように、一般的な注文書ではなく、課税文書としての意味や役割を持つとき、収入印紙が必要となります。

課税文書にも収入印紙が不要になる例外ケース

注文書に収入印紙が必要になる理由を解説しましたが、例外として、注文書が課税文書とみなされても、収入印紙が不要になるケースがあります。
それは、以下のようなケースです。

注文書が課税文書とみなされても、収入印紙が不要になるケース

  • 電子データのとき
  • 取引金額が1万円未満のとき
  • 物品の売買契約のとき
  • 注文書とは別に注文請書を発行しているとき など

物品の売買契約とは、単純に物品の「売ります」「買います」だけの合意を示すものです。
物品の売買契約では、物品の所有権が、売り手から買い手へ移転します。

一方、課税文書に当てはまる第2号文書は、工事や加工の請負をしており、所有権ではなく工事や加工などの経済行動を依頼し、承諾している点が大きな違いです。

注文請書とは、注文書が発行された後で「その注文を受けます」と、承諾を示す書類のことです。
注文書が実質的に契約書のような役割を持っていたとしても、その後あらためて注文請書が発行されることが決まっているなら、収入印紙は注文書には貼らず、注文請書に貼ります。

注文書に収入印紙が必要になる5つのケース

それでは、注文書に収入印紙が必要になる具体例を5つ紹介します。

  • 注文書が契約書の代わりになるとき
  • 工事の請負等に該当するオプションがつくとき
  • 双方の署名や捺印があるとき
  • リサイクル預託金相当額の表示があるとき
  • 手付金があるとき

それでは、早速解説していきます。

注文書が契約書の代わりになるとき

注文書が契約書の代わりになるときは、収入印紙が必要になります。
契約書は印紙税法の課税文書「第2号文書」に当てはまるからです。

具体的には「注文書の交付によって契約が成立する」といった合意をしているケースです。

こうした注文書には「注文書の交付によって契約が成立するものとする」などと明記があり、注文書の規定となっています。
このような注文書は契約書とみなされるので、収入印紙が必要です。

※見積書が出ている場合も契約書になる

注文書を作る前に、あらかじめ相手側から見積書が出ており、当該注文書に、相手側の作成した見積書に基づく申込みであることが記載されている場合も、収入印紙が必要です。
これは実質的に見積書の内容に承諾し、その上で注文をする申込書とみなされるからです。
ただし、契約の相手方当事者が別に請負等契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものは除かれます。

たとえば、建設工事の見積もりに対して申し込みをするなら、互いの合意が成立しています。
したがって契約書とみなされ、注文書であっても収入印紙が必要です。

工事の請負等に該当するオプションがつくとき

注文書の中に工事の請負等に該当するオプションがふくまれる場合、収入印紙が必要です。
これは印紙税法の第2号文書に当てはまるからです。

たとえば、新車の注文をするときにカーナビを取り付けるオプションも合わせて申し込むとします。
その場合は自動的にカーナビの取付工事が発生し、工事料金も発生します。

この取付工事を請け負う契約が必要になるため、注文書が「請負に関する契約書」とみなされるのです。

このほか、車の注文書でいえば塗装変更にも工事が発生するため、第2号文書になります。

オプションがつくときの例

  • 工事の請負がふくまれるとき
  • 物品の加工請負がふくまれるとき
  • 請負金額の変更がふくまれるとき

双方の署名や捺印があるとき

注文書を発行した側だけでなく、注文を受ける側の署名や捺印もある場合、収入印紙が必要です。
この場合は契約書とみなされ、課税文書に当てはまるからです。

注文書は本来、商品やサービスを一方的に申し込むものです。
しかし双方の署名や捺印があるなら、お互いの合意を証明した契約書である、と考えられます。

したがって、注文書に双方の署名や捺印があるときは、収入印紙が必要です。

リサイクル預託金相当額の表示があるとき

中古自動車の注文書等において、リサイクル預託金相当額の収受に関する表示が場合、収入印紙が必要です。
これは印紙税法の第15号文書「債権譲渡又は債務引受けに関する契約書」に当てはまるからです。

たとえば、新車を注文する時に、それまで持っていた車を売り、リサイクル預託金相当額を含めた売却代金を新車購入代金の一部としてあてる場合があります。

このやり取りが表示された注文書を発行する場合、「債権譲渡又は債務引受けに関する契約書」に当てはまるため第15号文書となります。

手付金があるとき

注文書の中で手付金が発生しているときは、収入印紙が必要です。
手付金があると、印紙税法の第17号文書「売上代金に係る金銭または有価証券の受取書新規タブで開く 」に当てはまるからです。

手付金とは、売買代金の一部のことを指します。
手付金が発生するということは、金銭のやり取りがふくまれています。

したがって、注文書は売上代金の受取書としての役割を持ちます。

収入印紙の金額

次に、収入印紙の金額について解説していきます。

収入印紙の金額は、注文書に記載された金額と、第何号文書に当てはまるか、で決まります。
ここでは、注文書に収入印紙が必要になるケースとしてもっとも多い第2号文書新規タブで開くを例に説明します。

第2号文書(請負に関する契約書)に必要な収入印紙
注文書に記載された金額 収入印紙の金額
金額の記載がない場合 200円
100万円以下 200円
100万円超~200万円 400円
200万円超~300万円 1,000円
300万円超~500万円 2,000円
500万円超~1,000万円 10,000円
1,000万円超~5,000万円 20,000円
5,000万円超~1億円 60,000円
1億円超~5億円 100,000円
5億円超~10億円 200,000円
10億円超~50億円 400,000円
50億円超 600,000円

ただし、建設工事の注文書で収入印紙が必要になる場合は、軽減税率が設定されています。
金額が異なるので、気を付けましょう。

建設工事の注文書(第2号文書)に必要な収入印紙
注文書に記載された金額 収入印紙の金額
200万円以下 200円
200万円超~300万円 500円
300万円超~500万円 1,000円
500万円超~1,000万円 5,000円
1,000万円超~5,000万円 10,000円
5,000万円超~1億円 30,000円
1億円超~5億円 60,000円
5億円超~10億円 160,000円
10億円超~50億円 320,000円
50億円超 480,000円

収入印紙の金額は、第何号文書かによって異なります。

法改正があると変更されることもありますので、あらかじめ国税庁のウェブサイト新規タブで開くで確認するのがおすすめです。

続いては、注文書に収入印紙を貼る場合の、正しい貼り方について解説します。

収入印紙の貼り方について、ポイントとなるのは次の2点です。

  • 割印の押し方
  • 収入印紙を貼る場所

それでは、早速解説します。

割印の押し方

注文書に収入印紙を貼るときは、必ず割印を押しましょう。
割印がされていない場合、印紙税法の規定による過怠税の対象になってしまうからです。

割印とは、収入印紙と注文書にまたがって印影が残るように、印鑑を押すことです。
割印をすることで、収入印紙の再利用を防ぎ、収入印紙と文書がひとつのものだと示したり、文書の偽造・複製を防ぐことができます。

割印の押し方

印鑑は角印、丸印、どちらでも構いません。
印鑑がない場合、油性ボールペンの手書きで代用することもあります。

収入印紙が複数枚ある場合は、またがって押したり、1枚1枚に割印を押しても、どちらでも構いません。

いずれの割印でも、課税文書となる注文書に収入印紙を貼るときは、必ず割印を押しましょう。

収入印紙を貼る場所

収入印紙を貼る場所は、左上が一般的ですが、右上や、右下のこともあります。
収入印紙を貼る場所については、特に定めはありません。

収入印紙を貼る場所は、特に定めがない

収入印紙を貼る場所は厳密に決められていないので、双方で相談して決めるのが良いでしょう。

注文書と収入印紙のよくあるQ&A

最後に、注文書と収入印紙のよくあるQ&Aをまとめます。
ぜひ参考にしてください。

注文書に収入印紙が必要なのに、貼り忘れたらどうなる?

「過怠税」が加算されてしまうことがあります。

過怠税は、通常の収入印紙の金額の2倍です。
本来、貼るべき収入印紙の金額にプラスして過怠税を支払うことになり、合計で3倍の金額がかかってしまいます。

ただし収入印紙を貼り忘れたことに気が付いた段階で「印紙税不納付事実申出書」を税務署に提出すれば、印紙税額の0.1倍(合計で1.1倍)で済みます。

収入印紙に消費税はかかる?

かかりません。
ただし、郵便局やコンビニエンスストアで購入した場合に限ります。

金券ショップなど一部販売店で購入した場合、消費税がかかる場合があります。

収入印紙の金額を間違えたらどうなる?

注文書から作り直す必要があります。

収入印紙に割印を押してしまった場合、再利用できないので、別途、新しい収入印紙を用意しなければなりません。

  • 割印を押してしまった場合でも、税務署に対して所定の申請書を提出することにより還付を受けられる場合があります。
ひとつの注文書が何種類もの課税文書に当てはまるとき、収入印紙の金額は?

最も高い税率の文書に該当するとして計算します。

たとえば、注文書の内容が、以下のような3種類の性質を持っているとします。

  • 第2号文書(請負に関する契約書)の金額が300万円以下(収入印紙1,000円
  • 第14号文書(有価証券の寄託に関する契約書)の金額が100万円(収入印紙200円)
  • 第17号文書(売上代金にかかる金銭の受取書)の金額が30万円(収入印紙200円)

この場合、収入印紙の金額がもっとも高い第2号文書に当てはまるということです。

収入印紙の金額は1,000円となり、第14号文書と第17号文書の分の収入印紙は不要です。
すべての収入印紙代を合算する必要はありません。

注文書に収入印紙を貼るのはどっち?

注文書を作った側が収入印紙を用意し、貼ります。

収入印紙はどこで買うの?

収入印紙は、郵便局やコンビニエンスストアで買うことができます。

ただしコンビニエンスストアでは金額が限られていたり、在庫がまちまちになっていることがあります。
郵便局であれば、どの収入印紙も在庫が十分だと思ってよいでしょう。

まとめ

注文書に原則として収入印紙が不要な理由

注文書は「印紙税法」に定められた「課税文書」ではないから。

例外として、注文書に収入印紙が必要になる理由

注文書が実質的に「課税文書」の役割をしているときは収入印紙が必要。

※ただし、以下のケースは課税文書が不要

  • 電子データのとき
  • 取引金額が1万円未満のとき
  • 物品の売買契約のとき
  • 注文書とは別に、注文請書を発行しているとき

注文書に収入印紙が必要になる5つのケース

理由
①注文書が契約書の代わりになるとき 請負に関する契約書は課税文書の第2号文書に当てはまるから
②工事の請負等に該当するオプションがつくとき 工事請負、加工請負がふくまれることになり、請負に関する契約書(第2号文書)に当てはまるから
③双方の署名や捺印があるとき 実質的に契約書(第2号文書)とみなされるから
④リサイクル預託金相当額の表示があるとき 債権譲渡に関する契約書(第15号文書)とみなされるから
⑤手付金があるとき 手付金は売買代金の一部なので、売上代金の受取書(第17号文書)に当てはまるから

注文書に収入印紙を貼るときの、正しい貼り方

①必ず割印を押す

  • 注文書と収入印紙がひとつのものだと示す効果がある
  • 収入印紙の偽造や複製を防ぐ
  • 割印(消印)がないと、過怠税が課されてしまう

②収入印紙を貼る場所に明確な定めはない

  • 注文書の左上が多いが、右上や右下でもOK
  • 双方で相談して場所を決めるのがよい

注文書と収入印紙のよくあるQ&A

①収入印紙を貼り忘れたらどうなる?

過怠税(通常の2倍)が加算されてしまうこともある。
印紙税不納付事実申出書を税務署に提出すれば、通常の1.1倍で済む。

②収入印紙に消費税はかかる?

郵便局やコンビニエンスストアで購入すれば、かからない。
ただし金券ショップなどで購入すると消費税がかかることがある。

③収入印紙の金額を間違えたらどうなる?

注文書から作り直さなければいけない。
割印をしてしまった収入印紙は再利用不可なので、新しい収入印紙を用意する。

④ひとつの注文書がいくつもの課税文書に当てはまるとき、収入印紙はいくら?

最も高い税率の文書に該当するとして計算する。

⑤注文書に収入印紙を貼るのはどっち?

注文書を作った側。

⑥収入印紙はどこで買う?

郵便局やコンビニエンスストアで購入できる。
郵便局であれば在庫を十分に確保している。

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この記事の監修者小林祐士(税理士法人フォース)

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