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個人事業主も源泉徴収する必要はある?計算方法や納付方法を解説

2024/04/18更新

この記事の執筆者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

源泉徴収とは、給与や賞与などを支払う際に、支払う側があらかじめ所得税・復興特別所得税を差し引いて納税する制度です。個人事業主として事業を拡大し、従業員を雇用するとなった場合に、どのような条件で給与からの源泉徴収が義務付けられるか、よくわからないという人もいるのではないでしょうか。

本記事では、源泉徴収をする場合の源泉徴収票作成方法や源泉徴収する金額の計算方法、源泉徴収した税の納付などについて解説します。

個人事業主は源泉徴収をする側と受ける側のどちらにもなる可能性がある

源泉徴収とは、給与や賞与、退職金、料金・報酬などを支払う際に、支払う側があらかじめ所得税・復興特別所得税を差し引いて納税する制度です。個人事業主の場合、源泉徴収をする側と受ける側、どちらにもなる可能性があります。

ここでは、個人事業主が源泉徴収をする場合と、個人事業主が源泉徴収を受ける場合について解説します。

個人事業主が源泉徴収をする場合

個人事業主であっても、従業員を雇用すれば源泉徴収が義務付けられます。従業員に給与を支払う場合には、給与から所得税・復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。

所得税・復興特別所得税を源泉徴収して、国に納付する義務を負う個人事業主や法人は、源泉徴収義務者と呼ばれます。源泉徴収が必要な従業員を雇用すると、自動的に源泉徴収義務者になるため、税務署への届出が必要です。従業員を雇用して源泉徴収義務者になった日から1か月以内に、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書新規タブで開く」を所轄の税務署に提出しましょう。

給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

ただし、雇用対象が常に2人以下の家事使用人だけの場合は、源泉徴収義務者にはなりません。具体的には、自宅の掃除や調理などをするハウスキーパーを雇っている場合などが該当します。一方、事業のために従業員を雇用しているのであれば、人数にかかわらず源泉徴収義務者です。

なお、源泉徴収義務者になった個人事業主は、所得税法で定められた特定の職種の個人に、報酬を支払った際にも源泉徴収義務が生じます。一方、従業員を雇用しておらず、源泉徴収義務者ではない個人事業主は、同様の報酬を支払っても源泉徴収は不要です。

源泉徴収の対象となる主な職種と報酬の内容は以下のとおりです。

源泉徴収の対象となる主な職種と報酬の内容
源泉徴収対象となる職種 主な報酬の内容
税理士、社会保険労務士、司法書士、弁護士などの士業(行政書士を除く) 士業の業務に関する報酬
デザイナー 広告、商品、ロゴ、内装などのデザイン料
作家、ライター 原稿料
コンサルタント、顧問 経営コンサルティングや指導に対する報酬
セミナーなどの講師 講演料
通訳・翻訳者 通訳・翻訳料
モデル、芸能人、コンパニオンなど 出演料
外交員 売上に連動する歩合部分(固定給がある場合、固定給は給与にかかる源泉徴収税として計算)

個人事業主が源泉徴収を受ける場合

個人事業主は職種に応じて、受け取る報酬から所得税・復興特別所得税が源泉徴収される場合があります。デザイナーやライター、芸能人、士業などとして働く個人事業主は、原則として報酬から所得税・復興特別所得税が源泉徴収されます。取引先から所得税・復興特別所得税が源泉徴収されている場合は、源泉徴収された金額を記録し、確定申告で申告しましょう。

1年間の所得を基に計算した所得税・復興特別所得税の額から、すでに源泉徴収されている税額を差し引いて、最終的な納税額が算出されます。源泉徴収された額が、確定申告で決まった納税額を上回っている場合には、還付金を受け取ることが可能です。

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源泉徴収をする場合は源泉徴収票の作成が必要

源泉徴収をする場合は、源泉徴収票の作成が必要です。個人事業主であっても、従業員に給与を支払っていれば、1年間の給与額が確定した時点で、年末調整を行って源泉徴収票を作成しなければなりません。源泉徴収票は、税務署などで入手できるほか、給与計算ソフトなどでも作成可能です。

なお、源泉徴収票は、原則として年末調整後の、12月または翌年1月に従業員に交付します。ただし、中途退職者については、退職から1か月以内に退職時点までの支払金額を記載した源泉徴収票を発行する義務があります。また本人への交付とは別に、翌年1月31日までに、従業員が居住している市区町村に源泉徴収票と同内容の「給与支払報告書」を提出しなければなりません。

源泉徴収票の記入欄と記載内容は以下のとおりです。

給与所得の源泉徴収票の記入欄

源泉徴収票の主な記載内容

  • 1.
    支払金額:1年間に支払われた給与の合計額
  • 2.
    給与所得控除後の金額:支払金額から給与所得控除を引いた金額。給与所得控除は給与収入から一定額を差し引く控除
  • 3.
    所得控除の額の合計額:基礎控除や扶養控除、社会保険料控除などの総計
  • 4.
    源泉徴収税額:源泉徴収で差し引かれた所得税額と年末調整による精算額の合計額
  • 5.
    社会保険料等の金額:1年間に支払った社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料)の合計額
  • 6.
    生命保険料の控除額:生命保険料や個人年金保険料の控除額
  • 7.
    地震保険料の控除額:地震保険料や(旧)長期損害保険料の控除額

源泉徴収票を従業員に渡すタイミングについては、以下の記事で詳しく解説しています。

源泉徴収する金額の計算方法

源泉徴収する金額の計算方法は、徴収の対象が給与、賞与、退職金、料金・報酬のどれに当てはまるかで異なります。

ここでは、源泉徴収する金額の計算方法について解説します。

給与の源泉徴収の場合

給与から源泉徴収する場合、源泉徴収する金額は「給与所得の源泉徴収税額表新規タブで開く」で確認できます。「給与所得の源泉徴収税額表」は、主に月給制で使用する月額表と、日払いや週払いで使用する日額表の2種類があります。従業員に月給で給与を支給している場合は、月額表を使いましょう。

「給与所得の源泉徴収税額表」を用いた、源泉徴収する金額の計算手順は以下のとおりです。

給与から源泉徴収する場合の計算手順

  • 1.
    給与額から社会保険料や非課税通勤費を引いた金額を求める
  • 2.
    従業員の配偶者や扶養親族の人数を確認する
  • 3.
    「給与所得の源泉徴収税額表」の「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」欄から「1」の数字に該当する箇所を見つける
  • 4.
    該当の行の「扶養親族等の数」から「2」の人数に該当する欄を見つける
  • 5.
    「4」の欄の金額が源泉徴収する金額に該当する

なお、給与計算ソフトを使用している場合、源泉徴収する金額は「電算機計算の特例」という計算方法で算出できます。「電算機計算の特例」は「給与所得の源泉徴収税額表」を用いずに、決められた計算式を基に源泉徴収する所得税額を算出する計算方法です。

賞与の源泉徴収の場合

賞与から源泉徴収する場合、源泉徴収する金額は、「賞与から源泉徴収する金額=(賞与の金額-社会保険料額)×所得税率」で算出します。所得税率は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表新規タブで開く」で確認できます。

賞与から源泉徴収する場合の計算手順は以下のとおりです。

賞与から源泉徴収する場合の計算手順

  • 1.
    賞与支給月の前月の給与額から社会保険料額を引く
  • 2.
    従業員の配偶者や扶養親族の人数を確認する
  • 3.
    「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の「2」の人数に該当する列を確認する
  • 4.
    「3」の列から「1」の金額に該当する欄を見つける
  • 5.
    該当の行の左側「賞与の金額に乗ずべき率」を確認する
  • 6.
    賞与から社会保険料額を引いた金額に「5」の税率をかけると、源泉徴収する金額が算出できる

ただし、給与の10倍を超える賞与を支払うようなケースは上記とは異なる特殊な計算が必要となる場合があります。

退職金の源泉徴収の場合

退職金から源泉徴収する場合、源泉徴収する金額は、退職者が「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているかどうかによって異なります。提出していない場合は、「退職金の支払金額×20.42%」で算出される所得税・復興特別所得税の源泉徴収が必要です。

「退職所得の受給に関する申告書」が提出されている場合は、国税庁のWebサイト新規タブで開くで閲覧できる「源泉徴収のための退職所得控除額の表」と「退職所得の源泉徴収税額の速算表」を活用して、源泉徴収する金額を計算できます。

退職金から源泉徴収する場合の計算手順は以下のとおりです。

退職金から源泉徴収する場合の計算手順

  • 1.
    「源泉徴収のための退職所得控除額の表」で退職所得控除額を確認する
  • 2.
    「(退職金の額-退職所得控除額)×1/2」の計算式で、退職所得額を求める
  • 3.
    「2」を「退職所得の源泉徴収税額の速算表」に当てはめて源泉徴収する金額を求める

料金・報酬の源泉徴収の場合

料金・報酬から源泉徴収する場合、源泉徴収する金額は、支払う料金・報酬の額に応じて計算式が決まっています。

支払金額と源泉徴収する額は以下のとおりです。

支払金額と源泉徴収する額
支払金額 源泉徴収する額(1回の支払いにつき)
100万円以下 支払金額×10.21%
100万円超 (支払金額-100万円)×20.42%+10万2,100円

一般的に支払金額には消費税を含めますが、請求書などに税抜金額が明示されている場合は、消費税抜きの金額を基に源泉徴収する額を計算できます。なお、支払う対象の職種によって、計算式が変わる場合があります。

主なケースは以下のとおりです。

源泉徴収の計算式が変わる支払対象と源泉徴収する額
支払対象 源泉徴収する額
司法書士への支払い(登記費用など) (支払金額-1万円)×10.21%
外交員への支払い (支払金額-12万円)×10.21%※
  • 外交員報酬については、1回の支払あたりではなく、1か月あたりの支払額から12万円を差し引いて源泉徴収税額を計算する

源泉徴収した所得税・復興特別所得税を納付する方法

源泉徴収した所得税・復興特別所得税は、納期限までに適切に納付する必要があります。ここでは、所得税・復興特別所得税を納付する方法について解説します。

納付の期限

源泉徴収した所得税・復興特別所得税は、原則として翌月10日までに税務署に納付します。例えば、1月25日に支給した給与から源泉徴収した所得税・復興特別所得税は、2月10日(土日祝日に重なる場合は、次の平日)までに納付しなければなりません。

納期限までに納付しなかった場合、ペナルティとして所得税額の5%(税務調査などによる税務署からの指摘による場合は10%)の不納付加算税が発生します。また、源泉徴収した所得税・復興特別所得税は、給与、賞与、退職金、料金・報酬の種類によって納付書が異なるため、それぞれの種類に対応した納付書で納付します。

ただし、給与を支払う従業員が常時10名未満の場合、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書新規タブで開く」を管轄の税務署に提出すれば、納付回数を半年に1回にすることが可能です。申請期限は定められていないため、任意のタイミングで申請でき、申請の翌月分の給与から適用されます。

特例を利用した場合の納期限は以下のとおりです。

源泉所得税の納期の特例を利用した場合の納期限
徴収対象 納期限
1月から6月までに支払った給与などに対して源泉徴収した所得税・復興特別所得税 7月10日
7月から12月までに支払った給与などに対して源泉徴収した所得税・復興特別所得税 翌年1月20日

納付手続き

源泉徴収した所得税・復興特別所得税は、金融機関や税務署窓口か、e-Taxで納税できます。金融機関や税務署窓口で納付する場合は、個人事業主の事務所あてに郵送されてくる「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(一般用)新規タブで開く」に必要事項を記入して提出します。届かない場合は税務署に交付を依頼しましょう。

一方、e-Taxで計算書と同様のデータを作成・送信すれば、キャッシュレスでの納付が可能です。キャッシュレスでの納付方法には、口座振替やインターネットバンキング、クレジットカードなどがあります。

税務署への提出が必要な書類

源泉徴収をしている場合、月々の徴収と納付だけでなく、年に1度、税務署に「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表新規タブで開く」を提出する必要があります。提出の目的は、1月1日から12月31日までの給与などの支払額と、源泉徴収した金額のとりまとめです。提出の期限は翌年1月31日(土日祝日に重なった場合は次の平日)で、所轄の税務署やe-Taxなどで提出します。

源泉徴収のしくみを理解したうえで確定申告をしよう

個人事業主は、源泉徴収をする側と受ける側、どちらにもなる可能性があります。源泉徴収をする場合は、源泉徴収のしくみを理解したうえで、源泉徴収票などを作成する必要があります。また、源泉徴収を受ける場合も、正しく確定申告をするためには、毎月適切に源泉徴収された金額を管理することが大切です。

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この記事の執筆者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
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