せどりで確定申告は必要?必要な方・不要な方をわかりやすく解説
監修者: 齋藤一生(税理士)
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フリマアプリやオークションサイトなどのプラットフォームが整ったことで、仕入れ値と販売額の差額で儲ける「せどり」を始める方が増えている ようです。
本業、または副業としてせどりを行った場合、所得の額によっては確定申告が必要となります。では、いくらぐらいの所得を得ると、確定申告が必要になるのでしょうか。
ここでは、せどりで所得があった方を本業と副業の場合に分けて、確定申告が必要・不要となるケースや、青色申告をするメリットについても解説します。
せどりで得た所得は確定申告が必要となる場合がある
さまざまな事業と同様に、せどりによる所得も一定金額を超えると、確定申告が必要になります。ここでいう所得とは、収入から、その収入を得るために支出した経費を差し引いた金額のことです。
例えば、副業としてせどりを営んでいて、年間の仕入れ費用の合計が10万円、インターネット回線料金などの必要経費が2万円、総売上(収入)が20万円だったとします。この場合、「20万円-10万円-2万円=8万円」で、8万円が所得となります。
せどりとは安い仕入れ価格と販売価格の差額で稼ぐこと
そもそもせどりとは、商品を安く仕入れて仕入れ値より高値で売り、その差額で儲けることです。もともとは「価値ある書籍を安く仕入れて、他の古書店に相応の評価額で売ること」を指しましたが、近年では書籍以外の商品の売買にも使われるようになりました。転売と区別されることもありますが、実店舗やオンラインショップなどから商品を仕入れて転売することも、実質的にはせどりと同じです。
副業・本業にかかわらずせどりを事業として営む場合、原則として中古品を取り扱うなら古物商許可証を取得しなければなりません。また、2019年に施行された「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(チケット不正転売禁止法)などで、特定の商品の転売が違法となることにも注意が必要です。薬物や危険物、偽ブランド品、盗品、アルコール類、チケットなどの転売は、法律違反となる場合があります。
確定申告とは1年間の所得や納税額を計算して、税務署に申告すること
確定申告とは、事業者が1年間の所得を計算して納税額を算出し、税務署に申告する一連の手続きのことです。毎年1月1日~12月31日までの所得を計算し、その所得から1年間の納税額を算出して、原則として翌年の2月16日~3月15日(土日祝日の場合は翌平日)に申告を行います。
なお、確定申告には青色申告と白色申告といった2種類の申告方法があり、それぞれ申告の際に提出する書類や適用を受けられる特典、要件などが変わります。
確定申告については以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
せどりで確定申告が必要な方
せどりから得た所得が一定金額を超えると、確定申告が必要です。ただし、せどりを本業として行っているのか副業として行っているのかによって、その金額は異なります。
せどりで確定申告が必要になるケースを、以下でそれぞれ詳しく説明します。
本業としてせどりを行い、年間所得が48万円を超える方
本業としてせどりを行っている場合には、年間所得が48万円を超える方は確定申告が必要になります。所得税を計算する際に、課税所得から差し引ける基礎控除の金額が48万円であるため、課税所得が48万円を超えると基礎控除を差し引いた後の所得がプラスになり、確定申告をしなければなりません。
なお、課税所得が48万円以下であっても、払い過ぎた所得税を返還してもらう場合には、還付申告が必要です。
副業でせどりを行う給与所得者で、年間所得が20万円を超える方
本業で企業から給与を受け取り、副業としてせどりを行っている会社員などの場合には、給与以外のせどりを含めた所得が年間20万円を超えると、確定申告が必要です。所得税法では、給与所得および退職所得以外の金額が20万円以下であれば確定申告は不要と定められているため、その基準を超えた場合は確定申告をしなければなりません。
なお、給与所得および退職所得以外の金額が20万円以下で所得税の確定申告が不要でも、1円でも利益が出ていれば、お住いの自治体に住民税の申告が必要です。
また、医療費控除や住宅ローン減税などで給与所得者が、確定申告を行う場合には、せどりで得た所得が20万円以下でも含めて、すべての所得を申告が必要です。ちなみに2024年(令和6年)分を確定申告する場合には、定額減税分も確定申告書に記載をしないと所得税分の定額減税が無効になってしまいます。そのため、納税者であるご自身と家族分も含めて、定額減税対象者を漏れなく確認して記載漏れをしないようにしましょう。
せどりで確定申告が不要な方
せどりで得た所得があっても、確定申告が不要な方もいます。上記で紹介した確定申告が必要なケースに当てはまらない方だけでなく、所得税法の生活用動産に当てはまるような生活用品のみを販売した方も確定申告は不要です。
なお、生活用動産とは生活に必要とされる不動産以外の財産のことで、家具や家電、衣服、バッグ、書籍、通勤用の自動車などが該当します。ただし、譲渡金額が30万円を超える貴金属や骨とう品などは対象外となるため、注意しましょう。
例えば、事業目的としてではなく、専業主婦や学生などがメルカリやYahoo!オークションで不用品などを売った場合には、売った商品が所得税法の生活用動産に当てはまるのであれば非課税となるため、確定申告は不要です。
せどりで確定申告を行う場合には、青色と白色のどちらで申告する方がよい?
青色申告を選択する方が税制上のメリットは大きくなるものの、所得の種類が事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかに当たる場合にしか青色申告は選択できません。会社員の方がせどりを副業で行う場合、その所得は雑所得扱いとなることが多いため、白色申告を選択することがほとんどです。
ただし、せどりが副業でも一定の要件を満たす場合には、事業所得と認められ、青色申告を選択できます。
せどりをする方が青色申告をするメリット
青色申告は、原則として複式簿記での記帳が必要となり、提出書類も多くなる代わりに、確定申告では数々の税制上の優遇が認められています。せどりをする方が青色申告をすると、以下のようなメリットがあります。
最大65万円の青色申告特別控除が適用できる
青色申告を行うと、最大65万円の青色申告特別控除を適用できます。青色申告特別控除の金額は、要件の違いにより、10万円、55万円、65万円のいずれかになります。なお、青色申告を行いたい場合は、申告をしようとする年の所定の期限までに、税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。
青色申告特別控除については以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
家族に支払う給与を経費にできる
青色申告をする方は、青色事業専従者給与と呼ばれる制度によって、生計を共にしている家族に支払った給与を必要経費に算入できます。例えば、専業主婦である妻が、事業の経理業務を担当しているような場合が当てはまります。なお、青色事業専従者給与として家族の給与を必要経費に算入するためにはいくつかの要件があるため、あらかじめ確認しておきましょう。
青色事業専従者給与については以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
赤字が出た場合、その損失を3年間繰り越せる
青色申告では事業が赤字だった場合、その損失を最大3年間繰り越して翌年以降の所得から控除できます。
例えば、1年目が50万円の赤字、2年目が200万円の黒字だった場合、1年目の50万円の赤字分を翌年に繰り越して、2年目の所得から差し引くことが可能です。その際の2年目の所得は、「200万円-50万円=150万円」になります。繰り越された赤字の分、翌年以降の課税所得を減らすことができるため、納税額の軽減につながります。
ただし、本業の給与所得がある人の場合は、損失発生年において給与所得と損失が相殺されて税金計算されます。これを損益通算と言います。
確定申告での損失の繰り越しについては以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
30万円未満の固定資産を、支払った年の経費にできる
青色申告をすると少額減価償却資産の特例の利用が可能になり、取得価額が30万円未満の減価償却資産であれば、その費用の全額を購入年の必要経費として計上できます。
基本的に、取得価額10万円以上の資産は減価償却資産となり、購入年に全額を必要経費として計上することはできません。ただし、青色申告の少額減価償却資産の特例を利用すれば、パソコンや中古車などを購入した年にまとめて必要経費として計上できるため、その分取得年の利益を圧縮して、納める税金額を抑えることが可能です。
ただし、少額減価償却資産の特例は2026年3月末までの期間限定の制度で、利用対象者も限定されているため、利用を検討する前に制度内容をよく確認しておきましょう。
少額減価償却資産の特例については以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
せどりでクラウド会計ソフトを利用するメリット
青色申告には紹介したようにさまざまなメリットがありますが、複式簿記による記帳が必要になる場合があるなど、白色申告に比べれば申告手続きに手間や時間がかかります。そのため、「メリットは魅力的だけど、複式簿記での記帳はハードルが高そう」と思われる方もいるかもしれません。
そのようなときに頼りになるのが、クラウド会計ソフトです。クラウド会計ソフトを利用することでどのようなメリットがあるのか、確認しておきましょう。
せどりの仕入れで使うクレジットカードや電子マネーをクラウド会計ソフトに連携できる
せどりの仕入れで使うクレジットカードや電子マネーを連携できることが、クラウド会計ソフトを利用するメリットです。
せどりの仕入れを行うのはメルカリやYahoo!オークションといった、フリマアプリやオークションサイトが中心という方が多いかもしれません。そういったインターネットでの取引では、一般的にクレジットカードや電子マネーなどが活用されています。クラウド会計ソフトを、決済に利用するクレジットカードや電子マネーと連携させておけば、自動で利用履歴の取り込みが可能です。仕訳まで自動で行ってくれるため、手間をかけずに記帳ができます。
せどりの売上が振り込まれる銀行口座もクラウド会計ソフトと連携できる
せどりの売上が振り込まれる銀行口座と連携できることも、クラウド会計ソフトを利用するメリットの1つです。
インターネットで取引したせどりの売上は、銀行口座に振り込まれます。クラウド会計ソフトを銀行口座に連携しておけば、口座の入出金歴も自動で取り込み、複式簿記形式で仕訳まで可能です。確認の手間もかからず、データ入力のミス防止にもつながります。
海外への輸出がほとんどなら消費税還付も検討する
課税事業者として、日本国内で仕入れた商品を海外に販売する事業を行っている場合には、仕入れたときに支払った消費税相当額を戻してもらう消費税還付を利用するのもおすすめです。消費税還付とは、仕入れの際に支払った消費税相当額が、販売した際に受け取った消費税相当額より小さい場合に、その差額が返金される仕組みのことです。販売先が海外の場合、販売の際に受け取る消費税相当額は0円となるため、仕入れの際に支払った消費税相当額分が返金されます。
ただし、消費税の還付を受けられるのは課税事業者であり、かつ一般課税方式で消費税を計算する事業者に限られるといったさまざまな要件があります。なお、弥生の「税理士紹介ナビ」では、豊富な経験と実績のある税理士・会計事務所を無料でご紹介しているため、消費税還付のご相談などにご利用ください。
消費税還付については以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
せどりの所得はクラウド会計ソフトを利用すれば手軽に確定申告ができる
せどりの所得が一定額を超えると、確定申告が必要になります。会社員が副業でせどりを行う場合は、雑所得での白色申告しか選べないことがほとんどですが、一定の要件を満たす場合には、事業所得として確定申告ができます。事業所得なら青色申告も選択できます。税制上のメリットが大きいため、必要要件を満たす場合は青色申告も検討してみましょう。
せどりの所得が事業所得の場合は、帳簿付けが必要です。特に青色申告を行う際には複式簿記での記帳が必要になる場合がありますが、クラウド会計ソフトを活用すれば、簿記の知識に自信がなくても記帳は難しくありません。初心者でも簡単に使える「やよいの青色申告 オンライン」なら、初年度は無料で青色申告を始められます。また、白色申告用の「やよいの白色申告 オンライン」はずっと無料で使えて、初心者や簿記知識がない方でも必要書類を効率良く作成することができます。e-Tax(電子申告)にも対応しているので、税務署に行かずに確定申告をスムーズに行えます。
せどりの所得が雑所得の場合、帳簿付けの義務はありませんが、売上や仕入・経費などの集計に帳簿がある方が便利です。
なお、「やよいの白色申告 オンライン」では、雑所得の収支内訳書と所得税の確定申告書は作成できません。もし、「やよいの白色申告 オンライン」で作成した収支内訳書から確定申告書を作成すると自動で「事業所得」に集計されます。国税庁の確定申告コーナーで、自分で収支内訳書と確定申告書に転記して申告をしてください。
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