インボイス制度は駐車場オーナーにどう影響する?収入や領収書について解説
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駐車場オーナー(貸手側)はインボイス制度に対応する必要があるのか、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。事業者(借手側)との賃貸借契約において、駐車場オーナー(貸手側)はインボイス制度の影響を受けます。ここではインボイス制度導入による駐車場オーナーへの影響について、具体例を交えて解説します。
インボイス制度とは?
インボイス(適格請求書、以下インボイスで統一)とは、一定の記載要件を満たした請求書や領収書などを指します。現行の区分記載請求書等保存方式に基づく請求書や領収書に追記が必要な情報は、以下のとおりです。
- 適格請求書発行事業者の登録番号
- 税率ごとに区分した合計額および適用税率(税抜もしくは税込)
- 税率ごとに合計した消費税額等
インボイス制度導入の目的は、事業者が行う取引における消費税率と消費税額を正しく計算することです。商品やサービスを提供する事業者(売手側)は、インボイス制度のしくみや影響についてよく理解したうえで、どのように対応するか検討しなければなりません。
インボイス制度の基本的なしくみについて、こちらの記事で解説しています。
インボイス制度は2023年(令和5年)10月1日から導入されました。2023年12月時点において登録完了の通知を受け取れるまでにかかる期間の目安は、以下のとおりです。
- e-Taxによる提出:約1か月
- 書面による提出:約1.5か月
インボイス制度の開始にあわせて知っておきたい消費税の知識について、こちらの記事で解説しています。
免税事業者と課税事業者の違い
免税事業者と課税事業者には、以下のような違いがあります。
区分 | 納税の有無 | 要件 |
---|---|---|
課税事業者 | 消費税を納める必要がある |
|
免税事業者 | 消費税の納税義務が免除されている | 上記の課税事業者の条件に当てはまらない場合 |
基準期間・特定期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は「免税事業者」です。一方、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える事業者は「課税事業者」となります。課税事業者は消費税の確定申告と納税が必要となるため、金銭的なコストや事務作業の負担が増加します。
駐車場オーナーはインボイス制度への対応が必要?
インボイス制度導入の目的は、事業者が行う取引における消費税率と消費税額を正しく把握することです。駐車場の貸付に消費税が課されるかは形態によって異なります。形態しだいでは、駐車場オーナー(貸手側)がインボイス制度導入の影響を受けない可能性があります。
貸し付ける駐車場の形態 | 具体例 | |
---|---|---|
課税取引となるケース | 駐車場施設 |
|
非課税取引となるケース | 駐車場用地
|
青空駐車場 |
適格請求書発行事業者の登録は任意で、未登録のままでも従来と同様に事業を継続できます。インボイス制度に対応するメリット・デメリットを比較して、自身(自社)の方向性を検討しましょう。
副業についてインボイス制度がどのような影響を与えるか、こちらの記事で解説しています。
インボイス制度導入が駐車場オーナーに与える影響
インボイス制度が駐車場オーナーに与える影響は、主に以下の3つです。
- インボイスを発行する場合は適格請求書発行事業者への登録が必要
- 開業したばかりでも適格請求書発行事業者は納税義務が発生
- 免税事業者の駐車場オーナー(貸手側)と取引すると事業者(借手側)は仕入税額控除できない
それぞれ順番に解説します。
インボイス制度に関する会計や請求書のシステムについて、こちらの記事で解説しています。
インボイスを交付する場合は適格請求書発行事業者への登録が必要
インボイスを交付できるのは、適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者のみです。登録を受けた事業者は、交付される「登録番号」を請求書や領収書に記載して、適格請求書発行事業者である旨を相手方に通知します。適格請求書発行事業者になるためには、登録申請書に必要事項を記入し、所定の方法による提出が必要です。
適格請求書発行事業者に登録する手順について、こちらの記事で解説しています。
開業したばかりでも適格請求書発行事業者は納税義務が発生
新しく開業したばかりの個人や設立当初の資本金1,000万円未満の法人は、原則として免税事業者に区分されます。しかし開業や法人設立と同時に適格請求書発行事業者の登録を受けると、資本金の額にかかわらず設立1期目から消費税の納税が必要です。消費税分の収入が減るため、インボイス制度に対応する場合は事業の経営にどれくらいの影響があるか、事前に把握しておきましょう。
免税事業者の駐車場オーナー(貸手側)と取引すると事業者(借手側)は仕入税額控除できない
免税事業者の駐車場オーナー(貸手側)と取引すると、事業者(借手側)は仕入税額控除ができません。納税額の増加を避けるため、免税事業者の駐車場オーナー(貸手側)は事業者(借手側)から、取引条件の見直しを求められる可能性があるでしょう。ただし、借手側の立場を利用した取引条件の一方的な変更は、独占禁止法に違反する可能性があります。政府や関係機関は、法令違反となる交渉をもちかけないようアナウンスしています。
インボイス制度導入による月極駐車場の領収書の変更点
駐車場オーナー(貸手側)から事業者(借手側)に発行する領収書がインボイスの要件を満たすためには、記載項目の追記・変更が必要です。インボイスの要件となる記載項目は以下のとおりです。
- 適格請求書発行事業者(貸手側)の氏名または名称
- 登録番号
- 取引した年月日
- 取引の内容
- 税率ごとに区分して合計した金額および適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者(借手側)の氏名または名称
口座振込によって賃料を支払っている事業者(借手側)は「インボイスの要件の一部を記載した契約書」と「通帳や振込金受取書」を併せて保存することで、仕入税額控除の要件を満たします。その場合、駐車場オーナー(貸手側)は事業者(借手側)に対して領収書を毎回交付する必要はありません。
インボイス制度によるコインパーキングのレシート(精算機)への影響
コインパーキングを営む事業者(貸手側)はインボイスの代わりに簡易インボイスの交付が認められます。簡易インボイスとは、不特定多数を相手に販売などを行う事業者が交付できる書類を指します。簡易インボイスと認められるための記載要件は以下のとおりです。
- 適格請求書発行事業者(貸手側)の氏名または名称
- 登録番号
- 取引した年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した金額(税抜または税込)
- 税率ごとに区分した消費税額等※または適用税率
なおコインパーキングはインボイスの交付義務が免除される「自販機特例」の対象にはなりません。駐車場オーナー(貸手側)は必要に応じて、簡易インボイスに対応するため精算機の交換・改修を検討しましょう。
駐車場オーナー(貸手側)の取引先(借手側)ごとにインボイス制度導入の影響を解説
駐車場オーナー(貸手側)の取引先(借手側)は以下のように大きく2つに分けられます。
- 個人(一般消費者)の場合
- 事業者の場合
この章では取引先(借手側)の特徴ごとにインボイス制度導入の影響について解説します。
個人(一般消費者)の場合
一般消費者は仕入税額控除をする必要がないため、個人の借主から受け取る賃料はインボイス制度の影響を受けません。
事業者の場合
事業者(借手側)から受け取る賃料はインボイス制度の影響を受けます。駐車場オーナー(貸手側)が適格請求書発行事業者に未登録の場合、原則として事業者(借手側)は仕入税額控除の適用を受けられません。事業者(借手側)からインボイスの交付を求められる場合、駐車場オーナー(貸手側)は対応について検討する必要があります。
中小企業がインボイス制度に取るべき対策について、こちらの記事で解説しています。
インボイス制度導入に関する駐車場オーナーの注意点
インボイス制度導入に関して、駐車場オーナーが注意するべきポイントは以下の3つです。
- 課税事業者になると消費税の納税が必要
- 免税事業者の駐車場オーナー(貸手側)は取引先(借手側)から取引条件の見直しを求められる可能性あり
- 事務作業の手間が増加
それぞれ順番に解説します。
課税事業者になると消費税の納税が必要
適格請求書発行事業者の登録を受けられるのは、消費税の課税事業者のみです。インボイスを交付するため適格請求書発行事業者になると、消費税の納税義務が発生します。従来は納めていなかった消費税分の収入が減るため、経営への影響を把握しておきましょう。
インボイス制度に免税事業者が取るべき対策について、こちらの記事で解説しています。
免税事業者の駐車場オーナー(貸手側)は取引先(借手側)から取引条件の見直しを求められる可能性あり
事業者(借手側)が借手となる場合、駐車場オーナー(貸手側)はインボイスの交付を求められます。適格請求書発行事業者未登録の駐車場オーナー(貸手側)が運営する駐車場を借りると、事業者(借手側)は仕入税額控除ができません。納税額が増えるため、免税事業者の駐車場オーナー(貸手側)は取引条件の見直しを求められる可能性もあるでしょう。取引先(借手側)からどのような対応を求められるか、駐車場オーナー(貸手側)は注意しておく必要があります。
事務作業の手間が増加
免税事業者と比較すると、適格請求書発行事業者は事務作業の手間が増加します。例えば免税事業者から課税事業者になる影響で、駐車場オーナー(貸手側)は消費税の確定申告が必要です。また適格請求書発行事業者に登録すると帳簿の作成方法が変更になり、従来のやり方から切り替える手間がかかります。必要に応じて、事務作業の手間を軽減する方法について検討しましょう。
駐車場オーナーがインボイス制度に対応する際によくある質問
駐車場オーナーが活用できるインボイス制度の特例措置はある?
インボイス制度の特例措置として設けられているのが「2割特例」です。免税事業者から適格請求書発行事業者になった場合の税負担や事務負担を軽減するための制度で、消費税の納税額を売上税額の2割にできます。2割特例の対象となるのは、以下の範囲に属する各課税期間です。
- 開始:2023年(令和5年)10月1日
- 終了:2026年(令和8年)9月30日
インボイス制度に登録する場合は、積極的に活用しましょう。
賃貸収入が1,000万円以下でもインボイス制度への対応は必要?
課税売上高1,000万円以下の場合は原則として免税事業者のため、本来であれば消費税の納付義務はありません。しかしインボイス制度への対応は、課税売上高にかかわらず取引や売上への影響を踏まえて方針を検討する必要があります。
駐車場オーナーはインボイス制度導入による影響をしっかりと理解しよう
駐車場オーナー(貸手側)は事業者(借手側)との取引において、インボイス制度導入の影響を受けます。免税事業者の駐車場オーナー(貸手側)は、事業者(借手側)からどのような対応を求められるか注意しましょう。インボイス制度に対応するメリット・デメリットを比較して、対応の方向性を検討してみてください。
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