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インボイス制度による個人事業主の運送業への影響は?高速代や請求書の対応について解説

2024/01/10更新

2023年(令和5年)10月1日に開始されたインボイス制度は、運送業へも大きな影響を与えます。個人事業主は収入の減少につながる恐れがあるため、インボイス制度への対応を慎重に判断しなければいけません。ここでは、インボイス制度の概要を説明しつつ、運送業への影響や高速道路の支払い方法など詳しく解説します。

インボイス制度とは?

インボイス(適格請求書、以下インボイスで統一)とは、一定の記載要件を満たした請求書や領収書などを指します。現行の区分記載請求書等保存方式に基づく請求書や領収書に追記が必要な情報は、以下のとおりです。

  • 適格請求書発行事業者の登録番号
  • 税率ごとに区分した合計額および適用税率(税抜もしくは税込)
  • 税率ごとに合計した消費税額等

インボイス制度導入の目的は、事業者が行う取引における消費税率と消費税額を正しく計算することです。商品やサービスを提供する事業者(売手側)は、インボイス制度のしくみや影響についてよく理解したうえで、どのように対応するか検討しなければなりません。

インボイス制度の基本的なしくみについて、こちらの記事で解説しています。

インボイス制度は2023年(令和5年)10月1日から導入されました。2023年11月時点において登録完了の通知を受け取れるまでにかかる期間の目安は、以下のとおりです。

  • e-Taxによる提出:約1か月
  • 書面による提出:約1か月

インボイス制度の開始にあわせて知っておきたい消費税の知識について、こちらの記事で解説しています。

免税事業者と課税事業者の違い

免税事業者と課税事業者には、以下のような違いがあります。

区分 納税の有無 要件
課税事業者 消費税を納める必要がある
  • 1 基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合
    • 基準期間とは、個人事業主の場合は前々年の1月1日~12月31日の期間、法人の場合は前々事業年度が対象
  • 2 特定期間における課税売上高が1,000万円
    • 特定期間とは、個人事業者の場合その年の前年1月1日~6月30日の期間、法人の場合は原則として対象事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間
  • 3 適格請求書発行事業者に登録する場合
免税事業者 消費税の納税義務が免除されている 上記の課税事業者の条件に当てはまらない場合

基準期間・特定期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は「免税事業者」です。一方、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える事業者は「課税事業者」となります。課税事業者は消費税の確定申告と納税が必要となるため、金銭的なコストや事務作業の負担が増加します。

運送会社(買手側)からみたインボイス制度

インボイス制度は買手側の消費税の仕入税額控除にどのような影響を与えるのでしょうか。

運送会社(買手側)が個人事業主(売手側)に仕事を発注した場合、一定の事項が記載された請求書を買手側が受け取れば仕入税額控除が認められていました。しかし、インボイス制度開始後に免税事業者へ発注したケースでは、インボイスがないと支払った消費税の仕入税額控除は認められません。したがって、運送会社(買手側)が免税事業者へ発注するケースでは、税負担の増加につながります。

インボイス制度開始後の個人事業主である運送業者への影響

インボイス制度開始後に個人事業主である運送業者への影響は、以下のとおりです。

  • インボイスを交付する場合は適格請求書発行事業者への登録が必要
  • インボイスの対応で事務作業が煩雑になる
  • インボイス制度に対応すると消費税の納税義務が発生する
  • インボイス制度に対応しないと報酬の値引きを交渉される可能性がある

順番に解説するので、本章を参考にインボイス制度への対応を検討してみてください。

インボイスを交付する場合は適格請求書発行事業者への登録が必要

インボイスを交付できるのは「適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者」に限られます。だれでも自由に発行できる書類ではなく、事前登録が必要です。適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、申請書に必要事項を記入し所定の方法で提出します。

適格請求書発行事業者への登録方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。

インボイスの対応で事務作業が煩雑になる

インボイス制度に対応したあと、請求書の書式は記載要件を満たした様式に変更しなければいけません。今までの請求書と比べて記載項目が増えるため、書類作成にかかる時間は増えるでしょう。また免税事業者が課税事業者へ変更した場合、新たに消費税の確定申告が必要です。取引先(買手側)から預かった消費税額を記録する必要があるため、今までより事務作業にかかる手間が増えてしまいます。

免税事業者 インボイス制度に対応すると消費税の納税義務が発生する

免税事業者がインボイス制度に対応すると、消費税の納税義務が発生するので、今まで納めていなかった消費税分の手取り収入が減ってしまいます。ただし、インボイス制度開始にともない課税事業者へ変更した場合、2割特例による控除を受けられます。売上にかかる消費税額から売上税額の8割を差し引いて納付税額を計算するため、税負担を抑えられるでしょう。

2割特例の適用期間は、2023年(令和5年)10月1日から2026年(令和8年)9月30日までです。インボイス制度への対応を検討している免税事業者の方は、経過措置の利用を検討してみてください。

免税事業者のインボイス制度対応について、こちらの記事で解説しています。

免税事業者 インボイス制度に対応しないと報酬の値引きを交渉される可能性がある

免税事業者のままでいるとインボイスが発行できないので、運送会社(買手側)から報酬の値下げ交渉を受ける可能性があります。なぜなら、運送会社(買手側)はインボイスがないと消費税の仕入税額控除が認められないので、納付税額が増えるからです。免税事業者への発注が増えると、運送会社の税負担が増えるので、消費税の支払いが増えた分の報酬を減らすことが予想されます。

ただし、運送会社(買手側)から一方的な値下げ交渉を受けた場合、独占禁止法に違反している可能性があります。インボイス制度を理由に不当な交渉を持ちかけられたら、公正取引委員会の各事務所新規タブで開くへの相談を検討してみてください。

運送業者がインボイス制度に対応したあと請求書の処理はどうなるか?

運送業者がインボイス制度に対応したあとは、記載要件を満たした請求書の発行が必須です。ここでは記載項目と保存義務について解説します。

インボイスの記載要項に則った請求書の発行が必須になる

インボイスの発行では、以下の必要項目の記入が必須です。

  • 発行事業者の氏名または名称および登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)および適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額等
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
引用:国税庁「適格請求書等保存法式の概要新規タブで開く

適格請求書の記載方法について、こちらの記事で詳しく解説しています。

インボイスは7年間の保管義務が発生する

インボイスを発行した場合、請求書の控えを交付した日の属する課税期間の末日の翌日から2ヶ月を経過した日から、7年間保存する必要があります。また2022年(令和4年)1月から施行された改正電子帳簿保存法によって、電子データで交付した請求書はデータのまま保存を義務付けられます。ただし、2023年(令和5年)12月31日までは紙での保存も認められているため、インボイス制度の開始にあわせて請求書の保管方法を見直しましょう。

インボイス制度開始後の運送業者が理解しておきたい高速代の支払いと対処法

NEXCOの公式サイトでは、インボイス対応の領収書へ変更するアナウンスが出されています。高速道路運営会社の適格請求書発行事業者登録番号を知りたい方は、一覧表新規タブで開くから参照可能です。運送業者が事前に確認しておきたい、インボイス制度開始後の高速代の支払いと対処法について、詳しく解説します。

一般料金所で支払った場合

一般料金所の場合、支払い方法に応じてインボイスの記載要件を満たした以下の書類を受け取れます。

  • 現金の支払い:領収書
  • クレジットカードの支払い:利用明細書

領収書のレイアウトは、以下のとおりです。

消費税の仕入税額控除には、上記の書類の保管が必要です。

ETCクレジットカードで支払った場合

ETCクレジットカードで高速代を支払った場合、後日請求額が確定したタイミングで、電子インボイスを受け取れます。電子インボイスはETC利用照会サービス新規タブで開くから、PDF形式でデータの出力が可能です。電子データで保管すれば、消費税の仕入税額控除が認められます。

インボイス制度開始で運送業から寄せられるよくある質問への回答

インボイス制度に対応しないとどうなる?

インボイス制度への対応は任意で決められます。ただし、課税事業者である個人事業主や法人の取引先(買手側)はインボイスを受け取れないと消費税の仕入税額控除が使えないので、納付税額が増える可能性があります。買手側の方針によっては、納付税額が増えた分の値引き交渉を受ける可能性があります。

業務委託で契約している配達員はインボイス制度の影響を受ける?

契約している企業の方針によっては、インボイス制度の影響を受けます。免税事業者の場合、インボイスが発行できないので、買手側が支払う報酬にかかる消費税は仕入税額控除が認められません。インボイス制度が開始されたあとは、値引き交渉を受ける可能性があります。

個人事業主で軽貨物の宅配をしているがインボイス制度の対応は必要?

インボイス制度に対応する必要があるかどうかは、取引先(買手側)との関係性によって異なります。免税事業者のままでも今までどおりの金額で報酬が支払われるなら、インボイス制度に対応する必要性は低くなります。

インボイス制度の開始でトラック協会の対応はどのようになる?

全日本トラック協会新規タブで開くのサイトを参照すると、事業者に向けてインボイス制度の周知をしています。セミナーを開催している都道府県もあるので、個別に質問がある方は参加を検討してみてください。

運送業で働く個人事業主はインボイス制度を理解して対処しよう

運送業で働く個人事業主へ向けて、インボイス制度の概要や影響について解説しました。インボイス制度が開始されると、免税事業者であるドライバー(売手側)は、運送会社(買手側)の方針によって値引き交渉を受ける可能性があります。ただし、免税事業者から課税事業者へ変更すると消費税の納税義務が発生するため、税負担は増えます。したがって、適格請求書発行事業者へ登録するかは、慎重に判断しなければいけません。

一方で、高速道路を利用したときの領収書や電子インボイスを保管しておけば、消費税の仕入税額控除が認められます。適格請求書発行事業者へ登録する予定の方は、請求書の保存方式を見直してインボイス制度への対応準備を進めましょう。

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