販売費及び一般管理費とは?勘定科目や内訳、分析方法を解説
監修者: 小林祐士(税理士法人フォース)
更新

「販売費及び一般管理費(販管費)」は、企業の販売及び一般管理業務に関して発生した費用の1つで、「販売管理費」や「販管費」とも呼ばれます。企業会計に必要な項目である販売費及び一般管理費とは、具体的に何を指し、また、企業の経営に活用するには、どのような分析を行えばよいのでしょうか。
本記事では、販売費及び一般管理費の勘定科目と内訳、分析方法などの他、販売費及び一般管理費を削減する方法についても解説します。
会計・経費・請求、誰でもカンタンまとめて効率化!法人向けクラウド会計ソフト「弥生会計 Next」
販売費及び一般管理費とは、原価とは異なる間接的な費用のこと
販売費及び一般管理費とは、商品・サービスの販売活動や企業の管理業務などにかかる費用を指します。これは、材料の仕入や製造など、商品・サービスを生み出すために直接必要な「売上原価」とは異なる間接的な費用です。
例えば、商品・サービスの魅力を伝えるための広告宣伝費や営業活動の費用、企業全体を支える総務・経理などの人件費・管理費などが該当します。このように、商品・サービスを売るためや企業を運営するために必要なコストが販売費及び一般管理費です。
こうした費用は、企業の経営成績を明らかにする「損益計算書」において、売上総利益(粗利)の次の項目として記載されます。売上総利益は、売上高から売上原価を差し引いて求められますが、ここから販売費及び一般管理費を差し引いたものが「営業利益」です。
営業利益とは、企業が本業でどれだけ儲けているかを示す重要な指標で、売上が多くても、販売費や管理費が過剰であれば営業利益は小さくなります。
販売費と一般管理費には具体的にどのような費用が含まれるのか、詳しく見ていきましょう。
損益計算書については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
販売費:商品の販売活動に直接要した費用
販売費は、商品を販売・宣伝するなどの販売活動に直接要した費用のことです。
具体的には、商品を販売する営業スタッフの給与や交通費、広告宣伝費、商品を発送するための配送料、出荷手数料、見本品費などが該当します。「販売管理費」や「営業経費」などとも呼ばれ、企業によってはそれぞれの区分で管理することもあります。
一般管理費:一般管理業務を行う際に必要な費用
一般管理費とは、販売活動には直接関係しないが、企業全体の運営や管理に必要な費用のことです。
売上原価や販売費とは異なり、商品の販売やサービスの提供とは直接関係があるわけではありません。例えば、総務や経理など間接部門の人件費・通信費、文房具・コピー用紙といった消耗品費、原価に含まれないオフィスの家賃・水道光熱費などがあげられます。
なお、一般管理費は固定費であることが多く、基本的には一般管理費が少なければ企業の利益につながりやすいといえます。
販売費と一般管理費が2つに区分されている理由
販売費及び一般管理費が、「販売費」と「一般管理費」に区分されているのは、両者の費用の性質が異なるためです。
販売費は、商品やサービスの販売に関する費用であり、生産量、販売量、時期によって変動する可能性があります。また、販売費のうち広告宣伝費などは、自社の判断で増減させることもできます。
それに対して、一般管理費は企業全体の業務管理にかかわる費用で、生産量や販売量の影響をあまり受けません。なお、固定費も多く含まれており、オフィスの家賃など一般管理費のうちの多くは、自社でのコントロールが難しい費用です。
このように、販売費と一般管理費とでは、費用の性質に大きな違いがあります。そのため多くの企業では、損益計算書では販売費及び一般管理費として計上していても、内容に応じて、販売費と一般管理費に区分して管理しています。
販売費及び一般管理費の勘定科目・内訳
では、具体的にはどのような費用が販売費及び一般管理費に該当するのでしょうか。ここからは、販売費と一般管理費に該当する主な勘定科目とその内訳を紹介します。
販売費の勘定科目・内訳
販売費に該当する主な勘定科目と内訳は、以下のとおりです。
販売費の勘定科目の例
勘定科目 | 内訳 |
---|---|
給与手当 | 営業部門や販売部門の従業員の給与や賞与、各種手当など |
広告宣伝費 | 広告費やチラシ印刷代、Webページへのニュースリリース掲載費、パンフレット・カタログの制作費用など |
販売手数料 | 委託業者や販売代理店などに支払う手数料や、販売に用いる決済システムの手数料など |
販売促進費 | 商品サンプルやキャンペーンの費用など |
荷造運賃 | 商品を発送するために必要な運送費用や、梱包資材の費用など |
旅費交通費 | 営業活動のために必要な交通費や宿泊費など |
広告宣伝費、販売促進費、旅費交通費については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
一般管理費の勘定科目・内訳
一般管理費に該当する主な勘定科目と内訳は、以下のとおりです。
一般管理費の勘定科目の例
勘定科目 | 内訳 |
---|---|
給与手当 | 経理部門や総務部門といった管理業務に携わる、製造原価に含まれない従業員の給与、賞与、各種手当など |
水道光熱費 | オフィスの水道代、ガス代、電気代など |
通信費 | オフィスの電話やインターネットの利用料金など |
地代家賃 | オフィスの家賃や駐車場代など |
リース料 | オフィスで使うコピー機や複合機などのリース費用など |
消耗品費 | 文房具や工具など、比較的少額の備品の購入費用など |
消耗品費については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
人件費は売上原価に含まれる場合がある
販売費及び一般管理費を計上するうえで注意したいのが、人件費の取り扱いです。業界・業種によっては、従業員の人件費が売上原価に含まれることがあるため、注意しましょう。
例えば、製造業の場合、製品の製造に関係する工場のスタッフの人件費は、売上原価(製造原価)に含まれます。同様に、製品を製造する工場の家賃や水道光熱費、製造に用いる機械の減価償却費なども売上原価です。
製造業では、小売業や卸売業などのように、単純に「原価=材料の購入費用(仕入原価)」とは限りません。製造業を営む企業が製品を販売するまでには、材料・原料・部品などを購入し、工場で機械を使って加工するなど、さまざまな製造プロセスがあります。
そのため、「原価=製造にかかったすべてのコスト」と捉え、材料・原料・部品の代金をはじめ、製造に携わる労働者の給与、工場の賃料や水道光熱費、機械・設備の費用なども売上原価(製造原価)として計上しなければなりません。また、サービス業の場合は、外注費の他、システム開発やソフトウェア開発など開発に直接かかった人件費などが売上原価に計上されます。
それに対して、製造業やサービス業の一部を除く企業では、従業員への給料は企業全般の管理がメインの仕事となるため、一般管理費に含まれます。したがって、製造業やサービス業においても、直接製造に関与しない総務・経理といった間接部門の人件費は、一般管理費として処理が必要です。
売上原価については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
販売費及び一般管理費の分析方法
販売費及び一般管理費は、企業の経営状態や経営効率を分析するうえで有効な指標となります。
一般的に、売上に対して、販売費及び一般管理費が占める割合が低いほど、経費効率が良いといえます。この経費効率を把握するための主な指標は、「販売費比率」と「販売管理費比率」の2種類です。
販売費比率:売上高に対しての販売費の割合
販売費比率は、売上高に対して販売費がどの程度かかっているかを示す指標です。
販売費比率を求めることで、売上を得るためにかかったコストの効率性を評価できます。販売費比率の計算式は以下のとおりです。
販売費比率の計算式
販売費比率(%)=販売費÷売上高×100
販売費比率が低いほど、少ない販売費で多くの売上を生み出せていることになります。ただし、販売費比率は、企業の規模や業種などによって異なります。また、販売費は企業の戦略方針によっても増減するものです。
例えば、企業の戦略上、広告宣伝に力を入れるべきと判断した時期なら、当然販売費の金額は増えるでしょう。その結果、販売費比率が高くなっても、必ずしも経費効率が悪いとは限りません。割合の数値だけにとらわれず、広い視野で分析を行っていくことが大切です。
販売管理費比率:売上に対しての販売費及び一般管理費の割合
販売管理費比率は、売上に対してどれだけ販売費及び一般管理費がかかったかを表す指標です。
前述の販売費比率とは異なり、販売費及び一般管理費の合計額を用いて、売上高に対する割合を算出します。販売管理費比率の計算式は、以下のとおりです。
販売管理費比率の計算式
販売管理費比率(%)=販売費及び一般管理費÷売上高×100
販売管理費比率は、固定費などの一般管理費も含めた経営効率を判断するために役立ちます。また、販売費比率と比較することで、固定費など一般管理費の支出状況を把握可能です。例えば、販売費比率が一定であるにもかかわらず、販売管理費比率が上昇している場合、一般管理費の増加が考えられます。
販売管理費比率の分析におけるポイント
販売管理費比率は、算出するだけでなく、分析に活用することが重要です。販売管理費比率を用いた経営分析や財務分析のポイントを解説します。
過去のデータと比較する
販売管理費比率の分析におけるポイントは、過去のデータと比較することです。
販売管理費比率を算出したら、前期や前々期の数値と比較してみましょう。過去の数値と比べてどのように変わったのかを分析すると、翌期以降の方向性を定めやすくなります。前期比で販売管理費比率が上昇している場合は、販売費及び一般管理費のうち支出が増えたか、もしくは売上が減少したということです。
特に、販売費比率に変動がないのに販売管理費比率が増えていた場合は、本来ならできるだけ削減したい一般管理費が増加しているということになります。そのようなときは、勘定科目ごとに数値を確認して、細かい分析を行うことが大切です。
同業他社の数値と比較する
同業他社の数値と比較することも、販売管理費比率の分析におけるポイントの1つです。
販売管理費比率は業種によって異なります。販売管理費比率を同業他社と比較することで、自社が目標とすべき販売管理費比率の目安を把握できるでしょう。
例えば、製造業などは売上原価の比率が高いため、結果として販売管理費比率は他の業種に比べて低い傾向にあります。中小企業庁「中小企業実態基本調査 令和6年確報(令和5年度決算実績)」から、業種別の販売管理費比率を計算してみると、以下のようになります。
主な業種別の販売管理費比率
業種 | 販売管理費比率 |
---|---|
建設業 | 19.85% |
製造業 | 17.12% |
情報通信業 | 41.37% |
運輸業、郵便業 | 20.94% |
卸売業 | 12.85% |
小売業 | 27.35% |
不動産業、物品賃貸業 | 36.85% |
学術研究、専門・技術サービス業 | 48.34% |
宿泊業、飲食サービス業 | 63.27% |
生活関連サービス業、娯楽業 | 36.41% |
サービス業(他に分類されないもの) | 37.36% |
-
※中小企業実態基本調査「令和6年速報(令和5年度決算実績)
/3.売上高及び営業費用 (1) 産業別・従業者規模別表」(2025-07-30公開)より計算(※小数点第3位以下切り捨て)
企業の戦略と費用対効果を考慮する
販売管理費比率の分析におけるポイントとして、企業の戦略と費用対効果を考慮することもあげられます。
販売費及び一般管理費のうち、販売費は商品などの販売活動に関連する費用であり、「戦略費」として捉えている企業も少なくありません。販売管理費比率を分析するときは、企業の戦略的な方向性と整合しているかどうか、費用対効果がどうなっているかなどに注目することが大切です。
特に、長期的な売上増加を目指して広告宣伝に力を入れているような場合は、今期だけでなく、翌期以降の推移もしっかりと確認していく必要があります。
販売費及び一般管理費を削減する方法
企業が効率良く利益を上げるには、販売費及び一般管理費を可能な限り抑えることが大切です。前述したように、販売費及び一般管理費は、企業の戦略方針によっても変動するため、ただ闇雲に下げればいいというわけではありません。
ただし、「同業他社に比べて販売管理費比率(販売費比率)が極端に高い」「経営戦略上の理由がないのに販売管理費比率(販売費比率)が上昇している」という場合は、販売費及び一般管理費の削減に向けた取り組みが必要になるでしょう。販売費及び一般管理費を削減するには、次のような方法があります。
経営層の報酬を適正化する
販売費及び一般管理費を削減する方法として、人件費、その中でも経営層の報酬額が適正かについて検討することがあげられます。
従業員に販売費及び一般管理費削減の要請をする前に、まず経営層が調整しやすい役員報酬などを率先して見直すことが重要です。例えば、役員の人数や役員報酬の額などが適正か、経営状態に見合っているかなどを確認することが大切です。
なお、役員報酬を変更できるタイミングは、原則として期首から3か月以内で、株主総会の承認が必要になります。定められたルールを守らないと、税務上の要件を満たさなくなり、役員報酬が税務上の損金として認められない可能性があります。経営層の報酬の適正化を図るタイミング等の結果、法人税の負担が増えることがあるため注意しましょう。
広告費を見直す
販売費及び一般管理費を削減するには、広告費を見直すのも1つの方法です。
「無駄な広告宣伝はないか」「費用対効果は十分か」などを精査し、自社の市場やターゲット層に適した広告施策に集中投資することで、効果的に商品やサービスを訴求しながら、広告費を削減できる可能性があります。自社で情報発信ができるSNSなどを効果的に利用するのもいいでしょう。
固定費を見直す
オフィスの家賃や駐車場代、水道光熱費、保険料といった固定費の見直しも、販売費及び一般管理費の削減につながる可能性があります。
例えば、リモートワークが進んでいれば、オフィスの規模を縮小したり、別の場所へ移転したりして賃料を抑えることができます。また、オフィスの節電や節水を徹底することで、水道光熱費を削減できるでしょう。通信費や保険料も、契約内容を見直すことでコスト削減が可能です。
毎月ほぼ決まった額を支払う固定費は、一度見直すと継続的な削減効果が見込めるため、自社の状況に応じて、定期的に見直しを行うことをおすすめします。
固定費については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
旅費交通費を見直す
旅費交通費を見直しも、販売費及び一般管理費の削減方法の1つです。
営業活動に伴う旅費交通費は、販売費に含まれます。そのため、取引先を訪問する交通費や出張に必要な旅費などを見直すことで、販売費及び一般管理費の削減につながるケースは少なくありません。
例えば、取引先との打ち合わせにWeb会議システムを導入する、出張時に個人でチケットを手配せず法人向けの割引プランを利用する、新幹線や飛行機のチケットを割引価格で購入するなど、可能な範囲で旅費交通費の削減策を検討することが推奨されます。
旅費交通費については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
会計ソフトなら日々の帳簿付けや決算書作成もかんたん
「弥生会計 Next」は、使いやすさを追求した中小企業向けクラウド会計ソフトです。帳簿・決算書の作成、請求書発行や経費精算もこれひとつで効率化できます。
画面を見れば操作方法がすぐにわかるので、経理初心者でも安心してすぐに使い始められます。
だれでもかんたんに経理業務がはじめられる!
「弥生会計 Next」では、利用開始の初期設定などは、対話的に質問に答えるだけで、会計知識がない方でも自分に合った設定を行うことができます。
取引入力も連携した銀行口座などから明細を取得して仕訳を登録できますので、入力の手間を大幅に削減できます。勘定科目はAIが自動で推測して設定するため、会計業務に慣れていない方でも仕訳を登録できます。
仕訳を登録するたびにAIが学習するので、徐々に仕訳の精度が向上します。

会計業務はもちろん、請求書発行、経費精算、証憑管理業務もできる!
「弥生会計 Next」では、請求書作成ソフト・経費精算ソフト・証憑管理ソフトがセットで利用できます。自動的にデータが連携されるため、バックオフィス業務を幅広く効率化できます。

自動集計されるレポートで経営状態をリアルタイムに把握!
例えば、見たい数字をすぐに見られる残高試算表では、自社の財務状況を確認できます。集計期間や金額の累計・推移の切りかえもかんたんです。
会社全体だけでなく、部門別会計もできるので、経営の意思決定に役立ちます。

「弥生会計 Next」で、会計業務を「できるだけやりたくないもの」から「事業を成長させるうえで欠かせないもの」へ。まずは、「弥生会計 Next」をぜひお試しください。
販売費及び一般管理費の記帳を会計ソフトでスムーズに行おう
販売費及び一般管理費は、決算書の1つである損益計算書に記載する項目であり、企業を経営していくうえでも、重要な要素の1つです。販売費及び一般管理費と一括りにされることもありますが、販売費は広告宣伝費など販売活動に関連する費用、一般管理費は企業全体の管理業務にかかる費用であり、それぞれ性質が大きく異なります。
販売費及び一般管理費を正しく把握するために欠かせないのが、日々の記帳です。業務上発生するさまざまな費用について、適切な仕訳で帳簿を作成していなければ、販売費及び一般管理費を経営分析に活かすこともできません。記帳にかかる手間や時間を軽減するには、会計ソフトの利用が効果的です。「弥生会計 Next」などのクラウド会計ソフトを利用すれば、取引データの自動取り込みにより、入力や仕訳の手間を大幅に削減できます。的確な経営分析を行うためにも、会計ソフトの導入を検討することが推奨されます。
【無料】お役立ち資料ダウンロード
「弥生会計 Next」がよくわかる資料
「弥生会計 Next」のメリットや機能、サポート内容やプラン等を解説!導入を検討している方におすすめ

この記事の監修者小林祐士(税理士法人フォース)
東京都町田市にある東京税理士会法人登録NO.1
税理士法人フォース 代表社員
お客様にとって必要な税理士とはどのようなものか。私たちは、事業者様のちょっとした疑問点や困りごと、相談事などに真剣に耳を傾け、AIなどの機械化では生み出せない安心感と信頼感を生み出し、関与させていただく事業者様の事業発展の「ちから=フォース」になる。これが私たちの法人が追い求める姿です。
