ハンドメイド作家が開業届を出した方がよいタイミングは?書き方や必要な準備を解説
監修者: 高崎 文秀(税理士)
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ハンドメイド作品の販売収入が事業所得と判断される状態になったら、開業届は事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出するのが原則です。本記事では、開業届を出すべきタイミングの判断基準や、提出するメリットと注意点、ハンドメイド作家ならではの書き方のポイントを解説します。
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ハンドメイド作家が開業届を出すべきタイミング・判断基準
ハンドメイド作品の販売を続けていると、いつ開業届を提出すればよいのか迷う方は少なくありません。この章では、事業所得と雑所得の境界線、開業届の提出期限の原則、そして扶養や保育園への影響という3つの観点から、開業届を出すべきタイミングの判断基準を解説します。
「事業所得」と「雑所得」の境界線
ハンドメイド作品の販売による収入が「事業所得」と「雑所得」のどちらに該当するかは、営利性・有償性・反復継続性・自己の計算と危険における独立遂行性等を総合的に勘案し、「社会通念上事業と称するに至る程度」かどうかで判定されます。
例えば、趣味の延長として不定期にminneやCreemaなどで作品を販売している程度であれば雑所得として扱われやすく、継続的・反復的に販売を行い収益化を図っている状態であれば、事業所得として扱われやすくなります。
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参照:国税庁「所得税法における『業務』の範囲について
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開業届は事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出が原則
ハンドメイド作品の販売が、前述の基準に照らして事業所得と判断される状態になった場合、開業届は事業を開始した事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出するのが原則です。「いつから事業を始めたことになるのか」の判断に迷う場合は、継続的に販売を始めた時期や、事業として本格的に取り組もうと決めた時期を目安に考えるとよいでしょう。
開業届の提出先は、自宅の住所地など、納税地を管轄する税務署です。提出方法は、税務署の窓口へ直接持参する方法のほか、郵送での提出、e-Taxを利用したオンラインでの提出も選べます。窓口が開いている時間に出向くのが難しい方は、郵送やe-Taxを活用すると手続きの負担を抑えられます。
「趣味として始めたつもりが、気づけば継続的に販売するようになっていた」というケースも少なくありません。このような場合も、自分の販売活動が事業所得に該当すると判断した時点で、速やかに開業届の提出手続きを進めることが大切です。
扶養や保育園への影響
開業届を提出して個人事業主になり、扶養の範囲を超える収入を得るようになると、家族の社会保険の扶養から外れ、自分自身で国民健康保険や国民年金の保険料を負担することになる場合があります。これまで家族の社会保険に扶養家族として加入していた方は、ハンドメイド販売の売上が伸びてきた際に、扶養から外れる基準も併せて確認しておく必要があります。保険料の負担が新たに発生することを見越して、資金計画を立てておくと安心です。
また、保育園の入園を控えているご家庭では、入園審査への影響にも注意が必要です。多くの自治体の入園審査では、開業届の控えが客観的な就労実態を示す証明書類として求められることがあります。開業届を提出していないと、実際には継続的に販売活動を行っていても内職や在宅ワークとして扱われてしまい、就労時間や収入の実態が評価されにくくなる場合があります。その結果、選考の点数が低く見積もられ、入園が不利になる恐れがある点も押さえておきましょう。特に収入が変動しやすいハンドメイド販売では、年間の見込み収入をこまめに確認しておくことが大切です。
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ハンドメイド作家が開業届を出すメリットと注意点
開業届を提出すると、併せて青色申告承認申請書を提出した場合には青色申告による節税や屋号付き銀行口座の開設など複数のメリットを得られます。一方で、失業保険を受給中・受給予定の方は注意が必要な点もあるため、併せて解説します。
大きなメリットは青色申告による節税
開業届と併せて青色申告承認申請書を提出すれば、青色申告が可能になります。青色申告を行うことで、最大65万円(2027年分から最大75万円)の青色申告特別控除をはじめとする税制優遇を受けられる点は、ハンドメイド作家にとって大きなメリットといえるでしょう。
さらに、青色申告を選択することで、家族への給与を経費にできる「青色事業専従者給与」や、40万円未満のミシン・作業用PCなどを購入年に一括で経費にできる「少額減価償却資産の特例」が利用可能になり、節税の選択肢が広がります。
加えて、ハンドメイド販売による事業所得が赤字になってしまった場合には、青色白色に関わらず給与所得など他の所得と損益通算できる点もメリットです。会社員として働きながら副業としてハンドメイド販売を行っている方にとっても、こうした税制上の優遇は見逃せないポイントです。節税効果を最大限に活かすためにも、開業届と同時に青色申告承認申請書を提出しておくとよいでしょう。
屋号付きの銀行口座が作れる
開業届を提出していると、金融機関によっては「屋号+個人名」の名義で事業用の銀行口座を開設できる場合があります。プライベートの支出と事業の支出を分けて管理できるようになるため、確定申告の際に経費を計算する手間を減らせるのが大きなメリットです。
屋号付き口座を持っていると、材料の仕入先や作品の購入者から見た信頼感の向上にもつながります。個人名だけの口座よりも、事業として活動している実態が伝わりやすくなるためです。
ただし、屋号付き口座の開設は義務ではなく任意であり、すべての金融機関が対応しているわけではありません。開業届の提出だけでなく、事業内容が確認できる書類の提出を求められる場合もあるため、口座を開設したい金融機関がある場合は、事前に必要な手続きや条件を確認しておきましょう。屋号付き口座を開設する際は、併せて事業用のクレジットカードを用意しておくと、経費の管理がさらにスムーズになります。
失業保険を受給中・予定の方は要注意
会社を退職して失業保険(雇用保険の基本手当)を受給中、または受給を予定している方は、開業届の提出タイミングに特に注意が必要です。失業保険は、就労の意思と能力があるにもかかわらず職に就けない方を対象とした給付であるため、開業届を提出すると事業を開始しているため「就業状態にある」とみなされ、受給資格を失う可能性があります。
ハンドメイド販売が趣味の延長として続いている段階から、本格的に事業化していく段階に移るタイミングと、失業保険の受給期間が重ならないよう、開業届を出す時期は慎重に見極めましょう。既に失業保険を受給しながら販売活動を続けている場合は、事業化を急ぐ前に、受給状況とのバランスを確認しておくことをおすすめします。受給期間中に事業化を急がず、失業保険の受給が終了してから開業届を提出するという選択肢も検討するとよいでしょう。
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ハンドメイド作家特有の開業届の書き方
開業届の一般的な書き方や必要書類については別の記事に譲り、ここではハンドメイド作家ならではの職業欄・事業の概要欄の書き方と、作成や提出をかんたんにする方法を解説します。
職業欄・事業の概要の書き方
開業届の職業欄には「小売業」や「製造小売業」など、事業の概要欄には「ハンドメイドアクセサリー・雑貨の制作及び販売」などのように、実際に行う事業の内容を具体的に記載するとよいでしょう。記載内容が具体的であるほど、税務署や取引先に事業内容が伝わりやすくなります。
以下の記事でも詳しく解説しています。
開業届の作成と提出をかんたんにする方法
開業届の提出先や必要書類、記入項目ごとの書き方など、一般的な手続きの詳細については以下の記事に譲ります。ここでは、ハンドメイド作家が開業届の作成と提出をできるだけ効率よく進める方法を紹介します。
「弥生のかんたん開業届」を使えば、画面の案内に沿って必要事項を入力するだけで、開業届はもちろん、青色申告承認申請書などの関連書類も併せて無料で作成できます。手書きで一から書類を作成する手間を省きたい方や、記入漏れ・記載ミスを防ぎたい方にとって心強い選択肢です。
以下の記事でも詳しく解説しています。
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ハンドメイド販売で失敗しないための税務上の注意点
開業届を出した後に実務でつまずきやすいのが、経費の線引き、在庫の扱い、消費税・インボイス登録の3点です。それぞれの考え方を確認しておきましょう。
材料費や自宅家賃はどこまで経費にできるか(家事按分)
ハンドメイド販売では、作品作りに使う材料費のほか、梱包資材費、発送にかかる送料、販売プラットフォームに支払う販売手数料、マルシェやイベントに出展する際の出展料などが、経費として計上できる代表的な費目です。こうした費用は、レシートや領収書、明細などを保管しておくことで、確定申告の際に漏れなく計上できます。
自宅を作業場として使っている場合は、家賃や水道光熱費、通信費についても、事業で使用している割合に応じて按分することで経費に計上できます。按分の基準としては、作業スペースが自宅全体の面積に占める割合や、実際に作業に使っている時間が1日のうちどれくらいを占めるかなど、実態に即した合理的な基準で算定することが求められます。
一方で、プライベートと兼用している道具や材料については、全額を経費にすることはできません。例えば、家族と共有しているミシンや、私生活でも使う文房具などは、事業で使用している割合を見積もって按分する必要があります。事業用とプライベート用の使用実態を踏まえ、無理のない範囲で適切に按分するよう注意しましょう。特に、フリマアプリやハンドメイドマーケットの売上・手数料明細も、経費計算の裏付け資料になるため併せて保存しておくと安心です。
期末に売れ残った在庫は「棚卸資産」として扱う
期末の時点で売れ残っている完成品や仕掛品、材料は「棚卸資産」となり、仕入れた年の経費にはならない点に注意が必要です。材料を購入した年にまとめて経費計上できるわけではなく、実際に販売した年の経費として扱われるしくみになっています。
例えば、材料をまとめ買いしても、その年のうちに使い切らず在庫として残っていれば、購入した年に全額を経費として計上することはできません。年末には棚卸しを行い、残っている完成品・仕掛品・材料の数量と金額を確認する必要があります。
記帳や在庫管理の負担を減らすためにも、開業当初から在庫の数量と取得価額をこまめに記録しておくことをおすすめします。
消費税・インボイス登録が必要になるケース
基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として消費税の納税義務がない免税事業者に該当します。開業したばかりの段階では、多くの場合この基準を満たすため、消費税について過度に心配する必要はありません。
ただし、インボイス登録の必要性は、主な販売先によっても判断が変わります。フリマアプリやハンドメイドマーケットなど、個人の消費者向けの販売が中心であれば、登録の必要性は低いといえるでしょう。一方で、雑貨店や企業など、法人・事業者との取引がある場合は、取引先からインボイスの発行を求められ、登録を検討する必要が出てくることがあります。
インボイス発行事業者として登録すると、たとえ課税売上高が1,000万円以下の免税事業者であっても、消費税の申告・納税義務が生じます。開業届の提出とインボイス登録は必ずしも同時に行う必要はなく、実際の取引先の状況に応じて、登録の要否を検討すれば十分です。
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適切なタイミングで開業届を提出し、ハンドメイド作家として一歩踏み出そう
ハンドメイド作品の販売を続けている方は、事業所得の判断基準に沿って、開業届を出すべきタイミングを見極めることが重要です。開業届を提出した後は、経費の線引きや在庫の扱い、消費税・インボイス登録の要否など、実務でつまずきやすい点も出てきます。併せて「ハンドメイド販売で失敗しないための税務上の注意点」もご確認いただき、安心して事業を続けていきましょう。
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よくあるご質問
「事業所得」と「雑所得」の違いは何ですか?
事業所得と雑所得は、営利性・有償性・反復継続性・自己の計算と危険における独立遂行性等を総合的に勘案し、「社会通念上事業と称するに至る程度」かどうかで判定されます。趣味の延長で不定期に販売している場合は雑所得、継続的・反復的に収益化を図っている場合は事業所得として扱われやすくなります。詳しくは国税庁「所得税法における『業務』の範囲について」をご確認ください。
失業保険受給中でも開業届は出せますか?
開業届を提出すると事業を開始しているため「就業状態にある」とみなされ、失業保険(雇用保険の基本手当)の受給資格を失う可能性があるため注意が必要です。会社を退職して失業保険を受給中、または受給を予定している場合は、受給期間が終わってから開業届を提出するという選択肢も検討するとよいでしょう。詳しくはこちらをご確認ください。
職業欄には何と書けばよいですか?
職業欄には「小売業」や「製造小売業」など、事業の概要欄には「ハンドメイドアクセサリー・雑貨の制作及び販売」などのように、実際に行う事業の内容を具体的に記載するとよいでしょう。ハンドメイド品の製造・販売は個人事業税の第1種事業(物品販売業・製造業、税率5%)に該当し、事業主控除290万円を超えると課税対象になります。詳しくは「開業届の事業の概要の書き方は?職業欄の具体例や注意点も解説」をご確認ください。
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この記事の監修者高崎 文秀(税理士)
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役。早稲田大学理工学部応用化学科卒。
都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業。現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行う。