IT・エンジニアで会社設立するには?資格の要否や費用を解説
監修者: 高崎 文秀(税理士)
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IT・エンジニアとして起業する場合、開業に必須の資格はありません。本記事では、資格の要否や法人化の判断基準、会社設立で失敗しないための注意点に加え、設立後の手続きや費用について解説します。
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IT・エンジニアの起業に資格は不要
IT・エンジニアとして起業する場合、開業に必須の資格はありません。ここでは、資格がなくても開業できる理由と、資格取得が案件獲得で有利に働く場合の2点を解説します。
資格より重視されるのは実績やポートフォリオ
プログラミングやシステム開発といったIT関連事業は、開業にあたって必須となる資格が存在しません。国家資格や免許がなくても、法人・個人を問わずすぐに事業を始められる点は、他の専門職と比べた際の大きな特徴です。
その一方で、IT業界では資格の有無よりも、実績やポートフォリオ、技術力そのものが受注の決め手になる傾向があります。過去に手がけた開発実績や公開しているポートフォリオが充実しているほど、クライアントからの信頼を得やすく、案件獲得につながりやすいでしょう。
資格取得で案件獲得や信用力アップにつながる場合がある
資格が必須ではないとはいえ、基本情報技術者や応用情報技術者、各種ベンダー資格などを取得しておくと、案件獲得や単価交渉の場面で有利に働くことがあります。特に、実績がまだ少ない起業初期においては、資格が技術力を客観的に示す材料となり、取引先からの信用力アップにつながる場合があります。
ただし、資格はあくまで実務経験や実績を補完する位置づけです。資格取得を目指す場合も、実務経験・実績と併せて総合的に判断するとよいでしょう。
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IT起業は法人化すべき?個人事業主との違いと判断基準
IT・エンジニアで起業する際は、法人と個人事業主のどちらを選ぶかも重要な判断ポイントです。ここでは、法人のメリット・デメリット、個人事業主のメリット・デメリットの順に解説します。
法人のメリット:大手企業・SES案件での信用力
法人化する大きなメリットは、社会的信用力の高さです。大手企業のSES(システムエンジニアリングサービス)案件では、取引先が「法人限定」の条件を設けているケースがあり、法人化することで受注機会が広がる可能性があります。
また、法人であれば複数のエンジニアを雇用したり、外注先を管理したりする体制も整えやすくなります。事業規模を拡大していきたい場合は、法人化によって受注の幅や組織運営の自由度が広がる点がメリットといえるでしょう。
法人のデメリット:設立・維持コストと事務負担
一方で、法人には設立・維持コストがかかるというデメリットもあります。登記費用がかかるほか、たとえ赤字であっても法人住民税の均等割は毎年発生します。
さらに、社会保険への加入が原則義務付けられるため、社会保険料の負担も発生します。加えて、決算・申告といった事務手続きも個人事業主に比べて煩雑になるため、法人化する際はこうした継続的な負担も踏まえて検討する必要があります。
個人事業主のメリット:低コストでのスピード開業
個人事業主として開業する場合は、税務署へ開業届を提出するだけで事業を始められ、初期費用を抑えてスピーディーに開業できる点がメリットです。
まずは小規模な受託案件から始めて実績を積み、事業が軌道に乗ってから法人化を検討するという進め方は、IT・エンジニアの起業スタイルとして適した選択肢の1つといえるでしょう。
個人事業主のデメリット
個人事業主は、法人と比べると社会的信用力が低くなりやすい点がデメリットです。前述のとおり、大手企業のSES案件では法人限定の取引条件が設けられている場合があり、個人事業主だと契約自体が難しいケースもあります。
また、金融機関からの融資審査やオフィスの賃貸借契約といった場面でも、法人に比べて不利になりやすい傾向があります。事業の将来的な規模や取引先の条件を踏まえて、法人化のタイミングを見極めることが大切です。
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IT・エンジニアの会社設立で失敗しないための3つの注意点
IT・エンジニアの会社設立では、他業種にはない特有の注意点もあります。ここでは、SES事業の契約形態に関するリスク、一人起業ならではのリソース不足、そして定款作成時の注意点という3つのポイントを解説します。
SES事業における偽装請負リスク
SES(システムエンジニアリングサービス)事業では、準委任契約を締結するのが一般的です。しかし、実態として発注先の企業がエンジニアに対して直接指揮命令を行っている場合、契約形態にかかわらず「偽装請負」とみなされるリスクがある点に注意が必要です。
準委任契約と労働者派遣契約は、指揮命令権が自社にあるか発注先にあるかによって区別されます。技術者を発注先の指揮命令下で就業させている実態がある場合は、労働者派遣事業の許可が必要になることもあります。許可を得ないまま派遣に類似した就業形態を続けていると、行政指導や是正勧告の対象になる可能性もあるため、契約形態と実際の業務の進め方が一致しているかを確認しておきましょう。
一人起業でのリソース不足
「起業 エンジニア いない」という検索が示すように、IT・エンジニアの起業では、技術者の確保に悩むケースが少なくありません。一人での起業を予定している場合は特に、案件が増えた際に対応しきれなくなるリソース不足のリスクを想定しておく必要があります。
対策としては、業務委託・外注先を早い段階から確保しておくことが有効です。フリーランスエンジニアと業務委託契約を結んだり、クラウドソーシングを活用して外注先を探したりするなど、具体的な確保手段をあらかじめ検討しておきましょう。
定款の事業目的にソフトウェア開発・SES等の業務範囲を明記する
会社設立の際に作成する定款には、事業目的を記載する欄があります。IT・エンジニアとして起業する場合は、システムエンジニアリングサービス事業、ソフトウェア受託開発、Web制作など、実際に手がける業務範囲を具体的に明記しておくことが重要です。
事業目的の記載があいまいなままだと、取引先によっては契約時に業務範囲の確認を求められる場合があります。自社が展開する事業を過不足なく反映できるよう、定款作成の段階で内容を検討しておきましょう。
以下の記事でも詳しく解説しています。
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会社設立からIT事業を始めるまでの流れ
会社設立からIT事業を実際に始めるまでの流れを、STEP1〜3で解説します。定款作成・登記等の手続きから、契約書の準備、税務関連の届出までの流れを押さえておきましょう。
STEP1|定款作成・登記等の会社設立手続きを行う
定款の作成・認証、登記申請といった一般的な会社設立手続きの詳細は、別記事で解説していますので、そちらを参照してください。
IT事業は店舗や大がかりな設備が不要なため、登記が完了すればすぐに営業を始めやすい点が特徴です。手続きを終えたら、早い段階で案件獲得に向けた営業活動に着手するとよいでしょう。
以下の記事でも詳しく解説しています。
STEP2|業務委託契約書・秘密保持契約(NDA)を準備する
IT・エンジニアとして案件を受注する際は、業務委託契約書の準備が欠かせません。契約書には、契約期間、報酬・支払条件、成果物の範囲、機密保持義務、契約不適合責任といった項目を盛り込んでおく必要があります。
- 契約期間
- 報酬、支払条件
- 成果物の範囲
- 機密保持義務
- 契約不適合責任
また、IT・エンジニアの案件は顧客の機密情報を扱うケースが多いため、秘密保持契約(NDA)の締結が受注の前提条件になっていることも少なくありません。契約書と併せて、NDAの準備も進めておきましょう。
以下の記事でも詳しく解説しています。
STEP3|法人設立届出書等の税務関連書類を提出する
法人を設立した後は、税務署へ法人設立届出書や青色申告の承認申請書といった税務関連書類を提出する必要があります。
法人設立届出書の提出期限は、設立の日以後2か月以内です。提出が遅れると、通常併せて提出する青色申告承認申請書の提出も遅れ(提出期限は原則3か月以内)、青色申告など各種制度の適用に影響が出る可能性もあるため、会社設立の手続きと並行して早めに準備を進めておきましょう。
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法人設立後に必要な社会保険・労働保険の手続き
法人を設立した後は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)と労働保険(雇用保険・労災保険)という2つの手続きも必要になります。それぞれの内容を確認しておきましょう。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入手続き
法人を設立すると、たとえ役員が社長1人だけの会社であっても、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が原則として義務付けられています。個人事業主のように、従業員数によって加入義務の有無が変わるわけではない点に注意が必要です。
加入要件を満たした日から5日以内に、「新規適用届」を管轄の年金事務所へ提出しなければなりません。会社設立の手続きが完了したら、早めに加入手続きを進めましょう。
-
※参照:日本年金機構「新規適用の手続き
」
従業員を雇う場合は労働保険(雇用保険・労災保険)の手続きも必要
従業員を1人でも雇用する場合は、労働保険(雇用保険・労災保険)の手続きも必要になります。具体的には、労働基準監督署への労働保険関係成立届の提出や、ハローワークへの雇用保険適用事業所設置届の提出などが求められます。
一方、一人社長のみで従業員を雇わない場合は、労働保険への加入義務は生じません。従業員を雇用する予定があるかどうかに応じて、必要な手続きを確認しておきましょう。
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※参照:厚生労働省「労働保険の成立手続
」
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IT会社の設立にかかる費用
一般的な会社設立費用については別記事に譲りますが、ここではIT・エンジニアとして起業する場合ならではの、費用の抑えやすさについて解説します。自宅開業や設備投資の少なさを活かせば、初期費用を抑えて事業をスタートさせやすいでしょう。
IT起業ならではの費用の抑えやすさ
会社設立にあたっては、登録免許税や定款認証手数料といった法人設立費用に加え、IT・エンジニアとして事業を始めるための費用も必要になります。主な費用は以下のとおりです。
- パソコン・開発環境費用
- クラウドサービス利用料
- 自宅開業なら不要なテナント費用
IT・エンジニアの事業は、店舗や大型設備への投資が不要な分、他業種と比べて初期費用を抑えやすいという特徴があります。自宅を事務所として開業すれば、テナント費用もかからないため、開業時の負担をさらに軽減できるでしょう。
以下の記事でも詳しく解説しています。
弥生のかんたん会社設立で費用や手間を抑える
会社設立にかかる費用や手間をできるだけ抑えたい場合は、「弥生のかんたん会社設立」の活用がおすすめです。「弥生のかんたん会社設立」は、定款作成や登記申請の手続き自体を効率化できるクラウドサービスで、画面の案内に沿って必要事項を入力するだけで、会社設立に必要な書類を作成できます。
会社設立の際は、「弥生のかんたん会社設立」をぜひご活用ください。
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万全な準備でIT・エンジニアの会社設立を進めよう
IT・エンジニアの起業には、資格は必須ではありません。しかし、SES事業における契約形態のリスクや、一人起業によるリソース不足など、事前に押さえておくべき注意点も存在します。本記事で紹介した内容を踏まえ、法人化のタイミングや必要な手続きを整理したうえで、準備を整えて会社設立を進めましょう。
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よくあるご質問
IT起業に資格は必要ですか?
IT・エンジニアの起業・開業に必須の資格はありません。プログラミングやシステム開発といったIT関連事業は、開業にあたって必須となる資格が存在しないためです。ただし、資格の有無よりも実績やポートフォリオ、技術力そのものが受注の決め手になる傾向があるため、案件獲得には実務経験を積むことが重要です。資格取得のメリットについて詳しくはこちらをご確認ください。
IT起業は法人と個人事業主のどちらがよいですか?
事業規模や取引先の条件によって最適な形態は異なります。法人化する大きなメリットは社会的信用力の高さで、大手企業のSES(システムエンジニアリングサービス)案件では取引先が「法人限定」の条件を設けているケースがあり、法人化により受注機会が広がる可能性があります。一方、個人事業主は開業届の提出のみで始められ、初期費用を抑えてスピーディーに開業できるため、小規模から始めて実績を積みたい場合に向いています。法人・個人事業主それぞれのメリット・デメリットについて詳しくはこちらをご確認ください。
一人での起業に注意点はありますか?
一人での起業では、案件が増えた際に対応しきれなくなるリソース不足のリスクを想定しておく必要があります。対策として、フリーランスエンジニアとの業務委託契約や、クラウドソーシングを活用した外注先の確保を早い段階から進めておくことが有効です。会社設立で失敗しないための注意点について詳しくはこちらをご確認ください。
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この記事の監修者高崎 文秀(税理士)
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役。早稲田大学理工学部応用化学科卒。
都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業。現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行う。