請求書の訂正方法は?正しい訂正時のルールを解説
監修者: 小林祐士(税理士法人フォース)
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請求書の記載事項に誤りがあった場合、どのように訂正すればよいのでしょうか。
書類に誤字脱字があった場合、二重線で消して訂正印を押して、訂正をすることがあります。請求書の訂正もその方法でよいのでしょうか?
請求書は、取引の証明となる書類であることから、不備や誤りが生じないよう、細心の注意を払って作成する必要があります。そして、インボイス制度では、適格請求書の修正・訂正についても明確なルールがあります。とはいえ、人が行うことにミスは付き物です。
そこでここでは、適格請求書の正しい訂正方法について、わかりやすく解説します。請求書に起こりがちなミスのパターンや、それらを防ぐ方法にも触れていますので、参考にしてください。
請求書の訂正は再発行が基本
請求書の記載事項に誤りがあった場合には、訂正印などは使用せず、再発行するのが基本です。請求額や取引内容、日付といった記載事項の間違いだけでなく、誤字脱字の修正であっても再発行する必要があります。請求書に二重線を引いて訂正したり、訂正印を押したりすることはありません。
インボイス制度では、適格請求書を修正・訂正できるのは原則として売手側である発行者のみです。買手側が適格請求書の内容や金額を訂正印と訂正線で更新するなどは原則としてできません。適格請求書を再発行する場合、当初の請求書と誤りがあった部分を訂正して新たに発行した請求書を交付する方法と、再発行した請求書と当初発行した請求書との関連性を明示して修正箇所を明示したものを交付する方法があります。
いずれの場合も、記載内容の異なる2枚の請求書が発行されると、どちらの請求書が正しいのか不明確になったり、二重に支払ってしまったりする原因となるため、控えを両方保存しておく必要があります。新たに発行する請求書には「再発行」と見やすい位置に表記しておくと親切です。
なお、請求書を発行した事業者側で誤りに気づいた場合には、早急に請求先へ連絡を入れ、再発行する旨を伝えることが重要です。連絡する際は、連絡を受けた相手が伝達事項を了承したことが確認できるよう、電話で一報を入れましょう。請求先から誤りを指摘された場合には、まずお詫びの連絡を入れたうえで、早急に正しい内容の請求書を発行して対応します。
請求書で起こりがちなミス
請求書のミスにはさまざまなパターンが想定されますが、中でも起こりやすいミスの例をご紹介します。よくあるミスのパターンを押さえて、請求書作成時には特に注意しましょう。
請求額が異なる
請求書に記載されている請求額が、実際の請求額と異なるミスが想定されます。請求書は取引先に代金の支払いを依頼する文書のため、請求額の相違は重大なミスです。取引先が誤った金額を振り込んでしまうトラブルにつながる可能性があるだけでなく、取引先からの信頼を損なうおそれがあります。
では、なぜ請求額が異なるというミスが発生するのでしょうか。請求書に記載する請求額は、見積書や発注書の記載事項を転記しながら作成するケースが少なくありません。その際に、「数字を見間違えてしまった」「桁数を誤ってしまった」といった原因が考えられます。
また、見積書や発注書を作成することなく、電話やメールといった簡易的な方法で発注された業務については特に注意が必要です。請求額について双方の合意が得られているか、請求書を発行する前に何らかの方法で一度確認しておくことをおすすめします。
取引内容が異なる
実際の取引内容と請求書に記載されている取引内容が異なるケースも考えられます。例えば、単価や数量に誤りがあり、結果として金額の小計や合計にもずれが生じてしまう場合です。
こうしたミスは、取引の過程で見積書の内容が変更になったときなどに起こりがちなものです。見積書の記載よりも数量が多い・少ないといったケースや、単価を調整したケースにおいては、見積書の記載事項を請求書にそのまま転記してしまうと、実際の取引内容とは食い違いが生じることになります。
この場合、考えられる要因は、営業担当者と事務担当者の間で情報共有が十分にできていなかったことなどが挙げられます。単価や数量の変更依頼を口頭で受け付けた場合には、特に注意が必要です。
日付が異なる
請求書に記載された日付に誤りがあるケースも想定されます。取引年月日や請求日が異なっていると、入金のタイミングにも影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
売掛金取引の場合、請求期間内に行われた複数件の取引をまとめて1回で請求するケースが多く見られます。通常は双方で請求締め日を確認し、いつからいつに行われた取引を請求書に記載するのか合意を得たうえで請求書を作成します。
このとき、請求先が入金するタイミングに関係しているのが請求日です。請求日が誤っていた場合、入金のタイミングが月単位でずれ込むことになるため、トラブルの原因となりかねません。請求書に記載する日付には重要な意味があることを踏まえて、誤りのないよう作成しましょう。
その他に起こり得るミス
ここまでにご紹介したよくあるミスの他にも、税金関係の計算ミス、請求書の誤送、取引や支払いに関する条件の記載漏れ、押印の漏れ、適格請求書における必須項目の不足などが例として想定されます。
また、適格請求書の場合、下記の必須項目が漏れなく記載されているか確認しておくことが重要です。
適格請求書の必須項目
- 発行者の氏名または名称
- 取引年月日
- 取引内容
- 取引金額
- 交付を受ける者の氏名または名称
- 軽減税率の対象品目である旨
- 税率ごとに区分して合計した対価の額及び適用税率
- 適格請求書(インボイス)発行事業者の登録番号
- 税率ごとの消費税額
なお、請求書への押印は必須ではないものの、取引先との間で慣習的に押印することになっている場合は、漏れなく押印する必要があります。押印は、間違いなく請求元の事業者が承認して発行している請求書である事実を示すとともに、請求書が偽造・改ざんされるリスクを抑えることが主な目的です。
請求書のミスを防ぐ方法
ここまで見てきたとおり、請求書の記載事項にミスがあれば再発行しなければなりません。再発行の手間を削減するには記載ミスを未然に防ぎ、誤りのない請求書を発行する必要があります。
請求書のミスを防ぐために講じておきたい対策は、次のとおりです。
チェック体制の見直し
請求書を送付する前に、社内で十分にチェックができる体制を整えましょう。例えば、請求書を作成した担当者自身が1人でチェックするのではなく、他の従業員が必ずチェックするダブルチェック体制にするといった対策が考えられます。
また、請求書の記載事項をチェックする際、項目や優先順位を決めて確認していくのも重要なポイントです。金額や日付、取引内容といったミスが発生しやすい部分から重点的に確認することをおすすめします。
業務や書類管理のルーティンを再考
請求書作成に至るまでの業務の流れや、書類管理の仕組みを再考しておくことも大切です。
「請求書に記載する取引内容や金額などの記録をどのように行うのか」「請求書の作成に必要な情報をどのように担当者間で共有するのか」「請求書を誰がどのタイミングで作成するのか」「作成された請求書をどのような流れでチェックするのか」といった点を見直しておきます。
業務や書類管理の流れが担当者ごとに異なっていると、ミスが多くなりがちです。各担当者の処理能力や管理能力に頼るのではなく、ミスが発生しにくい仕組みを構築しておく必要があります。
例えば、見積書や注文書に記載した情報が請求書に反映される仕組みにすることで、手作業の入力で発生しやすい入力ミスを防げるでしょう。ただし、数量や単価に変更が生じた際には、上長への報告とともに取引情報を更新し、共有するよう徹底することが必要です。
このように業務フローの仕組みを構築することによって、担当者のスキルや経験に依存しない仕事の進め方が実現しやすくなります。
請求書管理システムを導入する
請求書のミスを防ぐには、請求書管理システムの導入も効果的な対策といえます。取引情報が請求書に自動で反映されるシステムを活用し、手作業による入力を最小限にとどめることで、人的ミスが発生するリスクを抑えられるからです。また、請求書管理システムのテンプレートに沿って作成することにより、記載漏れを防ぐ効果も期待できます。
弥生のクラウド請求書ソフト「Misoca」は、見積書・請求書・納品書をまとめて簡単に作成できる請求書管理システムです。取引先情報や自社情報、取引内容の品名などを事前に登録しておくことにより、必要事項を選択するだけで請求書を効率良く正確に作成できます。もちろん、インボイス制度にも対応しているので、適格請求書の必要項目を漏れなく記載できます。
見積書から請求書への変換もクリック操作のみで対応できるため、転記ミスの防止に効果的です。万が一、適格請求書の訂正が発生した場合は、複製機能を使って誤りがあった事項を修正し、改めて記載事項のすべてを記載したものを交付する方法で対応できます。「Misoca」を活用して、請求書を早く正確に発行するための仕組みを整えてみてはいかがでしょうか。
請求書発行でミスが発生した場合は、正しい方法で迅速に対応を
請求書は取引先に支払いを依頼するための文書であり、取引の証拠となる文書でもあるため、本来であれば記載ミスはあってはならないことです。万が一、記載ミスが発生した際には正しい方法で再発行し、迅速に対応して取引先の信頼を失うリスクを極力抑える必要があります。
請求書を郵送するという取り決めがない場合は、郵送ではなく、電子送付した方が再発行にもすばやく対応できます。なお、請求書を電子化する場合、電子帳簿保存法に定められた電子取引のデータ保存の要件に従って保存する必要がある点に注意しましょう。
ミスのない請求書を早く正確に発行するとともに、請求書を適切な方法で管理していきたい事業者は、インボイス制度にも電子帳簿保存法にも対応している弥生のクラウド請求書ソフト「Misoca」をぜひご活用ください。
クラウド見積・納品・請求書サービスなら、請求業務をラクにできる
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この記事の監修者小林祐士(税理士法人フォース)
東京都町田市にある東京税理士会法人登録NO.1
税理士法人フォース 代表社員
お客様にとって必要な税理士とはどのようなものか。私たちは、事業者様のちょっとした疑問点や困りごと、相談事などに真剣に耳を傾け、AIなどの機械化では生み出せない安心感と信頼感を生み出し、関与させていただく事業者様の事業発展の「ちから=フォース」になる。これが私たちの法人が追い求める姿です。
