振替伝票とは?書き方や役割についてわかりやすく解説

2023/04/18更新

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

企業が行う取引は、すべて帳簿に記載する必要があります。その記帳の際に、仕訳帳を使わず伝票を用いるやり方を、伝票式会計と呼びます。伝票にはさまざまな種類があり、中でも経理業務で扱うことの多い伝票が振替伝票です。伝票式会計に慣れていないと、振替伝票の役割や書き方がわからず、戸惑ってしまうことがあるかもしれません。

ここでは、振替伝票の概要や書き方のほか、伝票の種類や帳簿付けを効率化する方法などについて解説します。

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振替伝票とは、現金以外の取引を記録するための伝票のこと

伝票とは、取引の内容を一定の様式に従って簡潔に記録した用紙のことです。仕訳帳の代わりに伝票を起こし、後でまとめて総勘定元帳に転記すれば、複数人で分担して業務を進めることができます。このような伝票を用いた会計処理の方法を伝票式会計といい、そこで用いられる伝票のひとつが振替伝票です。
振替伝票は、銀行振込や振込手数料など現金以外の取引があったときに、その取引を記録するための伝票です。現金の入金・出金取引以外、つまり仕訳の借方・貸方双方に現金が生じない取引が起票されます。
通常の仕訳と同様、借方科目と金額、貸方科目と両方の勘定科目を記入する必要があります。

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伝票制の種類

伝票には仕訳に必要な最低限の取引内容が記載されているため、伝票を日付順に並べると仕訳帳、勘定科目ごとに並べることで総勘定元帳と同様の意味を持つ書類になります。そのため、伝票によって、記帳を各担当者に分担させることが可能です。
このように、仕訳帳の代わりに伝票から総勘定元帳へ転記する仕組みのことを「伝票制」といいます。
伝票制には、「1伝票制」「3伝票制」「5伝票制」の3種類があります。伝票制の種類によってどのような違いがあるかを確認しておきましょう。

1伝票制

1伝票制は、振替伝票のみを使用し、すべての取引を伝票に記入する方法です。後述する3伝票制や5伝票制で振替伝票が扱わない仕訳も扱うため、一般的に1伝票制では振替伝票のことを「仕訳伝票」と呼びます。

なお、1伝票制における仕訳伝票(振替伝票)の形式や記入内容は、仕訳帳とほとんど同じです。仕訳伝票は、仕訳帳をバラバラにしたようなものだとイメージすると、わかりやすいかもしれません。

3伝票制

3伝票制では、取引に応じて、入金伝票・出金伝票・振替伝票という3種類の伝票を使用します。入金伝票と出金伝票では現金を扱い、現金以外の取引には振替伝票を用います。3伝票制は、特に現金取引が中心となる業種で多く採用されている方法です。

5伝票制

3伝票制の3つの伝票に、商品の仕入と売上を示す仕入伝票と売上伝票が加わったのが、5伝票制です。取引に応じて、入金伝票・出金伝票・振替伝票・仕入伝票・売上伝票という5種類の伝票を起こしてから、総勘定元帳に転記します。掛取引を行う企業が伝票式会計を採用する場合、多くがこの5伝票制です。

伝票の種類と役割

伝票制で用いる伝票には、それぞれどのような役割があるのでしょうか。伝票ごとに詳しくご説明します。

入金伝票

入金伝票は、取引で会社に現金が入ってきたときに記入する伝票です。内容は現金の入金に限定されるため、総勘定元帳に転記するとき、借方は常に「現金」です。そのため、入金伝票の勘定科目は、貸方のものだけを記入する形になります。

出金伝票

出金伝票は、会社から現金の出金があったときに記入する伝票です。例えば、交通費や経費などを現金で支払った場合に用いられます。入金伝票とは反対に、総勘定元帳に転記するときは貸方が常に「現金」になるため、出金伝票の勘定科目は借方のものだけを記入します。

振替伝票

振替伝票は、1伝票制の場合を除き、現金以外の取引の際に用いられます。入金伝票や出金伝票とは異なり、取引内容によって勘定科目が異なるため、仕訳と同じように借方・貸方の両方を記載します。

仕入伝票

仕入伝票は5伝票制で用いられる伝票で、商品などの仕入取引を行った際に記入します。掛取引(買掛)の場合だけではなく、5伝票制では商品などを現金や手形で購入したときにも仕入伝票を用います。その場合は、まず掛取引で仕入れたものとして仕入伝票を記入した後、すぐに出金伝票または振替伝票を起こして現金や手形で決済する仕訳を行います。

総勘定元帳に転記するときの勘定科目は、借方が「仕入」、貸方が「買掛金」となります。

売上伝票

売上伝票も5伝票制で用いられ、事業による売上が発生した際に記入する伝票です。仕入伝票と同様に、掛取引(売掛)のほか、商品やサービスの対価として現金や受取手形を受け取った場合にも使用します。その場合は、まず売掛金で販売したものとして売上伝票で処理し、すぐに入金伝票または振替伝票を起こして現金や手形で回収した形をとります。

売上伝票を総勘定元帳に転記するときは、借方を「売掛金」、貸方に「売上」にしなければなりません。

振替伝票の書き方と記入すべき事項

振替伝票に記入する項目は、日付・金額・勘定科目・摘要などです。振替伝票では取引内容を2つに分けて記載するので、金額と勘定科目は借方・貸方の双方に記入します。具体的な記入内容は、下記のとおりです。

振替伝票の例

(1)日付

取引が行われた年月日を記入します。

(2)金額

取引によって動いた金額を記入します。借方・貸方の両方に記載しましょう。

(3)科目

左側に借方、右側に貸方の勘定科目を記入します。

(4)摘要

取引の具体的な内容と、取引相手の名称を記入します。誰が見ても理解できるように、簡潔かつわかりやすく記載しましょう。

振替伝票の保存義務と保存期間

振替伝票をはじめ経理関係の書類は、一定期間の保存が法律で定められています。例えば、会計帳簿や取引等に関して作成または受領した書類は、税法上7年の保存が義務付けられています。振替伝票のほか、棚卸表、貸借対照表損益計算書、注文書、契約書、領収書といった書類も7年の保存が必要です。

一方、会社法では、会計帳簿の保存期間は10年と定められています。また、欠損金の繰越控除を受ける事業年度についても、原則として10年間(2018年4月1日前に開始した事業年度は9年間)の保存が必要です。

そのため、法人の場合は、会計に関わる帳票類の保存期間は10年間と考えておくといいでしょう。

帳簿付けは会計ソフトで効率化がおすすめ

伝票制は、記帳作業を効率化する手段のひとつですが、手書きやExcelで伝票を作成する手間がかかります。また、伝票を起こした後、総勘定元帳に転記するという作業が発生します。記帳作業をさらに効率化するなら、会計ソフトの利用がおすすめです。

日々の記帳がかんたんにできる

毎日発生する取引について、日付や金額、勘定科目などを一つひとつ手書きやExcelで伝票に記載するのは大変な作業です。会計ソフトなら、簿記知識がなくても、日付や金額などを入力するだけで複式簿記帳簿が自動作成できます。
さらに、会計ソフトによっては、PCだけでなくスマートフォンからも入力ができるものや、銀行明細やクレジットカードなどの取引データを自動仕訳できるものもあります。そのような会計ソフトを選べば、帳簿付けの手間が格段に楽になるでしょう。

時間短縮やミスの減少につながる

会計ソフトに入力した取引データは自動集計され、仕訳帳や総勘定元帳が作成されます。わざわざ転記する必要がないため手間がかからず、転記漏れや計算ミスの心配もありません。また、法人決算に必要なさまざまな書類も、入力したデータをもとに自動生成が可能です。

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帳簿付けの手間を省いて経理業務を効率化しよう

企業が行うすべての取引は、帳簿への記載が必要です。その帳簿付けの作業を効率良く行うために、企業の中には伝票制を採用しているケースがあります。

ただし、紙の伝票を起こしてから総勘定元帳に転記していると、手間がかかったりミスが起こったりする可能性があります。経理業務をよりスムースに進めるなら、会計ソフトの利用がおすすめです。経理の仕事に欠かせない帳簿付けの手間を省いて、業務効率化を目指しましょう。

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この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
「知りたい!」を最優先に、一緒に問題点を紐解き未来に向けた会計をご提案。

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