建設業で会社設立するには?許可要件や資本金の考え方を解説
監修者: 高崎 文秀(税理士)
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建設業で会社を設立するには、経営体制・専任技術者・財産的基礎という3つの建設業許可要件を満たす必要があり、2020年の法改正により一部要件が緩和されました。本記事では、各要件の詳しい内容と資本金の考え方、許可申請の流れを解説します。
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建設業を営むには建設業許可が必要になるケースがある
建設業を営む場合、工事の規模によっては、都道府県知事または国土交通大臣の許可を受けなければなりません。ここでは、許可が必要となる工事の基準と、無許可で営業した場合のリスクについて解説します。
1件500万円以上の工事を請け負う場合は許可が必要
建設業の許可が必要かどうかは、1件当たりの工事の請負代金の額などによって決まります。工事1件の請負代金が500万円未満の「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は、建設業許可を取得しなくても営業が可能です。
そのため、500万円以上の工事を1件でも請け負う場合は、原則として建設業許可の取得が必須となります。ただし例外として「建築一式工事」に該当する場合は、請負代金が1,500万円未満、または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事であれば、許可なしで請け負うことができます。
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※参照:国土交通省「許可の要件
」
無許可営業のリスク
許可が必要な規模の工事を無許可で請け負った場合、建設業法違反として罰則の対象となります。
無許可営業は、公共工事の入札に参加できないという不利益にもつながります。多くの公共工事では、入札参加資格の前提として建設業許可の取得が求められているため、許可がなければ参入の機会そのものを失ってしまいます。
さらに、民間工事であっても、下請契約を結ぶ際に元請業者から許可の有無を確認されるケースが少なくありません。無許可の状態では、こうした取引の機会自体を逃してしまうリスクがある点にも注意が必要です。
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建設業許可の要件①経営体制(常勤役員等)
常勤役員等(経営業務管理責任者)の要件は、従来、建設業に関する役員としての経験が5年以上あることが基本とされてきました。しかし、2020年10月の建設業法改正により、要件が緩和されています。
具体的には、建設業での役員経験が5年に満たない場合でも、建設業での役員経験2年に他業種での役員経験3年などを合わせ持っていれば、常勤役員等の要件を満たせるようになりました。 ただし、この要件を適用する場合は、常勤役員等を直接に補佐する者として、建設業において「財務管理」「労務管理」「運営業務」のそれぞれについて5年以上の経験を持つ者を配置する必要があります(一人が複数の経験を兼ねることも可能です)。
ここで求められる経験は申請する自社での経験に限られ、他社で積んだ経験は算入できません。補佐者自身が役員である必要はなく、自社の従業員でも構いません。
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※参照:国土交通省「許可の要件
」
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建設業許可の要件②専任技術者
建設業許可の2つ目の要件は「専任技術者」です。専任技術者は、工事の技術面を管理する重要な役割を担うため、経営体制の要件と並んで、許可審査で重視されるポイントの1つです。ここでは、専任技術者になれる資格・実務経験の要件と、社内に該当者を確保できない場合の対処法という2点を解説します。
専任技術者になれる資格・実務経験の要件
専任技術者になるには、建設業に関する国家資格を保有しているか、または一定年数の実務経験を積んでいる必要があります。資格や指定学科の学歴がない場合、原則として許可を受けようとする建設業の実務経験が10年以上求められます(※指定学科の高校・大学等を卒業している場合は、3年〜5年に短縮されます)。国家資格を保有していれば実務経験の年数を問わず要件を満たせるため、資格取得を目指すことも選択肢の1つです。
また、専任技術者は名前だけの登録では認められず、営業所に常勤していることが要件です。他の営業所と掛け持ちしたり、常勤性のない形で名義だけを借りたりすることはできません。専任技術者を確保する際は、実際にその営業所で働き続けられる人材かどうかを見極めることが重要です。
専任技術者は「常勤役員等」と同一人物が兼任できる
専任技術者は、常勤役員等(経営業務管理責任者等)と同一の営業所であれば、同じ人物が兼任することも可能です。1人の人物が、常勤役員等の要件と専任技術者の要件を同時に満たしていれば、両方を兼ねることができます。
そのため、独立を検討している職人自身が実務経験等により専任技術者の要件を満たし、かつ常勤役員等の要件も満たせる場合は、従業員を雇わずに1人で建設業許可を取得できる可能性があります。
専任技術者が確保できない場合の対処法
社内に専任技術者の要件を満たす人材がいない場合は、技能士等の資格取得を目指すか、実務経験を積んだ人材を新たに採用することで要件を満たす方法があります。資格取得を目指す場合は、取得までに一定の準備期間がかかる点も考慮しておく必要があります。
また、自分や社員が保有している資格・実務経験が専任技術者の要件を満たすかどうか判断に迷う場合は、行政書士等の専門家に事前に相談しておくと安心です。要件を満たしているかどうかを申請前に確認しておくことで、書類の不備による審査の長期化や、申請のやり直しといった手間を防げます。
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建設業許可の要件③財産的基礎(資本金との関係)
建設業許可の3つ目の要件は「財産的基礎」です。工事を安定して遂行できるだけの資金力があるかどうかを確認するための要件で、純資産500万円という基準と、資本金が500万円未満でも要件を満たせる方法という2点を解説します。
財産的基礎は資本金ではなく純資産500万円で判断される
建設業許可の財産的基礎の要件は、資本金の額そのものではなく、貸借対照表上の純資産額で判断されます。一般建設業許可の場合、純資産の額が500万円以上であることが要件です。
そのため、資本金を500万円ちょうどに設定したとしても、設立後に赤字が発生して純資産が目減りすれば、要件を満たせなくなる可能性がある点に注意が必要です。
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※参照:国土交通省「許可の要件
」
資本金が500万円未満でも残高証明書で要件を満たせる
資本金を500万円未満に設定した場合でも、金融機関が発行する残高証明書によって500万円以上の資金調達能力を証明できれば、財産的基礎の要件を満たすことが可能です。資本金の額を抑えて会社を設立したい場合に、検討しておきたい方法の1つです。
ただし、残高証明書は発行から一定期間内のものであることが求められるため、申請のタイミングによっては再取得が必要になる場合があります。また、証明書の発行には金融機関での手続きに一定の時間がかかることもあるため、申請時期を見据えて、余裕をもって準備しておきましょう。
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建設業許可申請の手続きの流れ
経営体制・専任技術者・財産的基礎という3つの許可要件を確認したら、実際の申請手続きに進みます。ここでは、申請書類の準備から許可証の交付までの流れを、STEP1〜3に分けて解説します。
STEP1|許可要件を満たす体制を整え申請書類一式を準備する
建設業許可の申請にあたっては、まず経営体制・専任技術者・財産的基礎の3要件を満たす体制を整えたうえで、申請書類一式を準備します。主に必要な書類は、以下のとおりです。
- 建設業許可申請書
- 経営業務の管理体制を証明する書類
- 専任技術者の資格・実務経験を証明する書類
- 財務諸表・残高証明書
- 定款の写し・登記事項証明書
このうち、経営業務の管理体制を証明する書類は、常勤役員等の要件を満たしていることを裏付けるためのものです。専任技術者の資格・実務経験を証明する書類と併せて、要件を満たす人材が社内に確保されていることを客観的に示す必要があります。
これらの書類に不備があると、審査が長期化する原因になります。書類の種類が多く、収集や作成に時間がかかることも多いため、余裕をもったスケジュールで準備を進め、申請前に記載内容や添付書類に漏れがないか入念に確認しておきましょう。
STEP2|都道府県知事または国土交通大臣へ申請する
申請書類が整ったら、営業所の所在地に応じて、都道府県知事または国土交通大臣へ申請します。営業所が1つの都道府県内にのみある場合は知事許可、複数の都道府県にまたがって営業所を置く場合は大臣許可の対象です。将来的に営業所を増やす予定がある場合は、どちらの許可を取得すべきか、あらかじめ検討しておくとよいでしょう。
審査期間の目安は、知事許可が1か月程度、大臣許可が3か月程度とされています。申請先によって審査にかかる期間が異なる点をふまえ、工事の受注時期から逆算して、余裕をもって事業開始のスケジュールを立てましょう。
STEP3|許可証交付後は5年ごとの更新が必要
許可証が交付された後も、それで手続きが終わるわけではありません。建設業許可の有効期間は5年間で、満了前に更新手続きを行わなければ、許可が失効してしまいます。
更新を忘れてしまうと、軽微な建設工事以外の工事を請け負えなくなり、事業に大きな支障が出かねません。特に、更新の直前は工事対応で忙しくなりがちなため、後回しにしているうちに期限が近づいてしまうケースもあります。許可の有効期間を把握し、更新時期が近づいたら早めに手続きを進めましょう。
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会社設立時に決めておくべき建設業ならではのポイント
建設業許可の要件を確認したら、会社設立の準備も進めましょう。ここでは、定款の事業目的の書き方と、資本金設定の考え方という、建設業ならではのポイントを解説します。
以下の記事でも詳しく解説しています。
定款の事業目的に建設業の内容を明記する
定款の事業目的欄には、実際に手がける建設工事の種類を具体的に明記しておく必要があります。例えば、内装工事業や電気工事業など、自社が行う工事の内容がわかるように記載しましょう。
事業目的の記載があいまいなままだと、融資審査や建設業許可の申請で不利になる場合があります。あとから事業目的を追加する手続きの手間を防ぐためにも、設立時点で必要な内容を漏れなく記載しておくことが大切です。
以下の記事でも詳しく解説しています。
資本金額の設定は財産的基礎を意識して検討する
建設業許可の取得を見据えて会社を設立するなら、資本金の額は、財産的基礎の基準額である純資産500万円に近い金額に設定しておくのがおすすめです。決算を待たずに、財産的基礎の要件を満たしやすくなります。
反対に、資本金を極端に低く設定してしまうと、いざ許可を取得しようとする際に、追加の増資や残高証明書の準備が必要になることがあります。会社設立後に慌てて資金を用意することがないよう、会社設立時点から、建設業許可の取得を見据えた資本金設計を意識しておきましょう。
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建設業の会社設立にかかる費用
会社設立には、法人の種類にかかわらず一定の費用がかかります。一般的な会社設立費用の内訳や相場については別記事に譲り、ここでは建設業ならではの費用要素を中心に解説します。
建設業許可申請費用が主なコストになる
建設業で会社を設立する場合、登録免許税や定款認証手数料といった一般的な法人設立費用に加えて、建設業ならではの費用も見込んでおく必要があります。主な費用は、以下のとおりです。
- 建設業許可申請手数料(知事許可9万円、大臣許可15万円)
- 行政書士へ依頼する場合の報酬
- 専任技術者や常勤役員等として確保する人材の人件費
また、重機や工具など、事業を行ううえで必要な設備投資も別途見込んでおく必要があります。会社設立の資金計画を立てる際は、これらの費用も含めて資金繰りを検討しましょう。
以下の記事でも詳しく解説しています。
弥生のかんたん会社設立で費用や手間を抑える
会社設立の手続きにかかる費用や手間を抑えたい際は、「弥生のかんたん会社設立」をぜひご活用ください。画面の案内に沿って必要事項を入力するだけで、定款をはじめとする会社設立時に必要な書類を作成できるため、事前知識がなくてもスムーズに手続きを進められます。
ただし、「弥生のかんたん会社設立」は会社設立に関する書類作成をサポートするサービスであり、建設業許可の申請自体を代行するものではありません。許可申請は、会社設立の手続きとは別に、自身で行うか行政書士等へ依頼する必要がある点を理解しておきましょう。
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正しい要件を押さえて建設業の会社設立を進めよう
建設業で会社を設立するには、経営体制・専任技術者・財産的基礎という3つの許可要件を満たす必要があります。2020年の建設業法改正によって要件が一部緩和された点もふまえ、自社の体制を確認し、申請の流れに沿って準備を進めましょう。
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よくあるご質問
経営業務管理責任者は廃止されたのですか?
経営業務管理責任者という制度は、2020年10月の建設業法改正により「常勤役員等」に変わりました。要件も緩和され、建設業での役員経験が5年に満たない場合でも、建設業での役員経験2年に他業種での役員経験3年を合わせ持っていれば要件を満たせます。ただしこの場合、常勤役員等を直接に補佐する者として、建設業において「財務管理」「労務管理」「運営業務」のそれぞれについて5年以上の経験を持つ者を配置する必要があります(一人が複数の経験を兼ねることも可能です)。
建設業許可に資本金はいくら必要ですか?
建設業許可の財産的基礎要件は、資本金の額そのものではなく、貸借対照表上の純資産額が500万円以上であることで判断されます。資本金を500万円未満に設定した場合でも、金融機関の残高証明書で資金調達能力を証明できれば要件を満たせます。詳しくはこちらをご確認ください。
専任技術者と役員は兼任できますか?
専任技術者は、常勤役員等(経営業務管理責任者等)と同一の営業所であれば、同じ人物が兼任することも可能です。独立を検討している職人自身が実務経験等により専任技術者と常勤役員等の両方の要件を満たせる場合は、従業員を雇わずに1人で建設業許可を取得できる可能性があります。詳しくはこちらをご確認ください。
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この記事の監修者高崎 文秀(税理士)
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役。早稲田大学理工学部応用化学科卒。
都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業。現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行う。