美容室で会社設立するには?美容師免許・保健所届出の要件を解説
監修者: 高崎 文秀(税理士)
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美容室が会社を設立して開業するには、一般的な法人設立の手続きに加え、美容師免許とは別に保健所への美容所開設届が必要になるなど独自の注意点があります。本記事では、免許と届出の違いや法人化のメリット、定款作成のポイント、開業までの流れをわかりやすく解説します。
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美容室の開業には「美容師免許」と「美容所開設届」の両方が必要
美容室の開業には、施術者本人が取得する国家資格「美容師免許」と、法人が開設者であっても別途必要になる保健所への「美容所開設届」という、性質の異なる2つの手続きが欠かせません。美容師免許さえ持っていれば開業できると思われがちですが、実際にはこの両方をそろえて初めて営業を開始できます。まずはこの2つの違いから見ていきましょう。
美容師免許(国家資格)は施術者本人に必要
美容師免許は、実際に施術を行う本人が取得しなければならない国家資格です。厚生労働大臣が指定する美容師養成施設で必要な課程を修了したうえで美容師国家試験に合格し、美容師名簿への登録を受けることで取得できます。
法人として美容室を経営する場合であっても、施術を担当するスタッフ自身が美容師免許を保有している必要がある点は変わりません。また、美容師である従業者が常時2名以上勤務する美容所では、併せて管理美容師の設置も義務付けられています。
こうした制度の前提となる法的根拠として、 「美容師試験に合格した者は、厚生労働大臣の免許を受けて美容師になることができる」と定められています(美容師法第3条)。
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※参照:美容師法
美容師が常時2名以上の場合は「管理美容師」の設置が必要
美容師法第12条の3では、美容師である従業者が常時2名以上勤務する美容所について、衛生的に管理させるための管理美容師を置かなければならないと定められています。管理美容師になるには、美容師免許を取得したうえで3年以上の実務経験を積み、厚生労働大臣が定める基準に沿った講習課程を修了する必要があります。
一方、美容師が自分1人だけで経営する美容室であれば、管理美容師の設置は不要です。スタッフを雇用して複数人体制にする予定がある場合は、管理美容師の要件も踏まえて採用計画を立てておくとよいでしょう。
美容所開設届は法人が開設者でも保健所への届出が別途必要
施術者が美容師免許を持っていても、店舗として営業するには、開設者が法人であっても保健所への「美容所開設届」を別途提出する必要があります。美容師免許はあくまで個人に対する資格であり、店舗の開設許可とは別物である点を押さえておきましょう。
美容所開設届は、内装工事の目途が立った段階で保健所の検査を受け、構造設備基準への適合が確認されて初めて提出・受理されます。つまり、免許を持つ美容師がいるだけでは営業を開始できず、施設に対する検査をクリアする必要があるということです。
開設にあたって満たすべき構造設備の基準が定められています。
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※参照:東京都保健医療局「美容所の開設に関する基準等について
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美容業における法人・個人事業主の違い
美容室の開業自体は個人事業主でも可能ですが、複数店舗展開やスタッフ雇用のしやすさ、融資・補助金の観点から法人化を選ぶケースもあります。ここでは美容業ならではの法人・個人事業主の違いを解説します。
複数店舗展開・スタッフ雇用のしやすさ
複数店舗を展開していく場合、法人の方が経営管理や人材配置がしやすいというメリットがあります。また、法人は社会保険が完備されるため、スタッフの採用力や定着率が高まりやすい点も特徴です。
美容業界は人手不足が課題になりやすく、社会保険の有無をはじめとする雇用条件の充実度が、採用競争力に直結します。将来的にスタッフを増やして店舗を拡大していきたい場合は、法人化によって雇用条件を整えておくことが有利に働くでしょう。
融資・補助金の観点での法人のメリット
法人化すると、金融機関からの融資や、設備投資・採用に関する補助金の対象になりやすくなり、複数店舗展開に必要な資金を調達しやすくなります。
個人事業主のままでも小規模な開業自体は可能ですが、事業を拡大するフェーズで法人化を検討するケースが多いのが実情です。補助金の具体例としては、販路開拓や設備投資を支援する「小規模事業者持続化補助金」や、スタッフを新たに雇用する際に活用できる「キャリアアップ助成金」などが挙げられます。自社の状況に合わせて活用を検討するとよいでしょう。
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会社設立時に決めておくべき美容室ならではのポイント
美容室が会社を設立する際は、定款の事業目的に美容業を明記しておく必要があります。ここでは、保健所への届出を見据えた事業目的の書き方について解説します。
定款の事業目的に美容業を明記する(保健所届出の前提)
会社設立の際に作成する定款には、事業目的を記載する欄があります。この事業目的欄に「理容業及び美容業」「美容室の経営」といった記載がないと、保健所への美容所開設届が受理されない点に注意が必要です。
将来的にエステやネイルなど、美容業に関連する事業も手がける可能性がある場合は、あらかじめ関連する事業目的も定款に含めておくと安心です。
以下の記事でも詳しく解説しています。
複数店舗展開を見据えた事業目的の記載
エステティックサロンの経営やまつ毛エクステンションの施術など、将来展開する可能性のある事業についても、あらかじめ定款の事業目的に含めておくと、後から登記事項を変更する手間を避けられます。
また、フランチャイズ展開を視野に入れている場合は、加盟条件として法人格が求められるケースがある点も踏まえておきましょう。
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美容所の構造設備基準
美容所の構造設備基準は美容師法に基づき、都道府県や市区町村の条例で定められており、地域によって基準の詳細が異なります。ここでは代表例として、東京都の基準を見ていきましょう。
作業室の床面積や設備の基準を満たす必要がある
東京都の基準を例に見ると、美容の業務を行う作業室の床面積は13平方メートル以上とされ、美容いすは床面積13平方メートルの場合で最大6台まで置くことができます。6台を超えて設置する場合は、美容いす1台を増すごとに3平方メートルを加えた面積が必要です。
このほか、流水装置と給湯設備を備えた洗い場、血液が付着した器具を消毒するための消毒設備、ふた付きの毛髪箱・汚物箱の設置に加え、採光・照明・換気(機械換気が望ましく、室内の炭酸ガス濃度を0.5%以下に保つことが目安とされます)といった設備基準も定められています。
「美容の業務を行う1作業室の床面積は、13平方メートル以上であること」「1作業室に置くことができる美容いすの数は、1作業室の床面積が13平方メートルの場合は6台までとし、6台を超えて置く場合の床面積は、13平方メートルに美容いす1台を増すごとに3平方メートルを加えた面積以上とすること」と定められています。
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※参照:東京都保健医療局「美容所の開設に関する基準等について
」
自治体により運用が異なるため事前確認が必須
構造設備基準の詳細は、東京都だけでなく大阪府・大阪市など各自治体の条例でも個別に定められており、数値や運用は自治体ごとに異なります。政令市や中核市では、都道府県ではなく市の保健所が窓口になる場合がある点にも注意が必要です。
内装の図面がすべて固まってから相談するのではなく、工事に着工する前の設計段階で管轄の保健所へ平面図を持参して事前相談を行い、基準への適合を確認したうえで工事や届出を進めるようにしましょう。事前相談の段階で基準に適合しないことが分かれば設計を見直せるため、工事着工後の手戻りを防ぐことにもつながります。
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会社設立から美容所開設までの流れ
美容室が会社を設立してから美容所開設届の提出に至るまでは、保健所への事前相談から始まり、法人設立登記、完成検査を経て開設届の提出へと進みます。ここでは、順をおって流れを解説します。
STEP1|物件選定・保健所への事前相談と内装設計
内装工事に着工する前に、管轄の保健所へ事前相談を行い、構造設備基準(床面積・設備配置等)を満たす設計になっているかを確認しておく必要があります。
事前相談の際に確認しておきたい項目は、次のとおりです。
- 作業室の床面積
- 洗い場の流水装置
- 照度
- 待合スペースの確保
STEP2|法人設立登記の完了
内装工事や物件契約と並行して、定款の作成・認証や登記申請といった法人設立の手続きを進めておけば、内装工事の完了を待たずに準備を進められるため、開業までのスケジュール全体を短縮できます。一般的な会社設立手続きそのものの詳細は、既存の関連記事に譲りますので、併せてご確認ください。
美容所開設届を法人名義で提出する場合は、登記事項証明書(発行後3〜6か月以内のもの。有効期限は自治体により異なります)の添付が必要になります。そのため、内装工事や完成検査のスケジュールから逆算し、開設届を提出するタイミングまでに登記を完了させておくようにしましょう。
以下の記事でも詳しく解説しています。
STEP3|美容所開設届と必要書類を提出する
内装工事の目途が立った段階で、管轄の保健所へ「美容所開設届」を提出します。開設届には施設平面図のほか、美容師免許証、医師の診断書、登記事項証明書などの必要書類を添付します。現地検査の日程調整も行うため、オープン予定日から逆算して早めに提出を進めましょう。
STEP4|保健所の完成検査を受け、適合確認後に営業を開始する
開設届の提出後、保健所の職員による現地検査を受け、構造設備基準を満たしているかの確認を受けます。検査に合格し「開設確認書」が交付されて初めて営業を開始できるため、確認を受ける前に営業することはできません。届出から検査・確認書の交付までは目安として1〜2週間程度かかるため、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
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美容室の設立にかかる費用
一般的な会社設立費用については既存の関連記事に譲り、ここでは美容室特有の費用要素について解説します。
主なコストは内装工事費・美容機器費用
美容室の会社設立では、登録免許税や定款認証等の法人設立費用に加えて、次のような費用がかかります。
- 内装工事費(総額の40〜50%を占めることが多い)
- 美容機器・什器費用
- テナント取得費用(敷金・礼金・仲介手数料)
以下の記事でも詳しく解説しています。
会社設立の費用や手間を抑える方法
会社設立の費用や手間を抑えたい場合は、「弥生のかんたん会社設立」をぜひご活用ください。
ただし、保健所への美容所開設届の手続き自体を代行することはできない点には注意しましょう。
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免許と届出を両方満たして美容室の会社設立を進めよう
美容室の開業には、施術者本人が取得する美容師免許と、法人が開設者であっても別途必要になる保健所への美容所開設届の両方が欠かせません。構造設備基準や定款の事業目的、開業までの流れを押さえたうえで、計画的に準備を進めましょう。
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よくあるご質問
美容室の開業に保健所への届出は必要ですか?
はい、必要です。美容師免許を持つ施術者がいても、店舗として営業するには、開設者が法人であっても保健所への「美容所開設届」を別途提出する必要があります。美容所開設届は、内装工事の目途が立った段階で保健所の検査を受け、構造設備基準への適合が確認されて初めて受理されるため、免許と届出の両方がそろって初めて営業を開始できます。美容所の開設基準について詳しくは東京都保健医療局「美容所の開設に関する基準等について」をご確認ください。
美容室開業で使える補助金はありますか?
法人化すると、販路開拓や設備投資を支援する「小規模事業者持続化補助金」や、スタッフを新たに雇用する際に活用できる「キャリアアップ助成金」などの対象になりやすくなります。個人事業主のままでも小規模な開業自体は可能ですが、事業を拡大するフェーズで法人化を検討するケースが多いのが実情です。自社の状況に合わせて活用を検討するとよいでしょう。詳しくはこちらをご確認ください。
美容室の開業資金はいくらかかりますか?
サロン・店舗型サービスの開業資金の目安としては、約300万〜1,000万円程度が1つの参考になります。美容室の会社設立では、登録免許税や定款認証等の法人設立費用に加えて、内装工事費(総額の40〜50%を占めることが多い)、美容機器・什器費用、テナント取得費用(敷金・礼金・仲介手数料)などがかかります。居抜き物件を活用すれば、内装工事費を抑えられる場合があります。会社設立の費用について詳しくは「会社設立費用はいくら?株式会社・合同会社の法人設立費用を比較解説」をご確認ください。
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この記事の監修者高崎 文秀(税理士)
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役。早稲田大学理工学部応用化学科卒。
都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業。現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行う。