請求書電子化の案内文作成のコツ|文例やテンプレートも紹介
監修者: 市川 裕子(ビジネスマナー監修)
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経費削減や業務効率化を目的に、各種帳票をペーパーレス化する企業が増えています。その際、請求書のように社外向けに発行する書類の場合は、取引先へ事前に連絡しておく必要があります。しかし、請求書電子化の案内文といっても実際にどのような文書を作成すればよいのか、悩む方も多いのではないでしょうか。
本記事では、請求書を電子化する際の案内文における例文や、活用いただける無料のテンプレートを紹介します。作成のコツや送付時の注意点なども解説しますので、案内文作成の際にぜひお役立てください。
請求書を電子化する際は案内文を送付する方がよい
近年、電子帳簿保存法の改正により、請求書を始めとする帳票類も電子データで保存することが可能になりました。紙で請求書をその都度送付することは、金銭的にも労力的にもコストがかかるため、郵送を廃止しWebサービスやメールなどによる電子発行に切り替える企業が増えています。
しかし、電子化への対応は企業ごとに異なるため、取引先に無断で請求書を電子化すると、送信した請求書に気付かれなかったり、「今までどおり紙でください」と要求されたりと、トラブルや信頼関係の低下につながる可能性があります。各企業で電子化に対する考えは異なるということを踏まえた対応が求められます。
そのため、請求書を電子化することになった際は、あらかじめ取引先に請求書の電子化と郵送廃止について説明をし、承諾を得ておくことが重要です。取引先への連絡は、口頭のみでは関係者間で情報が正しく共有されず、認識の違いが生じる可能性があります。そのため、案内文を作成し、メールや郵送などで通知しましょう。
請求書を電子化するメリット・デメリットについて詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
請求書電子化の案内文の例
ここでは、請求書の電子化と郵送廃止を取引先に伝える具体的な案内文テンプレートをご紹介します。一方的に通達しているような印象を与えず、先方の理解を求める丁寧な姿勢を示すことが大切です。
請求書の発行者が電子化を案内する場合
まずは、請求書の発行者側が電子化の案内をする場合の例文を紹介します。
請求書電子化のご案内
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、このたび弊社では、ペーパーレス化による業務効率化および環境負荷の軽減を目的として、請求書の発行方法を電子請求書へ移行する運びとなりました。これに伴い、〇〇年〇月〇日請求分より紙の請求書の発行を廃止し、Webサービスを通じた電子請求書へ変更させていただきたく、ご案内申し上げます。
お手数をおかけいたしますが、何卒ご理解とご協力のほどお願い申し上げます。
敬具
記
【電子請求書の概要】
請求書は、弊社指定のWebサービス「(サービス名)」を通じて発行されます。同サービスの詳細につきましては、同封の説明資料および別途お知らせするメールにてご案内いたします。
今後は、電子化により請求書を最短〇日で発行できるようになります。また、請求情報は過去〇年分が保存され、いつでも確認・ダウンロードが可能です。
【電子請求書の運用開始日】
〇〇年〇月〇日請求分より
【お問い合わせ先】
ご不明点がございましたら、以下の担当者までお問い合わせください。
株式会社〇〇
〇〇部 担当:〇〇
TEL:00-000-0000
Mail:〇〇@〇〇.jp
以上
請求書の受領者が電子化を案内する場合
請求書の受領側が「請求書は今後デジタルで提出してください」とお願いするケースもあります。以下がその場合の例文です。
請求書の受領方法変更に伴う、ご提出方法変更のお願い
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、このたび弊社では、インボイス制度の開始や電子帳簿保存法の改正など、昨今の社会要請に対応し、請求書の受領方法を電子化する運びとなりました。
つきましては、〇〇年〇月請求分より、紙の請求書に代わり弊社指定のWebサービスを通じたご送付に変更いただきますようお願い申し上げます。
お手数をおかけいたしますが、何卒、ご理解とご協力のほどお願い申し上げます。
敬具
記
【電子請求書の提出方法】
運用開始後、請求書は弊社指定のWebサービス「(サービス名)」を通じて送付していただきますようお願いいたします。電子請求書の発行には、同サービスへの事前登録が必要です。詳細は、同封の説明資料または別途ご案内するメールをご確認ください。
【電子請求書の運用開始日】
〇〇年〇月〇日請求分より
【お問い合わせ先】
本件についてご不明点がございましたら、以下の担当者までお問い合わせください。
株式会社〇〇
〇〇部 担当:〇〇
TEL:00-000-0000
Mail:〇〇@〇〇.jp
以上
請求書電子化の案内文の無料テンプレート
請求書電子化の案内文を作成する際は、無料のテンプレートを利用するのが効率的です。以下からダウンロードできますので、適宜、編集してご活用ください。

請求書電子化の案内文作成におけるコツ
取引先への案内文は、相手方の理解を得るため、そして電子化へのスムーズな移行を実現するために重要な役割を果たします。案内文の内容によっては、取引先に混乱を招いたり、対応の遅れにつながったりすることもあるため、以下のポイントを押さえて作成しましょう。
請求書を電子化する理由を明確に伝える
請求書の電子化を案内する際には、なぜ電子化を導入することになったのか、その理由を相手方に明確に伝えることが重要です。請求方法の変更は取引先にとっても一定の負荷がかかるため、理由の説明もなく変更するとだけ伝えると、先方の信頼を損なう恐れがあります。変更の背景を丁寧に説明することで、スムーズに了承が得られやすくなります。電子帳簿保存法の対応やペーパーレス化、業務効率化など、電子化の理由は企業によって異なりますので、必ずその理由を明記しましょう。
請求書電子化によるメリットを伝える
取引先の心証に配慮するという点では、電子化による取引先(受領者)側のメリットを伝えることも大切です。相手目線でのメリットを示すことで、先方も電子化対応を前向きに受け入れて、スムーズに対応してくれることが期待できます。ただし、企業の状況の理解も必要です。 相手にメリットを伝える際、余計な情報は避けシンプルで簡潔に伝えるようにしましょう。
請求書電子化によるメリット
実際、請求書の電子化は受領者側にとっても多くのメリットをもたらします。具体的には、以下のようなメリットがあります。
-
- 即日に請求書を受け取れる(郵送よりも迅速に請求内容を確認できる)
- どこからでも請求書を確認・取得できる(リモートワークにも対応可能)
- 紙の保管・管理が不要になる(ファイリングの手間や書類の紛失リスクを軽減)
- 会計処理を効率的に行える(システムを活用することで自動化しやすくなる)
- 環境負荷を軽減できる(SDGsへの貢献)
こうしたメリットを案内文に盛り込むことで、取引先にとっても電子化対応が業務効率化や利便性の向上につながることを理解してもらいやすくなります。メリットを伝える際の配慮も忘れないようにしましょう。簡潔明瞭に、相手の立場に立った文章にする事が大切です。
さらに、デメリットも隠さず伝えることも心得ておきましょう。デメリットを伝えることで信頼を得て、誠実さをアピールでき信頼関係を高められることもあります。
請求書の送付方法を明確に伝える
一口に「請求書の電子化」といっても、メールにPDF形式で添付する方法、Webサービスを利用する方法、クラウドサービス上でやりとりする方法など多岐にわたります。そのため、取引先が混乱しないように、請求書を今後どのような方法でやりとりするのかを具体的に伝えることが大切です。ログイン方法やパスワード設定など具体的な利用の仕方も添えて、電子化対応がスムーズにできるように認識を共有しておきましょう。案内文に詳細を記載するのが難しい場合は、説明資料などを別途案内して取引先の理解を得られるようにしましょう。
紙の請求書からの移行期間を明記する
案内文には、「〇年〇月締めの請求書から~」など、いつから電子請求書に移行するのかを明記することが重要です。移行期間を事前に具体的に示すことで、取引先も事前の準備がしやすくなります。移行開始前後に、取引先から「紙の請求書が届かない」と苦情や問い合わせが届くリスクを減らすためにも、忘れずに記載しましょう。
電子データの発行方法などを明記する
請求書の電子化に際して、取引先が円滑に対応できるように、電子データの発行方法や使用するシステムの概要なども記載しましょう。とりわけ、特定のWebサービスやクラウドサービスを使用する場合は、取引先側にもシステム上での登録・設定や操作方法の理解などが事前に必要となるケースが多いです。そのためにも、相手方が取扱い方法・対応に困らないように余裕を持った案内が必要です。不明点や問い合わせ時にどのような対応をするのかという社内共有も必要です。
自社側で設定をする場合も、取引先のメールアドレスなどが必要になる場合は、その情報を提供するように依頼しなければなりません。これまでの取引で先方のアドレスを知っている場合でも、登録するのはそのアドレスでよいか確認する方が望ましいです。取引先のアドレスが個人アドレスになっている場合は特に注意し、送信先を明確にしていくことが求められます。
また、メール送信の場合も、現在使用しているアドレスとは別のものから電子請求書を送付するのであれば、迷惑メールに紛れ込まないように事前に受信設定を促した方が安全です。そのため、請求書の電子化に際して受領者側に特定の対応が必要になる場合は、その旨を説明し明確にしておきましょう。また、今後も紙で請求書発行を希望する取引先には、変更の内容や今後の対応について説明することも忘れてはなりません。
問い合わせ対応の連絡先を明記する
電子請求書への移行に際して、取引先はさまざまな疑問や不安を抱くことが予想されます。したがって、案内文には問い合わせ対応の窓口となる連絡先を明記しましょう。また、問い合わせ対応を効率化するために、「ログイン方法がわからない」といった予想される質問に対しては回答を用意しておくなど、事前に対策を講じるのがおすすめです。問い合わせ時にスムーズに回答できる、対応できることが肝心です。時間をかけ過ぎたり、回答が不明確にならぬよう、社内共有をしっかりとって万全の体制を整えておきましょう。
請求書電子化の案内文を送付する際の注意点
請求書の電子化を実現するためには、取引先の理解と協力が欠かせません。取引先と良好な関係を維持するために、案内文を送付する際には以下の点に注意しましょう。
スケジュールに余裕を持たせる
案内文を発送する際は、電子化への切り替え日時に合わせて最低でも2~3か月前には送付するようにしましょう。すべての取引先がすぐに電子請求書への対応ができるとは限りません。社内調整やシステム対応のために必要な時間を十分確保できるよう配慮し、スケジュールを立てることが大切です。
また、電子化に切り替える1~2週間前にメールでリマインドを実施することで、より丁寧な印象を与えることができます。請求書の電子化は取引先の業務にも影響を与えるため、案内文を送付するタイミングは早めを心掛け、余裕をもったスケジュールで対応しましょう。
取引先の利便性を考慮する
請求書の電子化は自社の業務効率化のために導入されることが多いですが、取引先にとっては負担となる場合もあるため、案内文が一方的な通達にならないように配慮することが必要です。請求書電子化の案内文は、自社がお願いする立場であるという意識をもって作成し、電子化による取引先のメリットや場合によってはデメリットも記載するなど、先方にこころよく応じてもらえるような工夫をしましょう。
取引先への配慮は、電子化の方法を選定する時点でも求められます。例えば、請求書のフォーマットは、PDFなどできるだけ取引先が使い慣れた形式の方が望ましいです。また、Web環境が整っていないなど、電子化への対応が難しい取引先にも考慮し、必要に応じて紙の請求書を発行できるよう整えておくことも重要です。さらに、押印についての配慮も求められます。法的には請求書への押印は必須ではありませんが、商習慣として求められることが多いため、電子印鑑の導入も検討することが望ましいでしょう。
法令対応を記載する
請求書の電子化を進めるうえで、取引先に安心感を与えるためには、法令に適合していることを明確に記載することも重要です。インボイス制度や電子帳簿保存法などでは、請求書の体裁や保存方法などについて要件が定められています。請求書が必要な要件を満たしていない場合、受領者側も税務上のリスクを負うことになってしまいます。
そのため、請求書の電子化をする際は、使用するシステムや請求書の要件が、最新の法令に対応したものであるようにすることが大切です。そして案内文や説明資料には変更後の請求書がインボイス制度や電子帳簿保存法に対応したものであることを明記し、取引先の不安を軽減できるようにしましょう。
段階的な移行も検討する
前述のように、すべての取引先がすぐに電子化に対応できるとは限らないため、段階的な移行を検討することも選択肢の1つです。取引先によっては、社内の承認プロセスやシステム整備の関係で、即座に電子請求書へ移行することが難しい場合もあります。そのため、電子化の導入が難しい取引先には、紙の請求書の発行を続けたり段階的な移行を促したりすることも検討しましょう。
例えば、電子請求書と紙の請求書を並行して送付する期間を設けることで、取引先が電子請求書に慣れる時間を確保し混乱を防げます。電子請求書のメリットを取引先に理解してもらうために、移行期間中に説明会を開催したり、利用マニュアルを提供したりすることも有効です。
強引に電子化を推し進めると、取引先の負担が増し、信頼関係に悪影響を及ぼす可能性があります。取引先ごとの状況を考慮し、柔軟な対応を心掛けることが大切です。
請求書の電子化で事務作業を効率化しよう
請求書の発行方法は取引先の業務にも影響するため、電子化にあたっては事前に案内文を送付し、取引先へ丁寧に理解を求める必要があります。また、電子化の方法を選ぶ段階でも、自社だけでなく、取引先の利便性を考慮することが重要です。
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この記事の監修者市川 裕子(ビジネスマナー監修)
マナーアドバイザー上級、秘書検定1級、ビジネス実務マナー、硬筆書写検定3級、毛筆書写検定2級、収納アドバイザー1級、など。 出版社や人材サービス会社での業務を経験。秘書業務経験よりビジネスマナーとコミュニケーションの重要性に着目し、資格・スキルを活かし、ビジネスマナーをはじめとする各種マナー研修や収納アドバイザー講師として活動。
