青色申告で必要な帳簿とは?種類や記帳の仕方などを解説

2023/03/13更新

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

個人事業主やフリーランスは所得税を納めるために、毎年確定申告を行わなくてはなりません。所得から最大65万円/55万円の青色申告特別控除を受けるためには、決まった形式で帳簿をつけることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。
ここでは、最大65万円/55万円の青色申告特別控除で必要になる帳簿の種類や記帳方法、保存期間などについて解説します。

青色申告のメリットや条件の詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

青色申告とは?白色申告との違いやメリット、条件や申請時の流れをわかりやすく解説!

確定申告に必要な帳簿の記帳方法は2種類

確定申告を行う場合、帳簿に必要な情報を記入することが義務づけられています。帳簿とは、日々のお金の動きを記録して、資産や経営状況を明確にするための書類です。帳簿をもとに、青色申告で提出が必要となる貸借対照表損益計算書を作成することになります。
なお、帳簿の記帳方法には「単式簿記」と「複式簿記」の2種類があり、青色申告特別控除で最大65万円/55万円の控除を受ける場合には複式簿記で記帳する必要があります。

白色申告または10万円の青色申告特別控除を受ける場合:単式簿記(簡易帳簿)

単式簿記は、1回の取引に対し1つの科目に絞って収支を記録する単純な記帳方法です。例えば現金出納帳の場合、科目を「現金」に絞っているので簡易帳簿といえます。現金の増減が発生するたびに、その要因となる金額を記録していきます。白色申告の方や、青色申告で10万円の青色申告特別控除を受ける場合は、簡易帳簿で良いとされています。

簡易帳簿の記帳例
4月1日にプリンタのインク3,000円を、現金で買った場合
日付 摘要 金額
現金 その他
20XX.4.1 プリンターインク代 3,000

65万円/55万円の青色申告特別控除を受ける場合:複式簿記

青色申告特別控除で最大65万円/55万円の控除を受けるためには、複式簿記で記帳する必要があります。
複式簿記は単式簿記よりも複雑で、1回の取引を複数の科目で記録する記帳方法です。
取引を発生した原因と結果の両面にわけて記録できるため、現金などに代表される財産の残高や収支を網羅的に記録することができます。
こうして付けた帳簿をもとに損益計算書と貸借対照表を作成していきます。

複式簿記の記帳例
4月1日にプリンタのインク3,000円を、現金で買った場合
日付 借方 貸方 摘要
20XX.4.1 消耗品費 3,000 現金 3,000 プリンターインク代

無料お役立ち資料【「弥生のクラウド確定申告ソフト」がよくわかる資料】をダウンロードする

青色申告における記帳の条件

青色申告で確定申告するためには、以下の条件を満たしていることが必要です。

発生主義で記帳する

青色申告でも白色申告でも、帳簿は基本的に現金主義ではなく発生主義で記帳します。発生主義は、現金の収入や支出のタイミングは関係なく「収入や支出の事実が確定したタイミング」で計上するという方法です。
ただし、青色申告で前々年度の所得が300万円以下である小規模事業者の場合、事前に「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を提出していれば、現金主義での記帳も認められています。なお、白色申告では現金主義の記帳は認められていません。
例えば、業務のために必要な消耗品をクレジットカードで購入するケースを考えてみましょう。3月19日にクレジットカードで消耗品を購入した場合、その時点で原則として1回目の帳簿づけを行う必要があります。そして、クレジットカードの引き落とし日である4月20日に事業用口座から購入代金が支払われた場合、そのタイミングでも帳簿づけを行います。3月19日の時点では、消耗品を購入したものの実際にお金が引き落とされたわけではありません。しかし、発生主義では「支出の事実が確定した時点」の日付で計上する必要があるため、このような帳簿づけになるのです。

複式簿記で記帳する

前述のとおり、青色申告特別控除で最大65万円/55万円の控除を受けるには、複式簿記での記帳が求められます。複式簿記は1回の取引を複数の科目で記録する記帳方法ですが、これだけだとよくわからないかもしれません。
例えば、現金で250円の交通費を支払ったとしましょう。その場合、「交通費として250円を使用したから(原因)、現金が250円減った(結果)」という2つの要素に分けて記録する、というイメージです。
また、複式簿記では左側に「借方」、右側に「貸方」を記帳します。借方とは現金などの財産が増えたことを示すもので、貸方とは現金などの財産が減ったことを示します。例えば、現金8,000円の売上が発生した場合、売上が原因で資産が増えることから、以下のように記帳します。

複式簿記の「借方」と「貸方」記帳例
借方 貸方
現金 8,000円 売上 8,000円

複式簿記の知識があっても、すべての取引を手で記録するのは困難ですが、確定申告ソフトを使えば手間をかけずに帳簿をつけることができます。

帳簿や領収書などを保存する

青色申告でも白色申告でも、帳簿や領収書などの書類を保存する義務があります。保存期間は7年間で、請求書や見積書などの取引に関して作成した書類は、5年間保存が必要となります。その具体的な内容は以下のとおりです。

青色申告で保存が必要な書類の種類と保存期間
保存が必要な書類の種類 保存期間
帳簿 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など 7年間
書類 決算関係書類 損益計算書、貸借対照表、棚卸表など 7年間
現金預金取引等関係書類 領収証、小切手控、預金通帳、借用証など 7年間(※)
その他の書類 取引に関して作成し、または受領した上記以外の書類
(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など)
5年間
白色申告で保存が必要な書類の種類と保存期間
保存が必要な書類の種類 保存期間
帳簿 収入金額や必要経費を記載した帳簿 7年間
業務に関して作成した上記以外の帳簿 5年間
書類 決済に関して作成した棚卸表など 5年間
業務に関して作成または受領した請求書、納品書、領収証など 5年間

なお、帳簿の保存期間は、確定申告を行う収入がある年の翌年3月16日から7年間もしくは5年間、書類は作成または受領日の属する年の翌年3月16日から7年間もしくは5年間となります。
帳簿や書類は紛失しやすいので、管理には十分注意が必要です。帳簿は、年度ごとに区分して箱に入れておくなど、領収証などは年ごとにファイルにまとめたりするなど工夫しましょう。

確定申告における領収書の扱いについての詳細は、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

確定申告に必要な領収書で注意すべき点とは?正しい保管方法も紹介

65万円/55万円の青色申告特別控除を受けるための帳簿の種類

節税効果の高い最大65万円/55万円の青色申告特別控除を受ける場合、主要簿として複式簿記で記帳する「仕訳帳」と「総勘定元帳」を作成することが必須です。その他の補助簿も含めて、青色申告で必要になる帳簿とともに紹介しましょう。

仕訳帳

仕訳帳とは、日々のすべての取引を発生順に記録する帳簿で、取引ごとに借方と貸方に仕訳を行って記帳する必要があります。日付順に取引発生の年月日、勘定科目、金額などを記帳します。

総勘定元帳

総勘定元帳とは、仕訳帳の借方と貸方それぞれの勘定科目を転記して作成する帳簿です。すべての取引を勘定科目の種類ごとに分類し、整理して計算します。勘定科目ごとに取引の年月日、対応する相手方勘定科目、金額を記載します。
仕訳帳から転記する際はミスに十分注意しなければなりませんが、確定申告ソフトを使えば自動で転記されるため、ミスの心配はありません。

現金出納帳

現金出納帳とは、補助的な役割を果たす帳簿のひとつで、すべての現金取引を記録します。仕入や売上、買掛金の支払い、売掛金の回収、経費などを記録し、帳簿上の現金残高と実際の現金残高を一致させる必要があります。複数の事業用口座がある場合は、口座ごとに現金出納帳を作成します。

売掛帳

売掛帳は、掛売りでの売上がある場合に記帳する帳簿です。取引先ごとに記帳し、状況を明示する必要があります。
掛売りとは、売買の際に後で代金を受け取ることを前提に商品を渡すことを指します。例えば、クレジットカード払いで商品を提供したり、成果物を納品した1か月後に代金を受け取ったりするケースが挙げられます。

買掛帳

買掛帳は、買掛けでの仕入れがある場合に記帳する帳簿です。取引先ごとに記帳し、状況を明示する必要があります。
買掛けとは、売買の際に後でお金を支払うことを前提に商品を受け取ることを指します。例えば、クレジットカード払いで商品を購入したり、成果物が納品された1か月後に代金を支払ったりするケースが挙げられます。

経費帳

経費帳とは、仕入(売上原価)を含まない経費を記帳する帳簿です。勘定科目ごとに取引の日付や金額、その内容を記載します。交通費や文房具、コピー用紙などの消耗品などが経費に含まれます。

固定資産台帳

固定資産台帳とは、事業で使用している車や機械、備品等の名称や購入金額、購入年月日などを記録した帳簿です。資産ごとに記帳を行います。

65万円の青色申告特別控除を受けるには、e-Tax(または電子帳簿保存)も必要

最大55万円の控除は、これまで説明した複式簿記などの要件を満たすことで受けられます。ただし、最大65万円控除の適用を受けるためには、こうした要件に加えてe-Taxによる申告(電子申告)か電子帳簿保存を行っていることが必要です。受けられる青色申告特別控除に10万円の差が出てきますので、ご注意ください。

e-Taxについて詳しくは「ネットで青色申告を提出するe-Taxのメリットと方法を解説」もご覧ください。

10万円の青色申告特別控除を受けるなら仕訳帳と総勘定元帳は不要

10万円の青色申告特別控除でいいという場合、最大65万円/55万円の青色申告特別控除で必要な「仕訳帳」と「総勘定元帳」を用意する必要はありません。
そのため、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳という5種類の帳簿だけで青色申告をすることができます。

帳簿なしで確定申告はできる?

個人事業主やフリーランスになったばかりで、「帳簿のつけ方がわからず帳簿を作成していない」という人もいるかもしれません。しかし、確定申告をする場合は必ず帳簿を作成しなければならないため、今すぐにでも作成に取りかかるべきです。帳簿づけを怠っていた場合、残っている領収書や請求書、通帳などの情報をもとに帳簿を作成していくことになります。
なお、「白色申告は合計所得が300万円以下の場合、帳簿が必要ない」というのは過去の話です。2014年以降は、所得に関係なく白色申告でも帳簿づけが義務づけられているため、いずれにせよ帳簿は必要です。
そのため現在は、白色申告は簡単で青色申告が大変だという差がなくなってきています。

青色申告ソフトなら簿記や会計の知識がなくても青色申告できる

青色申告ソフトを使うことで、簿記や会計の知識がなくても青色申告することができます。

今すぐに始められて、初心者でもかんたんに使えるクラウド青色申告ソフト「やよいの青色申告 オンライン」から主な機能をご紹介します。

やよいの青色申告 オンライン」は初年度無料で使い始められ、無料期間中もすべての機能が使用できますので、気軽にお試しいただけます。

初心者にもわかりやすいシンプルで迷わず使えるデザイン

初心者にもわかりやすいシンプルなデザインで迷わず使うことができます。日付や金額などを入力するだけで、青色申告に必要な複式簿記の帳簿と貸借対照表などの書類が作成できます。

取引データの自動取込・自動仕訳で入力の手間を大幅に削減

銀行明細やクレジットカードなどの取引データ、レシートや領収書のスキャンデータやスマホで撮影したデータを取り込めば、AIが自動で仕訳を行います。これにより入力の手間と時間が大幅に削減できます。

確定申告書類を自動作成。e-Taxに対応で最大65万円の青色申告特別控除もスムースに

画面の案内に沿って入力していくだけで、確定申告書等の提出用書類が自動作成されます。青色申告特別控除の最大65万円/55万円の要件を満たした資料の用意もかんたんです。またインターネットを使って直接申告するe-Tax(電子申告)にも対応し、最大65万円の青色申告特別控除もスムースに受けられます。

自動集計されるレポートで経営状態がリアルタイムに把握できる

日々の取引データを入力しておくだけで、レポートが自動で集計されます。確定申告の時期にならなくても、事業に儲けが出ているのかリアルタイムで確認できますので、経営状況を把握して早めの判断を下すことができるようになります。

無料お役立ち資料【「弥生のクラウド確定申告ソフト」がよくわかる資料】をダウンロードする

よくあるご質問

青色申告をする際に帳簿をつけていない場合はどうなりますか?

帳簿をつけていない場合、青色申告はできません。個人事業主は、青色申告でも、白色申告でも帳簿つけと帳簿の保存が義務付けられています。帳簿のつけ方については下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

個人事業主向けの帳簿の付け方を解説した記事はこちら

青色申告の帳簿のつけ方の例を教えてもらえますか?

青色申告の帳簿は「①領収書や通帳など内容を整理する→②取引内容を帳簿に付ける→③仕訳帳・総勘定元帳に記載と転記をする。→④利益や損失を計算する」という流れで記帳していきます。具体例は以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

個人事業主向けの帳簿の付け方を解説した記事はこちら

青色申告の帳簿を手書きで記帳する際に注意点はありますか?

青色申告の帳簿を手書きで記帳する際は記入する項目が多いため、記入漏れにまず気をつけなければいけません。複式簿記なので転記ミスが発生する恐れもあります。その他、数字の書き間違いや計算間違いが起きてしまうと、どこで間違えたか確認する手間が増えてしまいます。基本的には確定申告ソフトなどの利用をおすすめします。

個人の確定申告で使用する書類の保管期間はありますか?

個人事業主で青色申告の場合、帳簿類(仕訳書など)や決算関係書類(損益計算書など)、現金預金取引関係書類(領収書など)は7年間(※)の保管義務があります。請求書や見積書、契約書などは5年間の保管義務があります。白色申告の場合は、法定帳簿は7年、それ以外の帳簿や決算書類、領収書などの書類は5年の保存が必要です。※ 前々年分の事業所得及び不動産所得の金額が300 万円以下の方は5年 。帳簿や領収書の保管義務の具体例については下記の記事で詳しく解説していますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

青色申告で必要な帳簿について解説した記事はこちら

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
「知りたい!」を最優先に、一緒に問題点を紐解き未来に向けた会計をご提案。

初心者事業のお悩み解決

日々の業務に役立つ弥生のオリジナルコンテンツや、事業を開始・継続するためのサポートツールを無料でお届けします。

  • お役立ち情報

    正しい基礎知識や法令改正の最新情報を専門家がわかりやすくご紹介します。

  • 無料のお役立ちツール

    会社設立や税理士紹介などを弥生が無料でサポートします。

  • 虎の巻

    個人事業主・法人の基本業務をまとめた、シンプルガイドです。

事業のお悩み解決はこちら