3月決算が多い理由は?メリットや自社に合った決算期の決め方を解説
監修者: 齋藤一生(税理士)
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企業の事業年度(会計期間)の最後の月を、決算月といいます。企業は、1年以内の範囲であれば、事業年度を自由に決めることができます。その中でも、企業の決算月として最も多いのが3月です。決算月を自自由に決められるにもかかわらず、なぜ3月決算の企業が多いのでしょうか。
本記事では、3月決算の企業が多い理由や3月決算のメリット・デメリットの他、自社に合った決算期を決めるポイントなどについて解説します。
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決算月とは、企業の事業年度の最終月のこと
決算月(決算期)とは、企業の事業年度の最終月のことです。事業年度とは、会社が決算書を作成するにあたって対象となる一定の期間のことで、会計期間とも呼ばれます。すべての企業は、事業年度ごとに損益をまとめ、その期間の経営状態や財務状況を明らかにするために決算を行わなければなりません。事業年度の終了日を決算日といい、決算日の属する月が決算月になります。例えば、事業年度が4月1日から翌年3月31日までなら、決算月は3月です。
個人事業主の場合は、事業期間が1月1日から12月31日の1年間と決まっているため、決算月は一律で12月です。
それに対して、法人の事業年度は、1年を超えない範囲で自由に決めてよいことになっています。そのため、決算月をいつにするかは各企業の自由です。なお、事業年度を1年未満にしても問題はありませんが、大半の企業では1年間としています。
企業によっては、1年の事業年度を半年ごとに分けた「中間決算」や、3か月ごとに分けた「四半期決算」、月ごとの「月次決算」を行うケースもあります。このような場合は、年に1度の本決算を行う月を、決算月と呼びます。
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3月決算の企業が多い理由
前述したように、法人は決算月を自由に決めることができますが、その中でも多いのが3月決算です。国税庁が発表した令和4年度の「決算期別の普通法人数」によれば、2021年4月1日から2022年3月31日までの間に事業年度が終了した年1回決算の法人のうち、最も多いのが3月決算で、全体の約18%を占めています。さらに、そのうち資本金が1億円以上の企業に限って見てみると、3月決算の企業は50%以上にのぼります。
では、なぜ日本では3月決算の企業が多いのでしょうか。ここでは、3月決算の企業が多い3つの理由について、解説します。
国・自治体の会計年度が4月から翌年3月に統一されているから
3月決算の理由としてよく聞かれるのが、「国の年度に合わせている」というものです。国や地方自治体など公的機関の会計年度は、一律で4月から翌年3月となっています。公的機関は、この会計期間に合わせて予算編成を進め、さまざまな事業が民間企業に発注します。特に公的機関と取引している企業にとっては、事業年度を国などと合わせて3月決算にした方が、事業運営がスムーズに進みます。
さらに、公共事業を受注する企業は比較的規模が大きいことが多く、取引先も多岐にわたります。そこから「取引先と決算月を合わせる」という連鎖が続き、結果として、公的機関と取引のない企業にも3月決算が増えていったと考えられます。
税制改正が毎年4月1日に発表されるから
毎年の税制改正にスムーズに対応するために、3月決算を選択している企業もあります。国の会計年度が4月から翌年3月であることから、年度初めの4月1日に税制改正の適用開始となるケースは多いです。
事業年度の途中で税制改正が行われると、期中に会計処理の方法を変えなければならず、業務の混乱や煩雑さを招く可能性があります。税制改正と事業年度の開始が同じタイミングであれば、会計処理方法を変更する必要があったとしても対応しやすくなります。
日本の多くの高等学校や大学の卒業月が3月だから
新卒採用を行っている企業の場合、学校の年度に合わせて3月決算にしているケースも見られます。高校や大学をはじめ、日本の教育機関の多くは、4月から翌年3月までを1つの年度としています。そのため、新入社員は3月に学校を卒業して4月に入社するという流れが一般的です。
新卒採用を考慮し、4月1日付で人事異動を行う企業も少なくありません。このような場合、3月決算にすることで、よりスムーズな企業運営につなげられます。
3月決算のデメリット
3月決算には、多くのメリットがある一方で、税理士の繁忙期と重なってしまうというデメリットもあります。
法人の決算や、決算後の税務申告は、税理士に依頼するのが一般的です。3月決算の企業が多いということは、同じ時期に税理士への依頼が集中するということでもあります。
さらに3月は、個人事業主の確定申告の時期でもあります。税理士にとって3月前後は、1年の中でも最も多忙な時期といえるでしょう。そのため、決算にあたって税理士にいろいろ相談をしたいと思っても、じっくり時間をかけて対応してもらうのが難しいかもしれません。
特に、顧問契約を結ばずに決算申告だけを税理士に依頼するような場合、他の時期に比べて料金が割高になる傾向があります。3月決算で決算申告業務を税理士に依頼するなら、日頃から税の相談ができるように顧問契約を結んでおく、会計ソフトなどを活用して税理士と会計データを共有する、などの方法を検討するのもおすすめです。
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3月以外の決算月のメリット
日本では決算月を3月にすることが多いとはいえ、すべての会社にとって3月決算がベストというわけではありません。企業の状況や事業内容などによっては、決算月を3月以外にした方が大きなメリットを得られる場合もあります。
ここでは、3月以外の決算月で多い2月決算や9月決算、12月決算のメリットについて、それぞれ説明します。
2月決算のメリット
2月決算のメリットは、本業への影響を押さえられる点です。小売業や流通業の企業に多いのが、2月決算です。小売業や流通業は、冬のボーナスから年末年始、年明けのバーゲンが終わる頃までが繁忙期となり、その反動で消費が落ち込む2月は閑散期にあたります。
決算期はさまざまな会計処理や棚卸など手間のかかる作業が多くなるため、比較的時間に余裕がある2月を決算月とすることで、本業への影響を抑えることができます。
9月決算のメリット
9月決算のメリットは、税理士の繁忙期や人事異動などの時期を避けられることです。新卒採用や人事異動のサイクルに合わせて決算月を設定する考え方もある一方で、このような時期は社内体制が大きく変わり、事務作業の負担も大きくなりがちです。そのため、あえて3月決算を回避し、ちょうど半年後となる9月を決算月にする企業も少なくありません。
12月決算のメリット
個人事業主から法人化(法人成り)した場合は、12月決算とすることで、会計処理をスムーズに移行できるメリットがあります。個人事業主の事業年度は1月1日から12月31日と決まっているので、法人化して引き続き12月決算を採用すれば、収支なども把握しやすくなるでしょう。
また、海外の企業は12月決算が多いため、海外企業と頻繁に取引をする場合や、海外展開を視野に入れている場合は、決算月を12月にすると業務上の連携が取りやすくなります。ただし、確定申告が2月末となり、税理士の繁忙期と重なるため、ゆっくりと時間を割いてもらいにくくなるというデメリットもあるので注意しましょう。
決算月を変更する方法
決算月は一度決めたらずっとそのままというわけではなく、後から変更することも可能です。ただし、決算月を変更するには、下記のような手続きを行う必要があります。
1 株主総会の特別決議を行った後に、定款を変更する
決算月を変更する際には、まず定款を変更する必要があります。決算月を変更するということは、会社の事業年度が変わるということです。多くの会社では定款に事業年度を記載しているため、決算月を変えるために定款を変更しなければなりません。
株式会社の場合、定款を変更するには、原則として株主総会での特別決議が必要です。特別決議とは、発行済株式総数の過半数を保有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上の賛成によって決議するものです。
なお、合同会社の場合、定款に記載した事項を変更するには、原則として全社員による決議と承認が必要です。
定款の変更方法についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
2 株主総会の議事録を作成する
決議後は、株主総会の議事録を作成し、変更内容を定款へ反映します。会社設立時のような公証役場での定款認証は必要ありません。また、事業年度は登記事項にあたらないため、法務局への届出も不要です。
3 異動届出書を税務署に提出する
株主総会の特別決議を経て、定款の事業年度を変更したら、納税地を所轄する税務署や都道府県税事務所、市区町村役場に、異動届出書を提出します。
税務署に提出する異動届出書は、税務署の窓口か国税庁のウェブサイトから入手できます。都道府県税事務所や市区町村役場に提出する届出書は、自治体によって名称や様式が異なるため、事前に確認しておきましょう。なお、届出書と併せて、定款の写しや株主総会の議事録などの提出を求められることがあります。
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※国税庁「C1-8 異動事項に関する届出
」
自社に合った決算月の決め方
決算月を決めるときには、自社の状況を考慮することが大切です。「3月決算の会社が多いから」など安易な理由で決算月を決めてしまうと、事業を開始してから不都合が生じる可能性もあります。
ここでは、自社に合った決算月を検討する際に意識すべきポイントについて解説します。
資金繰りを考慮したうえで決定する
決算月を決める際には、会社の資金繰りを考慮して支出の多い月を避けましょう。会社が納める法人税や法人事業税、法人住民税、消費税などの税金は、申告・納付期限が事業年度終了の日の翌日から2か月以内と定められています。
そのため、決算月には、2か月後の納税に備えて手元に資金を用意しておかなければなりません。まとまった仕入れ代金の支払いやボーナスの支給など、現金が不足するタイミングに納付期限が重なると、資金繰りの悪化を招く可能性があります。
自社の繁忙期をなるべく避ける
自社の繁忙期と閑散期を予測できる場合は、繁忙期を避けて決算月を決めるのも1つの方法です。法人の決算ではさまざまな会計処理や書類の作成などが必要になるうえ、株主会社なら株主総会を開催して決算の承認を受けなければなりません。
さらに、決算後には法人税などの確定申告も必要です。ただでさえ忙しい繁忙期に、決算にかかわる煩雑な事務作業が加わると、通常業務を圧迫してしまうかもしれません。業界の傾向や季節によって繁忙期と閑散期がはっきりしている場合などは、できるだけ決算月と繁忙期が重ならないようにすると良いでしょう。
消費税の納税義務免除期間を考慮する
消費税の納税義務の免除期間を考慮して決算期を決める方法もあります。資本金が1,000万円未満の企業は、原則として、設立第1期目と第2期目は消費税の納税義務が免除されます。そのため、設立日からできるだけ離れた日を決算日にすることで、免除期間を長くすることができます。例えば、設立日から1年後を決算日とすれば、2年間は消費税の納税義務が免除されることになります。
ただし、インボイス制度に対応するために適格請求書発行事業者の登録を行う場合は、課税事業者であることが要件となるため、設立第1期目から消費税の納税義務が生じます。ただ、やはり長めに1期目を取った方が、2割特例という制度を利用できる期間が長くなるため、有利になることが多いです。
インボイス制度に対応して課税事業者になった方が良いかどうかは、自社や取引先の状況、事業内容などによって判断が分かれます。迷ったときには、税の専門家である税理士に相談すると良いでしょう。
社内の各部門の業務量を考慮する
決算期に忙しくなるのは、経理部門や経営陣だけではありません。社内の他の部門も、決算期には業務負担が増えるため、社内の各部門の業務量を考慮したうえで決算月を決めましょう。
例えば、生産部門や販売部門では、棚卸などの作業が発生します。また、営業部門やマーケティング部門は、年間目標達成に向けたラストスパートの時期になります。その他にも、それぞれの部門で、経費などの伝票類をまとめなければなりません。そのため決算書を作成する経理部門だけではなく、社内の各部門の業務量も考慮する必要があるのです。
大きな売上が上がる時期と決算期の関係を考慮する
シーズンによって売上が変動する業種など、大きな売上が上がる時期を事前に予想できる場合は、その直前を決算月とし、売上のピークが期首になるように事業年度を設定するのも良いでしょう。
売上が伸びる時期を期首にすると、事業年度を通した売上予測が立てやすくなります。もし思うように売上が伸びなかったとしても、決算期まで時間の余裕があるため、改善策を講じることもできるはずです。さらに、期全体の売上見込みをふまえ、効果的な節税対策も可能になります。
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決算月は自社の状況に合わせて決めよう
日本に3月決算の企業が多い背景には、公的機関や教育機関などが、4月から翌年3月を年度の区切りとしている影響があります。ただし、決算月を3月にしている企業が多いからといって、自社にとって3月決算がベストとは限りません。
個人事業主とは異なり、法人は、事業年度を1年以内で自由に決めることができます。資金繰りや繁忙期、社内の業務負担など、自社の状況を考慮したうえで、最適な決算月を設定しましょう。
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