領収書に必要な内訳とは?インボイス制度に対応した書き方を解説

2023/03/29更新

この記事の監修辻・本郷 税理士法人/辻・本郷ITコンサルティング

領収書とは、売手側が代金を受け取ったことを証明するために買手側に発行する書類です。特に、個人事業主や店舗経営者などにとって、領収書は仕入れや経費の支払いの際に買手側として受け取る書類である一方、商品やサービスを販売した際には自身が売手側として発行する書類でもあります。

また、2023年10月から始まるインボイス制度(適格請求書等保存方式)に伴い、必要要件を満たした領収書であれば、領収書をもとに買手側は、仕入税額控除が可能になります。仕入税額控除とは課税事業者が納めるべき消費税額を算出するとき、売上にかかった消費税額から仕入れ等にかかった消費税額を差し引く、消費税額計算上の仕組みのことです。インボイス制度に対応するには、従来の領収書の内訳に加えて記載項目が増えるため、注意が必要です。

ここでは、インボイス制度開始後にインボイスとして発行が必要な領収書の内訳や書き方などについて説明します。また、買手側が領収書を受け取る際の確認事項も共に解説します。

発行する領収書に記載すべき項目

2023年10月からインボイス制度が開始されると、買手側の課税事業者が仕入税額控除を受けるための重要な要件として、インボイス(適格請求書)の保存が求められます。売手側が適格請求書発行事業者である場合、買手側である取引先(課税事業者)から発行を求められたときは、インボイスを交付しなければなりません。

インボイスとは「請求書」だけを指すのではなく、インボイス制度に対応した請求書や領収書、納品書などの証憑書類を総称したものです。仕事上の信用を損ねないためにも、取引先に発行する領収書については、2023年10月に開始するインボイス制度に対応するためだけではなく、現状も内訳など記載ルールをしっかり把握と認識をして、対応できるようにしておく必要があります。

まずは一般的な領収書に必要な項目を解説。インボイスに追加で必要となった項目についても、後半でご紹介します。

(1)宛名

支払者に確認し、支払者の氏名や会社名を正式名称で記載します。株式会社や一般社団法人といった名称も、「(株)」「(一社)」などと略さずに正式名称で記載しましょう。社名が聞き取りにくい場合や漢字などがわからない場合などは、支払者に紙に書いてもらうなどして正式名称を確認すると安心です。

なお、次の業種においては、例外的に領収書の宛名を省略しても良いとされています。

例外的に領収書の宛名の省略が認められている主な業種

  • 1
    小売業
  • 2
    飲食店業
  • 3
    写真業
  • 4
    旅行業
  • 5
    タクシー業
  • 6
    駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限る)
  • 7
    その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業

(2)日付

支払者から代金を受け取った日付を、年月日で記載します。西暦、和暦のどちらでも問題ありません。「2022/4/1」や「令和4年4月1日」のように、西暦や年号は正確に記入します。

(3)金額

実際に受け取った金額を記載します。商品やサービスの代金であれば、税込金額になります。数字の記載ミスがないように、十分配慮してください。
また、改ざんを防ぐために、金額を書くときは下記の書き方を参考にしてください。

改ざんを防ぐ金額の書き方

  • 金額の先頭に「¥(円マーク)」または「金」をつける
  • 3桁ごとに「(カンマ)」で区切る
  • 金額の末尾に「-」「※」「也」などをつける

例)

  • ¥50,000-
  • 金50,000※
  • ¥50,000円也 など

(4)但し書き

但し書きとは、支払者から受け取った金額が、具体的に何の代金なのかを記載したものを指します。インボイス制度に基づいた領収書に記載する但し書きは、具体的な商品やサービス名を明記する必要があります。但し書きの語尾は「として」とするのが一般的。もし該当する商品などが複数あるときには、そのうち高額なものを記載します。

例)

  • 通信費として
  • 書籍代として
  • お食事代として
  • 手土産代として
  • 文房具代として
  • 消耗品費として など

(5)発行者

商品やサービスの提供者である自身の店舗名や企業名、住所、連絡先を記載します。手書き、印刷、ゴム印など、記載方法は何でもかまいません。なお、押印は必須ではありませんが、偽造防止の観点から、発行者の印鑑を押すことが一般的です。

(6)5万円以上の領収書には収入印紙が必要

領収書に記載された金額が税抜5万円以上になる場合は、金額に応じた収入印紙の貼付が必要です(※)。収入印紙を領収書に貼った後、消印処理(領収書と印紙をまたいで印鑑を押すこと)を行います。なお、現金やデビットカードでの支払いの場合は収入印紙が必要ですが、クレジットカード決済で支払われた場合や領収書を電子データで発行する場合は、収入印紙の貼付は不要です。

  • 一般に印紙税における「記載金額」は、消費税等を含んだ金額とされますが、領収書については、消費税額等を区分して記載している場合、または、税込価格および税抜価格が記載されていることにより、その取引に当たって課されるべき消費税額等が明らかである場合には、記載金額に消費税額等を含めないこととしています。

(7)内訳【インボイス制度対応での追加項目】

ここからは、インボイス制度に対応した請求書に必要な記載項目について説明します。

2019年10月に消費税が10%に引き上げられましたが、一部の商品・サービスに軽減税率(8%)が適用されています。

そのため、領収書の対象となる商品・サービスに消費税10%のものと8%のものが混在する場合は、軽減税率対象品目(消費税8%のもの)とそれ以外(消費税10%のもの)を区分してそれぞれに合計した金額と適用税率を記載します。記載する金額は、税込・税別のどちらでもかまいません。

さらに、2023年10月以降、インボイス制度に対応するためには、税率ごとに区分した消費税額等を記載する必要があります。※適格簡易請求書であればいずれか一方でも可

(8)登録番号【インボイス制度対応での追加項目】

登録番号とは、適格請求書発行事業者として登録をすると、税務署から通知される番号のことです。インボイス制度に対応するには、①課税事業者であること、②税務署に適格請求書発行事業者の登録申請を行って、登録されていることが必要です。2023年10月1日からのインボイス制度開始のタイミングで適格請求書発行事業者になるには、原則として2023年3月31日までに登録申請手続きを行う必要があります。

ただし、令和5年度税制改正大綱において、インボイス制度について、いくつかの見直しが示されており、その中で、2023年3月31日の期限を過ぎても、2023年4月1日から2023年9月30日までの登録申請は、特に追記なしでインボイス制度開始の2023年10月1日を登録開始日として登録されるとの方針が示されています。

しかし、インボイス制度への対応には申請者の各種準備が必要となるほか、登録通知が届くまで一定の期間を要することに変わりはありません。そのため、インボイス制度への対応で登録判断をされた事業者の方は、お早めの申請をおすすめします。

また、税制改正大綱をもとに作成された税制改正法案の国会での可決・成立後に公布と施行となりますので、決定事項ではありませんので、ご注意ください。

インボイス制度が開始されるとインボイスとして発行する領収書には、「税率ごとの消費税額及び適用税率」「登録番号」の記載が必要になります。

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インボイス制度開始による領収書の変更点とは?

2023年10月1日からインボイス制度が開始されると、従来の領収書から変更になることがいくつかあります。前段でご紹介した領収書の記載項目を踏まえて、変更内容についてご確認ください。

税率ごとの消費税額及び適用税率(内訳)と登録番号の追加記載が必要になる

インボイスとして発行する領収書は、従来の領収書に加えて、「適用税率」「税率ごとに区分した消費税額等」「登録番号」(適格簡易請求書であれば「税率ごとに区分した消費税額等または適用税率」と「登録番号」)の記載が必要になります。これらは前述の記載項目のうち、「(7)内訳」「(8)登録番号」に該当するので、よく確認してください。

なお、登録番号は、前述のように事前に税務署に適格請求書発行事業者の申請をして登録される必要があります。インボイスは、登録番号がある課税事業者ではないと発行ができないので、現在、免税事業者の場合は、消費税の課税事業者事業社になることも加味してインボイス対応をするか否か判断が必要です。

つまり、いくらその他の項目がきちんと記載していても、適格請求書発行事業者の登録をして、登録番号を記載していなければ、インボイス制度に対応した領収書とはいえないので注意しましょう。

消費税の端数処理は1つのインボイスにつき、税率ごとに1回

消費税を計算するときに、1円未満の端数が生じる場合があります。以前は請求書における消費税の端数処理のルールが決まっていなかったため、商品ごとに端数を処理することも可能でした。しかし、インボイス制度では、「1つのインボイス(適格簡易請求書も含む)につき、税率ごとに1回ずつの端数処理を行う」というルールが定められています。領収書でも、消費税の端数処理のルールは同様です。なお、切り上げ、切り捨て、四捨五入など、どのように端数を処理して税込価格を設定するかは、事業者が任意で決めて良いことになっています。

インボイス制度では3万円未満の領収書も必要になる

従来は、取引価格が税込3万円未満の場合、領収書がなくても帳簿への記載があれば、仕入税額控除が認められました。しかし、インボイス制度ではこの特例が廃止され、3万円未満の取引であっても、インボイス(適格簡易請求書含む)である領収書や請求書などがなければ、仕入税額控除が受けられなくなります。そのため、3万円未満の少額の取引においても、取引先から求められたら領収書の発行が必須になります。相手から領収書を受け取った場合は、一定期間の保存が必要です。

なお、令和5年度税制改正大綱において、いくつかインボイス制度の見直しが示されております。それにより、インボイス制度の開始から6年間(2023年10月1日から2029年9月30日)の経過措置として、1万円未満の課税仕入は、インボイスの保存がなくても帳簿のみで仕入税額控除が可能になります。基準期間(前々年・前々事業年度)の課税売上高が1億円以下の事業者が対象です。

ただし、税制改正大綱をもとに作成された税制改正法案の国会での可決・成立後に公布と施行となりますので、決定事項ではありませんので、ご注意ください。

また、下記のような取引については、領収書の発行が難しいため、従来どおり帳簿への記載だけで仕入税額控除が認められます。

例外が認められているケース

  • 自動販売機で購入したもの
  • 鉄道運賃
  • 郵便や貨物サービス
  • 卸売市場で行われる生鮮食品などの販売など

インボイス制度における領収書の役割とは?

2023年10月1日から導入されるインボイス制度において、領収書はどのような役割を担うのでしょうか。改めて見ていきましょう。

領収書とは金銭のやりとりを証明する書類

領収書は、取引において金銭のやりとりがあったことを証明する証憑書類です。代金の受取人が発行し、領収書を発行する側にとっては代金を受け取ったことが、受領する側にとっては確実に支払ったことが証明されます。これによって、二重請求や過払いを防ぐ役割があります。

また、法人や個人事業主が、売上や経費を正しく計上するためにも領収書は必要です。経費精算や確定申告などにも使用する重要な書類であり、民法では取引の際、代金を支払った者は受領した者に対して受取証書(領収書やレシートなど)の発行を請求できると定められています(民法486条)。

なお、領収書を「領収証」と書くこともありますが、意味はどちらも同じです。また、必要事項の記載があり、金銭のやりとりがあった事実がわかる書類であれば、レシートであっても領収書と同様に扱われます。

インボイス制度で仕入税額控除を適用するには正しい領収書が必要

インボイス制度において領収書は、仕入税額控除を受けるために必要な書類の1つです。2023年10月よりインボイス制度が始まると、買手側である課税事業者が仕入税額控除を受けるためには、原則として売手側である取引相手から発行されたインボイスの保存が必要になります。なお、ここでいうインボイスとは、定められた事項が記載された取引内容を証明するための証憑書類の総称で、請求書の他、領収書や納品書などの書類も含みます。

例えば、売手側が発行する領収書がインボイスの記載事項を満たしていなかった場合、領収書を受け取った買手側(取引先)は仕入税額控除を受けることができなくなってしまいます。そのようなことにならないように、領収書は必要な項目を正しく記載することが大切です。

対象業種の場合、領収書は適格簡易請求書でも可能

領収書やレシートは、対象業種に該当する場合、インボイスよりも簡易的な「適格簡易請求書(簡易インボイス)」として発行することが可能です。

適格簡易請求書は、「簡易」となっているように、インボイスの記載内容がいくつか省略されています。適格簡易請求書でも、インボイスと同様に仕入税額控除は受けられますが、発行が認められる業種は下記の通り、限られているため注意が必要です。

適格簡易請求書の発行が認められている業種

インボイスの代わりに適格簡易請求書を発行することができるのは、下記のような不特定多数に対して販売などを行う業種です。

  • 小売業
  • 飲食店業
  • 写真業
  • 旅行業
  • タクシー業
  • 駐車場業
  • 上記の他に不特定で多数の者に対して資産の譲渡などを行う事業

適格簡易請求書として認められるために必要な記載事項

適格簡易請求書に必要な記載事項は、下記のとおりです。

  • 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  • 課税資産の譲渡等を行った年月日
  • 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
  • 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
  • 税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率

また、上記と同じ事項を記載した電磁的記録(いわゆる電子レシート)も、適格簡易請求書として認められます。

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この記事の監修辻・本郷税理士法人

国内最大規模の税理士法人。専門分野に特化した総合力を活かし、一般企業の税務顧問をはじめ、医療法人、公益法人、海外法人など多種多様なお客様へサービスを提供。開業支援から事業承継、相続・贈与対策、オーナー向けの資産承継など、法人・個人問わずお客様のニーズに柔軟かつ的確に応えるべく、幅広いコンサルティングを行っている。
Webサイト:https://www.ht-tax.or.jp 新規タブで開く

この記事の監修辻・本郷ITコンサルティング

国内最大級の税理士法人である辻・本郷 税理士法人のグループ会社として2014年に創業。実践した数多くのDX化ノウハウをグループ内外に展開。バックオフィスに課題を抱える組織のコンサルティングから導入までをワンストップで行う。電子帳簿保存法やインボイス制度対応等、最新のコンサルティング事例にも精通。「無数の選択肢から、より良い決断に導く」をミッションとし、情報が多すぎる現代において、お客様にとっての「より良い」を見つけるパートナーを目指す。

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