法人成り後に個人事業を廃業しないとどうなる?メリット・デメリットと手続き上の注意点
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この記事でわかること
【廃業の要否に関する結論】
法人成り後も個人事業の廃業は義務ではなく、併存も選択できます。唯一の正解はなく、メリット・デメリットを踏まえて自社の状況に合った判断をすることが大切です。
【廃業しない場合に得られるメリットと増える負担】
青色申告特別控除の継続や許認可の維持といったメリットがある一方、税金・社会保険料の負担増や、それぞれで申告手続きが必要になるという負担も生じます。
【消費税・インボイス対応や手続き上の注意点】
消費税の免税事業者判定やインボイス登録は、個人事業と法人でそれぞれ別々に行う必要があります。廃業しない場合は、確定申告と会計ソフトの利用も個人事業側で継続が必要です。
法人成り(法人化)した場合でも、個人事業を廃業しないという選択は可能です。ただし税務や融資面で注意点もあるため、個人事業を廃業せずに法人と併存させるメリット・デメリットを理解したうえで判断しましょう。
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法人成り後、個人事業は廃業しなくてもよい?
法人成りをしても、個人事業の廃業は法律上の義務ではなく、あくまで任意です。個人事業と法人を併存させるという選択肢もあります。
法人成りと個人事業の廃業は別の手続き(廃業は任意)
法人の設立手続きと個人事業の廃業手続きは独立しています。法人設立は「法務局への登記」、個人事業の廃業は「税務署への届出」と、手続きを行う窓口も異なります。
法人登記が完了しても、実態として個人で事業を続けている限り、個人事業は存続している扱いになる点に留意してください。
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※参照:法務局「商業・法人登記申請手続
」
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※参照:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続
」
「廃業しない」=個人事業と法人を併存させる状態
個人事業を「廃業しない」状態とは、実態として個人名義で行うビジネスが存続し、その結果これまで通り個人事業の確定申告を続けながら、新設した法人の決算・申告も並行して行うことです。
例えば、「既存の取引先とは個人名義のまま契約を続け、新規の取引先とは法人名義で契約する」といった使い分けがこれに該当します。
この併存状態を続けるのか、移行期間として数か月で廃業するのかによっても対応は異なります。迷っている方は、後述の「廃業しない方がよいケース・廃業すべきケースの判断基準」を参考にしてください。
一点だけ注意しておきたいのが、法人が実際に行っている事業の売上を、税負担を減らす目的で個人事業の売上として計上するなど、恣意的に所得を分散させることは認められないということです。売上や経費は契約関係や取引の実態に基づいて区分する必要があり、不適切な所得の分散は税務調査で否認される場合があります。
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法人成り後に個人事業を廃業しないメリット4つ
個人事業を継続することで、青色申告特別控除の継続利用や許認可の維持など、いくつかのメリットが得られます。
| メリット | 該当するケース(こんな方におすすめ) |
|---|---|
| 青色申告特別控除など個人側の税制優遇を継続利用できる | 複式簿記で記帳し、e-Taxによる申告をしている(または対応予定の)個人事業主 |
| 不動産所得など法人に移しにくい所得を個人のまま残せる | 事業用不動産を個人名義で保有しており、登記費用・不動産取得税等の移転コストを避けたい人 |
| 損益通算で節税できる場合がある | 事業所得・不動産所得等で赤字が生じやすく、他の所得(給与所得等)と相殺したい人 |
| 取得済みの許認可を個人名義のまま維持できる | 飲食店営業許可など法人に自動承継されない許認可を持っている人(建設業許可は事前認可で例外あり) |
1. 青色申告特別控除など個人側の税制優遇を活かせる
個人事業を続ける限り、現行の青色申告特別控除を継続して利用できます。
最大65万円の控除を受けるには、「複式簿記での記帳」、「貸借対照表・損益計算書の添付」、「期限内申告」、「e-Taxによる電子申告」の4要件をすべて満たす必要があります(2026年分までは、「e-Taxによる電子申告」の代わりに「優良な電子帳簿の保存」でも可。2027年分からはe-Taxによる電子申告が必須)。
さらに、令和9年分(2027年分)の確定申告からは、この要件に「優良な電子帳簿の保存」または「請求書等のデータの自動連携(デジタルシームレス保存)」のいずれかを加えることで、控除額が最大75万円に増額されます。この適用を受けるには、対象となる年分の確定申告期限までに電子帳簿保存等に関する所定の届出書を所轄税務署へ提出する必要があるため、早めの準備を心がけましょう。
ただし、法人成りによって個人側に残る事業が小規模になり、事業とは言えない規模になれば、雑所得に該当し、青色申告特別控除を受けられません。また、個人側に残るのが不動産所得のみで、不動産の貸付けが事業的規模に満たない場合は、控除額が最大10万円になります。
そのため、法人成り後も従来と同じ青色申告特別控除を受けられるとは限らない点には注意が必要です。
青色申告特別控除の要件に関しては、以下の記事も併せて参考にしてください。
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※参照:国税庁「No.2072 青色申告特別控除
」
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※参照:国税庁「電子帳簿保存法関係
」
2. 不動産所得など法人に移しにくい所得がある場合は個人側が有利
個人名義の不動産から得ている不動産所得は、法人へ移すと登記費用や不動産取得税がかかるため、個人のまま残した方が有利なケースがあります。
移転コストの目安は以下の通りです。
| 対象 | 登録免許税(所有権移転登記) | 不動産取得税(東京都の例) |
|---|---|---|
| 土地 | 1.5%(本則2%、軽減〜令和11年3月31日) | 3%(本則4%、軽減〜令和9年3月31日) |
| 住宅用家屋 | 2% | 3%(軽減〜令和9年3月31日) |
| 非住宅用家屋 | 2% | 4%(軽減なし) |
- ※宅地等は課税標準額が価格の1/2になる軽減措置があります。地方税(不動産取得税)の税率・軽減措置は自治体により異なります。
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※参照:国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)
」
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※参照:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表
」
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※参照:東京都主税局「不動産取得税
」
3. 損益通算で節税できるケースがある
事業所得などで生じた赤字を他の所得と相殺できる「損益通算」は、個人事業を継続している方が活用しやすい制度です。
ただし、損益通算の対象となる所得は「不動産所得」、「事業所得」、「譲渡所得」、「山林所得」の4種類に限られる点に注意が必要です。
なお、損益通算はあくまで「個人の所得間」で行う処理です。個人事業の赤字を使って法人税を直接減らすことはできないため、混同しないようにしましょう。
また、前述の通り、雑所得に該当する場合にも損益通算の対象外となる点にも注意が必要です。
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※参照:国税庁「No.2250 損益通算
」
4. 許認可を個人名義のまま維持できる
事業に必要な許認可は、法人へ自動的に引き継がれないものが多いため、個人事業を存続させて維持するという選択肢があります。
例えば飲食店営業許可は、個人で取得した許可を法人に引き継げず、新たに取得し直す必要があります。切り替え時のブランクを防ぐため、一時的に個人事業を継続させるケースもあります。
一方で、建設業許可には事前認可制度があり、事前の申請と審査を経れば空白期間なく法人へ承継することが可能です。ただし、自動的に引き継げるわけではなく、一定の審査期間を要するため、早めの準備が欠かせません。
宅建業免許、古物商許可、美容室の開設届など、その他の許認可も業種によって対応が異なるため、「許認可があるから個人事業を残すべき」と自己判断せず、管轄官庁(都道府県・保健所・警察署等)へ事前に確認しましょう。
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※参照:国土交通省「3.(2)建設業者の地位の承継について (建設業法第17条の2・3)
」
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法人成り後に個人事業を廃業しないデメリット・注意点5つ
管理業務の煩雑化や税・社会保険料の負担増など、個人事業を継続するからこそ生じるデメリットもあります。
| デメリット | 該当するケース(注意が必要な方) |
|---|---|
| 法人・個人で売上や経費が分散し管理が煩雑になる | 個人事業と法人の両方で取引が発生し、どちらに計上するか都度判断が必要な人 |
| 融資審査で追加説明を求められる可能性がある | 日本政策金融公庫等の創業融資を申し込む予定がある人 |
| 税負担・社会保険料の負担が増えるケースがある | 代表者として社会保険に新たに加入する人、地方税(均等割・個人事業税)の負担増が見込まれる人 |
| 確定申告や経理の事務負担が二重になる | 自分で確定申告・記帳を行っており、税理士のサポート体制がまだ整っていない人 |
| 消費税の免税事業者判定・インボイス登録は個人と法人で別々に行う必要がある | インボイス発行事業者として個人事業で登録済み、またはこれから法人でも登録を検討している人 |
1. 法人・個人で売上や経費が分散し管理が煩雑になる
法人成り後も個人事業を続ける場合、取引先ごとに請求先や計上先が分かれることになります。資金繰りや損益が把握しにくくなるうえ、決算書・確定申告書の作成・保存の手間も発生します。
2. 融資審査で追加説明を求められる可能性がある
金融機関は事業の実態を一体として評価するため、個人事業と法人の区分が複雑だと、資金の流れなどについて詳細な追加説明を求められることがあります。事業区分や資金の流れを明確に説明できる資料(決算書・確定申告書・資金繰り表など)を準備しておくと、審査がスムーズに進みやすくなります。
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※参照:日本政策金融公庫「創業融資のご案内
」
3. 税負担・社会保険料の負担が増えるケースがある
法人を設立すると、代表者は原則として社会保険(厚生年金保険・健康保険)への加入が必要になり、地方税の扱いも個人事業とは異なります。
| 項目 | 個人事業 | 法人 |
|---|---|---|
| 社会保険 | 国民健康保険・国民年金 | 厚生年金保険・健康保険(代表者は原則加入義務あり) |
| 地方税 | 個人事業税(東京都の場合年290万円の事業主控除あり) | 法人事業税(法人住民税均等割は赤字決算でも発生) |
- ※税額や手続きの詳細は管轄の都道府県税事務所・市区町村のWebサイト等でご確認ください。
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※参照:日本年金機構「適用事業所に関すること
」
-
※参照:東京都主税局「個人事業税
」
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※参照:東京都主税局「法人事業税・法人都民税
」
4. 確定申告や経理の事務負担が二重になる
個人事業と法人を並行して運営すると、個人の確定申告(原則3月15日期限)と法人の決算・申告(決算日から2か月以内)の両方が必要になり、経理の手間が単純に二重になります。
この負担を少しでも和らげるためには、効率的な会計ソフトの導入や、税理士のサポート体制を整えておくことが不可欠です。
5. 消費税の免税事業者判定・インボイス登録は個人事業と法人で別々に行う必要がある
消費税の免税事業者判定(基準期間の課税売上高1,000万円等)や、インボイス発行事業者の登録は、個人事業と法人でそれぞれ独立して行います。
免税事業者の判定基準となる期間も、個人は「その年の前々年」、法人は「前々事業年度」と異なります。
また、インボイス登録番号も個人(T+13桁の番号)と法人(T+法人番号)でそれぞれ発行されるため、請求書等に記載する番号を混同しないよう注意が必要です。
なお、個人事業者向けの消費税負担軽減の特例(いわゆる3割特例)は法人には適用されないため、両者で消費税の負担感が異なる点も理解しておきましょう。
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※参照:国税庁「No.6501 納税義務の免除
」
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※参照:国税庁「消費税インボイス制度特設サイト
」
納税免除期間について詳しくは、以下の記事を併せて参考にしてください。
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廃業しない方がよいケース・廃業すべきケースの判断基準
事業の状況によって、個人事業を残すべきか、廃業すべきかの判断は分かれます。自身の状況と照らし合わせてみてください。
| 廃業しない方がよいケース | 廃業した方がよいケース |
|---|---|
| 一部事業のみ法人化し、残りは個人事業として継続したい | 個人事業の売上規模が小さく、二重申告の事務負担がメリットを上回る |
| 不動産を個人名義のまま残したい(移転コストを避けたい) | 取引先をすべて法人に切り替えられ、個人事業を存続させる理由がない |
| 許認可の再取得に時間・コストがかかる | 社会保険料・税金の二重負担感を解消し、法人に一本化したい |
法人成り後、個人事業を廃業しない方がよいケース
新規事業だけを法人化し、既存事業は個人のまま続けたい場合などは、併存するメリットが大きいです。
また、個人名義の不動産の移転コスト(登記費用・不動産取得税)を避けたい場合も、個人事業を残す理由になるでしょう。
さらに飲食店営業許可など引き継げない許認可があり、再取得の手間やブランクを避けたい場合も、個人事業を廃業しない方がよいケースに該当します。
なお、建設業許可のように事前認可で承継できる制度がある場合でも、審査に一定の期間を要するため、移行期間として併存させることがあります。
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※参照:国税庁「廃業する場合
」
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※参照:国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)
」
-
※参照:国土交通省「3.(2)建設業者の地位の承継について (建設業法第17条の2・3)
」
法人成り後、個人事業を廃業した方がよいケース
個人事業側の売上規模が小さく、二重の事務負担やコストがメリットを上回る場合は、法人に一本化した方が合理的です。
取引先や契約をすべて法人名義に切り替えられるなら、個人事業を存続させる理由はほとんどありません。
また、社会保険料や地方税の二重負担を解消し、資金管理をシンプルにしたい場合も、廃業を検討する価値があります。
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※参照:国税庁「廃業する場合
」
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※参照:日本年金機構「適用事業所に関すること
」
判断に迷ったときは税理士に相談する
ここでお伝えした判断軸はあくまで一般的な基準です。最適な選択は事業の状況により異なるため、迷った場合は税理士へ相談するのが確実です。
相談の際は、売上試算や許認可の一覧、資金繰り表など、事業の実態がわかる資料を用意しておくとスムーズです。
弥生の「税理士紹介ナビ」を利用すれば、こうした相談に対応できる税理士・会計事務所を無料で紹介してもらえます。
法人成りの相談先や相談費用の目安に関しては、以下の記事を併せて参考にしてください。
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廃業しない場合に必要な手続き・確定申告の注意点
個人事業と法人を併存させる場合、両者の収支を厳密に区分して管理・申告する義務があります。その他にも注意点がありますので、しっかり確認しておきましょう。
個人事業の収支は法人と区分して申告する
個人事業の所得は所得税の確定申告(原則3月15日期限)、法人の所得は決算日から2か月以内の法人税申告で、それぞれ申告します。
| 項目 | 個人事業 | 法人 |
|---|---|---|
| 申告の種類 | 所得税の確定申告 | 法人税の確定申告(決算) |
| 申告先 | 税務署 | 税務署・都道府県税事務所・市区町村 |
| 申告期限 | 原則3月15日(土・日・祝日の場合は翌日) | 決算日から2か月以内 |
原則として、法人の設立日以降に成立した取引は法人へ、それ以前の取引は個人事業へ計上します。保守契約などの継続的な取引は、設立を機に法人名義で契約を結び直すのが理想的です。
家賃や通信費、車両費など、個人事業と法人の両方で利用する経費については、床面積や使用割合などの合理的な基準を設けて適切に按分してください。
個人と法人の間でお金の流れをあいまいにしない
既存の継続契約は法人設立を機に法人名義で再締結し、新規契約は法人名義で統一しましょう。銀行口座やクレジットカードも個人用と法人用を完全に分離して、事業資金と生活費が混ざらないよう徹底してください。
経費を按分する場合は、その根拠となる資料(床面積図や走行記録など)を客観的な証拠として保存しておきます。
請求書や領収書も、取引の実施時期に合わせて宛名(個人名義か法人名義か)を正確に使い分けることが重要です。
資産・負債の引き継ぎに伴う課税関係を確認する
個人から法人へ資産を移す方法は、主に「売買」、「無償譲渡」、「現物出資」の3つがあり、選択によって税務上の扱いが異なります。
例えば棚卸資産(商品など)を引き継ぐ場合、法人は別人格のため個人から法人に譲渡する際には外部に販売する価格などをもとに適切に譲渡対価を設定する必要があります。また、会社への譲渡は個人側では売上として計上する必要がある点にも注意が必要です。車両や備品などの減価償却資産を売買する場合も、時価での譲渡として譲渡所得(業務用資産の性質によっては事業所得)として課税対象となります。
減価償却資産を法人に移転する際に特に注意が必要なのが、無償譲渡や時価の2分の1未満の低額で譲渡した場合です。身内の会社であっても税務上は「時価で譲渡があった」とみなされ(みなし譲渡課税)、思わぬ税負担が発生するリスクがあります。
現物出資で資本金に充てる場合も、基本的には時価での譲渡と同様の扱いになります。
いずれの方法であっても、個人から法人への資産移転は原則として時価を基準に課税関係が判定されます。「帳簿価額のまま引き継げばよい」というのは誤解なので、具体的な評価や課税関係は事前に税理士へ確認しましょう。
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※参照:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続
」
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※参照:国税庁「No.2200 収入金額とその計算
」
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※参照:国税庁「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法
」
むやみに確定申告ソフトを解約しない
法人化のタイミングで、これまで使っていた個人の確定申告ソフトをうっかり解約してしまうケースがあります。
解約すると個人事業側の申告ができなくなってしまうため、継続して利用するようにしましょう。
弥生では、個人事業主向けクラウド青色申告ソフト「やよいの青色申告 オンライン」と、法人向けクラウド会計ソフト「弥生会計 Next」をご用意しています。
すでに「やよいの青色申告 オンライン」をご利用中で、法人化に伴い「弥生会計 Next」の利用をご検討の方は、以下のガイドをご覧ください。
個人事業を廃業する場合は届出を行う
併存を検討した結果、やはり個人事業を廃業すると決めた場合は、税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。提出期限は、事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までです(提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限)。
なお、届出を出したあとも、廃業した年分の所得については個人事業主として最後の確定申告が必要です。詳しい手順は以下の記事を参考にしてください。
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※参照:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続
」
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※参照:国税庁「A1-9 所得税の青色申告の取りやめ手続
」
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法人化に伴い個人事業を廃業するかどうかは状況に応じて判断しよう
法人成りをしたからといって、個人事業を急いで廃業する必要はありません。税制優遇や許認可維持といったメリットと、事務負担増・融資審査への影響・税務の複雑化といったデメリットを比較し、自社に合った選択をしましょう。
ただし本記事で紹介したのはあくまでも一般的な内容ですので、判断に迷う場合は自己流で進めず、税理士などの専門家へ相談するのが安心です。
また、法人化によって個人事業を廃業・継続いずれの選択をした場合も、事業が存続していた期間分の確定申告は必要です。法人化したからと言って確定申告ソフトの解約をしてしまわないよう、注意しましょう。
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よくあるご質問
法人成りしたら個人事業の廃業届は必ず出さないといけないのですか?
一部事業のみ法人化する場合など、個人事業を継続する場合は一部廃業として廃業届を提出します。自社の状況に応じて判断しましょう。詳しくは本記事の「廃業しない方がよいケース・廃業すべきケースの判断基準」をご覧ください。
個人事業と法人を両方持っていると税務調査されやすいって本当ですか?
併存していること自体が直接的に税務調査を招くわけではありません。ただし、お金の流れがあいまいだったり、経費の付け替えが疑われる管理をしていたりすると、指摘を受けるリスクが高まります。契約書の整備や口座の分離、按分根拠資料の保管を徹底し、必要に応じて顧問税理士へ相談しましょう。
個人事業を廃業しない場合、法人の決算月はどう決めればよいですか?
法人の決算月は自由に設定できます。一般的には繁忙期や消費税の免税期間を考慮して決めますが、個人事業と併存させる場合は、個人の確定申告(3月15日期限)と時期が重ならないよう2月や9月前後にずらす方法もあります。決算月の決め方について詳しくは「決算月にすることは?決算月の決め方と決算の流れ、効率化の方法を解説」も併せてご覧ください。
個人事業を廃業しないまま放置するとどうなりますか?
廃業届を出さずにいると、税務署からは「個人事業が継続している」とみなされます。この場合、確定申告の案内が届くなど不都合が発生することがあります。
特に廃業年の棚卸資産や固定資産の法人への移転に伴う収入に関して放置して申告漏れが発覚した場合、納付すべき税金の額や申告の状況に応じて5〜30%程度の無申告加算税に加え、延滞税もかかるなど、相応のペナルティが課せられる可能性があります。
※参照:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版』