【2025年最新】年末調整のやり方は?流れや提出する書類などをわかりやすく解説
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年末調整は、企業が役員や従業員に支払った1年間の給与や賞与に対して行う大切な業務です。ただし、年に一度しか行わないうえに扱う書類が多く、従業員の状況によって提出書類も異なるため、毎年手順を確認しながら進める担当者も少なくありません。
年末調整をスムーズに進めるには、提出書類の種類や提出期限を正確に把握し、スケジュールを立てて計画的に準備を進めることが大切です。本記事では、年末調整に使用する書類や具体的な手順、注意すべきポイント、よくある質問などについて解説します。年末調整業務の実務にお役立てください。
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年末調整とは所得税の過不足を調整する手続き
企業が毎年行う年末調整とは、給与所得者の所得税を正確に計算し、過不足を精算するための手続きのことです。
企業・団体などに勤める役員や従業員の所得税は、給与や賞与から源泉徴収という形で天引きされ、企業が本人に代わって国に納税します。しかし、源泉徴収される所得税はあくまでも概算です。そのため企業は、1年間(1月1日から12月31日まで)の給与が明確になった時点で正確な所得税額を計算し、源泉徴収額との差額を精算します。源泉徴収された所得税が本来の所得税額より多ければ差額を従業員に還付し、少なければ従業員から追加で徴収します。
この一連の流れが年末調整であり、多くの給与所得者は、年末調整によってその年の納税が完了します。
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年末調整の対象者
年末調整は、企業・団体などに勤めるすべての従業員が対象になるわけではありません。年末調整の対象になる人とならない人、それぞれの条件について詳しく解説します。
年末調整の対象となる人
年末調整の対象となるのは、原則として年末の12月31日時点で企業に所属している役員や従業員です。正社員や契約社員だけでなく、パート、アルバイトなども対象であり、雇用形態は問いません。また、1年を通して勤務した人だけでなく、年の途中で入社した人も、年末まで在籍していれば対象となります。ただし、対象となる人から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が提出されていることが条件です。
また、年末調整は原則12月に行いますが、以下のいずれかの状況に該当する人は、年の途中でも年末調整を行います。
- 年の途中で行う年末調整の対象となる人
-
- 海外転勤などにより日本の非居住者となった人
- 死亡により退職した人
- 著しい心身の障害により退職した人(再就職し給与を受け取る見込みのある人を除く)
- 12月の給与などの支払いを受けた後に退職した人
- 年の中途で退職したパート・アルバイトで、その年の給与が123万円以下の人(年内に再就職し給与を受け取る見込みのある人を除く)
年末調整の対象にならない人
年末の12月31日時点で企業に所属している役員や従業員であっても、年末調整の対象とならないケースがあります。年末調整を行わないのは、以下の条件に該当する人です。
- 年末調整で対象外となる人
-
- 1年の給与総額が2,000万円超の人
- 災害減免法の規定により、所得税および復興特別所得税の徴収猶予や還付を受けた人
- 2か所以上から給与を受け取っていて、他社に給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出している人
- 非居住者(国内に住所がなく、1年以上の居所がない人)
- 日雇労働者など継続した雇用ではない人
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年末調整の流れと回収する書類
年末調整の準備がはじまるのは、一般的に10月下旬ごろです。まずは、大まかな流れとスケジュールを確認しておきましょう。
1.従業員に各種申告書を配布・回収する
年末調整の業務では、以下の表にある書類を従業員に配布し、本人に記入してもらったうえで回収します。
| 必要な書類 | 受けられる控除 |
|---|---|
| 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 | 扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除 |
| 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼給与所得者の特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書 | 基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、所得金額調整控除、特定親族特別控除 |
| 給与所得者の保険料控除申告書 | 生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除 |
各書類の内容および役割を確認しておきましょう。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、当年分および翌年分を従業員に配布します。当年分の申告書は、従業員がその年最初の給与を受け取る前日まで(多くの場合は前年の年末調整時)に記載したもので、当年の年末調整の算出に使用します。従業員によっては、記入時と状況が変わっていることもあるため、内容に変更点がある場合は修正してもらいましょう。
翌年分の申告書は、翌年1月以降に源泉徴収する所得税の計算に用います。翌年1月分の給与計算までに提出されれば手続き上は支障ありませんが、提出漏れなどを防ぐため一般的には他の書類と併せて配布し、当年分の申告書と同時に会社に提出をしてもらいます。
給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼給与所得者の特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書
「基礎控除」「配偶者控除・配偶者特別控除」「特定親族特別控除」「所得⾦額調整控除」の4種類が一式になっている書類です。このうち「特定親族特別控除」は、特定親族(居住者と⽣計を⼀にしている19歳以上23歳未満の親族)がいる場合に控除が受けられる制度で、令和7年度税制改正により創設されました。受けられる控除額は3万円~63万円で、特定親族の合計所得⾦額に応じて段階的に決まります。
給与所得者の保険料控除申告書
その年に支払った保険料(生命保険料、地震保険料、社会保険料、小規模企業共済等掛金)について、保険料控除を受けるために記入・提出する申告書です。保険料控除を適用する場合は、記入済みの申告書と併せて保険料の支払いを証明する書類も提出します。
なお、給与や賞与から天引きされている社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料など)については、企業側で納付額を把握可能なため、従業員本人による申告書への記入は不要です。
2.対象者のみ提出してもらう書類を確認する
年末調整では企業が一律に配布・回収する書類の他に、各従業員の状況に応じて対象者のみが提出する書類もあります。代表的な書類は以下のとおりです。
- 対象者から提出してもらう書類
-
- 保険料の支払いを証明する書類(保険料控除証明書など)
- 住宅ローン控除(2年目以降)を受ける場合、住宅借入金等特別控除申告書と残高証明書
- 前職分の源泉徴収票(転職者などで同じ年に他社からの給与収入がある場合)
該当する従業員がいる場合は、事前に本人にその旨を伝えて提出を促しましょう。
保険料の支払いを証明する書類
保険料控除を適用する従業員は、該当の保険料の支払いを証明する書類を会社に提出します。具体的には、生命保険料や地震保険料の控除証明書、国民年金保険料の領収書や控除証明書、小規模企業共済等掛金の払込証明書などです。
こういった証明書は、通常であれば10月ごろに保険会社などから加入者(従業員本人)へ送られてきます。従業員が記入済みの保険料控除申告書を提出する際に、証明書類も添付してもらいましょう。
近年は、保険会社から発行される電子的控除証明書を利用できる場合もあります。
住宅ローン(2年目以降)の住宅借入金等特別控除申告書と残高証明書
住宅借入金等特別控除申告書は、住居の購入やリフォームの際に住宅ローンを利用した人が、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除または特定増改築等住宅借入金等特別控除)を受けるために提出する申告書です。住宅ローン控除を初めて受ける年(1年目)は確定申告をしますが、2年目以降は年末調整で対応可能です。また、住宅ローン控除の申告にあたっては、住宅借入金等特別控除申告書と併せて、住宅ローンの年末残高証明書も提出してもらいましょう。
前職分の源泉徴収票(同じ年に他社からの給与収入がある場合)
従業員がその年に自社以外の企業から給与を受け取っているケースでは、年内に交付された源泉徴収票を提出してもらいます。具体的には、従業員が年の途中で転職してきた場合や、入社前までアルバイトをしていた場合などが該当します。
従業員の手元に退職済みの勤め先の源泉徴収票がない場合、自社で正しく年末調整ができないため、従業員本人から発行または再発行を依頼してもらいましょう。源泉徴収票の提出が年末調整の締め切りに間に合わないときは、年末調整ができませんので、従業員自身が確定申告を行うことになります。
3.年末調整の計算をする
12月の給与が決定すると、各従業員への年間の給与支払額が確定します。この額を基に、年末調整の計算を行いましょう。手順は以下のとおりです。
①課税所得金額を算出する
1年間の給与支払額から給与所得控除(一定の要件を満たす場合には所得金額調整控除も適用がある)を差し引いて「給与所得」を算出します。さらに、従業員から提出された申告書の内容に基づき、給与所得から所得控除を差し引いて、「課税所得金額」を計算しましょう。
年末調整で対応できる所得控除には、基礎控除や配偶者控除、生命保険控除などさまざまな種類があります。適用される控除の種類や控除額は従業員によって異なるため、注意しましょう。
②年調年税額を算出する
課税所得金額に所定の所得税率を掛けて所得税額を算出し、そこから住宅ローン控除などの税額控除を差し引きます。算出した金額に復興特別所得税(2.1%)を上乗せした額、すなわち税額控除後の額に102.1%を掛けた額が、年調年税額(その年に納めるべき税額)です。なお、住宅ローン控除などにより税額がすべて控除された場合は、年調年税額はゼロとなります。
③源泉所得税と年調年税額の過不足を調整する
あらかじめ源泉徴収された所得税額(源泉徴収税額)が年調年税額より多い場合は、従業員に還付します。少ない場合は、追加徴収を行います。過不足金の還付・徴収が実施されるのは、基本的に12月給与の支給時です。
4.申告書類を作成して提出する
源泉徴収票や法定調書合計表、給与支払報告書などの申告書類を作成し、税務署や市区町村へ提出します。提出期限は翌年の1月31日(土日祝の場合は翌平日)です。なお源泉徴収票に関しては、従業員本人にも交付します。税務署に提出をする源泉徴収票は、一定の条件下のものに限られます。また、年末調整に関連する業務として、源泉徴収を行う報酬・料金に関する支払調書の作成と税務署への提出を求められる場合もあります。
源泉徴収票については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
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年末調整を行う際の注意点
年末調整業務に取りかかる前に確認しておくべき注意点を紹介します。
提出期限を守る
年末調整には、法定調書の提出期限があります。年末調整で扱う書類は種類が多く、従業員ごとに税金や控除の計算を行います。年末調整の業務を進めるにはまず、従業員から申告書や証明書などを提出してもらわなくてはならないため、回収期限は余裕を持って設定しておきましょう。また、提出期限を厳守するよう、あらかじめ社内で告知しておくことも大切です。
年末調整は給与支払者である企業の義務です。もし適切に行われなければ、所得税法により罰則の対象になることもあります。スムーズに年末調整を進めるためにも、早めに準備を進めましょう。
誤記入や申告漏れに気をつける
年末調整にあたって従業員から提出を受けた書類は、内容をしっかりと確認しましょう。申告書や添付書類を正確に記入することで、控除が適用され、従業員の所得税額を正しく申告できます
従業員の申告内容に誤りや漏れがあった場合は、期限内であれば再提出してもらいましょう。もしも年末調整の期限に間に合わない場合は、従業員本人が確定申告をします。
制度改正を把握しておく
税にかかわる制度は、毎年のように改正が行われるため、最新の情報を把握しておくことが大切です。例えば、2025年度(令和7年度)の税制改正では、基礎控除や給与所得控除の引き上げ、特定親族特別控除の創設などが行われました。改正点を把握することで正しい内容を申告できます。
2025年(令和7年)の年末に実施する年末調整の変更点については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
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年末調整に関するよくある質問
年末調整は準備しなければならない書類や業務量が多いため、さまざまな疑問が生じる可能性があります。年末調整に関するよくある質問と回答を紹介します。
会社が年末調整しないとどうなる?
会社が年末調整を行わないと、従業員が納める税金に過不足が生じ、正しく納税できません。控除が適用されなければ課税所得が増えるため、税負担が重くなります。また、年末調整後には従業員の年間給与額を記した「給与支払報告書」を市町村に提出しますが、年末調整を実施しなければ正しい内容で提出できず、住民税の算定にも影響を及ぼします。
なお年末調整は、正社員や契約社員に限らず、条件を満たすアルバイトやパートも対象です。申告漏れなどがないよう、アルバイトやパートについても、年末調整に該当するかどうかを確認しておきましょう。アルバイトやパートの年末調整については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
個人事業主の年末調整のやり方は?
個人事業主は原則として年末調整を行わず、確定申告によって納税額を確定させます。ただし、個人事業主であっても、別の会社に勤務して給与所得を得ている場合は、勤務先が実施する年末調整の対象となります。また、個人事業主として従業員を雇用している場合は、従業員の年末調整を行いましょう。例えば配偶者や親族を雇用し、青色事業専従者として給料を支払っているケースなどが該当します。
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年末調整の流れを把握して手続きを進めよう
年末調整では、書類の配布や回収、給与や税額の計算などさまざまな業務が発生します。一連の業務をスムーズに進めるには、全体の流れをつかんだうえで、早い段階から準備に取りかかることが大切です。また年末調整の対象になる従業員にも、提出書類や期限などを事前に周知しておきましょう。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人古田土人事労務
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