青色申告の条件とは?個人事業主や会社員の副業も対象になる?

2023/03/01更新

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

フリーランスをはじめとする個人事業主なら、避けては通れない確定申告。その中でも、「青色申告」という言葉を聞いたことがある人は多いはず。
青色申告は、最大65万円の青色申告特別控除が受けられるなど、さまざまなメリットがあるのですが、所得の種類などの条件によって受けられるかどうかが変わります。所得とは、事業で得られた売上から、仕入や人件費などの必要経費引いた儲けのことです。ここでは、青色申告を受けるための条件を中心に、会社員の副業の扱いについても解説します。

青色申告は確定申告の種類のひとつ

青色申告は確定申告の種類のひとつで、個人事業主の節税につながる特典の付いた申告制度です。確定申告とは、1月1日から12月31日までに得た所得金額を算出し、所得税を確定させて申告した上で、過不足分の所得税を納付または還付する制度です。国民の義務である納税を正しく行うためにも、個人事業主は必ず対応しなければなりません。

特別控除や赤字の繰り越しなどのメリットがある

青色申告をするには事前に申請が必要で、「複式簿記」というやや複雑な記帳方法で帳簿を作成しなければなりません。それに加え、貸借対照表と損益計算書も作成して添付しなければならず手間がかかりますが、その代わりに青色申告特別控除をはじめとしたさまざまなメリットを得られます。

青色申告特別控除とは、確定申告時に所得から最大65万円か55万円、あるいは10万円の所得控除を受けられる制度で、大きな節税効果があります。所得額を抑えることができれば、住民税や国民健康保険料も抑えられるので、トータルでの節税効果は絶大です。その他にも、赤字を3年間繰り越しにできたり、家族への給与を必要経費にできたり、30万円未満の固定資産を全額経費に計上できたりと、事業を運営する上でさまざまな節税メリットがあります。

ちなみに、確定申告には白色申告という種類もあります。白色申告は事前に申請が必要なく、比較的簡単な「単式簿記」で対応できますが、青色申告のような特別控除がありません。2014年からは収入300万円以下の個人事業主も記帳や帳簿保存が義務づけられ、対応に手間がかかるようになったため、白色申告をわざわざ選ぶメリットは少なくなりました。
これから確定申告を行うなら、節税効果の高い青色申告を選択することをおすすめします。

青色申告のメリットや白色申告との違いは別の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

青色申告とは?白色申告との違いやメリット、条件などを解説

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青色申告ができる所得は3種類

青色申告は、どのような所得でも無条件に申告できるものではありません。青色申告の対象となる所得の種類を見ていきましょう。

事業所得

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業などの事業から生じる所得のことを指します。ライターやデザイナー、プログラマーなどフリーランスとして活躍している人や、カフェや美容院、雑貨店などを運営している個人事業主などの所得も事業所得に該当します。

不動産所得

不動産所得とは、土地や建物などの不動産、不動産に関わる借地権などの権利、船舶や航空機の貸付に対して発生する所得のことを指します。マンションやアパート、賃貸物件の貸付の他、駐車場、貸地の不動産賃貸などから得られる収入が不動産所得にあたります。

なお、ホテルの運営などの事業所得や、譲渡所得に該当する不動産関連の所得は、不動産所得には含みません。
地上権(他人の土地に工作物を所有する権利)や永小作権(他人の土地で工作や牧畜をする権利)の設定、他人に不動産などを使用させることは不動産所得に含みます。

山林所得

山林所得とは、山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡したりすることによって発生する所得のことをいいます。ただし、山林を取得してから5年以内に伐採や譲渡を行った場合は、山林所得にあたりません。これらのケースは、事業所得もしくは雑所得として認定されます。また、山林をそのまま譲渡した場合は、譲渡所得になります。

青色申告ができない所得は7種類

青色申告の対象となる所得は、事業所得、不動産所得、山林所得の3種類とご説明しました。続いては、青色申告の条件とならない7種類の所得を簡単にご紹介しましょう。

給与所得

給与所得とは、正社員や派遣社員、契約社員などとして、勤務先から受け取る給与や賞与による所得のことを指します。企業に勤務して給与を得ている場合、所得税などは企業が代わりに納付しているため、原則として個人的に確定申告をする必要はありません。

退職所得

退職所得とは、退職により勤務先からもらう退職手当や、厚生年金基金などから加入員の退職によって支払われる一時金などの所得のことです。退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合は、原則として受給者本人が確定申告する必要はありません。

譲渡所得

譲渡所得とは、土地や建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって得られる所得のことを指します。ただし、事業用商品などの棚卸資産や山林を譲渡する際に発生する所得は、譲渡所得に含まれません。

利子所得

利子所得とは、預貯金による利子や公社債による利子の他、合同運用信託、公社債投資信託、公募公社債などの運用投資信託の収益の分配による所得のことです。国内だけではなく、海外の銀行に預金した場合に発生する利子も含まれます。

配当所得

配当所得とは、株主や出資者が法人から受ける配当や、投資信託や特定受益証券発行信託の収益の分配による所得のことを指します。公社債投資信託や公募公社債などの運用投資信託の収益の分配によって発生する所得は、利子所得に分類されます。

一時所得

一時所得とは、営利を目的とした行為以外からの所得で、労務や譲渡の対価としての性質がない「一時的な所得」のことです。例えば、懸賞や福引の賞金品の他、競馬や競輪の払戻金、生命保険の一時金、損害保険の満期払戻金、法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの等を除く)などが相当します。

雑所得

雑所得とは、上記に挙げた所得のいずれにも該当しない所得のことを指します。例えば、公的年金や非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税などが該当します。

青色申告をするためのさまざまな条件

事業所得や不動産所得、山林所得を得ている場合は青色申告を利用できますが、その他にもさまざまな条件があります。その内容を具体的に見ていきましょう。

青色申告承認申請書の提出が必要

青色申告をするためには、「青色申告承認申請書」を所轄の税務署へ提出する必要があります。すでに事業を運営している人、または1月15日までに新規開業した人は、青色申告をしたい収入がある年の3月15日までに申請書を提出する必要があります。ただし、その年の1月16日以降に新規開業した人は、開業から2か月以内に申請書を提出すれば問題ありません。新規開業時に青色申告承認申請書の提出を忘れてしまうと、特別控除のない白色申告しか利用できなくなってしまいますので、開業届といっしょに申請書を提出しておくことをおすすめします。

青色申告承認申請書の提出期限
提出期限
新規開業 1月15日以前に開業 承認を受けようとする年の3月15日まで
1月16日以後に開業 業務を開始した日から2か月以内
白色申告から青色申告へ切り替え 承認を受けようとする年の3月15日まで

なお、相続により不動産所得を継承し、故人が青色申告を利用していたという場合は、相続開始を知った日から原則として4か月以内に青色申告承認申請書を提出しなければなりません(死亡が1/1~8/31の場合、4ヶ月以内。死亡が9/1~10/31の場合、その年の12/31まで。死亡が11/1~12/31の場合、翌年2/15まで)。

また、当たり前のことではありますが、確定申告の提出期限内に青色申告書類や貸借対照表損益計算書などを提出しなければ、最大65万円/55万円の青色申告特別控除を受けることができません。確定申告の締め切りは毎年3月15日となっていますので、確定申告書類の提出も期限内に行うようにしましょう。なお、3月15日が土日の場合は、これらの日の翌日が期限になります。

不動産所得は事業的規模と認められることが必要

不動産所得を得ている人が最大65万円/55万円の青色申告特別控除を受けるには、その内容が事業的規模と認められることが必要です。目安としては、10部屋以上の貸与可能な室数があるアパートやマンション、もしくは5棟以上の貸与可能な戸建て物件を有している場合に、事業的規模として認められます。なお、賃料収入の規模が十分に大きい場合は、室数や件数が条件を満たしていなくても、税務署から事業的規模として認められる場合があります。

不動産所得が事業的規模として認められないと、青色申告専従者給与だけでなく白色申告の事業専従者控除も適用されません。そのため、不動産所得で家族への給与を経費に計上したい場合は、事業的規模と認められる内容で運営する必要があります。

会社員の副業は青色申告の条件を満たさないことが多い

近年、本業以外に稼ぐ手段を持つ「副業」がブームとなっています。会社員でも副業を行っている人は増えつつありますが、本業の片手間として副業を行っている場合、多くのケースでは事業所得ではなく雑所得として認定されます。副業が事業所得として認められるためには、「継続性があり相応の人力や設備を投資している」という条件がありますので、大半の人はこれにあたらないと見なされます。そのため、会社員の副業で得た収入は、基本的に青色申告の対象にはなりません。

ただし、副業としてアパートやマンションの家賃収入などの不動産所得がある会社員は、青色申告を利用することができます。不動産所得が事業的規模と認められる場合は、最大65万円/55万円の青色申告特別控除を受けることも可能です。
また、会社員が株の配当金や株の売買による儲けを得ることもありますが、これは配当所得や譲渡所得に分類されますので、青色申告には該当しません。

対象なら青色申告を活用しよう

青色申告は事業所得や不動産所得、山林所得を得ている人が対象となります。最大65万円/55万円の青色申告特別控除を受けることができ、大きな節税につながるため、条件を満たしている人は青色申告を選ぶべきでしょう。

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取引データの自動取込・自動仕訳で入力の手間を大幅に削減

銀行明細やクレジットカードなどの取引データ、レシートや領収書のスキャンデータやスマホで撮影したデータを取り込めば、AIが自動で仕訳を行います。これにより入力の手間と時間が大幅に削減できます。

確定申告書類を自動作成。e-Taxに対応で最大65万円の青色申告特別控除もスムースに

画面の案内に沿って入力していくだけで、確定申告書等の提出用書類が自動作成されます。青色申告特別控除の最大65万円/55万円の要件を満たした資料の用意もかんたんです。またインターネットを使って直接申告するe-Tax(電子申告)にも対応し、最大65万円の青色申告特別控除もスムースに受けられます。

自動集計されるレポートで経営状態がリアルタイムに把握できる

日々の取引データを入力しておくだけで、レポートが自動で集計されます。確定申告の時期にならなくても、事業に儲けが出ているのかリアルタイムで確認できますので、経営状況を把握して早めの判断を下すことができるようになります。

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よくあるご質問

青色申告と白色申告の違いを簡単に教えてもらえますか?

青色申告と白色申告は税制上で大きく違います。青色申告は最大65万円の特別控除を受けられる赤字を繰り越せるなど税制上のメリットが多数あるのに対し、白色申告には税制上の優遇措置がありません。ただし開業初年から青色申告をするためには、税務署に「開業届」と「青色申告承認申請書」を期限までに提出する必要があるため注意しましょう。

青色申告は年収いくらから対象ですか?

青色申告は収入の金額に関わらずできます。ただし、個人事業主として青色申告を行う場合「事業所得」「山林所得」「不動産所得」のいずれかの場合に限り対象となるので注意しましょう。

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
「知りたい!」を最優先に、一緒に問題点を紐解き未来に向けた会計をご提案。

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