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確定申告の還付金はいつ受け取れる?金額の計算方法も解説

監修者:田中卓也(田中卓也税理士事務所)

2023/12/25更新

所得税の確定申告をすると、税金の還付を受けられる可能性があります。確定申告で還付金を受け取れるのはどのような場合か、また還付金はいつ受け取れるのか、詳しく解説していきます。

併せて、確定申告の還付金計算方法についても、例を挙げながら具体的に解説します。自分がどのくらいの還付金を受け取れるのか、参考にしてみてください。

確定申告をすると還付金が受け取れる場合がある

確定申告を行うと、還付金を受け取れる場合があります。確定申告における還付金とは、払い過ぎた所得税が戻ってくることを指します。確定申告が必要な事業者だけでなく、本来は確定申告をする必要のない人も、還付を受けるための「還付申告」があります。

確定申告で還付を受けられるケースは、下記のとおりです。

確定申告で確定した所得税額が、源泉徴収税額より下回っていた場合

確定申告によって計算された納付すべき所得税額が、報酬や給与から源泉徴収されていた源泉所得税額を下回っていた場合は、差額が還付されます。

特に、報酬から源泉所得税が差し引かれているフリーランスなどの個人事業主は、確定申告によって源泉徴収税額と実際の所得税額の調整を行わなければいけません。その結果、還付を受けられる可能性があります。

確定申告で確定した所得税額が、予定納税額より下回っていた場合

確定申告によって確定した所得税額が、予定納税額よりも低い場合、納税済みの金額から本来納めるべき金額を差し引いた額が還付されます。

なお、予定納税とは、その年の5月15日時点で確定している前年の申告納税額が15万円以上の人が、あらかじめ所得税額の一部を納付する制度です。具体的には、予定納税基準額の3分の1の金額を2回に分けて払う必要があるため、その年の第1期分は通常は7月末に、第2期分は通常は11月末に納税します。

損失の繰り戻しを請求した場合

青色申告を行う事業者は、赤字が出た際、損失を前年に繰り戻して所得税の還付を受けられる可能性があります。還付を希望する場合は「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書新規タブで開く」を確定申告期限内に提出しましょう。

ただし、前年も青色申告を行っていたことが条件で、還付請求は税務署の調査結果に応じて認められるかどうかが決まります。請求をすれば必ず還付が受けられるわけではないため注意が必要です。

確定申告でしか適用できない所得控除・税額控除を申告した場合

所得控除や税額控除の中には、確定申告でしか申告できないものがあります。年末調整を受けた会社員など、本来確定申告の必要がない人でも、このような控除を新たに申告することで還付を受けられる可能性があります。

確定申告でしか適用できない所得控除

確定申告でしか適用を受けられない所得控除は、セルフメディケーション税制を含む医療費控除、寄附金控除、雑損控除の3種類です。

ただし、寄附金控除のうち、ふるさと納税は一定の要件を満たせば、確定申告不要のワンストップ特例で控除を受けることもできます。

なお、ワンストップ特例を受ける場合にはワンストップ特例の適用に関する申請手続きが必要となりますが、確定申告を行う場合には、ワンストップ特例の適用を受けることができないので注意が必要です。

所得控除についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

確定申告でしか適用できない税額控除

税額控除には、配当控除、外国税額控除、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)などの種類があり、基本的に確定申告でしか適用できません。住宅ローン控除を受ける場合は1年目に確定申告が必要ですが、会社員などの場合は、2年目以降は年末調整で控除を受けることが可能です。

税額控除についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

年末調整で各種所得控除の申告ができなかった場合

年末調整に間に合わなかった、もしくは忘れたなどで控除の申告ができなかった場合は、個別に確定申告を行って還付を受けることが可能です。

年末調整で控除が受けられる生命保険料控除扶養控除社会保険料控除ひとり親控除などは、確定申告でも適用が受けられます。また、セルフメディケーション税制を含む医療費控除、寄附金控除、雑損控除の3種類は、確定申告でのみ適用を受けられます。申告漏れがないように確認をしましょう。

年の途中で退職後、年内に就職していない場合

1年の途中で退職し、年内に就職していない場合は、年末調整を受けることができません。そもそも所得税は、年の所得が確定していないと税金の計算ができない仕組みです。

また、在職中の給与から差し引かれた源泉所得税は、月々の給与や賞与をもとに概算で出されています。そのため、1年の途中で退職してその後就職していない場合は、所得税の払いすぎとなっている可能性がありますので、退職時に受け取った源泉徴収票の内容で、確定申告を行いましょう。

年末調整をしているが、特定支出控除を適用する場合

年末調整をした会社員などのうち、特定支出控除を申告する人は確定申告で還付を受けられる可能性があります。特定支出控除とは、会社員が仕事に必要な一定の支出をした際に申告できる控除です。

対象となる支出は、通勤費や転勤に伴う転居費、仕事に直接的に必要な資格を取得するための費用などです。ただし、申請できるのは該当の支出が給与所得控除額の2分の1を超える場合となります。

確定申告の際は、「給与所得者の特定支出に関する明細書新規タブで開く」や源泉徴収票、特定支出の領収書や給与支払者による証明書などの添付が必要です。

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還付金を受け取れる時期

還付金を受け取れるタイミングは、1か月~1か月半程度かかる見込みです。ただし、確定申告を早く行った場合や、申告の方法によっては還付の時期が変わることがあります。

申告方法別の還付時期の目安は以下のとおりです。

確定申告の提出方法別による還付時期の違い
確定申告の提出方法 還付の時期
郵送で確定申告した場合 郵送で確定申告書を提出した場合は、おおよそ1か月から1か月半後に還付金を受け取れる
税務署で確定申告をした場合 税務署に確定申告書を持参した場合も、郵送と同様におおよそ1か月から1か月半後に還付金を受け取れる
e-Taxで確定申告した場合 e-Taxで確定申告をした場合は、おおよそ3週間程度で還付金を受け取れる

また、確定申告の義務のない給与所得者などが行う、還付申告の受付期間は、確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます。申告をしてから、還付金を受け取れる目安は、上記の表と同じになります。

確定申告で還付される金額の計算方法

確定申告で還付される金額の計算方法について、具体例を挙げて見ていきましょう。下記の例について、還付される金額があるかどうか計算していきます。

例)源泉徴収で、既に50万円を納税している個人事業主の場合

  • 収入:500万円
  • 経費:180万円
  • 所得控除:120万円
  • 税額控除:1万円

納付する所得税額を計算する

まずは、この年の所得にかかる所得税額を計算します。所得税額の計算は、以下の計算式によって算出できます。

納付する所得税額の計算式

納めるべき所得税額=課税所得(所得ー所得控除)×所得税率-税額控除+復興特別所得税

課税所得は所得から所得控除を引いた金額、所得は収入(売上)から経費を引いた金額になります。所得税率、税額控除、復興特別所得税については後述していきます。

例の場合、収入が500万円、経費が180万円のため、計算式に当てはめると所得は500万円-180万円=320万円です。ここから所得控除を引くため、課税所得は320万円-120万円=200万円になります。

次に、所得税率を掛けます。所得税率は段階的に上がっていきますが、速算表を利用すると簡単に計算ができます。金額を当てはめて計算してみましょう。

所得税の速算表
課税される所得金額 税率 控除額
1,000円から194万9,000円まで 5% 0円
195万円から329万9,000円まで 10% 9万7,500円
330万円から694万9,000円まで 20% 42万7,500円
695万円から899万9,000円まで 23% 63万6,000円
900万円から1,799万9,000円まで 33% 153万6,000円
1,800万円から3,999万9,000円まで 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

課税所得は200万円のため税率は10%、控除額は9万7,500円です。所得税額は、200万円×10%-9万7,500円=10万2,500円となります。

ここから、さらに税額控除の額を引きます。税額控除とは、所得税額から直接差し引ける控除のことです。住宅ローン控除や配当控除などが該当します。例の場合は1万円のため、10万2,500円-1万円=9万2,500円となります。

最後に、復興特別所得税の計算をします。復興特別所得税は、2013年から2037年まで課税される税金で、所得税の2.1%です。9万2,500円×2.1%=1,942.5円となります。1円未満の端数(小数点以下)は切り捨てるので1,942円です。

よって、この例で納めるべき所得税額は、所得税額と復興特別所得税額を合わせた9万2,500円+1,942円=9万4,442円となります。

既に納付している所得税額との差額を計算する

次に、既に納めた税金額との差額を計算します。

今回の例では、源泉徴収されている所得税額が50万円のため、既に納税している金額は50万円になります。納めるべき所得税額との差額は、9万4,442円-50万円=-40万5,558円となりますので、40万5,558円が還付されることになります。

確定申告書で還付金を確認する方法

還付金の額は、前述した計算方法を使用し、確定申告書上で算出をしていきます。具体的にどの欄に記載をするのか、確認していきましょう。

確定申告書 第一表

確定申告で還付される金額は、納めるべき所得税額から、既に納付した所得税があればその金額を引いて求めます。また、納めるべき所得税額は、下記の計算式で算出することが可能です。

納付する所得税額の計算式

納めるべき所得税額=課税所得(所得ー所得控除)×所得税率-税額控除+復興特別所得税

上記の計算式と、確定申告書第一表の税金の計算欄を併せて確認していきましょう。まず、計算式の課税所得は、確定申告書右上の「課税される所得金額(30)」です。所得税率を掛けた後の所得税額は、その1つ下の「上の(30)に対する税額(31)」に記入します。

さらにその下の「配当控除(32)」と「住宅耐震改修特別控除等(38)~(40)」は、税額控除です。該当する欄を埋めていき、最後に「差引所得税額(41)」に、税額控除の合計を記入しましょう。

「災害減免額(42)」は、災害によって一定の要件を満たす損失があった場合に、所得税額が減額される制度で、該当する場合のみ数字を入れます。該当しなければ、「差引所得税額(41)」の数字がそのまま「再差引所得税額(基準所得税額)(43)」に入ります。

「再差引所得税額(基準所得税額)(43)」に2.1%を掛けた金額が「復興特別所得税額(44)」で、(43)と(44)の合計が「所得税及び復興特別所得税の額(45)」です。

計算式に当てはめるとここまでで、納めるべき所得税額の計算が終わっています。この後、既に納付した所得税を入れる欄などが出てくるため、税金の計算欄を最後まで確認していきます。

次の「外国税額控除等(46)~(47)」とは、海外の所得税に該当する税金を課税されている場合に、その税額を所得税額から差し引ける制度です。該当する人は金額を記入しましょう。

「源泉徴収税額(48)」は、報酬などから源泉徴収された金額を入れる欄です。これが、既に納付した所得税に当たります。

「申告納税額(49)」は、納めるべき所得税額から、外国税額控除等と源泉徴収税額を引いた数字です。還付される金額がある場合はマイナスになるので、「△405,558」などと記入します。その下の「予定納税額(50)」は、予定納税を行った人が記入する欄です。

(49)から(50)を引いた金額がマイナスであれば、その分を「還付される税金(52)」に記入します。プラスであれば「納める税金(51)」に記入しましょう。

「還付される税金(52)」欄に記入される金額が、還付される金額となります。もし、1つ上の「納める税金(51)」に数字が入っている場合は、納付した所得税が本来納めるべき所得税よりも少なく、不足分を納付しなければならないということになります。

なお、計算をしてみて、「納める税金(51)」に数字が入り、第3期分の税額が不足している場合は、100円未満を切り捨てた額を納付します。また、「還付される税金(52)」に数字が入り、第3期分の税額が過大となった場合は、100円未満切り捨ての処理を受けることなく、全額が還付されます。

確定申告で還付金を受ける際の注意点

確定申告で還付金を受け取る際は、受け取り方に注意が必要です。覚えておきたいポイントを2点紹介します。

受け取り方法は銀行振り込みか郵便局窓口

確定申告書第一表の右下には、還付金の振り込みを希望する金融機関名と預金種類、口座番号を記入する欄があります。確定申告書を提出する際、還付になるのであれば、受取場所を記入しておきましょう。ただし、受取先に指定できるのは本人の口座のみです。家族の口座や屋号が含まれる口座などは避けましょう。

なお、還付金は銀行口座への振り込みのほか、郵便局窓口やゆうちょ銀行の各店舗での受け取りも選択できます。確定申告書の「還付される税金の受取場所」に、受け取りを希望する郵便局名や店舗名を記入してください。後日、国庫金送金通知書が届くので、身分証明書と一緒に郵便局窓口に持参しましょう。また、2023年1月以降に公金受取口座を登録済みの方は、公金受取口座への振込みを指定することもできます。

インターネット専用銀行は利用できない場合がある

インターネット専用銀行の中には、還付金の受取口座として指定できないところもあります。インターネット専用銀行を指定したい場合は、受け取り可能かどうか銀行のWebサイトなどで確認してください。

確定申告をした還付金が振り込まれない場合の対処法

確定申告を行い、還付金が振り込まれる場合は「国税還付金振込通知書」がはがき(送付希望の手続きをした人はe-tax)で届きます。なお、還付金額などの詳細はシールで隠されているため、個人情報が他者に見られる心配はありません。申告後、1か月から1か月半程度経過してもはがきが届かない場合は、以下の方法で状況を確認できます。

e-Taxで確定申告した場合

e-Taxで確定申告をした人は「受付システム新規タブで開く」から還付金処理状況の確認ができます。利用者識別番号と暗証番号を入力してログインし、メニュー画面の「還付金処理状況」の「確認画面へ」をクリックしてください。

申告書を確認中であれば「申告書の内容を確認しています」、支払い手続きが完了していれば「還付金の支払い手続きを下記の日程にて行います」など、現在の状況が表示されます。

確定申告書を郵送した場合や税務署に持ち込んだ場合

確定申告書を郵送した場合や税務署への持参で提出した場合は、提出先の税務署に確認しましょう。なお、書面で提出していても、e-Taxの利用者識別番号を持っていれば、受付システムから状況を確認することができます。ただし、処理状況が確認できるようになるまでは、申告してから1か月程度時間がかかります。

還付申告の期限

年末調整を行っている給与所得者や確定申告が不要な年金受給者など、本来は確定申告をする必要のない人が、納め過ぎた税金の還付を受けるために行う確定申告のことを、還付申告といいます。還付申告の期限は、還付対象となる年の翌年1月1日から5年以内です。

通常の確定申告期間は毎年2月16日から3月15日まで(土日祝日に重なった場合は翌平日)ですが、還付申告であれば、5年以内の申告が認められています。手続きは確定申告と同様のため、年末調整で申告できない控除などがあれば、忘れずに申告を行うようにしましょう。

確定申告をして還付金が受け取れるか確認をしよう

年に1回の確定申告の手続きは手間がかかりますが、還付金を受け取れる可能性もあります。申告できる控除制度を最大限に活用しましょう。

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この記事の監修者田中卓也(田中卓也税理士事務所)

税理士、CFP®
1964年東京都生まれ。中央大学商学部卒。
東京都内の税理士事務所にて13年半の勤務を経て独立・開業。
従来の記帳代行・税務相談・税務申告といった分野のみならず、事業計画の作成・サポートなどの経営相談、よくわかるキャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・次号継承対策など、多岐に渡って経営者や個人事業主のサポートに努める。一生活者の視点にたった講演活動や講師、執筆活動にも携わる。

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