確定申告の還付金はいつ受け取れる?金額の計算方法も紹介します

2022/01/11更新

この記事の監修者Gemstone税理士法人

確定申告は「1年の所得を計算して申告し、税金を納める手続き」と思われがちですが、正確には「1年間の所得をとりまとめ、所得にかかる税金を計算して申告し、税金の過不足を精算する手続き」です。

すでに納めた金額が納めるべき税金の額に足りなければ、不足分を納めることになりますが、反対にすでに納めた額の方が大きければ、過払い分が返還されます。この、払いすぎた税金が返還されることを「還付」といいます。

ここでは、確定申告による還付が受けられる時期や金額の他、還付を受ける際の注意点をご紹介します。

還付金とは?

還付金とは、過払い分として納税者に返還されるべき税額のことです。納めるべき所得税や住民税、事業税の額は所得によって変わりますので、確定申告をしてから納税するのが基本的な流れです。しかし、税制度には「源泉徴収」や「予定納税」といった、確定申告をして納めるべき税金の額が判明する前に、税金を納める仕組みもあります。

このような仕組みを利用するなどして、納めた税金額が納めるべき税金額を上回った場合に、還付金が発生するわけです。

還付金が受け取れるケース

還付金が受け取れるのは、すでに納めた税金額が納めるべき税金額を上回っている場合です。具体的には、下記のようなケースがあります。

予定納税した額が確定税額を上回った

予定納税というのは、前年の所得金額や税額を目安にして、所得税が一定金額以上になると見込まれる場合に、その年の所得税および復興特別所得税の一部をあらかじめ納付する制度です。その年の5月15日時点で確定している前年分の所得金額や税額などをもとに計算した金額(予定納税基準額)が15万円以上である場合、この制度が適用され、予定納税をすることになります。

具体的には、予定納税の対象者(納税が必要な人)には、税務署から6月中旬に税務署から通知が届けられ、受け取った人は必ず予定納税を行わなければなりません。そして、7月と11月に予定納税基準額の3分の1ずつ納税し、翌年3月の確定申告で正しい金額との調整を行います。

予定納税基準額は、前年分の所得金額や税額をもとに算出されるため、前年より大幅に所得が減った場合などは、最終的に納めるべき税額が7月と11月に納めた分の合計を下回ることがあります。その場合に還付が受けられます。

源泉徴収された額が確定納税額を超えた

源泉徴収とは、給与や報酬を支払う者が、その支払いの際にあらかじめ所得税などを差し引き、国に納付する制度のことです。給与所得者の給与は源泉徴収の対象になりますし、個人に対して支払う原稿料や講演料の他、弁護士・公認会計士・司法書士などに支払う報酬、スポーツ選手などに支払う報酬、ホステス・コンパニオンに対する報酬など、特定の業務への報酬には、源泉徴収制度が適用されます。

源泉徴収の税額は、1回の報酬額が100万円以下の場合は「支払金額×10.21%」、100万円超の場合は「(支払金額-100万円)×20.42%+102,100円」です。つまり、支払金額が100万円を超える場合に、100万円までは10.21%で、100万円を超える部分が20.42%の税率になります。

こうしてあらかじめ徴収され、納付された源泉徴収額が最終的に納めるべき税額を超えていれば、還付が受けられます。

純損失の繰り戻し請求をする

純損失の繰り戻しとは、青色申告者が利用できる、過去の黒字と現在の赤字を相殺できる制度です。これを「純損失の繰戻し還付」と言います。前年に期限内に青色申告をしており、その年も期限内に青色申告をする場合は、その年に生じた赤字を前年の黒字と相殺し、差額分の還付が受けられます。

この場合、内容を調査して還付を決めるため、税務署からの問い合わせや税務調査がある可能性があることも覚えておきましょう。

還付金はいつもらえる?

確定申告は順次処理されるので、実際に還付金が支払われるまでにはある程度時間がかかります。申告する時期にもよりますが、2月16日~3月15日の確定申告期間中なら、おおむね支払いまで1か月~1か月半程度かかることが多いです。

ただし、還付金が支払われるまでにかかる期間は、下記のように確定申告の提出方法によっても変わってきます。

紙の申告書を郵送するか税務署に持っていく場合

確定申告期間中なら、通常どおり1か月~1か月半が目安となりますが、期間中に早めに提出すると、早く支払われることが多いようです。

e-Taxを利用した場合

国税電子申告・納税システム「e-Tax」で確定申告を行った場合は、確定申告期間中の税務署が混んでいる時期で3週間程度、1月~2月中頃の申告なら2~3週間程度で還付金が支払われます。

e-Tax利用の場合は、申告から2週間程度経過した日から、還付金の処理状況を確認することも可能です。なお、申告内容の誤りに気が付いて申告書を提出し直した場合は、支払いまでの期間が長くなる可能性があります。

期間前に確定申告を提出してしまえば、多くの人が確定申告を始める前に還付金を受け取ることが可能です。ただ、あまり早いと各種控除を受けるために必要な証明書の準備が間に合わない場合もありますので、「年が明けたらできる限り早く提出する」くらいを目標にするのがおすすめです。

還付される額はどのように決まる?

確定申告で受け取れる還付金の額は「すでに納めた税金の額」と「本来納めるべき税金の額」の差額ですので、まず両者の数字を明らかにする必要があります。

下記のケースの各金額を計算式に当てはめて、還付金の額を算出してみましょう。

例 源泉徴収ですでに50万円を納税している個人事業主

  • 収入:500万円
  • 経費:180万円
  • 所得控除:120万円
  • 税額控除:1万円

まずは納めるべき所得税額を計算する

納めるべき所得税の金額は、下記の式で計算されます。

納めるべき所得税額=課税所得(所得ー所得控除)×法定の税率-税額控除+復興特別所得税額

課税所得

課税所得とは、所得から「所得から差し引くことが認められている各種控除(所得控除)」を引いたものです。個人事業主は事業を営むことで利益を上げますが、利益を上げるためには経費がかかります。このような「利益を上げるためにかかった費用(経費)」は、課税対象に含まれません。

さらに、事業主が支払っている国民健康保険や国民年金などの社会保険料や生命保険料、その他さまざまな費用も、一定の条件を満たす支出については「所得控除」として、所得から差し引くことが認められています。

今回の例では、収入が500万円、経費が180万円なので、所得は500万円-180万円=320万円です。所得控除に該当する分が120万円あるので、課税所得は320万円-120万円=200万円になります。

法定の税率

所得税の税率は、課税される所得金額によって下記のように決められています。

所得税の税率
課税される所得金額 税率 控除額
1,000円から194万9,000円まで 5% 0円
195万円から329万9,000円まで 10% 9万7,500円
330万円から694万9,000円まで 20% 42万7,500円
695万円から899万9,000円まで 23% 63万6,000円
900万円から1,799万9,000円まで 33% 153万6,000円
1,800万円から3,999万9,000円まで 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円
参考
国税庁「所得税の税率」新規タブで開く

今回の例では、課税所得は200万円なので税率は10%、控除額は9万7,500円です。よって、所得税額は200万円×10%-9万7,500円=10万2,500円になります。

税額控除

税額控除とは、所得税額から控除が認められたもので、配当控除や政党等寄附金特別控除といったものがあります。今回の例では1万円ですから、納めるべき所得税額は10万2,500円-1万円=9万2,500円になります。

復興特別所得税額

復興特別所得税とは、東日本大震災からの復興施策を実施するために必要な財源確保の名目で2013~2037年のあいだ課される税金で、税率は納めるべき所得税の2.1%です。今回の例では、9万2,500円×2.1%=1,942.5円となります。1円未満の端数(小数点以下)は切り捨てるので1,942円です。

以上から、最終的に納めるべき税金の額は、納めるべき所得税額と復興特別所得税額を合わせた9万2,500円+1,942円=9万4,442円となります。

すでに納めた税金の額との差を求める

次に、すでに納めた税金額との差額を計算します。

今回の例では、源泉徴収税額が50万円ですので、すでに納税している金額は50万円ということです。納めるべき税金との差額は、9万4,442円-50万円=-40万5,558円となりますので、40万5,558円が還付されることになります。

このような計算は、オンラインで申告書を作成した場合は、各金額を入力すると自動で計算してくれます。紙の申告書を用いる場合は自身で計算し、確定申告の際に提出する「確定申告書B(給与所得者などは確定申告書A)」表の「税金の計算」欄に記載します。

  • 確定申告書Aは、2022年12月末で廃止されます。2023年1月からは、確定申告書Bに統合されます。
画像引用元 国税庁:確定申告の記載例

還付金を受け取る際の注意点

還付金をスムースに確実に受け取るには、次のような点に注意が必要です。

受け取りは銀行振り込みが便利

還付金の受け取りは、指定の金融機関の預貯金口座に振り込んでもらうか、最寄りのゆうちょ銀行または郵便局に出向いて受け取るかのいずれかになります。受け取り方についての情報は、確定申告書Bに記載する欄がありますので、忘れずに記載しましょう。

なお、受け取り方で圧倒的に便利なのは、口座への振り込みです。ゆうちょ銀行での受け取りを選んだ場合は、後程郵送されてくる国庫金送金通知書と運転免許証やマイナンバーカードなどの身分を確認できる書類を持って、ゆうちょ銀行または郵便局に受け取りに行くことになります。

申告者本人の口座が必要

受け取り方法に口座振り込みを指定する場合は、申告者本人名義の口座が必要です。口座名義に屋号が含まれる場合は使用できません。

インターネット銀行は還付金の受け取り口座としてほぼ利用できない

実店舗を持たないインターネット専用銀行は、一部の例外を除いて受け取り口座に指定できません。メガバンクや都市銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、各種協同組合、ゆうちょ銀行などの口座を用意しましょう。

還付金が振り込まれない場合は?

支払いの目安となる期間を過ぎても還付金が振り込まれないと、「書類に何か不備があったのか」「見落とされているのでは」と不安になるかと思います。そのようなときは、下記のような方法で状況を確認しましょう。

e-Taxを利用して申告した場合

e-Taxを利用して確定申告を行っていれば、申告から2週間程経過すると現在の処理状況が確認できるようになります。「受付システム」から利用者識別番号と暗証番号を入力してログインし、メニュー画面から「還付金処理状況」を選択。「確認画面へ」をクリックすると、処理状況を確認できます。

申告書を郵送で提出、または税務署に持っていった場合

申告書を郵送、もしくは税務署に持っていった場合、しばらく経っても還付金が振り込まれなければ、一度税務署に問い合わせるのが確実です。

なお、還付金の振り込みと前後して国税還付金振込通知書が届きますが、還付金が振り込まれず、さらにこの通知書が届かない場合もあるでしょう。このような状況を伝えたうえで、申告書自体が税務署に届いていないのか、届いているけど何らかの理由で処理に時間がかかっているのかなどを、調べてもらいましょう。

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この記事の監修者Gemstone税理士法人

Big4出身の公認会計士、税理士、元上場企業経理部長、大手ベンチャーキャピタル出身者で構成される税理士法人。2016年に設立して以来、特にスタートアップ支援に力を入れている。資本政策、ベンチャーキャピタルからの資金調達支援など顧客ニーズに合わせた専門的な財務支援を提供する傍らで、それらの知見を活かした包括的なIPO支援も手がける。

Webサイト:スタートアップ支援 Gemstone税理士法人新規タブで開く

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