過去分の確定申告はさかのぼって申告できる?期限やペナルティを詳しく解説

2024/03/05更新

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

所得税の確定申告は、1月1日~12月31日の1年間の所得をもとに、原則として翌年の2月16日~3月15日に行わなければなりません。では、過去分の所得について確定申告をしていなかった場合や、過去に提出した確定申告の内容を修正したい場合は、どうすれば良いのでしょうか。また、過去分の確定申告をした場合、期限を過ぎたことに対するペナルティはあるのでしょうか。

ここでは、過去分の確定申告をする方法やその期限、確定申告をすべきであったにもかかわらず申告していなかったときのペナルティなどについて解説します。

確定申告の基本

所得税の確定申告とは、1年間の所得から納めるべき所得税の金額を計算し、国(税務署)に申告する手続きのことです。事業所得などのある人は、1月1日~12月31日の所得をとりまとめて所得税の額を計算し、原則として翌年の2月16日~3月15日に税務署に申告・納税を行わなければなりません。なお、2月16日や3月15日が土日祝日に重なる場合は、翌平日が期日となります。

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一昨年以前の収入に対する確定申告は可能

確定申告は、一昨年以前の過去分にさかのぼって申告することができます。また、過去に提出した確定申告の内容が誤っていたときは、修正することも可能です。ただし、確定申告の内容の修正をさかのぼって申告できるのは、過去5年分までです。

過去分の確定申告を行う場合、そもそも確定申告をしていなかったケースと、本来の期限内に一度申告した内容を修正するケースとでは、対処方法や受けるペナルティが異なります。また、過去の確定申告の修正においても、本来納めるべき所得税額より少なく申告していたのか、多く申告していたのかによって、とるべき手続きは変わってきます。

もし過去分の確定申告によってペナルティが発生しても、対応が早ければ、それだけ影響を少なく抑えることが可能です。過去の確定申告が必要だと気づいたら、できる限り早く対処することが重要です。

過去にしていなかった分を確定申告する場合

過去に確定申告が必要であったにもかかわらず、申告をしていなかった場合には、2つのケースが考えられます。

1つ目は確定申告の義務があるのにしていない「無申告」と呼ばれるケースです。2つ目は、源泉徴収された所得税額や適用できる控除を申告しておらず、税金を納めすぎたまま還付を受けていないケースです。このような場合、無申告なら確定申告(期限後申告)を、還付を受けるなら還付申告を行います。

確定申告(期限後申告)

確定申告が必要なのにしていなかった場合、できるだけ早く確定申告を行いましょう。本来の期限を過ぎての確定申告は「期限後申告」として扱われ、納めるべき所得税額に加えて延滞税などのペナルティが発生します。

しかし、たとえ期限を過ぎていても、自主的に申告するのが早いほどペナルティの影響は少なくなります。申告をしないまま放置して、税務署の調査などで無申告が発覚すると、課されるペナルティも大きなものになってしまいます。

還付申告

源泉徴収された所得税額が本来の税額より高い場合や、適用できる控除を申告しなかった場合は、確定申告をしないと税金を納めすぎの状態になっています。このような場合は還付申告を行うことで、納めすぎた分の税金が還付されます。

還付申告の期限は、確定申告期間とは関係なく、該当する年の翌年1月1日から5年間です。期限を過ぎてもペナルティはありませんが、税金の還付は受けられなくなるため注意しましょう。還付申告専用の書類は用意されていないため、通常の確定申告書に必要事項を記載して税務署に提出します。

還付申告の具体例

  • 年の途中で退職し、年末調整を受けずに源泉徴収税額が納めすぎとなっているとき
  • 年末調整をしたが、申告していない控除や申告を忘れた控除がある
  • 年末調整をしたが、確定申告でしか申告できない控除を適用したい
  • 一定の要件のマイホームの取得などをして、住宅ローンがあるとき
  • マイホームに特定の改修工事をしたとき
  • 認定住宅等の新築等をした場合(認定住宅等新築等特別税額控除)
  • 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき
  • 特定支出控除の適用を受けるとき
  • 多額の医療費を支出したとき
  • 特定の寄付をしたとき
  • 上場株式等にかかる譲渡損失の金額を、申告分離課税を選択した上場株式等にかかる配当所得等の金額から控除したとき

過去に確定申告した分を修正したい場合

過去に提出した確定申告書に誤りがあるときは、修正のための手続きを行うことができます。なお、過去に申告した所得税額が、本来の納税額より少なかった場合と多かった場合では、手続きの方法が異なります。

修正申告

過去の確定申告で、所得税の税額を本来納める税額よりも低く申告してしまった場合は、「修正申告」を行います。修正申告を行うには、修正申告書に修正前の課税額などを記載したうえで、正しい内容の確定申告書とともに提出します。

新たに納める税金の納付期限は、修正申告書を提出する日です。なお、本来の確定申告期限は過ぎているため、新たに納める税金については延滞税を併せて納付する必要があります。また、みずから修正申告を行わず、税務署の調査で過少申告が判明した場合は、新たに納める税金の他に過少申告加算税がかかります。

更正の請求

過去の確定申告で、本来の納税額より高い税額を申告した場合や、還付される税金を少なく申告した場合は、「更正の請求」という手続きができる場合があります。更正の請求では、更正の請求書を税務署に提出し、内容が認められると納めすぎた税金が還付されます。

更正の請求の期限は、原則として法定申告期限から5年以内です。なお、修正申告とは異なり、更正の請求は行わなくてもペナルティはありません。

過去の分の確定申告をした場合のペナルティ

過去分の確定申告が無申告だった場合や、本来の納税額より少なく申告していた場合は、ペナルティが発生します。どのようなペナルティがあるのか、詳しく見ていきましょう。

延滞税

延滞税は、納めるべき税金を法定納付期限(原則として毎年3月15日)までに納付しなかった場合に課されるペナルティです。過去の無申告期間について確定申告をした場合、納めるべき所得税額に加えて、本来の期限から遅れた日数分の延滞税が課されます。延滞税の最高税率は14.6%です。

過少申告加算税

過少申告加算税は、確定申告で申告・納付した税額が、本来納めるべき税額より少なかった場合に発生するペナルティです。申告した税額が本来より少ないことに気づいたら、できる限り早く修正申告をしましょう。もし、税務署の調査を受けた後で修正申告をしたり、税務署から誤りを正されたりすると、新たに納める税金のほかに過少申告加算税がかかります。

過少申告加算税の税率は、新たに納める税金の10%です。ただし、新たに納める税金が、当初の申告納税額と50万円のいずれか多い方の金額を超えている場合は、超えている部分については15%になります。

無申告加算税

無申告加算税は、期限内に確定申告を行わなかった場合に発生するペナルティです。原則として、納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の金額が加算されます。

ただし、税務署の指摘を受ける前にみずから期限後申告をした場合は、無申告加算税の税率は5%に軽減されます。なお、期限後申告であっても、次の要件をすべて満たす場合は、無申告加算税は課されません。

無申告加算税が免除されるケース

  • 確定申告の期限後、1か月以内に自主的に確定申告をしている
  • 期限後申告にかかる税額を法定納期限(口座振替納付の手続をした場合は期限後申告書を提出した日)までに全額納付している
  • 過去5年間に無申告加算税または重加算税を課されたことがない

重加算税

重加算税は、納めるべき税金を意図的に隠蔽したり仮装したりした場合に課せられるペナルティです。たとえ期限内に確定申告をしていても、帳簿の改ざんなど虚偽の申告をしていた場合は、重加算税が加算される可能性があります。

重加算税は、過少申告の場合は過少申告加算税に代えて本来納める税額の35%が、無申告だった場合は無申告加算税に代えて40%が加算される大きなペナルティです。さらに、5年以内に無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合は、それぞれ10%が加算されます。

追徴課税を納付できず滞納すると、財産が差し押さえになる可能性もあります。また、繰り返し重加算税を課されるなど、悪質だと認められた場合には刑事罰が科されることもありますので、注意しましょう。

青色申告の承認が取り消される可能性がある

法人の場合、2年連続して期限後申告または無申告であった場合は、青色申告の承認が取り消されます。ただし、やむを得ない事情があると認められる場合を除きます。

一方、個人事業主(自営業、フリーランス)で青色申告をしている場合、期限後申告や無申告を理由に青色申告を取り消されることはありません。しかし、帳簿を正しくつけていなかった場合や悪質な隠ぺいを行っていたと判断された場合には、青色申告の承認が取り消されます。

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過去の確定申告をする際の注意点

過去の確定申告を行う際には、いくつか注意したい点があります。具体的にどのようなものか、詳しく見ていきましょう。

更正の請求は受理されない場合もある

納める税金が多すぎた場合などに行う「更正の請求」は、請求がすべて認められるとは限りません。更正の請求書を提出すると、税務署はその内容について検討をします。場合によっては請求が認められず、税金の還付が受けられないこともあります。

過去分の住民税にも延滞税が課される

所得税の確定申告を行うと、その内容が地方自治体に送られるため、改めて住民税の申告を行う必要はありません。裏を返せば、確定申告の義務があるのに行っていなかった場合、住民税も申告していないということになります。その場合、地域によって税率は異なるものの、住民税にも延滞金が発生します。

なお、還付申告や更正の請求によって過去分の所得税が還付された場合、住民税も還付を受けられる可能性があります。住民税が還付される場合は、地方自治体から通知が送られてきます。

確定申告は期限内に正しく行うことが大切

確定申告が必要であるのに申告をしていないと、延滞税などのペナルティが発生してしまいます。また、源泉徴収所得税が多かったり、適用できる控除を申請していない場合、確定申告をしないと税金の納めすぎになってしまいます。そのような不利益を避けるためには、確定申告を正しく行うことが大切です。特に、確定申告が必要なケースに該当したら、必ず期限内に申告をするようにしましょう。

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よくあるご質問

去年の確定申告を忘れた場合はどうすればいいですか?

去年の確定申告を忘れた場合は、気づいた時点ですぐに確定申告をするようにしましょう。確定申告の義務があるのにしていない「無申告」で、本来の確定申告期限を過ぎて申告する場合、「期限後申告」となります。その場合、本来納めるべき所得税額に加えて延滞税や無申告加算税などのペナルティが発生します。一方、税金を納めすぎたまま還付を受けていない場合は、還付申告を行います。無還付申告の期限は、確定申告期間とは関係なく、該当する年の翌年1月1日から5年間申告ができます。 確定申告を忘れた場合のリスクについては以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひそちらを参考にしてみてください。

確定申告を忘れた場合どうなるのかについてはこちら

過去分の確定申告をする場合、どこで申告すればいいですか?

過去分の確定申告をする場合、管轄の税務署で申告が可能です。ご自分の管轄の税務署がわからないときは、国税庁の「国税局・税務署を調べる 新規タブで開く」で郵便番号や住所を入力して調べてみてください。なお、東京都の場合は1区内に2つの税務署があるため、住所で検索するようにしましょう。もしどちらの税務署が管轄かわからなければ、国税庁の「税務署所在地案内(東京都) 新規タブで開く」で調べてみることをおすすめします。

過去分の確定申告をしても還付は受けられますか?

還付申告の期限は確定申告期間とは関係なく、その年の1月1日から5年間です。過去分の還付金を受け取りたい方は、必ず5年以内に確定申告をしましょう。期限をすぎてもペナルティはありませんが、還付金を受け取れなくなります。還付申告については本記事内で詳しく解説していますので、ぜひそちらの見出しを参考にしてみてください。

還付申告の詳細についてはこちら

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
「知りたい!」を最優先に、一緒に問題点を紐解き未来に向けた会計をご提案。

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