退職金にかかる税金はいくら?種類や計算方法について解説

2023/09/22更新

退職金にかかる税金は、給与所得とは違った計算方法をすることをご存じでしょうか。

退職する人や退職をして他の事業を始めている人は退職金の税金がいくらになるのかを知っておくと便利ですが、これは退職者だけでなく退職金を支払う企業も理解しておかなければなりません。企業側は退職金の税金を計算することで退職した人に渡す金額が決まります。また、退職者も企業まかせではなく税金額を理解すれば、ケースによってはお金が戻ってくることもあります。

今回は退職金にかかる税金の仕組みや計算方法について事例を含み、詳しく紹介していきます。

POINT

  • 退職金にかかる税金の計算方法は?
  • 退職金の確定申告で還付金がある場合って?
  • 退職金の受け取り方法は一時金と年金のどちらが得か

退職金にかかる税金の計算方法は?

退職金とは、退職をしたときに支払われる一時金で「退職所得」と呼ばれます。定年退職や再雇用など職場を離れる場合や役員などに就く場合、また、退職金のある企業が倒産した場合や、解雇予告手当を受け取った場合も退職所得に分類されます。

一方、仕事をしているときにもらうお金は「給与所得」と呼ばれ、退職所得とは別の種類の所得となり、税金の計算が異なるため注意が必要です。退職所得にかかる税金は、所得税・復興特別所得税・住民税ですが、通常の給与所得の税金よりも負担が少ない特徴があります。退職金にも所得税は発生しますが、所得控除額は勤続年数や年収によって大きく変わります。

退職金は、退職する人によってもらえる金額はひとりひとり変わってくるため、個別に計算するしかありません。計算の仕方がよくわからない人は、実例もありますので、勤続年数などを当てはめて一緒に計算してみることをおすすめします。

所得税の計算

まず、退職金の所得税を算出するためには「所得税及び復興特別所得税額」を出さなければなりません。

退職金に関する所得税の計算は「所得税額=課税退職所得金額×所得税率-控除額」で出すことが可能です。課税退職所得金額は勤務先から支給される収入金額から退職所得控除額を差し引いた金額の2分の1で算出できます。この金額と「基準所得税額×2.1%」を計算した復興特別所得税額を合計したものが所得税及び復興特別所得税額となります。

所得税は収入金額は勤続年数によって金額は大きく変わってきます。勤続年数によって所得税の計算で必要な控除額が変わり、年収によっての所得税額も国税庁が定めた金額となるため、所得税の計算をする際は勤続年数や年収と控除額を照らし合わせておくと良いでしょう。

控除額の計算

退職所得控除額の計算式は勤続年数が20年を超える場合と超えない場合で違ってきます。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円 × 勤続年数
(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)

まず、勤続年数が20年以下の場合、控除額の計算は「40万円×勤続年数」で算出することができます。例えば、勤続年数が10年だった場合は40万円×10年=400万円となります。

一方、勤続年数が20年より長い場合は、「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」の計算式を利用します。20年を超えて働いた場合、年収も徐々に上がり退職金の額も高額になっていくでしょう。その際に、20年以下の計算式と同じだと控除できる金額が小さくなるため、より退職金の税負担を減らすために800万円+70万円の控除額となっているのです。

例えば、勤続年数が30年だった場合、控除額は800万円+70万円×(30年-20年)=1500万円となります。このように、勤続年数が20年を境に計算方式が大きく変わってくるので間違えないように注意しましょう。

控除額の計算をする場合、勤続年数の数え方は端数を切り上げる方法をとります。勤続年数が1年と1日だった場合でも、1日を1年として計算するので勤続年数は2年となります。

なお、控除額の算出された額が80万円以下の場合は、控除額を80万円とすることができます。控除額が80万円を切るケースは勤続年数が1年未満の人に多く、控除されないと勘違いしてしまう人も少なくありません。そのため、最低でも80万円の控除は受けられることを知っておくと安心です。

さらに、勤務先で障害者になったことが原因で退職する場合は、100万円を加算した金額になります。この100万円は控除額計算後に加算するため、20年以下の場合は(40万円×勤続年数)+100万円と計算しましょう。自分の退職する年数や状況に合わせて計算式や特例も変わってくるので、それぞれ覚えておくと安心です。

実際に計算してみよう

ここでは、勤続年数20年以下で退職金を受け取ったパターンと、勤続年数20年以上の2パターンで実際に計算していくので、自分の当てはまるパターンを見ていきましょう。

退職金支給額が800万円・勤続年数10年2カ月の場合

まず、退職所得控除は20年以下なので計算式は

40万円×11年(勤続年数は切り上げ)=440万円

となります。続いて、課税退職所得金額は

(800万円-440万円)×2分の1=180万円

これで、課税退職所得金額180万円を算出することができました。
次に所得税額を計算していきますが、「所得税率」と「控除額」を国税庁の所得税額表から先に調べておく必要があります。国税庁の平成30年分所得税の税額表によると、年収800万円の場合の課税退職所得金額は180万円なので、所得税率は5%・控除額は0円です。調べた所得税率をもとに所得税額を計算すると、

課税退職所得金額180万円×所得税率5%-控除額0円=9万円

となります。さらに、所得税及び復興特別所得税は

所得税額9万円+基準所得税額9万円×2.1%=9万1890円

つまり、退職支給額800万円・勤続年数10年2カ月で退職した場合の所得税及び復興特別所得税は9万1890円と計算することができます。

退職金支給額2300万円・勤続年数が29年2カ月の場合

まず、退職所得控除の計算には、800万円+70万円×(勤続年数-20年)が適用されます。

800万円+70万円×(30年-20年)=1500万円

となります。勤続年数は切り上げなので30年でなければなりません。次に、課税退職所得金額を計算します。

退職支給額2300万円-1500万円×2分の1=400万円

となります。続いて、所得税額を計算するために国税庁の税額表を参考にすると、330~694.9万円までは税率20%、控除額42万7500円となります。

こちらを所得税額の計算式に当てはめると

課税退職所得金額400万円×所得税率20%-控除額42万7500円=37万2500円

また、所得税及び復興特別所得税は

37万2500円+37万2500円×2.1%=38万322円

となります。勤続年数が20年を超えると計算式は若干変わりますが、所得税額の計算方法は同じです。すべての計算を同時に見ると難しそうに見えますが、1項目ずつ計算するとスムーズに行えるので参考にしてみましょう。

退職金の確定申告で還付金がある場合って?

本来、退職金の手続きは源泉徴収で行うため、原則は自分で確定申告をする必要はありません。しかし、年の途中で退職して再就職しなかった場合や、再就職したが収入が少ない場合など、特定の条件が重なると確定申告をしたほうが還付されるケースがあります。

退職金を含む収入は1年間で計上され、そこから控除を差し引く形となります。つまり、控除額の合計よりも収入が少ない場合は、退職所得を再計算することができるのです。ここでは、2つのパターンで確定申告を行ったほうが良いケースを紹介するので、例を見ながらしっかりと理解していきましょう。

年の途中で退職して再就職しなかった場合

還付金が発生するケースとして、年の途中で退職し、再就職をしなかった場合が挙げられます。3月に退職すると1月で年度が変わるため、1~3月までの3カ月分で計算することになるのです。そのため、3カ月分の給与に対して控除額が上回ると収入が赤字となり、還付金が受けられるということになります。

主な控除は、給与所得控除・配偶者控除・社会保険料控除・基礎控除などが挙げられます。他にも、状況によって控除項目や金額が前後するため、控除が受けられる項目を理解しておきましょう。

例えば、3カ月分の給与が100万で給与所得控除65万・配偶者控除38万・社会保険料控除25万・基礎控除38万の場合で見ていきましょう。計算式に当てはめると、「所得収入100万円-(65万+38万+25万+38万)=-66万円」となります。

つまり、年間で66万円の赤字だと算出することができ、確定申告を行えば約3万円の還付金に期待できるでしょう。控除額は国税庁で調べることができます。ちなみに、給与所得控除は収入金額が180万円以下(収入金額×40%)などと決まっています。そのため、具体的な控除額を知りたい人は、国税庁のホームページで確認しましょう。

年の途中で退職して再就職したが収入が少ない場合

年の途中で退職し、再就職や事業を起こすなど収入が1年を通して少なくなった場合も確定申告をすると還付される可能性があります。

例えば、1~3月までの収入が60万円・4~12月までが80万円、合計年収が140万円だったとします。この場合、給与所得控除65万・配偶者控除38万・社会保険料控除35万・基礎控除38万の控除を受けることができるので、控除合計は176万円。収入から控除を差し引くと「140万円-176万円=-36万円」となり、確定申告を行えば還付金が受け取れる状態だと判断できます。

一方、控除額の合計が同じ176万円で収入が180万円になっている場合は、確定申告をしても還付されない可能性が出てきます。180万円-176万円=4万円となり、退職所得に課税された所得税を再計算する必要がなくなってしまうのです。

他にも、退職したあとに「退職所得の受給に関する申告書」を提出していなかった場合も確定申告によって還付されるケースとなります。

また、退職金の確定申告は1年間ではなく、5年間までさかのぼって計上することが可能です。退職金の還付される事実を知ったが確定申告の時期を逃してしまった人は、5年以内なら確定申告が有効となるので試してみると良いでしょう。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合

「退職所得の受給に関する申告書」は、退職金を受け取る前に市役所で入手し、会社に提出しておかなければなりません。「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで、確定申告を行わなくても所得税率を通常よりも低い税率で計算してくれます。

しかし、提出していない場合、一律で20.42%の所得税率が源泉徴収されることになってしまいます。例えば、退職金が500万円だった場合、退職金の支給額500万円×20.42%=102.1万円となります。つまり、500万円のうち約102万円が所得税及び復興特別所得税となってしまうのです。

では、未提出の場合はどうすればよいでしょうか。確定申告をすることで、所得税率を20.42%よりも低く計算することができます。退職金にかかる税金の計算方法にしたがって算出された所得税率が反映されます。

そのためには、まず「退職所得の受給に関する申告書」を提出したかを確認する。提出していなければ確定申告を行い、所得税率の過剰納付分を返還してもらうことが重要です。また、外国企業から受け取った退職金など源泉徴収されないものがある場合でも、確定申告をすることで還付されることがあります。

退職金の受け取り方法は一時金と年金のどちらが得か

その他に、還付金を受け取ることができるケースとして多いのが、退職金を年金形式で受け取る人で、公的年金等の総額が400万円以上に該当する場合です。退職金の受け取り方式は会社によって違いますが、年金方式だと所得の種類が雑所得に分類されます。

一括で退職金を受け取ると退職所得となるのですが、年金方式だと所得の種類が変わり所得控除が反映されません。そのため、年金方式で退職金を受け取った人は、確定申告を行えば還付金を受け取れる可能性が高いでしょう。

では、退職金の受け取り方法は、一時金で受け取るのと年金形式で受け取るはどちらがお得なのでしょう。一時金の場合は退職所得なので税制優遇が大きいというメリットがあります。一方、年金だと企業年金には特別な控除枠が設けられ、かつ2%程度の運用収益を得ることが可能です。

どちらにもメリットはありますが、控除額だけを見ると一時金のほうがお得となります。しかし、長い期間で比べると年金受け取りのほうが一時金の金額を上回るケースも多いようです。そのため、受け取りたい期間によってお得と感じるほうを選択すると良いでしょう。

また、受け取り方法が一時金や年金だとしても、申告書以外の書類を用意できなければ有効にはできません。主に退職金の源泉徴収票は必須で、差し引かれた所得税を把握するために使用します。続いて、社会保険料の納付書や生命保険や地震保険の控除証明書は、控除額や控除が正確だと証明してもらうために必要です。

上記のような書類がないと控除が適用されず、還付金を受ける可能性が低くなってしまうので注意しましょう。

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