貸借対照表(B/S)の作り方は?作成時の注意点と共に解説
監修者:税理士法人 MIRAI合同会計事務所
2023/11/02更新
「貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)」は、決算の際に企業が必ず作成しなければいけない書類の1つです。貸借対照表には企業の「資産」、「負債」、「純資産」が記載されており、これらを確認することで、決算日時点での企業の財政状態がわかります。
とはいえ、会計処理に慣れていないと、貸借対照表の作り方がわからずに戸惑ってしまうことがあるかもしれません。また、貸借対照表にミスがあると、企業の財政状況を正しく把握できなくなってしまいます。決算時期に慌てることのないように、貸借対照表の作り方をしっかりと把握しておきましょう。
ここでは、貸借対照表の作り方や作成する際の注意点などについて解説します。
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貸借対照表とは、決算日時点における企業の財政状況を表す書類のこと
貸借対照表は、決算日時点における企業の財政状況を表す書類です。企業は決算の際、損益計算書と共に、必ずこの貸借対照表を作成しなければなりません。特に貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書の3つの書類は、決算書の中でも「財務三表」と呼ばれる重要な書類です。このうちキャッシュ・フロー計算書は中小企業に作成義務はありませんが、貸借対照表と損益計算書は全ての企業が作成する必要があります。
貸借対照表は大きく左右2つに分かれた構成になっており、左側には会社が保有する現金や建物の他ソフトウエアなどの形のない財産を含めた「資産」、右側にはいずれ返済しなければならない「負債」と返済義務のない自己資本(会社の元手)である「純資産」が記載されます。決算日時点の残高一覧のようなものと考えると、イメージしやすいかもしれません。
「資産=負債+純資産」となり、左右の合計数値は常に一致します。貸借対照表は、左右の金額が均衡状態を保っていることから、英語表記の「Balance Sheet」を略して「B/S(バランスシート)」とも呼ばれます。
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貸借対照表の作り方
ここからは、貸借対照表の作り方を、手順に沿って解説していきます。
1 取引が発生したら、勘定科目を決定し、仕訳帳に記帳
貸借対照表の作成に必要不可欠なのが、日々の取引を正確に記帳することです。売上や仕入れ、経費や給与の支払いなど、さまざまな取引が発生するごとに、その内容を仕訳帳という帳簿に記録していきます。
会計帳簿の作成は、正規の簿記の原則に従い、複式簿記で行います。複式簿記とは、1つの取引を借方(左側)と貸方(右側)に分け、取引内容に応じた勘定科目を使って帳簿に記録する方法です。勘定科目というのは取引内容を分類するために使う簿記の科目で、取引の性質を示すラベルのような役割を持ちます。この一連の作業を仕訳といいます。
複式簿記での記帳は、手書きや表計算ソフトではミスが起こりやすく、簿記の専門知識がない方には難しいでしょう。そのため、多くの企業では、簿記の知識がなくてもスムースに仕訳ができる会計ソフトが用いられています。
2 取引を借方・貸方に振り分け、総勘定元帳に転記
作成した仕訳帳に記載した取引内容を「借方」「貸方」に振り分け、勘定科目ごとに「総勘定元帳」に転記していきます。仕訳帳で特定の日の取引が全て確認できるのに対して、総勘定元帳では勘定科目ごとに取引の発生日や取引内容、残高を確認することができます。
総勘定元帳と、「1」で説明した仕訳帳は、複式簿記で必ず作成しなければならない主要簿と呼ばれる帳簿です。記帳が完了したら、帳簿上のデータと実際の残高を突き合わせて、食い違いがないかどうかを確認しておきましょう。
3 期末に総勘定元帳をもとに、試算表を作成する
記帳の確認が終わったら、期末に総勘定元帳をもとにして「試算表」を作成します。試算表とは、記帳の整合性をチェックする集計表の役割を持つ書類です。総勘定元帳に記載されている勘定科目ごとの借方・貸方の合計金額と残高を、試算表に転記していきます。
なお、試算表において、借方と貸方の合計金額は必ず一致します。もしそれぞれの合計金額が異なる場合は転記ミスの可能性があるため、見直しが必要です。
4 貸借対照表を作成する
勘定科目は、その性質によって「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」の5つのグループに分けられますが、貸借対照表に記載されるのは、そのうち「資産」「負債」「純資産」です。「収益」「費用」は損益計算書に記載されます。
そして作成した試算表から、資産・負債・純資産の勘定科目を抽出し、さらに資産を流動資産と固定資産と繰延資産に、負債を流動負債と固定負債に分類します。流動資産とは1年以内に現金化できる資産、固定資産とは長期にわたって保有する資産や現金化に1年以上かかる資産、繰延資産とは創立費や開業費のように長期に渡って費用化される資産のことです。同様に、流動負債は決算から1年以内に返済しなければならない負債、固定負債は返済期日が1年を超えて到来する負債を指します。
さらに、決算にあたっては、「決算整理仕訳」を行う必要があります。決算整理仕訳とは、事業年度をまたぐ取引について、今期分と来期分に分けて整理する仕訳のことです。まだ支払いが済んでいないものや、これから代金を受け取るものなど、入金や支払いが翌事業年度になる取引などを確認し、必要に応じて帳簿を修正します。
決算整理仕訳を終え、試算表を改めて確定させたら、その内容に沿って貸借対照表を作成します。貸借対照表を作成したら、左右の合計額が一致するかどうかを確認しましょう。もし左右の合計額が違う場合は、正確に作成できていないということになります。
貸借対照表の作成方法
貸借対照表を作成するには、手書き、表計算ソフト、会計ソフトの主に3つの方法があります。それぞれのメリットとデメリットを、下記の表にまとめました。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
手書き |
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表計算ソフト |
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会計ソフト |
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|
手書きや表計算ソフトのメリットは、費用がかからないことです。しかし、手書きや表計算ソフトで貸借対照表を作成しようとすると、まず複式簿記での記帳の段階で、簿記の知識が必要になります。
さらに、一つひとつの取引の日付や金額、勘定科目を手作業で記入したり、入力したりしなければいけないため、非常に大きな手間と時間がかかります。入力ミスや転記漏れ、計算間違いなども起こりやすくなってしまうでしょう。異動や退職などによって担当者が変わった場合は、引き継ぎが困難になる可能性もあります。
そのため、多くの企業では、日々の記帳をはじめ、貸借対照表などの決算書の作成には会計ソフトが使われています。会計ソフトを使うと、取引内容を入力するだけで、仕訳帳や総勘定元帳、試算表、決算書が自動で作成されます。
その他、会計ソフトの中には、銀行口座などの取引データや、スキャンや撮影した領収書データを連動させ、自動取り込み・自動仕訳が可能なものもあります。ただし、会計ソフトを導入すると、手書きや表計算ソフトに比べてコストがかかります。
それぞれのメリットとデメリットを比較したうえで、自社にとって適した方法を選びましょう。
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貸借対照表を作成するうえでの注意点
貸借対照表を作成する際には、どのようなことに気をつければ良いのでしょうか。ここでは、貸借対照表を作成するうえでの5つの注意点を解説します。
貸借対照表の左右の合計額は必ず一致する
貸借対照表を作成するうえで、貸借対照表の左右の合計額は必ず一致することを必ず覚えておきましょう。
貸借対照表は大きく左右2つに分かれており、左側に資産、右側に負債と純資産が記載されます。そして、左側の「資産の部」の合計額と、右側の「負債の部」「純資産の部」の合計額は、必ず一致します。
貸借対照表の左側の「資産の部」は、集めた資金をどのように保有・運用しているかを示すものです。また、右側の「負債の部」と「純資産の部」は、会社が事業を行ううえで必要な資金がどのように調達されたかを示しています。貸借対照表の左右の合計額が一致していないと、資金の出所と使い道にズレがあるということになってしまいます。
貸借対照表を作成する際には、左右の合計が同額になっているかどうかを必ず確認しましょう。もし左右の合計額が違う場合は仕訳が正しくできていないので、手順をさかのぼって間違っている箇所を探し、修正する必要があります。正しく作成するためにも、日々の記帳が非常に重要な意味を持ちます。
試算表に転記する際に借方と貸方は必ず一致する
総勘定元帳から転記して作成する試算表も、借方と貸方の合計額は必ず一致することを覚えておきましょう。正しく仕訳がされていて、総勘定元帳にミスがなければ、試算表の借方合計と貸方合計が食い違うことはありません。もし一致していないなら、仕訳時の金額ミスや勘定科目の選択ミス、仕訳帳から総勘定元帳へ転記する際の写し間違いなど、何らかのミスがあるということです。
試算表を確認して借方と貸方の合計額が合わない場合は、仕訳帳と総勘定元帳を調べてミスを探し、正しい形に修正することが必要です。ここでもやはり、日々の正確な帳簿づけが重要だということがわかります。
総勘定元帳における「繰越商品」は「商品」と記入する
貸借対照表を作成する際には、総勘定元帳における「繰越商品」は貸借対照表では「商品」となることを覚えておきましょう。
繰越商品とは、期中に仕入れた商品のうち期末時点で在庫になっている商品のことで、貸借対照表の資産です。決算時には、期末に残った繰越商品を、翌期の売上原価とする決算整理仕訳を行います。このように、翌期の売上原価にするために当期から翌期に繰り越された繰越商品の額が、貸借対照表に「商品」として記載されます。
総勘定元帳における「当座借越」は「短期借入金」と記入する
貸借対照表を作成する際には、総勘定元帳における「当座借越」は貸借対照表では「短期借入金」として記載することも覚えておきましょう。
当座借越とは、当座預金の残高を超えて小切手を振り出した際に、不渡りを防ぐため、事前の契約によって金融機関が不足分を立て替えることです。つまり、当座借越は金融機関からの一時的な借入金であるため、貸借対照表上は流動負債である短期借入金となります。
「貸倒引当金」は貸方ではなく、「売掛金」や「受取手形」などから控除する形で借方に表示する
貸借対照表を作成する際には、「貸倒引当金」は貸方ではなく、「売掛金」や「受取手形」などから控除する形で借方に表示することを覚えておきましょう。
貸倒引当金は、基本的には決算のとき、貸方に計上します。ただし、貸倒引当金は、将来的に発生が予想される貸倒れに備えて設定される勘定科目です。貸倒れとは、貸したお金が返ってこなかったり、商品などの売上代金が支払われなかったりすることを指します。貸倒引当金の対象となる資産は、売掛金、貸付金、未収金、受取手形などの債権です。
貸倒引当金を計上し、実際に貸倒れが発生した場合は、貸方ではなく、「売掛金」や「受取手形」など該当する勘定科目から差し引く形で借方に記載します。
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この記事の監修者税理士法人 MIRAI合同会計事務所
四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
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