所得税の確定申告はいくらから?個人事業主や副業などケース別に紹介
監修者: 齋藤一生(税理士)
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一定の条件に当てはまる人は、年に1度必ず所得税の確定申告を行わなくてはいけません。申告が必要な条件を満たしているにもかかわらず申告しないと、ペナルティとして無申告加算税や延滞税というような追加で納める税金が増えてしまうため、「いくらから申告が必要か」は正確に把握しておくことが大切です。
ここでは、どのような人に所得税の確定申告が必要か、具体的に解説していきます。
なお、本記事は、令和7年度税制改正での2025年(令和7年)12月1日施行の内容を前提に記載をしております。また、この改正は原則として、2025年(令和7年)分以後の所得税について適用されます。
ただし、2025年(令和7年)11月までの給与及び公的年金等の源泉徴収事務に変更は生じません。
所得税の確定申告はどんな人に必要?
所得税の確定申告は、個人が1月1日~12月31日の1年間の所得を計算して税務署に報告し、その額に応じた税金を納める手続きのことです。
もし源泉徴収されているなら、正しい税額から源泉徴収されている税額を差し引き、税金の不足分があれば、原則3月15日までに追加で納め、過払い分があれば申告後に返してもらいます。
では、どのような場合に確定申告が必要になるか見ていきましょう。
年末調整をする会社員は不要だが例外あり
会社員などの給与所得者の場合は、会社で年末調整をするため、基本的には確定申告は不要です。ただし、年収が2,000万円を超える場合は、自身で確定申告をする必要があります。
また、給与所得者が副業をしている場合、本業で受け取った給与以外の所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。詳しくは、以下で解説します。
個人事業主の場合
所得税額は、1年間の収入から必要経費と所得控除分を差し引いた「課税所得(課税される所得金額」に所得税率を掛け、控除額を引くことで求められます。
所得税は超過累進課税を採用しているため、所得金額によっては複数の税率を適用して計算しますが、国税庁ではこれを簡単にするための速算表を公表しています。
所得税額=課税される所得金額×税率-控除額
※ 課税される所得金額は、1,000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額です。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円~194万9,000円 | 5% | 0円 |
| 195万円~329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
| 330万円~694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
| 695万円~899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
| 900万円~1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
| 1,800万円~3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
| 4,000万円~ | 45% | 479万6,000円 |
-
※国税庁「所得税の税率
」
例えば「課税される所得金額」が400万円なら、所得税額は下記のようになります。
400万円×20%-42万7,500円=37万2,500円
課税される所得金額
課税される所得金額は、「各種所得の合計額-所得控除」で算出します。所得とは、収入から必要経費や青色申告特別控除を引いた額です。所得控除とは、課税所得から一定金額を差し引けるもので、基礎控除や社会保険料控除、生命保険料控除などが当たります。
税額控除
税額控除とは、上記で算出した所得税額から直接一定金額を差し引くものです。住宅ローン控除、配当控除、政党等寄附金等特別控除などがあります。
個人事業主で確定申告が不要な場合
個人事業主の場合は原則として確定申告が必要ですが、1年間の所得金額が95万円以下(2024年分までは48万円以下)であれば、確定申告をしなくても問題ありません。
合計所得金額が2,500万円以下であれば誰でも対象となる基礎控除を適用することによって、課税所得がゼロになるため、所得税が発生しないためです。
個人事業主の確定申告については、以下の記事で解説していますので参考にしてください。
副業をしている給与所得者の場合
給与所得者は、給料や賞与から所得税が天引きで源泉徴収されています。年末調整で過不足分が調整されるので、年収2,000万円を超えない限り、基本的に所得税の確定申告は必要ありません。
しかし、副業をしている場合は、所得金額によって申告が必要になることもあります。具体的な例を見てみましょう。
勤務先からの給与以外に、20万円超の所得がある
大家として家賃収入を得ている、ブログを運営して広告収入を得ている、ハンドメイド作品を販売して収入を得ているなど、副業を行っており、その所得が年間20万円を超える場合は所得税の確定申告が必要になります。
この「年間20万円」は所得を指すため、例えばフリマアプリでハンドメイド作品を売って100万円の収入を得ていても、制作に85万円かかっていれば所得は15万円となり、確定申告は不要です。
2か所以上から給与をもらっている
アルバイトの掛け持ちなどで2か所以上から給与を受け取っているとき、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合で、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得および退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を1円でも超えると、所得税の確定申告の対象となります。
給与所得者で確定申告が不要な場合
給与所得者は年収2,000万円を超えない限り、基本的に所得税の確定申告は必要ありません。
また、副業をしていたり、2か所以上から給与をもらっていたりしても、給与の収入金額の合計額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、かつ、給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下の人は、申告の必要はありません。
例1
勤務先から400万円の給与を受け取り、勤務先で年末調整を行っていて、バイトなどの副業での給与収入が15万円を得ているがバイト先でも源泉徴収の対象とされていれば確定申告は不要です。なぜなら、年末調整されなかった給与の収入金額と給与以外の収入とその他の所得の合計が20万円以下になるからです。
例2
A社から100万円、B社から80万円の給与を受け取っている人が、雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除以外の所得控除が、給与所得控除62万円、生命保険料控除5万円あるとします。
この場合、給与収入から各種所得控除を引いた合計は給与収入(100万円+80万円)-各種所得控除(62万円+5万円)=113万円で150万円以下になるので、給与の全部が源泉徴収の対象とされていれば所得税の確定申告は不要です。
給与所得者の確定申告については、以下の記事で解説していますので参考にしてください。
公的年金等の受給者の場合
公的年金等の受給者は、年金等の収入が400万円以下であれば基本的に所得税の確定申告は必要ありません。ただし、アルバイトなどで公的年金等以外に20万円を超える所得がある場合は、確定申告が必要になります。
公的年金以外の所得としては、例えば次のようなものがあります。
- アルバイトの給与
- 個人年金の受け取り
- ネットオークションでの売上
- 生命保険の満期払戻金
- 原稿料、講演料、印税などの受け取り
なお、海外の年金を受け取っている場合は源泉徴収がされないので、原則として所得税の確定申告を行う必要があります。
専業主婦・主夫の場合
専業主婦・主夫は、扶養されている場合、基本的に所得税の確定申告の必要はありません。ただし、アルバイトをする、フリマアプリで嗜好品を販売するなどで所得を得ている場合、状況によっては所得税の確定申告が必要です。
状況別に、所得税の確定申告の要不要を見ていきましょう。
給与所得の160万円の壁
専業主婦・主夫の収入が、パートやアルバイトによる給与所得の場合、年間の収入が160万円(2024年分までは103万円)を超えると、所得税の確定申告が必要になります。
これは基礎控除の95万円(2024年分までは48万円)と、給与所得控除の65万円(2024年分までは55万円)が併せて適用されるためです。ただし、給与を受け取っているのが1か所で、源泉徴収と年末調整が行われていれば、確定申告は不要です。
2か所以上で合計160万円を超える給与を受け取っている場合
専業主婦・主夫の給与収入が160万円(2024年分までは103万円)を超え、さらにパートやアルバイトの掛け持ちなどで2か所以上から給与を受け取っている場合は、給与所得者が副業をして2か所以上から給与を受け取っているケースと同じになります。
年末調整が行われていない方の給与の収入金額とそれ以外の所得金額の合計が20万円を超える場合は確定申告が必要ですが、給与収入の合計額から、雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除以外の各種所得控除を引いた金額が150万円以下、かつ給与所得および退職所得以外の所得が20万円以下なら所得税の申告は不要です。
一時所得があった人の場合
個人事業主、給与所得者、専業主婦・主夫にかかわらず、一定額以上の金額を「一時所得」として得た場合は、所得税の確定申告が必要です。
一時所得とは、懸賞の賞金や競馬の当選金といった、一時的に得た臨時収入のことで、下記4つの条件を満たすものとして定義されています。
- 営利目的の継続的行為から生じたものではない
- 労務や役務の対価ではない
- 資産売却や譲渡の対価ではない
- 一時的な所得である
一時所得は、具体的には次のようなものが該当します。
- 懸賞や福引の賞金、賞品
- クイズ番組の懸賞金
- 競馬や競輪の払戻金
- 生命保険の解約返戻金や満期金(一時金として受け取る場合)
- 長期損害保険の満期返戻金
- 法人から贈与された金品(業務として受けるものや継続的に受けるものを除く)
- 遺失物取得または埋蔵物発見者が受ける報労金
しかし、これらを受け取ったからといって、必ずしも所得税の確定申告が必要となるわけではありません。一定以上の金額を受け取った場合のみ、所得税の確定申告の対象となりますので、下記の計算で確かめてみましょう。
一時所得の金額=総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最大50万円)
収入を得るために支出した金額とは、収入を得るためにかかった直接的な経費のことを指し、例えば競馬なら払戻しを受けたレースの馬券購入費や、生命保険にこれまで支払ってきた保険料のことです。
特別控除額と相殺されるかがポイント
「総収入金額-収入を得るために支出した金額」が50万円以下なら、特別控除分で引ききれるので、所得税の確定申告は必要ありません。
「総収入金額-収入を得るために支出した金額」が50万円を超える場合は、その2分の1に相当する金額を他の所得と合算し、確定申告を行います。
一方、「受け取った保険金-これまでに支払った保険料」が50万円を超えている場合は、所得税の確定申告が必要になります。
なお、保険料の支払いは配偶者が行ったなど、保険料の支払人と受取人が違う場合は、所得税ではなく贈与税の対象になります。被相続人がかけていた生命保険金を相続人が受け取った場合は相続税の対象となります。
所得税の確定申告が必要かどうか確認しよう
所得税の確定申告が必要か不要かは、得ている所得の種類や所得の額によって異なります。
特に働き方が変わったときや一時所得があったときは、うっかり申告漏れをしてペナルティを受けることがないように、しっかり確認しましょう。
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